再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
(達也は……予想通り動いたか)
本戦ミラージ・バットで深雪が優勝した事で、第一高校は総合優勝を決めている。明日予定してる本戦モノリス・コードは既に消化試合となってるが、それを楽しみにしてる観客からすれば如何でもいい事だった。
試合が終わって約一時間が過ぎた後、隆誠は行動を開始しようとする。その際、達也がホテルから出たと探知しただけでなく、
現在、達也が使ってる部屋へ向かっていた。本人がいない事は既に分かってるが、そこには目的の人物がいる為に。
辿り着いた隆誠はノックをすると、数秒後にドアが開く。
「隆誠さん、またですか」
「俺から言わせると、何故君がこの部屋に居座ってるのかが凄く気になるんだが」
ドアを開けたのは達也ではなく、その妹である深雪だった。彼女は隆誠を見た途端、忽ちに不機嫌そうな表情になっていく。
「兄は今お休み中なので、帰って頂けませんか?」
「珍しいな。あの達也が君より先に寝るなんて、ガーディアンとして些か問題だと思うんだが」
部屋にいない筈の達也がいるように振舞っている深雪だが、隆誠はそれに気付いていながらも敢えて騙されてるフリをしていた。
「わたしが許可したのです。貴方は知らないでしょうが、兄はこの九校戦の間ずっと働き詰めでしたから」
「そうか。まぁ技術スタッフとしてだけでなく、予定外のモノリス・コードに参加したのだから、そうなるのは無理もないか」
「そう言うことです。ご理解頂けたのでしたらすぐにお帰り下さい」
達也が先に眠ってる理由に納得するのを見た深雪は、隆誠に早く帰るよう促していた。
しかし、彼は未だに帰ろうとする気配を見せていない。
「なら仕方ない。深雪、君にも話したいことがあるんだが、少しだけ時間をくれないか?」
「わたしにも、ですか?」
突然の事に深雪は更に眉を顰めていた。彼女としては、自分と達也の兄を気取ってる烏滸がましい赤の他人と二人っきりで話すのは嫌だから。
普段なら適当な理由を言って断る筈なのだが――
「………分かりました。ですが知っての通り兄は休んでいますから、別の場所へ行きましょう」
少々考える仕草をした後、深雪は了承の返事をした。
「これは驚いた。君の事だから絶対断るだろうと思ったんだが、一体どう言う心境の変化なのかな?」
「そんなことは如何でも良いでしょう」
いつまでも此処で話すのは不味いと思ったのか、深雪は一旦戻るよう言ってきた。
彼女が指定した場所はホテルの屋上。あそこは今の時間帯だと人はいないから、二人で話すには絶好の場所であった。それを聞いた隆誠は反対することなく頷き、一旦戻る事にした。
(俺を処断する場所を屋上にしたか……)
隆誠は深雪の意図に気付いている。そこで内緒話をするには絶好である他、自分を氷漬けにしても暫くは人目につくことはない事を。
けれど万が一の事もある為、ホテルにいる者達、裾野基地で待機してる軍人達にも感知されないよう特殊な結界を張っておこうと考慮するのであった。
一足先に早く屋上へ着いた隆誠は夜空を眺めながら待っている中、一高の制服を身に纏ってる深雪が来た。
「少しばかり遅くなりました」
態と遅く来たんじゃないかと思うほど待たされた隆誠だったが、全く気にしてないように彼女の方へ視線を向ける。
このホテルには第一高校の生徒達も泊まってる。恐らく屋上へ来る途中で深雪の友人と会って、誤魔化すのに手間取ったかもしれないと考えた。それが例え違っていたとしても、隆誠からすれば準備に充てる時間が出来たので非常に好都合だった。
「それで隆誠さん、わたしにお話とは一体何でしょうか?」
普通なら遅れた事に対する謝罪や理由を言うのだが、深雪はそれを一切せず早速本題に入ろうとした。
自分を嫌っている上に、あんな態度を取るのは当たり前だと分かり切ってるから、隆誠は敢えて気にしないようにしている。そう言う態度を取っていられるのは今の内だと思いながら。
「先ずはミラージ・バット優勝おめでとう。それと同時に、達也が開発した飛行魔法は見事だったよ。流石は天下の『トーラス・シルバー』だと称賛せざるを得ない」
「? ……それはありがとうございます」
優勝を祝福するだけでなく、達也を称賛する隆誠の言葉に深雪は疑問を抱きつつも、取り敢えずと言った感じで受け取る事にした。
「達也や深雪からすれば『大成功』かもしれないけど、俺から言わせれば完全な『大失態』だがな」
「大失態……?」
達也を称賛したかと思えば、急な非難をされたことで深雪は声が低くなっていた。隆誠は全く気付いていないように話を続ける。
「FLT本社にいる父さんや母さんも激怒していたぞ。達也が現在機密扱いしている筈の飛行魔法を無断公開した所為で、会社が再び問い合わせの嵐が来た事で業務停止に陥ってるとな」
