再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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やっと書く事が出来ました。


呂剛虎と再戦

 隆誠があと少しで横浜ベイヒルズタワーへ到着するが、そこでは第二幕と言うべき戦闘が既に始まっている。

 

 白虎甲(バイフウジア)を身に着けてる呂剛虎がバリケードを突破する直前、思わぬ人物に再会した。国立魔法大学付属立川病院で千葉修次と相手をした時に現れた小娘――渡辺摩利が戦闘スーツを身に纏い、武装デバイスを手にしている。何故あの小娘が此処にいると最初は疑問を抱く呂だったが、邪魔するなら排除するのみと襲い掛かっている。

 

 彼女との距離があと少しという所で、横合いから思わぬ邪魔が入った。赤毛の小娘――千葉エリカからの長大な刃の袈裟斬りによる奇襲と、背後からガタイの言い茶髪の小僧――西城レオンハルトが薄刃蜻蛉で両足を刈り取る斬撃による奇襲攻撃が。

 

 並みの兵士であれば、二人の奇襲に対応出来ずにやられていただろうが、呂は卓越した身体能力と魔法、そして武術であっと言う間に二人を一撃で撃退する。その間に摩利が攻撃を仕掛けようとするが、呂は一瞬で彼女に接近して技の無い力だけの前蹴りを出して、摩利の身体を簡単に吹き飛ばした。

 

 如何に呂が各国から恐れられてる対人接近戦に優れた魔法師とは言え、本来であれば一瞬で摩利の懐に入る程のスピードを持ち合わせていない。以前に病院で遭遇した少年――司波隆誠に敗北した事で覚醒したのだ。それを受け入れた事で、彼の身体能力は飛躍的に上昇している。

 

 情報では隆誠を何の力を持たない温室育ちの小僧としか見てなかったが、それは全くの間違いである事を彼は思い知った。護身武器と思われる特殊警棒で、日本の居合と思われる斬撃で自分を倒したのだから。

 

 その後に警察に逮捕された自分を救い出してくれた上官の(チェン)祥山(シャンシェン)に事の顛末を報告すると、予想通りと言うべきか驚愕を露わにしていた。隆誠が呂を一撃で倒せるほどの相当な実力者である事に。その後には『(チョウ)の奴め……!』と、歯軋りしながら誰かに対して毒を吐いていた。

 

 隆誠の事を知れたのは、横浜中華街で大亜連合工作部隊の日本での活動支援をしている中華料理店のオーナー――(しゅう)公瑾(こうきん)からの情報だった。彼からの調査で『司波隆誠は魔法の素質が皆無な一般人』と教えられたのだ。呂が警察に逮捕された要因を作った隆誠である為に、(チェン)は周のいい加減な調査に歯軋りをしていたのである。

 

 (チェン)の考えとは別に、呂は機会があれば再戦したいと心から願っていた。しかし、今回与えられた任務は陽動であり、その隙に上官が魔法協会支部のデータバンクにある機密情報を頂き、それが終われば即時撤退後に本国へ戻る予定になっている。彼としては内心不服なのだが、軍人である為に私情を挟む事が一切出来ないので断念するしか得なかった。

 

(やはり、こんな小娘共では話にならん!)

 

 摩利達を簡単に倒した呂は物足りなさを感じていた。学生とは言え相当な実力を持つ三人なのだが、彼からすると有象無象(じゃくしゃ)にしか見えないのだ

 

 自身を倒した隆誠を思い出すだけで脇腹から胸に至る傷が疼くも、その痛みで自身を更なる成長を促すように再び身体から力が沸き上がりそうになる。

 

 だが、それをすぐに抑え込み、今度はバリケードで隠れている一人の小娘――真由美の方へと意識を向ける。先程から摩利達の援護をしようと、三人から少し離れた場所から魔法を撃っていたのだ。

 

 呂は躱しながら真由美に接近しようとする刹那、殺気と思われる何かが自身の身体に襲い掛かった。

 

「はぁっ!」

 

 身体が委縮して動けなくなった呂だったが、すぐに己の身体に気合いを入れて叫ぶと元に戻る。

 

 彼が殺気を感じたと思われる所へ振り向くと、その先には予想外の人物がいた。自身に敗北を与え、そして強くさせてくれた仇敵――司波隆誠が。

 

「え? な、何でここに一般人がいるの!?」

 

 知覚系魔法の『マルチスコープ』で呂が見た方向を見た事で真由美が戸惑いの声をあげる。隠れている最中に声を上げるのは致命的な行為なのだが、全く無関係な一般人が来てしまった為に声を上げざるを得なかったのだ。

 

「だ、誰だ……?」

 

「あ、あの男は……!」

 

(アイツは……!)

 

 見た事の無い少年にレオも困惑してるが、エリカと摩利だけは違った。二人は隆誠、もとい『イッセー』の事を知っている為に。

 

 そんな中、呂は歓喜した。既に標的を真由美から隆誠に切り替え、あの時の礼を存分に返そうと襲い掛かろうとする。

 

 

 

(まさか一高の学生達も此処に来ていたとは……)

 

 隆誠が横浜ベイヒルズタワーに辿り着くも、予想外な光景を目にしていた。見覚えのある一高の学生達が呂剛虎と戦っているのを見て。

 

 しかし、三人が一撃で倒されてしまうと言う情けない結果を見て、隆誠は少しばかり呆れざるを得なかった。あの程度の実力で呂剛虎に挑むのは無謀極まりないと。

 

