再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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今回の内容は短いですが、分割する事にしました。


達也の末路①

「ここは……!」

 

 先程までいた筈のホテルの屋上から一変して、周囲には草原、その奥には樹海と富士山が達也の眼に映し出されていた。

 

 達也はこの場所を知っている。今いるのは昨日に一高と三高が新人戦モノリス・コードの決勝戦で行った『草原ステージ』だから。

 

(幻術の類ではない。これは……まさか瞬間移動(テレポート)か? バカな、どういう原理だコレは!?)

 

 同時に内心驚愕していた。化成体擬きの狼犬が魔法を使った事に。更には達也の再従妹である(くろ)()亜夜子(あやこ)が扱う『疑似瞬間移動』とは遥かにレベルが違う。

 

 補足として『疑似瞬間移動』とは加重・収束・収束・移動の4工程からなる系統魔法。詳細は割愛するが、その魔法は移動先が事前に察知されてしまう欠点がある。現在の魔法師が扱う瞬間移動に関する魔法は、達也の知る限り、亜夜子以上の使い手は存在しない。

 

 しかし、今それが大きく覆される事になった。隆誠に使役されているフェンが本物の瞬間移動を使い、自分をホテルの屋上から離れている筈の草原へ移動させたのだから。原理は全く分からないが、自身が先月に発表した飛行魔法と同様、現代魔法の歴史を変える瞬間に立ち会ったのは間違いないだろう。

 

 もしフェンの存在が知れ渡れば日本に留まらず、各国の魔法師達も捕獲して調べようとする筈。その主である隆誠も一緒に。

 

「憶えてるだろう、達也。此処は昨日、お前や一高のチームメイト達が優勝を飾ったステージだ」

 

 瞬間移動を初体験した事で思わず考えに沈む達也だったが、目の前にいる隆誠の台詞を耳にした事で即座に思考を切り替えた。同時に彼の傍に居るフェンは何故かいない事に気付く。

 

「何故此処へ?」

 

「お前の相手をするのに丁度良い。それに……お前も深雪を巻き込みたくないだろう?」

 

「……貴方は此処に警備員が配置されてることを知らないんですか?」

 

 この『草原ステージ』は言うまでもなく軍が管理している場所である為、少人数とは言え警備が付くのは至極当然だった。同時に監視カメラも設置されてるから、今頃はそれで自分達の存在を確認した国防軍の魔法師が急いで駆けつけてる筈。達也はそのように考えていた。

 

「警備員は問題ない。ハッタリと思うなら確認してみたらどうだ?」

 

「……ッ!」

 

 精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使って達也は気付いた。自分達がいる草原の周囲が既に異界と化している事に。

 

 異界、と言うのは語弊があった。正しくは広範囲に渡って結界と思わしきモノが張られている。術式は解明出来ていないが、この結界によって外側の状況が全く視えない。

 

「そう、お前の精霊の眼(エレメンタル・サイト)で外側の状況が視えないように、警備員や監視カメラも結界内の俺達の姿を認識出来ない」

 

「こんな結界、一体誰が……まさか!」

 

 達也は気付いた。こんな強力な結界を張ったと思われる犯人が、今この場に姿を現していない狼犬のフェンである事を。

 

 瞬間移動と言う魔法を使える事から、あの狼犬が単なる化成体ではない事は既に察していたが、軍の魔法師やカメラに気付かれない認識阻害魔法と同様の結界を張れることに更に驚愕する。忍術などの古式魔法を扱う達也の師匠『九重八雲』、自身が所属してる独立魔装大隊の隊長『風間玄信』、その二人を遥かに上回る魔法を使える化成体擬きの獣がいるなど最初はすぐに信じる事は出来ないだろう。

 

 現にこうして、外にいる警備員やカメラに気付かれない認識阻害の結界が張られているのは事実であった。

 

(あの狼犬、もしや以前に幹比古が話していた『神霊』なのか?)