「……………」
「それなのにお前達と来たら、FLT本社が酷い状況になってるのを全く考えてないどころか、決勝でも飛行魔法を使い続けて更に情報流出される始末ときた」
「……………」
無言である深雪は顔を伏せたまま隆誠の話を聞いているように思われるが、実際は違う。自分だけでなく、愛する
(ダメよ
隆誠が言ってる最中なのだが、深雪は全く聞いていなかった。
彼女は隆誠を氷の彫像とすることに何の躊躇いも無い。けれど、後で達也が知れば実行するだろう。『再成』を使って彼を元に戻すと言う展開を予想しているから。
達也が使う『再成』は対象を復元する際、エイドスの変更履歴を最大で24時間遡り、外的な要因により損傷を受ける前の状態に戻す。けれどその代償として、負傷した者の味わった苦痛が全て圧縮され、術者である達也が全て負う事になる。それを知ってる深雪としては、達也が『再成』を使って欲しくないと願っている。
それに加えて、その『再成』を使うのが隆誠であれば猶更使って欲しくない。腹違いの兄であっても、深雪からすれば赤の他人である為、そんな男の為に自分の本当の兄に痛みを伴って助けるなど嫌だから。
(せめてわたしでも解除出来るように加減をして――)
自身にそう言い聞かせるように怒りの感情を押し殺そうとする深雪だが、ここで隆誠が引き金を引いてしまった。
「会社の事を全く考えてない深雪や『達也の馬鹿さ加減』に心底呆れるしかなかったよ」
「――――!」
一部分しか聞いてなかったが、ここで深雪が抑えていたモノが完全に切れてしまう瞬間であった。
その直後、彼女の身体から冷気が発した。それどころか、隆誠の両脚が徐々に凍り始めようとしていく。
「深雪、お前……?」
「黙って聞いていれば、わたしだけでは飽き足らず、お兄様までも罵倒するなんて……余程死にたいようですね」
少々驚いた表情をしている隆誠に、顔を上げた深雪は常人が見れば怯えるほどの冷たい表情をしていた。
「貴方がお兄様を称賛して少しは見直したと思っていましたが、どうやらわたしの思い違いのようでした。やはり一度痛い目に遭わせる必要がありそうです」
「お前……自分が何をしているのか、分かっているのか?」
両脚だけでなく下半身も凍り付き、今度は上半身全てを凍らされていく事に必死に止めるよう叫ぶ隆誠。だが、深雪は全く聞く耳持たずだった。
「まだ間に合う。そうでなければ、きっと後悔する事になるぞ」
「後悔するのは貴方です。わたしがどれだけ我慢していたのかを知らないで、よくあんな事が言えましたね」
今の深雪は隆誠に対する殺意だけだった。敬愛する達也を何度も侮辱するのは決して許される事ではないと思いながらも、ここである事を言い出した。
「隆誠さん、もう今後二度とわたし達の前に姿を現さないで下さい。それを誓って頂けるのでしたら、今すぐその氷を解除しましょう」
「何だと?」
いきなりの要求に隆誠が困惑するも、深雪は気にせず更に続ける。
「貴方の言動は正直言って目に余ります。もしこれを叔母様だけでなく、他の分家も知れば決して黙っていないでしょう」
深雪の言う叔母様とは、四葉家当主の『四葉真夜』。隆誠と違って彼女は実の姪である為、そう呼ばれることを許されているのだ。
「……ここで当主殿の名前を出すのは、報告されたくなければ今すぐ誓えと?」
「そういうことです。ご理解が早くて助かります」
深雪が感心するように言ってる中、既に隆誠の身体は頭以外が凍らされて全く動けない状態となっていた。
彼女は気付いていない。非魔法師である隆誠は本来であれば凍らされている事に恐怖して泣き叫んでいる筈が、全く異なる反応を示している事に。
(おかしい。こんな状況で何故この人は冷静に話して――)
と、数秒後に気付くのだが――
「……いやはや、まさかここまで聞く耳持たずとは。つくづく
「あなたを兄と認めたことなど、一度もありません」
隆誠の発言が大変不快だった為、もう聞きたくないと言わんばかりに一瞬で頭も凍らせてしまった。
完全に凍った為、隆誠は既に物言わぬ氷の彫像と化している。
それを確認した深雪は内心やってしまったと後悔していた。戻ってきた達也に事情を説明して、『再成』を使わせなければいけない事に。
「隆誠さん。お兄様が戻って来るまで、暫くそこで反省して下さいね。良い返事を期待しています」
そう言った深雪は踵を返し、一旦屋上を後にしようとするが――
「その必要は無いぞ」
「ッ!?」
凍らせた筈の人物の声が聞こえた為、すぐに足を止める事になった。
深雪を制裁するシーンまで書くつもりが、無駄な会話で少々長引いてしまいました。
いまいちな内容かもしれませんが、次回はちゃんとやる予定です。
感想お待ちしています。