ソードアート・オンライン・アゲイン ∼今度こそ君を……∼ 作:八鍵 嘯
アスナを説得せよ!
その光景を、俺はただただ眺めていた。
もちろん、危なくなればいつでも介入できる体制は整っていた。だが、そんな危機的状況は訪れることなく、モンスターは四散・消滅した。
アスナはそのまま壁際に下がり、ずるずると座り込んだ。肩を上下させて荒い呼吸を繰り返しているのを見ると、相当に疲れていることが分かる。
俺はゆっくりとアスナへと近寄り、その前で止まる。
足音が目の前で止まったのを聴いたせいか一瞬ピクリと肩を跳ね上げたアスナは、そのフードに隠れていたライトブラウンの瞳をこちらに向けて来た。
「……何か用?」
久しぶりに聞いたアスナの声は冷たいものではあったが、今の俺はその声に、どこか必死に怯え、縋るような何かを感じた。
「君、VRMMORPGはソードアート・オンラインが初めてだろ」
「え……?」
どう話を切り出そうかと考えた結果、俺が出した結論はこれだった。
案の定、アスナは会話を無視はしなかった。
「さっきの戦闘の動き、一つ一つの動きのキレや的確な攻撃には驚いた。だけど、あの動きは明らかに素人のものだったよ」
「どこが……」
「どこって、戦闘の運び方が危うすぎる。最小限な動きでの回避は反撃の速度が上がる上、武器や防具の耐久地も減らないのは確かだ。だけど、失敗した時のリスクが高すぎる。最悪、カウンターダメージで
俺の言葉を聞いたアスナは一旦黙り、こう言った。
「……関係ないでしょ」
「関係大ありだ。こんな迷宮区の奥にいるってことはあんたはただの自殺志願者ではなく、攻略を目指しているんだろ? ただの自殺志願者ならわざわざこんな場所にはいないだろうし」
「……ええ」
「今のアインクラッドの現状、本気でこのゲームの攻略をしている奴はごく少数だ。そんな貴重な戦力に今ここで死なれるわけにはいかないんだよ。お前、何日ここに籠ってやがる? このままいくと死ぬぞ?」
俺はあえて、『死』という単語を使ってアスナを引き留めようとする。
「……二日、それか三日目くらい」
アスナはそう言って、諦めの表情を浮かべた。
「どうせ……どうせみんな死ぬのよ。ゲームが始まって、もうすぐ三週間が経つわ。もう千五百人以上が死んでる。だというのに百層あるうちのまだ一層も攻略できていないのよ……。つまり、このゲームはクリア不可能なの。どこでどんな風に死のうと、早いか遅いかの違い…………」
「だけど、お前はこうしてゲーム攻略に励んでいる。どうせならやれることをやって燃え尽きたいと思っているのかどうか知らないが、それならこんな非効率的な方法でなくてもっといい方法で燃え尽きたほうがいいんじゃないか?」
今のアスナに生きろ、などと言っても意味はない。効率を重視した理論を並べていっての説得しか効果がないことを俺は知っていた。
「お前も、理由はどうあれ攻略を目指しているんだ。少しでも生存率の高い戦闘をした方がいいだろ?」
そこまで言われたアスナはまたも沈黙する。
そして微かに小さく、だが確かに頷いた。
第三目標:アスナ説得(成功)
次回は月曜日には投稿したい(願望)
原作よりも少し攻略ペースが早いです。