 

 達也は古式魔法について専門外だが、友人の吉田幹比古から精霊魔法について教えられた経緯がある。その時には簡単でありながらも『神霊』についても語っていた。

 

 もし此処に幹比古がいてくれたら狼犬の正体が分かるかもしれないが、どちらにしろそれは叶わないだろう。隆誠が四葉家の爪弾き者とは言え、他所の人間に情報を開示する訳にはいかないから。

 

「さて、そろそろ始めるか」

 

 すると、隆誠がそう言った直後に雰囲気が変わった。

 

(あの狼犬がいないのは正直助かった)

 

 構えながらも達也は内心少しばかり安堵していた。フェンが結界を展開している事もあって、自分の相手をするのが隆誠だけである為に。

 

 隆誠とフェンが同時に相手をするとなれば、達也の敗北は確定となっている。自身の最大の武器である『分解』が通じない相手であれば猶更分が悪いのだ。

 

 だが、隆誠一人だけなら何とかなるかもしれないと考えていた。決して油断出来ない相手であっても、あの狼犬と違って隆誠は純粋な人間。いくら魔法師の深雪を倒せる実力を持っているとは言え、身体能力や体術がどんなに優れても、『再成』の派生魔法である『自己修復術式』を持つ自分を絶対に倒しきれない。

 

 その魔法がある事で、達也は一条将輝から圧縮空気弾の直撃を喰らって大怪我しても自動的に修復し、そして優勝に導く事が出来た。

 

 最強の攻撃力を持つ『分解』、どんな攻撃を受けても自動的に修復する『再成』。非常にアンバランスな魔法師でありながらも、達也は規格外な魔法を持っている。

 

(『分解』は通じなくても、『再成』を使い続ければ如何に義兄さんでも――)

 

「達也、先に言っておく」

 

 頭の中で必死に勝機を見出そうとしている達也に、隆誠はまるで遮るように言った。

 

「『再成』がある事を後悔することだ」

 

「……どう言う意味ですか?」

 

 隆誠が何故『再成』を知っているのかを内心疑問を抱きながらも、達也は思わず言葉の真意を訊ねてしまった。

 

「すぐに解るさ。嫌と言うほどに、な」

 

「?」

 

 全く意味が分からない達也は益々不可解になるが――

 

「がっ!」

 

 すると、突然自身の頬に何かが当たった。

 

 余りにも想定外な一撃であった為、達也はそのまま地面に激突しながら後方へ吹っ飛んでしまう。

 

 

【自己修復術式/オートスタート】

 

 

 まともに喰らった所為で達也の頬骨だけでなく、更には首の骨も損傷した為、『自己修復術式』が自動的に発動した。

 

 肉体の修復が完了後、倒れていた達也は即座に立ち上がる。

 

(何だ、今の速さは……!)

 

 攻撃したのが誰なのか既に分かっていた。少し先にいる隆誠が接近し、自身の頬に拳を当てたからだ。

 

 精霊の眼(エレメンタル・サイト)で捉えていたのにも拘わらず、達也は隆誠の接近に一切気付かず攻撃を受けた事に疑問を抱いている。

 

 攻撃をした張本人である隆誠は、途端に拍子抜けしたかのような表情となっていた。

 

「なんだ、お前本当にやる気あるのか。逆鱗に触れたとか言っといて、大したことないじゃないか」

 

「な、に……?」

 

 いきなりの「弱い」という評価に言葉を失う達也。

 

(やはりこの世界の人間では反応しきれない、か)

 

 隆誠は先制攻撃をするついで、実力を測ろうと少しばかり本気でやってみた。

 

 そこは予想していたのか、達也が自分の攻撃に全く反応しきれず直撃する結果となった事に隆誠は落胆している。

 

 だがそれでも、隆誠は簡単に手を緩める事はしない。この草原へ来たのは、圧倒的な実力差を教えるつもりでいるから。

 

「痛みには慣れてるだろう? せいぜい簡単に壊れてくれるなよ」

 

 そう言って隆誠は再び達也に攻撃を仕掛けようと、超スピードを使って迫ろうとする。




達也と戦うと予告しておきながら、やはりそれをやる為の前置きがどうしても必要なんです。

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