再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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今回はちょっと四苦八苦しました。


達也の末路③+とある老人との出会い

「あ、あ……あああっ!」

 

 今まで視えていた筈の精霊の眼(エレメンタル・サイト)が、突如遮断されて達也の様子がおかしくなっている。今までどのような事態になろうとも常に冷静でいる筈の弟が、まるで人が変わったように酷く狼狽していた。

 

「そ、そんな、何故急に、視えなく……!」

 

「常々鬱陶しかったんでな。悪いがその『眼』は使えなくしといたよ」

 

 達也の狼狽を視ている隆誠は内心少しばかり驚いていた。先程までどんなに痛めつけても一切感情を表さなかったのに、眼を封印しただけで激変するとは思いもしなかったから。

 

「まぁどちらにしろ、俺には無意味だがな」

 

 もしも精霊の眼(エレメンタル・サイト)を封印せず、達也が小規模な威力程度の『質量爆散(マテリアル・バースト)』を発動させたところで、結局のところ隆誠には通用しない。それでも多少は不意を突かれたかのように驚くかもしれないが、深雪の『コキュートス』を防いだ時のように、出力を上げた不可視の膜を全身に纏わせればノーダメージで済む。本人は無事でも周囲の地形が激変する他、結界を張らせているフェンに少々迷惑を掛けてしまうが。要するに『無駄な努力』と言う結果になるだけに過ぎない。

 

 隆誠が『質量爆散(マテリアル・バースト)』を知らないとは言っても、それを阻止したのは却って正解であった。万が一に急な爆発でフェンの結界に異常がきたし、それが外に漏れてしまう事になれば確実に大騒ぎになっていた。加えて今いる場所は軍が管理しており、此処で達也が戦略級魔法を使用したと判明すれば相当不味い事になっていただろう。当の本人は、そんな大惨事を防いだことに全く気付いていないが。

 

「お前には暫くそのまま……って、あれ?」

 

「み、深雪が、深雪の姿が……!」

 

 達也は全く聞いておらず、未だに狼狽しているままだった。

 

 彼がこうなっているのには理由がある。精霊の眼(エレメンタル・サイト)で常に視ている深雪の姿が遮断されてしまった事で、徐々に気が狂い始めているのだ。

 

 達也はどんなに遠く離れていても、精霊の眼(エレメンタル・サイト)を通じて妹を視ている。何かあればいつでも駆け付ける事が出来るようにする為、と言うガーディアンとして当然かもしれないが、実際そんな理由ではない。これはあくまで達也の感情的な(・・・・)問題なのだ。

 

 あらゆる感情を失ってしまったことで、彼に残されたのは深雪の愛情のみ。それが達也の生きる目的としての原動力と言っても過言ではない。深雪と言う存在がいる事で、どんな理不尽な目にあっても冷静でいられるのだ。

 

 けれど隆誠によって急に『眼』を離されてしまった事で不安になるどころか、こうして段々気が狂い始めている訳であった。一刻も早く深雪の無事を確認しない限り、達也は元に戻る事が出来ないだろう。

 

「おい、聞いてるのか?」

 

「ダメだ! 何度やっても、深雪の姿が視えない……!」

 

 再度話しかける隆誠に、達也は全く耳を傾けずに何度も精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使い続けている。封印されている事に全く気付いておらず、何度も試みては失敗の連続を繰り返している状態だった。

 

「い、今すぐ、今すぐに深雪の元へ……ッ!」

 

「何処へ行く?」

 

 眼が視えないと漸く理解したのか、達也はこの場から退散しようとするも、瞬時に隆誠が回り込んで阻止した。

 

「逃げられると思っているのか?」

 

「黙れ!」

 

 漸く隆誠を見る達也だが、まるで如何でもいいように再度向きを変えて走り去ろうとする。

 

 余りにも達也らしくない行動を取っている事に、隆誠は不思議そうに目を細めながらも――

 

「話にならんな」

 

「ごっ!」

 

 またしても一瞬で回り込んだ後、今度はさっきと違って彼の腹部に拳を当てた。

 

 強烈な一撃を受けた事により達也は動きを止めて、そのまま意識を失い倒れていく。

 

「……? おい、どうした」

 

 隆誠が声を掛けても反応しなかった。

 

 達也の異変にはとっくに気付いてるが、『再成』を何故使わないのかが全く分からないのだ。

 

 改めて倒れている彼の様子を確認すると、完全に意識を失っていると漸く判明する。同時に『再成』が発動してない事で、腹部と内臓の損傷が酷い事も含めて。

 

(どう言う事だ。俺は『眼』を封印しただけなのに、どうして『再成』が発動しない?)

