再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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今回はフライング投稿です。


予想外の展開

(あれが話に聞いた『再成』……いや、『自己修復術式』か)

 

 フェンが諜報員らしき女性から情報を入手する為に張り付いている中、隆誠は新人戦モノリス・コード決勝を観戦していた。

 

 結果としては一高の優勝。達也が一条将輝を倒した事で形勢が一気に傾いたから。

 

 だが隆誠としては、そんな事など如何でもよかった。達也が今回の決勝で見せた魔法に注目していたのだ。将輝が明らかにレギュレーションを超えた威力の圧縮空気弾を十六連発向けていた時に。

 

 それを見た達也は対処しようと『術式解体(グラム・デモリッション)』で迎撃するも、十四発までしか間に合わず、最後の二発の直撃を受ける事となった。

 

 普通ならそれで達也が重傷となって倒れ、将輝は失格になってもおかしくないのだが、そこで想定外の事態が起きた。何故か負傷した筈の達也が立ち上がっただけでなく、硬直したままの将輝の耳元に音響手榴弾のような破裂音を発生させ、そして彼を倒した。

 

 この状況に観客達は達也の異常性に不審がってもおかしくないのだが、結局のところ有耶無耶になってしまった。達也が将輝を倒した後、吉田と西城が残りの三高選手二人を倒して、一高の優勝を祝福しようと大拍手を送っていたから。

 

 しかし、観客の中に混じっている隆誠だけは違った。称賛の拍手をしてないどころか、今も()めた目で見ている。

 

 達也が何事も無かったかのように立ち上がった理由を知っているのだ。四葉家当主の真夜から、彼が扱う魔法の一つに『再成』と言う復元魔法を聞かされたから。

 

 どうして彼女が大事な甥の情報を教えたのかは不明だが、今回の決勝を観て隆誠は何となく察した。恐らくこの情報を知ったところで、達也を倒すのは現状不可能である事を報せたのだろうと。

 

(謂わば『不死身』か。確かに端から見ればそう思うかもしれないが、な)

 

 普通の魔法師であれば戦慄するかもしれないが、隆誠は全く如何でも良いことを考えていた。前世(むかし)の頃に会ったライザー・フェニックスや、『ドラグ・ソボール』の魔人プーと少々似たような奴としか見ていない。

 

 それどころか、もし達也と戦っても自分の脅威にはならないと判断している。倒しきるのに少々時間が掛かる遊び相手程度にしか認識していない。

 

 だが、今回の試合で知っておいて良かったと思っていた。事前に情報を得ておくのは決して損ではないし、相手をする際の備えとして必要であったから。

 

(さてと、あの当主にどう報告すべきか……)

 

 一高が新人戦モノリス・コード優勝をした事で会場が歓声に包まれている中、隆誠は今夜来るであろう真夜からの連絡について考えているのであった。

 

 

 

 

 

 西暦2095年8月11日

 

 

 

 新人戦が全て終わった事で本戦に戻り、今日は本戦ミラージ・バットが行われる事になっていた。

 

 前日までの好天とは違い、今にも雨が降り出しそうな分厚い雲に覆われた曇天(どんてん)となっている。けれど、今回行われる競技にとっては試合日和と言える好天であった。

 

(そう言えば『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』が関わってるみたいだが……)

 

 そんな中、隆誠は既に会場へ来ていた。深雪が出るのは第二試合だが、本戦ミラージ・バットは九校戦の中で花形競技だから、会場が満員となって直接観れない可能性がある為、既に場所を確保する事にしたのだ。

 

 第一試合を観てる最中、昨日に達也が女性と話してるのを思い出していた。九校戦に犯罪組織が裏で関連している事を。

 

(フェンが戻って来てないのは、まだ調査中ってことで……ん?)

 

 第二ピリオドが始まってから異変が起きた。跳躍した一高女子の選手が急に真下へ落下したのだ。

 

 本来なら空中を滑空する移動魔法を使いながらゆっくりと斜めに降りる筈が、それに反するように真っ直ぐ落ちていく。

 

 この緊急事態に立ち合いの大会委員が減速の魔法を放った事で、落下する一高女子選手は救助され、すぐに担架で運ばれたから命に別状は無い。だが、別の問題も起きている。寧ろこれが一番致命的な問題だった。

 

(あの選手は、確実に魔法が使えなくなったかもしれないな)

 

 意識を失ってる一高女子選手を見た隆誠はそう結論した。

 

 彼は魔法師じゃないが、魔法についての知識を一通り得ている。

 

 この世界にある魔法は世界を偽る力。

 

 この世界の魔法それ自体が、世界の理からはみ出した偽りの力。

 

 偽りだと分かっても確かに存在してると信じているから、魔法師は魔法を行使している。

 

 しかし、今回みたいな魔法の失敗による危険体験、それによって齎される魔法に対する不信感を抱くと一変してしまう。

 

 魔法師が『魔法なんてやはり存在しない』と確信に取り憑かれた瞬間、二度と魔法を行使することが出来なくなる。先程まで落下していた一高女子選手の恐怖に染まった表情は、恐らくそのように考えた筈だと隆誠は推察している。

 

(やはりこの世界の魔法は『諸刃の剣』も同然だな)

 

 隆誠こと聖書の神は、この世界に存在してる神々に抗議したいと憤慨する程だった。

 

 とは言え、自分も嘗て神器(セイクリッド・ギア)を人間達に不幸な人生を歩ませてしまった黒歴史(おてん)がある為、この世界の神々に文句を言える立場じゃない。これで彼等を否定してしまえば、自分は大変身勝手な神と何ら変わりない事になってしまうから。

 

(見ていた達也は……何か掴んだみたいだな)

 

 観客達が担架で運ばれてる一高女子選手を気の毒そうに見守ってる最中に、達也は通信端末で誰かと話していた。

 

 その後に第一試合は再開されるも、一高側が大変重苦しい雰囲気になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

(あの愚弟と愚妹(ふたり)、一体何考えてるんだ!?)

