再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
(成程。あの『ジェネレーター』と言うのは、『
隆誠は神の
無表情の男は『ジェネレーター』と呼ばれる人型兵器で、それを会場の外へ投げ飛ばした男性客は軍人の
覗き見されてる事に全く気付いてない軍人達の会話を聞いた隆誠は、ある程度の情報を得る事が出来た。あの生体兵器が観客達に殺戮行為を仕出かそうと知った際、『
本当なら隆誠が独自に片付けると言う選択もあるが、今回は止めておくことにした。密かに片付けて軍の目は誤魔化せても、真夜がこの前みたく独自の情報網で気付かれてしまう恐れがある為に。流石に同じ手は使わないとは思うが、また脅しネタとしての可能性が無きにしろ非ずだから、一応警戒しておく必要がある。
(それに達也が知れば絶対黙ってないだろうし……)
ジェネレーターを捕らえた事は藤林が報告をすると聞いたので、もしかしたら『
犯罪組織のやった事が許されない行為とは言え、もしかしたら今日が命日になるかもしれないと考えるだけで、非道な連中でも僅かに同情してしまいそうになる。
しかし、隆誠は『
「達也、お前なんてことしてくれたんだよ……!」
「FLTの社員じゃない義兄さんが、そこまで怒る必要はないと俺は思いますが?」
先程まで昼食を取っていた達也としては、まさか自室に来るとは完全に予想外だった。此処に深雪がいなくて良かったと内心安堵しながらも、少々激昂気味である
「俺は昨日言った筈だ、『父さんと母さんに迷惑を掛けるな』と。それなのにお前と来たら、さっきの試合で深雪に飛行魔法を使わせた挙句、大会委員にもそのCADを渡すなんて……!」
「二人に迷惑を掛けてはいませんし、あくまで検査をさせるため渡しただけに過ぎません。飛行魔法は先月に発表しましたし、この九校戦で宣伝すればFLTには相当な利益を得る事も――」
「バカかお前は! そういう問題じゃない!」
余りにも他人事のように言い放つ達也に、隆誠は思わず怒鳴ってしまった。だが、それはすぐに収まって冷静になる。
「まだ製品化してない飛行魔法をFLT本社に相談せず無断公開、並びに検査目的で大会委員に渡したことで会社の機密情報流出。どれも完全な違反行為だってことくらい分かっている筈だ」
達也が『トーラス・シルバー』として活動する際、FLTに所属する為に社員同然の扱いとなる。だから会社が定められた
しかし今回行われた本戦ミラージ・バットの試合で、製品化する予定の飛行魔法の情報が洩れてしまう事になった。FLTの社員で、飛行魔法の開発者である達也本人の所為で。
「今頃大会委員会の事だから、不正疑惑の抗議に対する回答として、各校に術式を公開してるだろうな」
「大丈夫ですよ、義兄さん。それは寧ろ俺としては非常に好都合です。もし本当に各校があの術式をそのまま使うとするなら、万が一の場合でも『安全装置』が機能する筈ですから」
「そんな頓珍漢な返しを聞いて俺が納得すると本気で思ってるなら、お前を愚弟と言わざるを得ないんだが」
またしても見当違いな返答をされた事に、隆誠は頬を引き攣らせながらも流石に怒鳴らなかった。
「逆に訊きますが、何故義兄さんがそこまで口出しをするんですか? 先ほども言ったように、貴方はFLT社員じゃないので、俺のやる事にとやかく言う権利など無い筈です」
「………本部長の父さんに頼まれたんだよ。お前をFLT本社に連れて来て欲しいって」
達也の言ってる事は一理あった為、隆誠は理由を言う事にした。
FLT本社である父親の名前を出せば、流石にある程度の理解を示す筈だと思いながら言ったのだが、全く異なる答えをされてしまった。
「そうですか。ならばこの話はもう終わりにしましょう。そろそろ深雪が此処へ来ますので、義兄さんはご自分の部屋にお戻りください」
「……は?」
理由を聞いておきながら帰れと言われた為、これには隆誠も言葉を失ってしまった。
「おい待てコラ、何でそうなる。俺は父さんからの頼みで――」
「社員でない義兄さんにそんな頼みをする親父が間違っています。寧ろ向こうから俺に連絡して会社に来るよう命じる筈です。何故そうしなかったのでしょうか?」
「それは……」
父さんが直接言ったところでお前が素直に応じないどころか、適当な理由を言って断るのが目に見えていた。隆誠はそう言いたかったが、達也の事だから正論で言い返されるのがオチなので、敢えて途中で止めたのだ。
だが、達也はそれを見抜いたようでこう言った。
「どうやら親父は、義兄さんに言ってもらった方が良いと判断したみたいですね。本部長ともあろうお方が、まさか会社の規定に背くような行為をするとは……同じFLTの社員として非常に残念です」
決して間違ってないのだが、大変嘆かわしいと口にする達也の言い方は余りにも白々しい。寧ろ、分かってて隆誠に言い逃れが出来ない口実を作っているのだ。
「もしこんな事がFLT内に知られたら、親父だけでなく義兄さんも何らかの処罰が下される可能性があります。先程までの話は聞かなかった事にしますから、どうかこのままお帰り願えませんか?」
「お前と言う奴は……!」