 

 彼がその気になれば精霊の眼(エレメンタル・サイト)だけでなく、達也の扱う『分解』や『再成』も封印する事が出来る。更には魔法師にとって、魔法の源である『想子(サイオン)』すらも使用不能状態にする事も可能だ。

 

 けれど今回やったのは『眼』だけであり、『再成』まで封印した憶えはない。意識を失うならまだしも、今まで必ず発動していた復元魔法が発動しない事に隆誠は疑問視している。

 

(いっそのこと、調べてみるか)

 

 考えたところで答えが分からない為、隆誠はそう決断した。神の能力(ちから)を使って、達也の頭の中にある情報を視てみようと。

 

 自分を殺そうとしていたとは言っても、腹違いの弟、益してや四葉家の秘密を暴く事に少しばかり気が引けるが、それはもう今更だった。これまで好き勝手に振舞っていた愚弟(たつや)愚妹(みゆき)に散々振り回された身ので、隆誠からすればもう知った事ではない。

 

(流石は四葉家、と言うべきか。だが……)

 

 精神干渉系魔法を得意とする四葉家だからか、達也の頭の中を探られない為の措置が何重にも施されていた。そこら辺の魔法師なら暴く事が出来ずに諦めてしまうかもしれないが、隆誠こと聖書の神には無意味なモノに過ぎなかった。それを簡単にすり抜け、対象の情報(かこ)を引き出そうとする。

 

(……成程、そう言うことか)

 

 達也の情報を全て引き出した数分後、隆誠は納得した。精霊の眼(エレメンタル・サイト)を封印した事で、『分解』と『再成』が使えなくなってしまう事を。

 

(けど、コッチの方はあんまり知りたくなかった……!)

 

 同時に達也が豹変した理由も判明した事でゲンナリしている。精霊の眼(エレメンタル・サイト)のリソースの半分を深雪に割り当ててる事で、彼女を常時『視』ていると言う弟のストーカー的な行動を取っている為に。

 

 隆誠は思わず前世(むかし)の頃に戦った『ラディガン・アルスランド』と言う変態兄を思い出してしまうも、それはすぐに忘れることにした。自分の弟がアレと同類かもしれないと考えるだけで、身の毛がよだってしまいそうになるから。

 

「……はぁっ、ホテルに戻るか」

 

 達也が意識を失った以上、もう此処にいる必要はない。例え無理矢理目覚めさせたところで話し合いに応じないどころか、また自分を無視して深雪の元へ向かおうとするのが目に見えている為に。

 

 一先ず怪我だけは治してやろうと隆誠は能力(ちから)を使った後、意識を失ってる達也を担いだ。

 

「フェン。俺が転移した後、お前は結界を解いて部屋で待機するように。いいな?」

 

 ――ワンッ!

 

 隆誠が空に向かって言うと、フェンは念話で頷いた。

 

 大変元気の良い返事を聞いた隆誠は苦笑しながらも、転移術を使って姿を消す。ホテルの屋上で今も眠っている深雪を回収しにいく為に。

 

 

 

 

 

「ん? 深雪がいない」

 

 転移術を使ってホテルの屋上へ戻るも、此処にいる筈の深雪の姿が無かった。

 

 隆誠は草原で達也の相手をしていただけでなく、フェンも結界を張っていた事も重なった所為で、深雪が独立魔装大隊によって運び込まれたのに気付いていない。

 

(やはり一緒に連れて行くべきだったか)

 

 深雪を連れて行けば、万が一に達也との戦闘で被害が被るかもしれないと思って放置したのが仇となったようだ。

 

 誰が発見したのかは未だ分からないにしても、少しばかり面倒だと隆誠は危惧する。

 

 誰もいない以上、達也を部屋に置いていこうと再び転移術を使おうとする直前、目の前にある扉が突然開いた。そこからは老人らしき人物が此方へ向かって来る。

 

「急に屋上から妙な反応があったので来てみれば……これは一体どう言う状況かね?」

 

「貴方は……」

 

 隆誠が魔法師じゃなくても、自分に話しかけてくる老人の事を知っていた。

 

 総白髪を綺麗に撫でつけ、スリーピース・スーツを隙無く着こなしている老人――九島烈を。




老人との出会いは、兵藤隆誠が世話になっている九島烈でした。

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