再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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予想外の襲撃と展開

「取り敢えずこんな所、か」

 

 意識を失っている深雪を確認した隆誠は、持ち上げている右手を下ろした。

 

「う、あ……」

 

 仰向けに寝かせた彼女は死んでおらず、小さな呻き声を出しながら虫の息のようにピクピクと動いている。

 

「……馬鹿者が」

 

 そんな彼女に隆誠は兄としてでなく、聖書の神として愚かな行動に走った人間(こども)に侮蔑の眼差しを向けていた。

 

 先ほど深雪を殺すように言っていた彼だが、それは単なる演技に過ぎなかった。元より最初から殺す気など無く、瀕死に近い状態に留めている。

 

 隆誠としては当初ここまでやる気など無かった。本来であれば深雪の『ニブルヘイム』を自力で解いた後、『痛み』を理解させる為に顔を殴り、問答無用で説教する予定でいたのだ。

 

 しかし、その予定が大きく狂ってしまい、仕方なく変更せざるを得ない事態になった。深雪が顔を殴られて怯まなかったどころか、恐ろしい形相に変貌して、隆誠を殺そうと『コキュートス』を放とうとしていたから。

 

 予想外な展開になって隆誠は内心驚きながらも、敢えて止めようとはせず、深雪の気が済むまでやらせることにした。本当に自分を殺す気でいるのかを試そうとする為に。

 

 結果として、彼女は自身の想子(サイオン)を使い切った全力の『コキュートス』を放った。直撃した隆誠は事前に『ニブルヘイム』対策として全身に纏わせた不可視の膜で問題無く防いだが、それとは別に残念な気持ちになった。彼女は自分のやった事を棚に上げて、あたかも隆誠が全部悪いように非難したから。

 

 それを聞いた隆誠は深雪に果てしなく呆れるだけでなく、内心こう言う結論に至ってしまった。『どうやらこの愚妹は痛みや説教だけでなく、一度死ぬ目に遭わせなければ理解出来ないようだ』と。

 

 本当にどこまでも自分勝手な愚妹と思いながら、隆誠は深雪に絶対的な恐怖だけでなく、死の体感として強烈な一撃を与える事にした。今は意識を失って虫の息状態になっているが、当の本人は死んだと勝手に思い込んでいるだろう。

 

「さて、今の内に――ッ!」

 

 神の能力(ちから)を使って深雪を回復させようとする隆誠だったが、突如何かを感じ取ったかのように後ろへ振り向いた。自分に対する禍々しい殺気だけでなく、普通の魔法師とは比べ物にならない想子(サイオン)が此方へ急速に向かって来ている為に。

 

(この想子(サイオン)は……達也か!)

 

 深雪に気を取られてる最中、何者かが接近しているのに今更気付いた隆誠は内心少しばかり反省しながらも、向かって来る対象を改めて認識した。横浜中華街にいる『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』を殲滅しに行っている筈の達也が、真っ直ぐ自分の方へ来ていると。

 

(一体どう言う事だ? 何故アイツは此方の状況を知っている……)

 

 明らかに自分を殺しに来ていると思われる殺気を醸し出している達也に、隆誠の頭の中は疑問だらけになっている。今いるホテルと『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』が拠点(アジト)にしている横浜中華街の距離は結構離れており、いくら精霊の眼(エレメンタル・サイト)があるとは言え、例えどんな早く急いで戻るにしても、どう頑張ったところで一時間は確実に掛かるだろうと踏んでいたから。それを考慮して隆誠はミラージ・バットが終了しても、すぐ深雪に接触しなかった訳である。

 

 隆誠は知らない。達也の精霊の眼(エレメンタル・サイト)がガーディアンとして深雪を常時視ているだけでなく、リアルタイムで此方の状況も知っている事に。もし仮に知っていれば別の対策を取っていたかもしれないが、その情報を知る術が今の彼に無いので、達也が急いで戻ると言う結果はどの道変わらないだろう。

 

(しかし達也の奴、あんなことやって大丈夫なのか?)

