再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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達也と深雪の関係

 七月下旬。FLTに所属するトーラス・シルバーが飛行魔法について発表した。

 

 これによって牛山が言った通り、現代魔法の歴史が変わろうとしている。世界各国の魔法界は既に大騒ぎになっており、FLTが問合せの電話が連日鳴り止まない状態だと龍郎や小百合がぼやく程であった。仕事から帰って来ても、また会社に戻らなければいけないループ状態に陥っている。

 

 FLT本社の業務が殆ど滞っている状態の中、肝心の開発者は深雪のガーディアンに専念しようと学校に通っている。今はまだ学生である他、正体がバレてはいけない決まりがあるとは言え、飛行魔法を発表したのであれば多少手伝って欲しいと隆誠は思った。両親が連日泊まり込みが続き精神状態が少々参っている状態である為に。

 

 向こうも事情があるとは言え、FLT本社が大変な状況になってる事を伝える必要があると考えた隆誠は、久しぶりに異母弟と異母妹が住んでる家に足を運ぼうと決意する。

 

 

 

「久しぶりだな、達也」

 

「ええ。こうしてお会いするのは本当に久しぶりですね、義兄(にい)さん」

 

 時刻は夕方。

 

 今日も九校戦に向けての準備をして帰宅してる最中、達也の端末から予想外の人物――司波隆誠から連絡が入った。兄と一緒に帰宅してる深雪も知った瞬間に緊張が走る程だった。

 

 達也と深雪は当然知っている。隆誠は現在義理の母である司波小百合と龍郎の間に出来た実の息子。父親が母の『深夜』と結婚する前に身籠った為、四葉家から『愛人の息子』と蔑まされている。当の本人は全く気にしていないが。

 

 隆誠の存在を耳にしたのは、深夜の死去から半年後に龍郎が小百合と再婚した時だった。自分達より一つ年上の異母兄が知った際、深雪は父親を心の底から嫌悪した。結婚前に愛人と子供を作るのは許される行為じゃないと、その場にいない父親に対して侮蔑の眼差しを向けた程だ。

 

 深雪に対して、達也はある事情によって感傷に縁が無い。あくまで自分に異母兄がいたのは想定外だった、程度の反応しか示していない。

 

 二人が初めて隆誠に会ったのは小百合と龍郎が再婚した翌日以降だった。その時に彼は友好的に接したのだが、少々怖がる深雪を守ろうと前に出る達也と言う光景を目にした事で、余り歓迎されていないようだと瞬時に悟る事となった。それでも時々あっては多少の会話が出来る程度になるも、達也と深雪は相変わらず隆誠に対する警戒を緩めていない。

 

「隆誠さん。兄が今も大変お忙しい中、ここへ来たと言う事は相当重大な案件と思って良いのですね?」

 

 達也の隣に座って隆誠と対面している深雪は用件を伺う。暗に『大した用でなければ帰って下さい』と言ってる事に隆誠は勿論気付いている。

 

 腹違いの兄であっても、彼女は敢えて他人行儀な呼び方をしている。自分の兄は達也だけであり、目の前にいる彼は身内であっても他人同然に過ぎないから。父が結婚前に不埒な行為で生まれた存在だと考えれば猶更に。

 

「一応この家は母さん名義の住所で登録されてるから、息子の俺がここへ帰宅しても何の問題は無い筈だが?」

 

「っ……。これは失礼しました。今の隆誠さんがこの家でなく、会社に近いマンションの方に長く滞在していらっしゃる為、わたしとした事がおかしなことを言ってしまいました」

 

 反論出来ないと諦めた深雪は頭を下げて謝罪した。勿論それは表面上だけに過ぎないが。

 

 隆誠は腹違いの妹が相変わらず自分を嫌っていると既に見抜いている。それを分かっていながらも何とか仲良くしたいと頑張っているが、中々実らないのが現状であった。

 

「まぁそう言うのは無理もないか。この家は実質君たち二人の物で、深雪ちゃんからすれば俺は客人同然だからな」

 

「わ、わたしは別にそこまで言ったつもりは……」

 

「それで義兄さん、本日ここへ来た用件は何ですか?」

 

 自分は身内じゃない言い方をしてる事で深雪が少々焦りながら否定していると、突然達也が割って入るように話を戻そうとした。これ以上の無駄話は不要である他、妹を困らせるような事をして欲しくない為に。

 

 腹違いの弟も相変わらずだなぁと内心苦笑しながらも、隆誠は彼の言う通りにしようと本題に移る事にした。

 

「既に達也も知っての通り、数日前に飛行魔法を公表した事で世界中が今大騒ぎになってる」

 

「それが何か?」

 

