再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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九校戦編のエピローグとなります。


その後

 九校戦は第一高校の優勝で飾った事で幕を閉じた。達也の監視を終えた隆誠は、用が済んだと言わんばかりに会場を後にしている。

 

 再会したフェンと別れるつもりだったが、一緒にいたいと強請られてしまい、暫くの間は隆誠の護衛役として許可を出す事となった。家にいる時は影に潜ませる、または透明化してもらう事になるが。

 

 そして約一週間ぶりに自宅へ戻り、両親の龍郎と小百合が待っていたように息子を歓迎した。会場で買ってきたお土産を出しながら仕事は大丈夫なのかと聞いた際、二人は今もFLTが大変な状態だと恨み節のように愚痴っており、聞いていた隆誠は苦笑せざるを得ない状態だと悟る。

 

 その元凶となる達也と深雪は、自分の説得で会社へ来ると言う結果を伝えた瞬間――

 

『会社に来たら覚悟しておくことね……!』

 

 小百合がまるで怨念染みたような言い方と雰囲気を醸し出していた事で、隆誠と龍郎が余りの怖さに少々後ずさったとか。

 

 

 

 二日後、達也と深雪は約束通りFLT本社へ出頭した。二人を連れてきたという意味合いも兼ねて、隆誠も一緒に来ている。

 

 達也と深雪は深く頭を下げて謝罪するも、大勢いるFLT社員達の中から多くの罵声が飛んだのは言うまでもなかった。

 

 何の相談もせずに飛行魔法を九校戦で披露した挙句、CADを大会委員会や各校に術式を提供による情報流出。その所為でFLT全体は問い合わせの嵐となり、殆どが業務停止状態に陥りかけた。対応に追われた社員達が達也に怒りをぶつけたいのは当然と言えよう。

 

 それらの恨み辛みをぶつけられた達也と深雪は、一切反論する事無く甘んじて受け入れる姿勢だった。隆誠からの脅しによって、そうせざるを得ないのだ。

 

 達也は隆誠に『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』を封印されたが、今は解除されて問題無く使える状態になっている。だがそれはあくまで深雪を『視る』だけのリソースを解放しただけに過ぎない。そうしなければ、まともに会話する事が出来なかった為に。それでも『分解』や『再成』が使えない状態なので、残りのリソースを解除するには、残った夏休みでFLT本社に誠心誠意尽くせば完全に解除すると約束。もし応じなければ精霊の眼(エレメンタル・サイト)を完全封印すると言う脅し付きで。自身の最大武器である魔法が使えなければガーディアンとして失格なので、達也は完全に折れる、と言うより従うしかなかった。

 

 次に深雪だが、隆誠が想定していたとは別にすんなりと従ってくれた。最初は自分が敬愛する兄を強制的に従わせる光景を見せられた事で激昂しそうになるも、ホテルの屋上で殺されかけたのが相当なトラウマになったらしい。隆誠に軽く睨まれただけで、その時の光景がフラッシュバックして軽い錯乱状態になった程だ。これは『再成』でも治す事は出来ないが、達也が傍に居た事で事無きを得ている。隆誠なら神の能力(ちから)を使って癒す事は可能だが、当の本人はその気が全く無い。それどころか心を鬼にして、『お前にもう次は無いからな』と警告をした。それを聞いた事で彼女は今度こそ容赦なく殺されると完全に理解し、達也と同様に恭順の姿勢を示すしかないのであった。

 

 それによって達也と深雪は、FLTの社員達からの罵声に一切反論する事無く受け入れている訳である。

 

 本来なら『トーラス・シルバー』として所属してる達也は懲戒免職になってもおかしくないが、優秀な人材を手放せるほどFLTに余裕が無いのが実状だった。仮にそんな事をすれば、達也を慕っているCAD開発第三課主任の牛山(うしやま)(きん)()やその部下達も一斉退職するだろうから、猶更そうさせる訳にはいかない。よって達也には夏休みが終わるまで、可能な限り滞っていた業務をフォローしてもらう事になった。

 

 周囲から睨まれながらも淡々と業務を行う達也、その彼を補佐する深雪や牛山達が全力で後押しをする事によって、今まで滞っていた業務が嘘のように解消されていく。達也こと『トーラス・シルバー』が如何に優秀であるかを、龍郎を含めた社員達は改めて認識するのであった。

 

 達也がFLTで精力的に業務を手伝っている最中、隆誠は再び泊りがけの遠出をしていた。ある人物からの呼び出しによって。

 

 

 

 

 

 

「一応貴女とは初対面なので、挨拶をした方が良いですか?」

 

「ふふふ、ここではそんな堅苦しい作法を行う必要なんかありませんよ」

 

 取り繕うように訊ねる隆誠に、目の前にいる女性――四葉真夜は不要と言い切った。

 

 此処は四葉家本宅であり、真夜がプライベートルームとして利用している書斎。彼女以外に入った事があるのは一部を除いて葉山のみで、この部屋に入ることを許されたのは、隆誠が二人目である。達也達だけでなく、分家が知れば絶叫するのは確かだろう。

 