達也は暗にこう言っている。『規定違反を犯した龍郎や隆誠が、自分にFLT本社へ来いと命令する資格は無い』と。
素直に応じないのは既に分かっていたが、まさかここまで(正論とは名ばかりの)屁理屈をこねる性格だったとは思いもしなかった。四葉家ではそれが当たり前と言えばそれまでになってしまうが。
隆誠は思わず元神として
加えて隆誠は達也の兄なのだ。殆ど他人同然に振舞われているとは言え、血の繋がった家族であることに変わりはない。我ながら女々しい事だと
「……はぁっ、分かったよ」
「ご理解頂けて何よりです」
これ以上何を言っても無駄だと諦めた隆誠が引き下がる事に、達也はすぐに帰るよう促した。
部屋から出ようとする際、深雪と遭遇する事になる。
「あら隆誠さん、お兄さまの部屋にいらしたのですね」
「もう話は済んだから、今から帰るところだよ」
「そうでしたか。ですがお兄さまは今も大変お忙しい身なので、これ以上煩わせることはしないで欲しいですね」
「……ああ、悪かった」
にこやかでありながらも毒を吐く深雪に、隆誠は敢えて流した。
本当は勝手に飛行魔法を行使してFLT全体に迷惑を掛けた
だが、それとは別に気付いた事がある。
(深雪の奴、さっき本気で殺意の目を向けていたな)
ほんの一瞬とは言え、深雪は殺したいほどの殺意を隆誠に向けていた。
大好きな兄との一時を邪魔したからって、そんな程度で自分を殺そうと考えるだろうか。
(出来れば俺の思い過ごしであって欲しいんだが……)
もし本気で実行しようものなら、それは彼女にとって一番愚かな選択をした事になる。それは天に向かって唾を吐く行為そのモノであるから。
☆
時間は少々遡る。
(早くお兄さまの部屋へ行ってお世話をしないと……!)
試合を終えて、シャワーを浴び終えた深雪は大変ご機嫌だった。
達也が用意してくれた飛行魔法を使って圧勝したことで、観客達だけでなく選手達も驚くばかり。それは即ち、兄が大変素晴らしい功績を示したと言う事になる。そう考えるだけで深雪は大変嬉しい気持ちで一杯になっていたのだ。
決勝が始まるまで暫し時間がある為、深雪は今もずっと働き詰めで疲労してる達也の世話をしようと、こうして急いで部屋に向かっていた。
達也の部屋前に辿り着いて、先ずはノックをしようとするも――
『バカかお前は! そういう問題じゃない!』
「っ!」
扉の奥から怒鳴り声を聞いた瞬間、先程までご機嫌だった深雪は一気に降下して不機嫌となった。
今の声は大変聞き覚えがある。腹違いとは言え、自分達の兄を名乗る忌まわしい存在――隆誠であったから。
その男が怒鳴ったのは、この部屋にいる達也に向かって言ったのだと深雪はすぐに察した。
それと同時に果てしない怒りを覚える。自分が敬愛する兄に向かってバカ呼ばわりしたのだから、そんな愚か者はすぐにでも罰を与えなければならない。
深雪の心情とは余所に、扉の奥ではまだ会話が続いている。
『大丈夫ですよ、義兄さん。それは寧ろ俺としては非常に好都合です。もし本当に各校があの術式をそのまま使うとするなら、万が一の場合でも『安全装置』が機能する筈ですから』
『そんな頓珍漢な返しを聞いて俺が納得すると本気で思ってるなら、お前を愚弟と言わざるを得ないんだが』
(愚、弟……? お兄さまを、愚弟、ですって……?)
隆誠が達也に向かってとんでもない罵倒を浴びせた瞬間、深雪の中の何かがキレた。
いくら腹違いの兄だからって、そんな発言をするなんて絶対許される事ではなかった。寧ろ死んで詫びるべきだ。
自分の敬愛する
対して
(どうやらあの人は、此方が手を出さないのを分かった上で調子に乗っているみたいですね)
今まで達也から決して手を出さないよう言われてずっと我慢していた深雪だったが、先ほどの罵倒を聞いた瞬間に我慢の限界を通り越してしまった。それどころか完全に殺意を抱いている。
本当ならすぐに扉を開けて隆誠を『コキュートス』で氷漬けにしたかった。だがそんな事をすれば達也だけでなく、一高全体に迷惑を掛けてしまう恐れがある。尤も、深雪としては一番の懸念は前者で、後者は割と如何でも良いと思っている。
(まぁ、あんなのでも一応家族なので、殺すのだけは止めておきましょう。その代わり痛い目に遭って貰いますが)
扉の奥で隆誠と達也の会話が行われているが、深雪は全く聞いてないどころか、隆誠を呼び出す算段を立てていた。
すると、話が終わったのか、隆誠が達也の部屋から出ようと扉を開けた。
「あら隆誠さん、お兄さまの部屋にいらしたのですね」
「もう話は済んだから、今から帰るところだよ」
「そうでしたか。ですがお兄さまは今も大変お忙しい身なので、これ以上煩わせることはしないで欲しいですね」
「……ああ、悪かった」
何でも無さそうに振舞っている深雪に、隆誠は何か疑問を抱きつつも謝った後、そのまま去って行った。
(隆誠さん、調子に乗っていられるのは今の内ですよ)
去って行く隆誠の後姿を一瞥した後、深雪は一先ず愛する達也のお世話をしようと部屋に入るのであった。
無理がある展開かと思われるかもしれませんが、深雪には隆誠を完全に怒らせる起爆剤になってもらいます。
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