「その飛行魔法について日本魔法協会だけでなく、各国のお偉方やCADメーカーが引っ切り無しに問合せの電話やメールを鳴り響かせてる。今のFLT本社はその対応に追われて、もう殆ど業務停止に近い状態だ」

 

「まぁそうでしょうね」

 

 FLTの状況を聞いてる達也が他人事のように頷くも、隆誠は敢えて気にせず話を続ける。

 

「達也、夏休みに入ったら一度FLT本社に顔を出してくれないか? 公表した飛行魔法の情報が表面的なこともあって、本社の人達が詳細な内容を知りたがってるんだ」

 

「情報に関してはCAD開発第三課に全て提供している筈ですが」

 

「そうなんだけど、直接お前から話を聞きたいって強い要望があってな」

 

 両親が仕事から帰ってきた際、大変疲れた状態で愚痴みたく隆誠に会社の状況を教えていた。息子とは言え社員じゃない第三者に教えるのはどうかと思われるが、隆誠が何度もFLT本社に来てる事もあって思わず話してしまうのだ。聞いている隆誠はまるでカウンセラーのように対応してる他、疲れ切った両親の疲れを癒す為に食事などのサポートもしている。龍郎と小百合はそれで毎回元気になってる事もあって、いつも息子に感謝の日々を送るばかりだ。尤も、達也と深雪は隆誠がそのような事をしているのは全く知らないが。

 

「ならば牛山主任に依頼すれば良いでしょう」

 

「『自分はハード面専門なので、ソフト面の話に関しては御曹司に聞いて下さい』だってさ。だからこうして達也に会いに来たんだよ」

 

「残念ながら無理です。今は本社へ行く余裕がありませんので」

 

「何故だ? 達也が忙しいのは知ってるが、夏休みに入ればある程度大丈夫な筈だろう」

 

 隆誠は達也が国立魔法大学付属第一高等学校(通称:一高)に入学してる事を知っており、夏休みの期間も調べ上げていた。加えて彼が四葉家として深雪のガーディアンを務めており、とある軍に所属してる事も当然知っている。多忙な身である事は重々承知してるが、夏休みに入ればある程度時間に余裕が出来るだろうと思って、隆誠はこうして達也にFLT本社に来て欲しいと頼んでいた。達也と深雪は嫌っていても、自分の大事な両親の負担を減らして欲しい為に。

 

「多分義兄さんは知らないと思いますが、俺と深雪は八月に予定してる九校戦に向けての準備をしてる最中です」

 

「は? 九校戦って……二人ともアレに出るのか?」

 

「ええ。俺が技術スタッフ、深雪は選手としてです」

 

 達也からの情報に隆誠は目が点になった。初めて聞いただけでなく、達也が出場するのが予想外であったから。

 

 全国に九つある魔法科高校の生徒が行う大イベントのスポーツ系魔法競技『九校戦』。隆誠は勿論知ってるが然して興味無かった。魔法を使う競技とは言っても、隆誠からすればお遊び同然の内容であった為、人気ある大イベントであっても観ようとまで思っていない。

 

 けれど達也と深雪が九校戦に出場すると聞けば話は別だった。隆誠と違って四葉真夜の庇護を受けてる身だから、下手に顔を晒したら不味い事になるのではないかと隆誠は危惧している。弟は魔工技師で有名なトーラス・シルバー、妹は優れた容姿と魔法力を持つ四葉直系の娘。この二人が九校戦に出場すれば大活躍すること間違いない。

 

「……当主殿は何も言わなかったのか? 俺はてっきり出場しないと思っていたんだが」

 

「!」

 

 隆誠が言う当主殿とは四葉家当主『四葉真夜』の事を指している。それを口にした直後、深雪は身体を強張らせていたが敢えて無視していた。

 

 四葉家は目立つ行動を嫌う為、決して表舞台に出てはいけない事になっている。一切の素性を隠して表舞台に出るのは別に問題無いのだが、達也と深雪の場合、加減を誤ってどこかでヘマするんじゃないかと隆誠はそう予想していた。

 

「大丈夫です。もし叔母上からのお達しがあれば、俺と深雪は今頃こうして九校戦の準備はしてませんから」

 

「……あ、そう」

 

 真夜が二人に何も言わないと言う事は二人の九校戦参加を認めている事になる。隆誠はそう察した。

 

「だから本社に顔を出す暇がない、か」

 

「そう言う事です。これでご理解頂けましたか?」

 

 深雪と違って達也は子供染みた理由で隆誠を忌避してないが、余りこの家にいて欲しくないと思っている。腹違いの兄とは言え、素性が全く分からない存在を深雪の近くにいて欲しくないから。

 

