再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新です。


一条将輝と偶然な再会

「動くな! コイツを殺されたくなければ、今すぐCADを捨てろ!」

 

「貴様……!」

 

 場所は変わって国際会議場から離れた大型車両専用の駐車場。そこには一条将輝を含めた、第三高校の代表団と応援団がいるが、その内の一人が敵の手に捕まっていた。

 

 大亜連合の侵攻により、論文コンペに参加していた第三高校は、バスで避難することに方針を決めていた。

 

 そこに辿り着いても、バスはロケット砲の直撃を受けてタイヤがダメになっていた。それを見た将輝は怒りが湧き、今も好き勝手に破壊行為を行ってる敵を倒そうと交戦する事になった。彼の相棒である(きち)(じょう)()(しん)()(ろう)は、その間にタイヤ交換をしようと戦闘に参加してない教師や生徒達と一緒にやっている。

 

 将輝や一緒に戦ってる生徒達の奮戦によって敵があと少しで駆逐されようとしているところ、思わぬアクシデントが発生してしまう。伏兵が一人潜んでいたのか、背後からタイヤ交換作業の指示を出していた一人の女子生徒の首に腕を巻き、もう片方の手でナイフを突きつけられたのだ。

 

 突然の事に作業していた三高の生徒達や教師が動きが止まるも、吉祥寺は何とか助けようとしていたが、ゲリラが本気で刺すと言わんばかりに警告をされた為に断念せざるを得なかった。

 

 それだけでは終わらず、ゲリラは女子生徒を連れて、今も戦闘中の将輝達に向かって叫んだ。それを聞いた事で、三高が一気に形勢逆転されてしまっていた訳である。

 

「一条君、私の事は気にせずこのまま敵を倒して!」

 

「だが一色、そうなったら君が……!」

 

 女子生徒――一色(いっしき)(あい)()が叫んでも、将輝はそれを実行する事が出来なかった。

 

 彼女は第三高校の生徒とは別に、十師族に選ばれる資格を持つ二十八家の一つ一色家の令嬢でもある。一条家とも縁があり、将輝も面識もあるのは当然だった。

 

「どうする、一条!?」

 

「一色さんが敵の手に……!」

 

 ゲリラに捕まってるのを見た事で、敵と交戦していた一部の三高生徒達は困惑しており、将輝に指示を求めていた。

 

「クソっ!」

 

 将輝は大変らしくない口汚く舌打ちしながらも、頭の中で必死に考えていた。

 

 愛梨の意思を尊重して、彼女を見殺しにする覚悟で敵を倒す事が出来る将輝だが、それをすぐに実行する決断力を未だ持ち合わせていない。三年前に起きた『佐渡侵攻事件』を通じて実戦経験を得ても、今回みたく戦闘中に人質を取られる敵と遭遇した事が無かった。もし仮にあったとしても、父親の剛毅が息子に辛い決断を背負わせないように自身で処理していただろう。

 

 それに加え、後になってから一色家や他の師補十八家が絶対に騒ぐのが目に見えている。高校生とは言え、次期当主であれば娘を助ける方法が必ずあった筈だと批判するどころか、一条家を一方的に糾弾するかもしれない。十師族と言う地位を虎視眈々と狙っている二十八家は、相手に決定的な隙が出来れば即座に奪おうとする為の権力争いをするのが当たり前になっている。

 

 将輝は二十八家の事情なんかよりも、自身の同級生である愛梨を見殺しにしたくないと言う気持ちが強い。出来れば何とかして助けたいと必死に考えている。

 

 その迷いとは別に、ゲリラは無情にもナイフを煌めかせている。

 

「早くCADを捨てるんだ! この女が死んでも良いのか!?」

 

「ううっ!」

 

『!?』

 

 ナイフの刃先は愛梨の首筋に当たり、皮膚が少し裂かれた事で血が流れる。それを見た吉祥寺や他の生徒達も抵抗すれば本気で彼女を殺す気でいる事が分かった。

 

「……分かった。だがその代わり、彼女を解放しろ。俺が人質になる」

 

「ダメだ将輝!」

 

「そうよ一条君!」

 

 拳銃型CADを地面に放り投げた後、将輝は両手を挙げながらそう言うと、吉祥寺と人質に取られてる愛梨はすぐに叫んだ。

 