 

 第二試合が始まり、第二ピリオドまで問題無く観ていた隆誠だが、第三ピリオド開始となってから一気に状況が変化した。

 

 選手として出場してる深雪がとんでもない事を仕出かしていた。先月にFLTが発表したばかりの『飛行魔法』を披露している為に。

 

 観客達は魅了されてるかのように空を飛ぶ深雪を見ているが、隆誠だけは違う。不味い事になったと少々焦りの表情を見せている。

 

 すぐに席を立って最後列の壁側まで移動した後、周囲を確認しながら懐にある携帯端末を使って電話をしようとする。

 

 電話の呼び出し音が数回鳴るも、向こうはすぐに出てくれた。

 

『もしもし。どうしたんだ隆誠、何かあったのか?』

 

 出たのは隆誠の父親、司波龍郎。並びに達也と深雪の父親でもある。

 

 彼は隆誠が夏休みを利用して遠出している事を知っており、連絡をする場合は旅先で緊急事態が起きた場合のみ。自分が仕事中であっても、(達也や深雪と違って)大事な息子からの連絡となれば必ず出る事にしている。

 

 今回は九校戦の観戦と聞いた際、龍郎や小百合は意外な反応を示していた。今まで大して興味無かった筈の競技を急に観に行くとなれば当然だが、達也と深雪が出場すると聞いた瞬間に少しばかり納得した。

 

 特に小百合は未だ連れ子である二人に良い感情を抱いていない。実の息子である隆誠がいるお陰と言うべきか、心に余裕を持つ事が出来て悪感情を抱かないまでに収まっている。

 

「父さん、緊急事態だ。今やってる九校戦で、深雪が先月発表した飛行魔法を使ってる」

 

『何だって!?』

 

 隆誠からの報告に龍郎は慌てた声を出していた。近くにテレビがあったのか、電話から観客の歓声が聞こえてくる。

 

『こ、これは……! 隆誠、一体どう言う事なんだ!?』

 

 深雪が飛行魔法を使っているところを見ているのか、龍郎は隆誠に詳細を求めようと詰問した。

 

「恐らく達也が深雪を優勝させる為の秘策として与えたかもしれない。多分達也の事だから、この九校戦を利用して飛行魔法の広告もしてるかもしれないけど」

 

『だとしても、それでは達也が自ら「トーラス・シルバー」だと宣伝してるようなモノじゃないか!』

 

「そうなんだよ。本人がそれに気付いてるかどうか分からないが」

 

 達也は良かれと思ってやってるかもしれないが、龍郎からすれば迂闊な行動も同然だった。『トーラス・シルバー』の存在は厳重に秘匿してるのに、それを本人が吹聴するように九校戦で飛行魔法を公開しているので、FLT側からしたら堪ったものじゃない。

 

 FLTの社員じゃない隆誠としても、今回ばかりは到底見過ごせない案件になっている。昨日に達也と二人で話した際、『俺の父さんや母さんに迷惑掛けるようなことをするなよ』と念押ししたにも拘わらず、それを平然と破ったのだから。

 

「多分この後、またFLT(そっち)は問い合わせの嵐が来るかもしれないよ」

 

『だろうな。この前やっと収まったばかりだと言うのに……!』

 

 またしても残業の日々を送る事になるであろうFLT本社を想像した事に、龍郎は非常に辟易した声を出していた。

 

 息子(たつや)のお陰で多くの利益を得て喜ぶべきなのだが、一時的なモノに過ぎないと言っても、会社の業務に差し支えるほどの迷惑を被られるのは勘弁して欲しいと龍郎は心底思っている。

 

『隆誠。本当ならお前に頼む事じゃないが、達也にFLT本社へ来るよう言ってくれないか?』

 

 会社に事前の説明もなく九校戦で飛行魔法を公開させたのは規約違反にも程がある。いくら達也が有名な『トーラス・シルバー』の一人とは言っても、余りにも度が過ぎてると龍郎も流石に憤慨しているようだ。

 

「分かった、後で達也に必ず伝えるよ」

 

 隆誠としても自分の警告を無視した達也に言いたい事があったから、龍郎の頼みをすぐに了承した。

 

 とは言え、あの達也が『はい、分かりました』とそんな簡単に従う性格はしてない。それは隆誠だけでなく、龍郎も充分に理解している。

 

 だがそれでも、言うべき事を言わなければダメなのだ。もしこれで何も言わずに放置すれば、また重大なことをやらかすかもしれないから、ある程度の釘を刺しておく必要がある。例えそれが無駄な行為であってしても。

 

 龍郎と一通り話し終えた隆誠は電話を切った後、第二試合は既に終わっていた。飛行魔法を使った深雪が大差をつけて決勝へ勝ち上がったと言う結果で。

 

 周囲が色々な意味で騒然としながらも、一旦ホテルへ戻ろうと会場を後にする。

 

(ん?)

 

 その途中、隆誠は奇妙な光景を目撃した。サングラスをした無表情の男が観客の男性客に襲い掛かろうとするも、逆に投げられてスタンドのフェンスを通り越してしまった光景を。

 

 会場にいる観客達は先程の試合にまだ魅入られているのか、隆誠が目にした凄い光景を誰一人気付いた様子を見せていない。

 

「…………チョッと気になるな」

 

 そう言いながら隆誠は人知れずに姿を消した。観客達は勿論のこと、無表情の男を投げ飛ばした男の後を追う為に。




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