 達也は深雪を守るガーディアンとしての任務を果たす際、初めて会う人物と対面する時に精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使って危険でないかを確認する癖がある。端から見れば完全にプライバシーの侵害行為だが、達也はある事情で人としての倫理観(かんじょう)を失ってるから全く気にしてない。

 

 そうしている中、隆誠と初めて会っていつものように精霊の眼(エレメンタル・サイト)で視るも、彼に関する情報が何一つ判明出来なかった。今も密かに精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使っても全く掴めていない。普通ならここで問題無いと判断すべきなんだが、達也は全然そう考えていなかった。寧ろ逆で最大限に警戒すべき人物だと見ている。

 

 龍郎は規格外の想子(サイオン)量を保有し、後妻の小百合は魔法師でなくてもある程度の魔法技能を持っている。そんな二人の間に生まれた隆誠は想子(サイオン)を大して保有してないどころか、魔法師としての因子が何一つ存在しない。魔法の才能が全く無い一般人であっても、両親から何一つ受け継がれないのはおかしいと達也は考察していた。他にも様々な疑問があるが、とにかく隆誠は普通の人間とは何かが違うと認識している。そんな得体の知れない人物を警戒するのは、ガーディアンとして至極当然であった。

 

「……はぁっ、分かったよ。当主殿が認めてるなら仕方ない」

 

 此処で下手に達也をFLT本社に顔を出すように強要して真夜の耳に入れば、絶対面倒な事になるのが容易に隆誠は想像出来た。そうなれば自分だけでなく、両親にも被害が及ぶかもしれないから引き下がるしかない。これ以上話しても無駄だと諦めるように立ち上がろうとする。

 

 隆誠が帰ると分かった達也は内心安堵しながらも、一応の礼儀として玄関まで付き添う。深雪はリビングから出ようとせず、隆誠が出て行くのをそのまま見届けたまま。

 

「悪かったな、達也。いきなり押し掛けたどころか、無理を言ってしまって」

 

「いえ、お気になさらず」

 

 謝罪を受け取った達也は深雪に代わって慇懃に一礼した。

 

 それを見た隆誠は玄関の扉の開けて――

 

「あ、そうだ。言い忘れてたが」

 

「?」

 

「確か『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』だったか。会う度にその眼で人を『視』るのはいい加減止めてくれ。俺が得体の知れない身内だからって、不躾にも程があるぞ」

 

「ッ!」

 

 そう忠告した後、突如目を見開く達也を見ないまま去っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

「全く、あの人(・・・)や四葉家は一体何考えてんだか」

 

 自宅(マンションの方)へ戻った隆誠は、自分の部屋に入って早々独り言ちていた。

 

 知っての通り彼は四葉家を嫌っている。自分達が両親に対して行った所業に対して何一つ悪びれる様子を見せないどころか、挙句の果てには汚点みたいな扱いをされる始末。人間とは思えない厚顔無恥な振る舞いに、隆誠こと聖書の神は四葉家に対する評価は既にマイナスを通り越している。いっそ一度滅ぼした方が良いんじゃないかと考えるが、それはあくまで隆誠個人の考えに過ぎないから実行に移す事は出来ない。

 

 四葉家は十師族の中で最も悪名高いが、日本魔法会にとって必要な存在。世界各国からも恐れられてる事もあって、日本の守護者同然の扱いをされている。その為に四葉がどんな悪行に手を染めても、周囲は一切手を出さず敢えて黙認するしかなかった。隆誠からすると権力者(こども)の我儘に振り回されてるようにしか見えないが、当の本人がその関係者である為に大変複雑な心境だが。

 

 隆誠が如何にか懲らしめる機会がないかと考えてる中、突如リビングの方から電話の音が鳴った。龍郎と小百合は今日もFLT本社で泊まり込みの残業に追われている為、今この家にいるのは隆誠だけしかいない。

 

 両親であれば隆誠が持っている携帯端末から連絡が入るので、今回は間違いなく第三者の電話だった。学校の友人や知人も同様に。

 

 一体誰だと疑問に思いながらリビングへ足を運び、隆誠は設置しているテレビの通話をオンにする。直後、画面には予想外の人物が映し出されていた。

 

『久しぶりね、隆誠さん。確か以前も(・・・)こんな感じでお会いしたかしら』

 

「………相変わらず(・・・・・)なご登場ですね、真夜さん」

 

 四葉家当主の真夜が笑みを浮かべた挨拶をするのに対し、隆誠は少々驚きながらも軽口で返した。この光景は両親だけでなく、そして達也と深雪も含めた四葉家の関係者が見れば絶対仰天しているだろう。

 

 どちらも立場上会う機会が絶対無いにも拘わらず、二人はまるで年の離れた友人のように話している。




本当は達也も「隆誠さん」にしようかと思いましたが、それだと深雪と被るので「義兄さん」にしました。

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