 一条家の次期当主として愛梨の身代わりになろうと決断したのかもしれないが、そんな事をしたところで事が上手く運ばないと彼は既に分かっているのだ。

 

「お前にそんな権利はない。全員一緒に来てもらう」

 

 だが、ゲリラは将輝の望みをすぐに断ち切った。それに呼応するように、先程まで将輝達と交戦していたゲリラ兵達がライフルの銃口を一斉に突き付けてくる。

 

 男は上官から魔法科高校の生徒達を拉致するよう命じられている為、向こうがどんなに懇願されても、此方からすれば知った事ではない。下手に情けをかけてしまえば、一気に逆転される恐れがあるから。

 

 頼みの綱であった将輝が降参の意を示した事に、一緒に戦っていた生徒達もCADを地面に置くしかなかった。

 

 国防軍が必死に応戦してる中、第三高校は敵の手に落ちてしまうと言う最悪な結果に――

 

「中々面白そうな事をしてるじゃないか」

 

『ッ!』

 

 なるかと思いきや、突如第三者らしき声がした直後、ライフルを突き付けていたゲリラ兵達が一人残らず一瞬で倒された。

 

 愛梨を人質に取ってる男だけでなく、将輝達も突然の事に困惑する一方だ。倒れてるゲリラ兵達は、何か強い衝撃を受けたかのように倒れて、ピクピクとしたまま意識を失っている。

 

「女の子を人質に取るなんて、大亜連合も随分必死だな」 

 

「な、何だお前は!?」

 

 すると、男の前に見知らぬ少年が現れた。魔法科高校の制服を身に纏っていない一般人らしき少年の姿に、男や第三高校の生徒達の困惑は更に深まっていく。

 

(あの男、どこかで……)

 

 将輝は少年を見た瞬間、途端に訝るように見ていた。一度どこかで出会った記憶がある為に。

 

「へ、兵達に何をした!?」

 

「見ての通り気絶してるだけだよ」

 

 残りはお前だけだと言いながら、見知らぬ少年は特殊警棒を手にしたまま、愛梨を人質に取ってる男へゆっくり近づいていく。

 

「来るな! この女が死んでも良いのか!?」

 

「くっ!」

 

 今更になって自分が圧倒的不利な立場になった事を理解したみたいで、男は後退りながらナイフを煌めかせていた。

 

 男の叫びが通用したのか、少年はすぐに足を止める。効果が覿面だと分かったかのように、更にこう叫んだ。

 

「それ以上近付いたらこの女を殺す! 分かったな!?」

 

「……お嬢さん、もう少しの間だけ辛抱してくれ」

 

「え?」

 

 少年が笑みを浮かべながら言った事に、愛梨は何を言っているのかと戸惑いの表情を見せる。

 

 刹那、目の前にいた筈の少年が突然消えた。

 

 余りの出来事に愛梨や男だけでなく、将輝達も一体何処へ行ったのかと周囲を見渡そうとする。

 

 消えたと思われる少年はすぐに現れた。男と愛梨がいる後方の約十歩先ほどの所から。

 

「なっ、貴様……!」

 

 どうやって通り過ぎたのかは分からないが、男は少年が自分の警告を無視したと認識した。それは即ち、人質に取ってる愛梨が死んでも構わないと。

 

「それ以上動けば、お前はこの後途轍もない激痛に襲われるぞ」

 

 再び出現して早々に少年は、男に向かってそう警告した。

 

 もうお前はもう終わり同然の発言をした所為か、男はここに来て我慢の限界を超えてしまう。

 

「このクソガキがぁぁ!!」

 

「不味い!」

 

 もう逃げられないのであれば、人質に取っている愛梨を道連れにしようと男はナイフを翳して、思いっきり振り下ろそうとする。

 

 将輝がすぐにCADを拾って阻止しようと魔法を放とうとするが、見ていた生徒達はもう間に合わないと誰もが悟りながら目を瞑った瞬間――

 

「がぁっ!」

 

「………は?」

 

 何故か悲鳴を上げたのは愛梨を人質に取った男の方だった。両脚の力が抜けたのか、すぐに仰向けとなって倒れた事で愛梨は漸く解放される。

 

「こ、これは、一体……?」

 

 愛梨は本当なら解放される事に歓喜する立場なのだが、今まで自分を人質に扱っていた男が急に悲鳴を上げて倒れた事に呆然としていた。

 

