再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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横浜事変開始

 西暦2095年10月30日

 

 

 

 見舞いから一週間経ち、隆誠の後輩は襲撃者が警察に逮捕されたと聞いて安堵しながらも、未だに入院生活を送っていた。

 

 それとは別に、隆誠は所用で横浜へ訪れていた。普段利用してるバイクのメンテナンスをする為に。

 

 隆誠が乗っているバイクは父親の龍郎が入学祝いで贈ってくれた際、横浜にあるバイクショップを経営してる顔見知りのオーナーに頼んだ特注品だと知った。メンテナンスをする時は製造元の店でやるように言われてる為、隆誠はそれをする為に横浜へ来ているのだ。

 

 半年に一度行うメンテナンスの日だから、予約時間となってる昼過ぎに店へ訪れた。オーナーにバイクのメンテナンスの時間を確認して、完了するには数時間掛かると言われた為、自身の影に潜ませてる狼犬(フェン)の散歩をしようと散策する事にした。勿論人の目に触れないように透明化をさせた状態で。

 

(フェン、散歩は楽しいか?)

 

 ――ワンッ!

 

 隆誠からの問いにフェンは元気良く答えた。周囲の人間には見えなくとも、隆誠だけはフェンがご機嫌な表情をしているのが分かっている。

 

 狼犬と言っても、元々精霊に散歩の必要は無い。フェンもそれは当然理解しており、主から待機と命令されれば忠実に待ち続けるだろう。しかしその隆誠から散歩をしようと言われた事で、今は大変嬉しい気持ちになっている。傍に居るのとは別に、一緒に歩いて行動するのも楽しみの一つである為に。

 

(そう言えば今日は確か、『論文コンペ』を行う日だったな)

 

 嬉しそうに歩いてるフェンとは別に、隆誠は別の事を考えていた。魔法科高校が主体となっているイベントについて。

 

 論文コンペ。正式名称は『全国高校生魔法学論文コンペティション』。日本魔法協会主催で行われ、魔法学、魔法工学の研究成果を大学、企業、研究機関などに向けて発表する場である。毎年10月の最終日曜日に開催され、会場は横浜と京都で交互に行われており、今年の開催地が横浜となっている。

 

 参加資格は魔法科高校からの推薦を受けた者、論文の予備選考を通過した高校生グループ。しかし過去に非推薦枠からプレゼンに進出した例が未だに無い為、実質は魔法科高校が主体とした論文コンペと呼ばれているのが現状だ。

 

 隆誠が論文コンペの存在を知ってるのは、簡単ながらも両親から聞いたからだ。FLTはCADメーカーだが、元々魔法工学部品メーカーとして活動している会社でもあるから、論文コンペに興味を抱いている社員も当然いる。だが今年は仕事の都合上、並びにFLTが興味を引く内容が無かった為に不参加らしい。

 

 魔法科高校の生徒や研究者でもない隆誠としては、論文コンペに全く興味が無い。それどころか会場に行く気など皆無なのだが、一つ気になっている事がある。

 

(一高では達也も参加するらしいが……)

 

 達也が九校戦でやらかした件もあって、隆誠は万が一の場合を考えて独自に調べた。と言っても公式サイトの情報を見たり、達也本人から聞いたぐらいだが。

 

 第一高校が発表する内容は、公式サイトで『重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性』になっている。トーラス・シルバーの達也なら興味が引く内容かもしれないが、本人に聞いたところ考案者は学校の先輩との事だ。

 

 参加する達也に何をするのかと訊いたところ、自分はあくまで補助(サブ)に徹するだけと言う返答だった。それを聞いた隆誠はいまいち信用出来なかった為、向こうに気付かれないよう神の能力(ちから)を使って頭の中を読んでみた。その結果、『嘘は吐いてない』と判明したので内心安堵する。

 

 弟の言うことを信用出来ずに頭の中を探るのは色々問題なのだが、それはもう今更だった。達也は初めて隆誠と会って以降から精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使って何度も勝手に視ていただけでなく、両親に迷惑を掛けるなと兄から念押しされたにも拘わらず裏切り行為を働いた等の前科があるから、簡単に信用する事が出来ない。偏に非常識な行動を取り続けた達也の自業自得なので、隆誠がすぐに疑ってしまうのは無理もなかった。

 

 因みに今回の論文コンペについて四葉真夜からの指令は無い。電話すらしてないのを察するに、達也の監視は必要無いと隆誠は考えていた。同時に彼女も独自に調べた際、今回の論文コンペで達也個人が派手な成果を出す事は無いだろうと判断したに違いないと思いながら。

 

(けどアイツよりも……)

 

 達也については問題無いだろうと結論を出した隆誠は、他の懸念について考え始めようとする。日本に密入国した大亜連合特殊部隊について。

 