 隆誠と真夜は背もたれの高い椅子に座って対面しており、その間に葉山が二人に飲み物を用意している。

 

 彼が此処にいる理由は、真夜から呼び出しをされたからだ。九校戦が終了する前夜、諸事情で深雪と達也の二人と戦って圧勝した事を報告した直後、何故か時が止まった。正確には聞いていた真夜と葉山が、石のように固まったと言うべきだろう。

 

 深雪はともかく、『分解』と『再成』を扱える達也に圧勝するなど、最初は一体何の冗談かと思っていた。隆誠が嘘を吐いていないのは分かっているのだが、真夜は取り敢えずと言った感じで監視の任を解く事にした。

 

 改めて達也から直接事情を聞いた事で、本当だったのだと危うく再び固まりそうになるも、四葉家当主として無様な姿は見せられないと何とか堪えていた。話し終えた後に暫し放心する事になったが、そこは敢えて省略しておく。

 

 真夜は隆誠が普通の人間とは何かが違うだけでなく、相当な実力者なのは知っていた。けれどまさか、あの達也にすら圧勝できるのは本当に予想外で、頭の中がパンク状態に陥る程であった。一緒に聞いていた葉山も含めて。

 

 その結果、少々危険を覚悟の上で直接話そうと隆誠を本宅へ呼び出したのだ。だが流石に応接室で話す訳にはいかない為、一切邪魔が入らないプライベートルームである書斎へ案内したという訳である。

 

 今は先日の九校戦について話していたが、ここで漸く本題に移ろうとする。

 

「それにしても驚きましたわ。まさか隆誠さんが、あの達也さんを圧倒出来るほどの実力をお持ちだったなんて」

 

 葉山が用意したハーブティーを飲みながら、まるで称賛するように言う真夜。

 

「しかも化成体らしき狼犬を飼っているだけでなく、達也さんの『眼』を封じる手段もあるなんて、一体どうやって手に入れたのかしら?」

 

 隆誠が予想していた通り、真夜は達也から聞いたようだ。神造精霊獣(フェン)の存在や、『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』を封じられる事を。

 

「逆に問いますが、貴女はそれを聞いてどうするつもりですか?」

 

 隆誠も葉山が用意してくれたブラックコーヒーを飲みながら、真夜からの問いを問いで返した。

 

 無礼な振る舞いだとは分かっていながらも、隆誠は返答を待っている。彼女の返答次第では状況が大きく変わってしまう為に。

 

「別にどうもしませんわ。ただ単に私の個人的な好奇心として聞いただけですから」

 

「……どうやら早とちりをしてしまったみたいですね」

 

 真夜の返答に嘘は無いと分かった隆誠は、取り敢えず(表面上の)謝罪をした。

 

 四葉家当主にこんな試すような問いをするなど無礼極まりないのだが、当の本人は全く気にした様子を微塵も見せていない。寧ろ、楽しんでいるような感じがしていた。

 

「まぁお二人が石みたいに固まるほどでしたから、聞きたいのは無理もありませんが」

 

「隆誠さん、出来ればそこは触れないでくれますか?」

 

「………………」

 

 真夜が途端に痛い所を突かれたかのように、少々頬を赤らめながら指摘をしてきた。一緒に聞いている葉山も同様なのか、口には出さずとも目が物凄く訴えている。

 

 意外な一面を見せてくれる二人に、隆誠は内心少々驚きながらも、これ以上弄るのは止めておくことにした。

 

 すると、真夜は話題を変える為か、一度咳払いをしてきた。その直後に、先程までとは全く違う表情になる。

 

「戯れはここまでにして、そろそろ本題に入るとしましょう」

 

「……それは俺の今後についてですか?」

 

「ええ、そうです」

 

 未知の実力を持ち、達也を圧倒出来る存在がいると分かった以上、完全に放置する事は出来なくなっていた。

 

 もしも隆誠が他の十師族、もしくは四葉に敵対する勢力に与したら、間違いなく多大な損失と被害を齎す事になるだろう。そうなると真夜が望む世界に対する復讐が水の泡となってしまい兼ねないから。

 

「隆誠さん、貴方が今も四葉家を恨んでいる事は知っています。確認ですが、貴方はいずれ四葉家を滅ぼそうと考えていますか?」 

 

「!」

 

 余りにも直球過ぎる問いに、葉山は思わず目を見開いていた。

 

 それを聞いた隆誠は――

 

「全く無いと言えば嘘になりますが、今のところ(・・・・・)は考えていません」

 

 心底如何でもいいように返答した。

 

今のところ(・・・・・)は、ねぇ」

 

 彼の気分次第で四葉家を滅ぼす事が出来るのだと、真夜はそういう風に解釈した。

 

 一先ずは大丈夫であっても油断出来ない為、彼女は次の手を打とうとする。

 

「隆誠さん、もしあなたが宜しければ――深雪さんに代わって、次の四葉家当主になってくれるかしら?」

 

「………は?」

 

 余りにも順序をすっ飛ばし過ぎた真夜からの提案に、隆誠は目が点になるのであった。




取り敢えずIFシリーズは一旦終了とさせて頂きます。

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