「大丈夫かい、お嬢さん」

 

「え?」

 

 いつの間にか近付いてきた少年が声を掛けてきた事に、愛梨はハッとしながら彼の方を見る。

 

 一体何が起きたのかと問い詰めたい衝動に駆られているのだが、今の彼女は殆ど混乱状態に等しく、その所為で言葉が口に出せなかった。

 

「おや? 首筋から血が出てるな。チョッと失礼」

 

「あっ……」

 

 少年がそう言いながら、ズボンのポケットから白いハンカチを取り出した。それを手にした直後、傷付いた彼女の首筋に優しく当てて血を拭き取っていく。

 

 下心が一切ないとは言え、女性の肌に触れたら色々不味い。益してや愛梨は一色家の令嬢である為、見知らぬ男性から不用意に触れてしまえば拒否反応を示すように振り払おうとするだろう。

 

 しかし、彼女はそんな行為を微塵もしていなかった。それどころか、ジッと少年の顔を見ている。

 

 愛梨の首筋から流れていた血を拭き取った少年は、ハンカチをポケットに仕舞いながらこう言った。

 

「気分を悪くしたかもしれないけど、応急処置だから勘弁してくれ」

 

「い、いえ、私は、別に……」

 

 謝罪する少年に、愛梨は普段と異なる反応だった。いつもの彼女であれば気丈に振舞うのだが、何故かぎこちない感じがする。

 

 すると、今までずっと放心状態だった将輝達は、漸く状況を理解したかのように動き出そうとする。

 

「愛梨、大丈夫!?」

 

「栞……」

 

 親友である十七夜栞が涙を浮かべながら駆け寄ったのを見た少年は、此処はもう大丈夫だと思ったのか、すぐに立ち去ろうとしていた。

 

 だが、それを阻止しようとする者がいる。

 

「待て」

 

「ん?」

 

 将輝が声を掛けてきた事で、少年はすぐに足を止めて彼の方へ視線を向ける。

 

 彼の参謀である吉祥寺は勿論のこと、他の三高生徒達も一斉に見ていた。

 

三高(ウチ)の生徒を助けてくれた事に感謝する」

 

「気にしないで下さい。偶々通りかかっただけですから」

 

 用は済んだと言わんばかりに再度足を動かそうとする少年だが、将輝はそうはさせまいと彼の前に立つ。

 

「もう一つ訊きたい事がある。お前は三年前の『佐渡侵攻事件』が起きた時に俺と会ってないか?」

 

「!?」

 

 将輝の問いに吉祥寺は目を見開いた。

 

 三年前の当時、吉祥寺真紅郎は『佐渡侵攻事件』の被害者で両親を失っていた。それによって彼は一条家に拾われ、恩に報いる為に現在は研究員として活動する他、将輝を支える為の参謀役になっている。

 

 詳細は知らないが、新ソ連の侵攻をたった一人の少年が食い止めていたとの事だ。偶然に目撃した将輝や彼の父親である剛毅は感謝の言葉を述べたいと探したのだが、結局は見付からず正体不明のままだった。

 

 将輝がその時の少年ではないかと思って声を掛けたと分かった吉祥寺は、改めて少年を凝視するも――

 

「……残念ですが人違いですよ。ではこれにて失礼します」

 

『!?』

 

 少年は少し間がありながらも違うと否定した直後、突然姿を消した。その事に将輝や吉祥寺だけでなく、見ていた三高生徒達も驚愕している。

 

「な、何なんだ、あの人……。魔法も使わないで、まるで瞬間移動したかのように消えるなんて……!」

 

「…………………」

 

 もしかして彼は忍術使いではないかと全く見当違いな事を考えている吉祥寺とは別に、将輝は途端に無言となった。

 

 そして――

 

(間違いない、やはりアイツだ……!)

 

 将輝は消えた少年が、三年前の『佐渡侵攻事件』の侵攻を食い止めていた少年と同一人物だと言う証拠を掴んだ。

 

 三年前の彼に将輝が遭遇して声を掛けようとした直後、瞬間移動したかのように姿が消えた事象が起きた。

 

 その時は一体何だったのだと疑問だらけになっていたが、今になって漸く分かった。不利になっていた自分達を加勢して敵を倒した後、用が済んだと言わんばかりに去って行く少年が、三年前と全く同じ行動を取っていたから。




次回は呂剛虎との再戦です。

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