 先週の日曜日に後輩の見舞いで病院へ行った際、犯罪行為を犯した暴漢は警察に逮捕された。その後に隆誠は千葉修次より、その人物の正体を聞いた。倒した相手は(ルゥ)剛虎(ガンフウ)で、『人食い虎』の異名を取る大亜連合本国軍特殊工作部隊の凶暴な魔法師だと。そんな恐ろしい人物を隆誠が初見でありながらも一撃で倒したから、修次に今以上の関心を寄せる結果になるのは当然と言えよう。その所為で一緒にいた渡辺摩利は剣に関してだと分かっても、まるで自分の恋人が取られたかのように物凄く不機嫌と同時に複雑な気持ちになっているが。

 

 前にフェンが追跡した際に拠点と思われる場所を発見したから、改めてもう一度調査を命じた結果、そこは既にもぬけの殻になっていた。まるで交戦したかのように室内が荒れていた為、連中が拘束されたかもしれないと隆誠は考えた。今まで自分の監視用として放っていた化成体も消えたのが、何よりの証拠であった。

 

 普通ならこれで解決したと安堵すべきなのだが、隆誠は逆にまだ終わってないと考えている。

 

 そもそも大亜連合特殊部隊は一体どうやって密入国したのだろうか。国際法に反する手段を使ったのだから、それが出来る協力者のお陰で潜伏出来ている。だからいくら部隊を拘束したところで、協力者がいる限り新たな人員を送り込んでくるだろうから、完全な解決にはならない。

 

 あくまで隆誠の個人的な考えに過ぎないが、その協力者は横浜中華街に潜んでいるんじゃないかと予想している。大亜連合は嘗ての中国だから、横浜中華街が思いっきり関係しているのは明白だ。

 

(まぁ俺が彼是考えたところで結局無意味だが、な)

 

 ――クゥン?

 

 隆誠が深く考え込んでしまった所為で、透明化になってるフェンは心配そうに声を掛けた。

 

 本当なら頭を撫でたいところだが、それをやってしまえば周囲から変な目で見られるため、念話で『大丈夫だ』としか言えない。

 

 一先ずはフェンの散歩に集中しようと思考を切り替えながら歩いている中、突如どこからか大きな爆発音が聞こえた。

 

「何だ、今の爆発は?」

 

 思わず声に出してしまう隆誠だが、周囲にいる市民達も何だ何だと騒ぎ立てていく。

 

 先ほどの爆発が合図であったかのように、数分後には武装したゲリラと思わしき集団がチラホラと見え始める。

 

 

「うわぁぁぁ!」

 

「に、逃げろぉぉぉ!」

 

「誰か~~!」

 

 

 ゲリラ達は此方へ銃口を向けた事で、隆誠の近くにいた市民達は恐慌して逃げていく。

 

(これは、あの時と同じ……!)

 

 隆誠は思わず過去を(そう)()する。三年前の夏、佐渡島で新ソ連が侵攻してきた『佐渡侵攻事件』を。

 

 目の前にいるゲリラ達が、新ソ連の兵士達と同様に一般市民に銃を向けて発砲していた。侵攻とは言え、無力な人間を平然と殺そうとする事に隆誠は怒りが湧こうとする。

 

「愚か者共が……!」

 

 隆誠は以前見付からないように隠れるか、もしくは転移術を使って戻ろうかと悩んでいたが、今回は即座に却下して迎撃する事にした。

 

 ゲリラが手にしてる武装を一旦無力化しようと、隆誠は右手でパチンッと鳴らした瞬間――

 

 

「うわっ!」

 

「な、何だ!?」

 

「いきなりライフルが……!?」

 

 

 突如、相手側が持っている武装が爆発する事になった。そうなったのは勿論隆誠の仕業だ。

 

 本来の歴史である『兵藤隆誠』が敵の武器を破壊しようと、聖書の神の能力(ちから)を使って無力化させていた。視界に映っていれば道具や武器を破壊する技である他、その気になれば人間ごと爆発させる事も可能だが、個人的には絶対やりたくないので控えている。

 

(フェン、お前はあそこの市民達が逃げ切るまで結界を張ってくれ)

 

 ――ワンッ!

 

 隆誠の指示にフェンは透明化でありながらも、市民達に敵の銃弾を防ぐための無色透明な結界を施した。

 

 本当であれば横浜にいる全市民達を守りたいところだが、一先ずは自分の近くにいる者を優先して助けようと、目の前の敵を倒すため動き出す。

 

(誰かは知らんが、聖書の神(わたし)を相手にしてタダで済むと思うなよ!)

 

 今の隆誠は武器が使えなくなって戸惑ってるゲリラ達に怒りを抱いても、殺そうとは全く考えていない。その代わりとして、死んだ方がマシな激痛をたっぷり味合わせてやると固く誓いながら。




本当は一条将輝との再会話を書く予定でしたが、いきなり会うのは急過ぎるので、横浜へ来た理由と言う名の前置き話を出しました。

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