ソードアート・オンライン・アゲイン ∼今度こそ君を……∼ 作:八鍵 嘯
(作者は大学受験生です……orz)
再び剣の世界へ
「おい……どうすんだよぅ。キリトよ」
俺、桐ケ谷和人はその声が聞こえた方に振り向いた。
「え……?」
その先に居たのは、はるか昔に見た覚えのある、若武者風の曲刀使いだった。
「……もしかして、クラインか?」
俺は、その現実よりもはるかにカッコいい顔つきのクラインを見て、たっぷり十秒間固まってしまった。
「は? 何あたりまえなこと言ってんだ、お前? それより、ログアウト出来ないならどうするよ?」
「ログアウト……?」
この世界がログアウトできないのは当の昔に分かっている。いや、それ以前にこの世界には……
「まさか!?」
その刹那、俺の頭の中ではある驚きの仮説が生まれていた。
俺は慌てて周囲をぐるりと見渡し、自分のアバターの手を見る。否定する要素は見つからない。それどころか、その仮説が正しいことがほぼ証明されてしまった。そして、その仮説が正しいのであれば……
俺は、慌ててとある方向を向いた。
そこにあるのは《始まりの街》にあるゲームスタート地点、中央広場。
瞬間。
──リンゴーン、リンゴーン
聴き覚えのある、大音量のサウンドが聞こえて来た。
「んな……っ」
そして、俺たちは鮮やかなブルーの柱に包まれる。
クラインが驚き叫ぶ中、俺はただ茫然としていた。
「過去に……戻った?」
《第一章 始まりの日》
強制転移、によって中央広場につく頃には、俺の思考は冷静になっていた。
なぜ、過去に戻ったのかは分からない。だが、この状況はまぎれもなくあの日と同じだ。ならば、この後に起こるであろう出来事も過去と同じはずだ。
あり得ない。信じられない。そうだ、これはきっと夢だ。俺はそうも考えた。
確かに、もしかしたらこれは夢なのかもしれない。だが、少なくとも今の俺は夢だからと言ってこの世界のクラインたちを見捨てることは出来ない。そう、できないのだ。夢と現実の境界の曖昧さを知ってしまった今の俺には。
そんなことを考えていると、誰かが叫ぶ声が聞こえた。
「あっ……上を見ろ!!」
上を見上げるとそこにあったのは、やはり見覚えのある光景だった。上空百メートルほどの第二層底部を、見覚えのある文字の羅列がパターン表示された真紅の市松模様が埋め尽くしていく。
【Warning】
【System Announcement】
その表示を見たためか、広場のざわめきが収まっていくが、俺はその表示を見て反射的に硬直した。
そして真紅の表示が粘性の高い、まるで血液のように垂れ下り、空中でその形を全長二十メートルはあろうかという、真紅のフード付きローブに変えていく光景を、ただ眺めていた。
顔のないそのアバターは、純白の手袋を付けた肉体のない両手をゆるりと持ち上げる。そして、あの神のごとき声音が俺たちの脳に響いた。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
私の世界。その言葉に、俺は改めてそうだと思った。
茅場はただ、行きたかったのだ。自らの理想郷である、巨大な石と鋼鉄の城《アインクラッド》に。
『私の名前は茅場昌彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
この日。俺、キリトこと桐ケ谷和人は再びこの浮遊城に囚われたのだった。
次回は二話目にしてキリトが大きな選択をしますよ!