 

 達也は空中(そら)で移動している。戦闘機には及ばないとは言え、普通の人間には耐えられない速度で。達也が普段から凄まじい想子(サイオン)量を保有してるとは言え、こうも急激に減少しているのは、恐らく飛行魔法を使っているのだと隆誠は推測した。

 

 あれだけ派手な事をすれば、間違いなく監視カメラは飛行してる達也を捉えているだろう。恐らく真夜、もしくは達也が所属してる軍が秘密裏に処理するかもしれないが、それこそ隆誠の知った事ではない。

 

 達也の行動に思わず呆れている中、此方に辿り着くのに残り数キロになった瞬間に状況が変わった。

 

(ん? 達也の奴、何でもうCADを取り出して……ッ!?)

 

 遠目でありながらも、隆誠の眼には達也の姿を捉えていた。それと同時に彼が拳銃型CADを取り出し、距離が届かない筈なのに何故か銃口を自分に向けた事に疑問を抱くも、突如嫌な予感が走った。深雪の魔法を防ぐために使っていた防御用の膜を展開した瞬間、突如ソレが一部消失する。

 

 完全に消失してはいないが、それでも神の能力(ちから)として展開した膜が削り取られた事で、隆誠の警戒は一層強まる事になった。

 

(今のが『分解』、か。どうやらこの世界の魔法も、存外馬鹿に出来ないようだ)

 

 達也が放った魔法の正体が『分解』だとすぐに判明した。彼の使う魔法は当初知らなかったが、深雪と同様に真夜から教えられている事を補足しておく。

 

 少しばかり驚いている隆誠とは別に、拳銃型CAD『トライデント』で分解魔法を放った達也本人は信じられないほど驚愕していた。情報強化の防壁とは違う何かによって隆誠を守っていると分かった為に。

 

 そして戻ってきた達也はホテル屋上の真上で止まり、そのまま降りて来るかと思いきや、またしても銃口を隆誠に向けている。

 

(アイツ、やはり本気で俺を殺そうと……っておい!)

 

 再び『分解』を撃って来る達也に警戒する隆誠だったが、予想外な事態が起きてしまう。

 

「ガァッッ!!」

 

「なっ!?」

 

 突如、隆誠の影から飛び出した狼犬のフェンが、達也を殺そうと言わんばかりに襲い掛かろうとする。

 

 実を言うと彼女(?)は、深雪が隆誠を氷漬けにした時点からキレてもおかしくない状態だった。大好きな主を害する愚者(みゆき)を殺したい衝動に駆られていたが、本人が余裕であしらっていた為に何とか我慢していた。

 

 しかし、達也が放った『分解』で主が焦っているのを見た事で我慢の限界を超えてしまい、こうして無断で姿を現してしまったと言う訳である。

 

「くっ!」

 

 深雪以外の事で感情を失っている達也も完全に予想外だったのか、焦った表情をしながらもフェンに銃口を向けて始末しようとする。

 

 すぐに精霊の眼(エレメンタル・サイト)でフェンを確認して『分解』を放とうとする達也だが――

 

(バカな! この生物に実体が無いだと!?)

 

 情報が完全に認識出来ない事で放つ事が出来ないでいた。

 

 フェンは元々実態を持たない精霊の他、隆誠こと聖書の神が造った神造精霊獣になっている。神の能力(ちから)も混ざっている事で、達也からしたら未知の存在(アンノウン)である為に情報を得る事が出来なかった。

 

「! しまっ!」

 

 その戸惑いが隙となった所為で、達也はフェンの接近を許してしまい、『トライデント』を持っている片腕を嚙み千切られる事になった。

 

「フェンの奴……!」

 

 自分の為にやったのだと隆誠は勿論分かっているが、それでも迂闊な行動だと思わざるを得なかった。




本当はこのまま隆誠と達也の対面話の展開にするつもりでしたが、フェンが何もしないのはどうかと思って、急遽参加させました。

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