再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
(まさか一条将輝が俺の事を憶えていたとは、な)
大型車両専用駐車場にいる第三高校の一団を助けて早々に退散した隆誠は、予想外の人物と再会した事に内心舌打ちをしていた。
横浜国際会議場へ向かっている最中に駐車場から戦闘と思われる銃器の音だけでなく、魔法の
向かった先には達也や深雪が通ってる一高生ではない魔法科高校の生徒達が、大亜連合のゲリラ兵達と交戦しているのを目撃した。その中には一条将輝が中心に戦っているのを見て、彼等は第三高校だと改めて認識する。
一条将輝が戦っているのであれば大丈夫かと隆誠がそう考えた矢先、予想外な状況に陥る事になった。伏兵と思わしきゲリラ兵が女子生徒を人質に取って、あっと言う間に形勢が逆転されてしまったのだ。
実戦経験がある将輝でも、流石に人質を取られたら思うように戦う事が出来なかったみたいで、降伏しようとCADを放り投げていた。その状況を見た隆誠は考えを改め、急遽参戦せざるを得なかった。ゲリラ兵達に不意打ちを仕掛けるように一撃で気絶させた後、女子生徒を人質にして調子に乗っていた男には(殺していないが)『瞬連斬』で仕留めた。
その後に解放された女子生徒が首筋に傷を負っていたのを見た隆誠は、ハンカチで拭き取るように見せかけて神の
(恐らく俺の事を一条家当主にも報告するだろうな……お、着いた)
将輝が後に取ろうとする行動を予測しながら横浜国際会議場に辿り着く。しかし、もぬけの殻みたいに静かで、周囲には誰一人いなかった。
(やっぱりもういない、か)
第三高校が大型車両専用駐車場にいた事で隆誠は既に察していた。自分がゲリラ兵と交戦している最中、会場にいる各魔法科高校の生徒達は既に避難しているのではないかと。念の為に何処かに隠れていないかを
如何に実戦経験が無いとは言え、そこまで愚鈍では無かったかと隆誠は少々失礼な事を考えながらも、すぐに上を見上げる。直後、地面に付いてる彼の両足が離れるように浮いていく。
もしこの場に魔法師がいれば『飛行魔法』を使ってると誤解されるかもしれないが、彼が
因みに国際会議場の周辺には当然街路カメラが設置されてるから目撃される恐れがあっても、隆誠は此処へ来る前から視覚阻害用の結界を自身の周囲に張っているから問題無い。
飛翔術を使っている彼は、あっと言う間にビルの屋上を抜いて更に上昇する。地上から100メートル以上まで上昇した隆誠は一旦停止し、横浜全体を俯瞰し始めた。
(達也の
戦隊ヒーローみたいなライダースーツを身に纏い、フルフェイスのヘルメットを被っている一団がゲリラ兵と戦っている光景を隆誠は目にしていた。
その一団は国防軍の独立魔装大隊であり、異母弟の司波達也が所属している。隆誠は彼の
既に達也が動いているのであれば、戦況を一気にひっくり返す事が出来るだろう。相手の動きを察知出来る『
(達也が国防軍と一緒に交戦してる場所以外でも……)
大亜連合は相当な兵力を注ぎ込んでる事によって、所々で小競り合いをしているのを隆誠は見ている。その中には異母妹の深雪を含めた一高の生徒達が、大亜連合が投入した兵器を次々と屠っていた。避難している筈の学生が何故戦っているのかと隆誠は疑問を抱くも、戦わざるを得ない事情があったのだろう。
(達也が深雪を守らず軍と一緒に戦ってるのは、あそこにいる学生達をそれだけ信頼してるって事か)
妹以外は心底どうでも良いと思っている
本当なら深雪達がいる場所へ行って参戦すべきなのだが、彼は止めておく事にした。もしも参戦すれば深雪は間違いなく動揺するだけでなく、それを感知した達也が命令無視をしてまで駆け付けてくる可能性がある為に。
(魔法協会支部の方へ行くか。そこも奴等の侵攻目的の内の一つでもあるから、な)
隆誠は次に向かう場所を、魔法協会がある横浜ベイヒルズタワーへと定めようとした。
あのビルにある施設内には魔法協会のメインデータバンクがあると両親から聞いた事がある隆誠は、大亜連合がその機密情報を狙っている事を知っている。同時に人が長い時間を掛けて作り上げたモノを、平然と奪い取ろうとする大亜連合の卑劣な行いに辟易してる事も含めて。
状況を一通り確認し終えたのか、隆誠はすぐに横浜ベイヒルズタワー付近へ向かおうとするも――
「ワンッ!」
「フェンか。彼等は避難出来たか?」
突如、狼犬の神造精霊獣フェンが姿を現わした事で一旦止めた。
隆誠が一条将輝たち第三高校を助けて退散したが、万が一の事を考えてフェンに第三高校の生徒達がまた襲われないよう、護衛役も兼ねて見守らせていた。ゲリラ兵を見たら即座に(殺さないよう)始末する事も含めて。
主からの質問に彼女(?)はすぐに記憶を共有させようと、両眼を閉じて念話で送ろうとする。
「……成程。一条将輝だけは残ったのか」
将輝が横浜に残って義勇軍に加わろうとする事に、隆誠は少々不満がありながらも納得していた。
恐らく十師族の義務として、並びに『一条家』として魔法協会支部へ向かったのだと隆誠は察している。本当なら第三高校の生徒達と一緒に避難して欲しかったのが本音であるが、自らの意思で横浜に残って戦うのであれば、部外者が口出しする権利など無い。
そして第三高校の生徒達が乗っているバスが無事に横浜を出た事でフェンはお役御免となり、報告をしようと主の元へ戻ってきたと言う訳だった。
「よくやったぞ、フェン」
「ワンワンッ!」
隆誠が笑みを浮かべながら頭を優しく撫でると、フェンは嬉しそうに尻尾をブンブンと振っていた。
異母弟妹の達也や深雪と違って、フェンに温かい眼差しと慈しみを持って接している。隆誠が誕生させた神造精霊獣だけでなく、自身の子供同然である為にそうなるのは当然と言えよう。
「それじゃあフェンにもう一つ仕事を頼みたい。あそこにいる俺の妹である深雪の様子を見に行ってくれないか?」
「………ウゥゥゥ」
フェンは途端に嫌そうな表情となった。まるで拒否を示しているように。
実のところ、彼女(?)は深雪や達也の事が大嫌いなのだ。以前に話し合いをしてる最中に主を平然と氷漬けにしただけでなく、挙句の果てには本気で殺そうとしていた。その時点でフェンは殺意を抱きそうになるも、隆誠が対処して何とか事無きを得ている。
隆誠の温情によって生かされているとは言え、フェンとしてはあの二人に関わる仕事を引き受けたくないのが本音だった。それなら先程まで第三高校の生徒達を、最後まで見送っていた方が良いと思う程に。
「フェン、お前が深雪を嫌っているのは理解している」
隆誠としてもフェンに申し訳ない事をしていると重々承知してるが、あんな自分勝手な妹であっても家族である事に変わりない。だから万が一に何か起きたら報告してもらおうと、自身が一番信頼出来る
「家に戻ったら、部屋で俺に甘えていいからさ」
「……クゥン」
ご褒美を提示された事で、フェンは渋々了承する事になった。
同時に隆誠は決意した。今夜は満足するまで好きなだけ甘えさせてあげようと。
次回こそは必ずや、呂剛虎と再戦させます。
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