 その後にもう一人の女子生徒に襲い掛かろうとしていたから、すぐに助けようと隆誠は呂の動きを止める為に殺気を込めた技――『(しん)一方(いっぽう)』を使った。前世(むかし)の頃に見た『放浪する剣信』に登場する極悪人キャラ――()(どう)刃悦(じんえつ)の技で、隆誠は金縛りの術には便利だと考えて、あっと言う間に会得した経緯がある事を補足しておく。

 

(それにしても、呂剛虎は何故か以前より強くなったみたいだな)

 

 芯の一方を加減したとは言え、まさか簡単に自力で解くのは予想外だった。ちゃんと実力を鑑みて放った筈なのに、それを覆すように解いたのだから、隆誠が驚くのは無理もない。

 

 隆誠は知らない。病院で『(あま)(かける)(りゅうの)(きば)』を披露し、その所為で呂の成長を促す要因となってしまった事に。尤も、例え知ったところで大して気にも留めないだろうが。

 

(取り敢えずさっさと片付け……お?)

 

 少々考え事をしていた所為で、呂がいつの間にか接近していた。その直後には掌打を放とうとしている。

 

 だけど、隆誠は動揺や恐怖を一切見せる事無く、まるで造作も無いと言わんばかりに紙一重で躱す。

 

「!?」

 

 攻撃を躱された事で呂は一瞬目を見開くも、すぐに再度攻撃を仕掛ける。掌打だけでなく、正拳突き、回し蹴りなど、どれも洗練された攻撃を。しかし、隆誠はそれらを全て躱し続けている。

 

「う、嘘だろ!?」

 

「呂剛虎の攻撃を、全て躱している……!」

 

 呂の攻撃で倒れているレオとエリカは信じられないと言わんばかりに目を見開いていた。各国から強敵と恐れられてる筈の男が、魔法師じゃない一般人の少年に翻弄されてる事が信じられないのだ。

 

(彼が只者じゃないのは知ってたが、まさかアレほどの実力者だったとは……)

 

 驚いてる二人とは別に、摩利も呂の攻撃を躱す隆誠を見て驚きを示しつつも、同時に納得していた。恋人の修次でも苦戦するヤツを一撃で倒したのだから。

 

 そんな中、攻撃を躱し続けている隆誠は嫌気が差したのか、突如バク転をしながら後退する。ただの一般人ではないと認識してるとは言え、余りの身のこなしにエリカ達は再び驚くばかりだった。

 

「フゥ~、フゥ~……!」

 

 後退する呂は追撃してもおかしくないのだが、それをする素振りすら見せず、多少息が上がりながらも動きを止めていた。

 

 バク転で見事に両足で着地した隆誠は、一定の距離を取っていた。向こうが動かないのを見て、彼は懐に手を入れてある物を取り出す。以前に呂を倒した時に使った武器――特殊警棒を出した後、抜刀術の構えを見せる。

 

「!」

 

 隆誠の武器と構えを見た瞬間、呂は今まで以上の警戒感を示すどころか、隙が一切無い構えを見せていた。アレによって自分は大きな傷を残す事になり、大きな敗北を強く植え付けられたのだから。

 

(あの時の抜刀術か!)

 

 摩利も見覚えがある。遠くからだったが、途轍もない速さと威力で呂剛虎を倒していたのを今も印象強く記憶に残っている程だ。因みに自身の恋人である修次が惚れ込むほどで、ちょっとした誤解を招く事になるも、それはもう既に記憶の彼方へ葬っている。

 

「「………」」

 

 エリカとレオも本能的に察してるみたいで、戦いを見守るように無言となっている。

 

 周囲が爆発や銃撃等で響いてる中、隆誠と呂は完全に無視しており、構えながらも相手の動きを探るように静止したままだ。

 

(おいおい、何時になったら動くんだよ……)

 

 二人の動きが止まって数秒しか経っていないのだが、レオにとっては何時間も経っているような感覚になっていた。

 

 早く動いてくれと願いが通じたかのように、隆誠と呂は真っ直ぐ相手の方へ駆け抜けた。

 

(やはり左か!)

 

 隆誠が走りながら抜刀術を放つ瞬間、彼の足は左足を前に出していたのを呂は見えた。

 

 抜刀術は本来、(右利きなら)抜刀の際に右足を前に出す事になっている。そうしなければ刀を左に納めている都合上、左脚を前に出すと自分の脚を斬ってしまう恐れがあるのだ。しかし、隆誠が放とうとする『(あま)(かける)(りゅうの)(きば)』は抜刀術の常識を大きく覆し、抜刀する絶妙のタイミングで左足を前に踏み込むことによって、神速の抜刀術を超神速の抜刀術へ昇華させる。

 

 呂は日本の抜刀術について詳しくないが、隆誠が左足で踏み込んだ事によって凄まじい一撃を繰り出した事を身を以て経験してる。それ故にあの時の技を使ったと即座に理解した。

 

 抜刀した隆誠の特殊警棒は以前と同じく呂の脇腹目掛けて直撃……する寸前に防がれてしまった。

 

「馬鹿な! 止めただと!?」

 

 見ていた摩利は信じられないと言わんばかりに声を荒げた。一度受けたとは言え、あの強力な抜刀術を受け止めた呂剛虎に驚愕するしかない。

 

 白虎甲(バイフウジア)の防具、並びに魔法の(ガン)()(ゴン)で防御力で守られても、右腕は今も途轍もない激痛に襲われている。だがそれで止める事が出来るのであれば安いものだと、呂は必死に耐え続けていた。

 

「グッ、ギッ……ガァァァァァ!!」

 

 呂は雄叫びを上げながら、隆誠の警棒を捌くように右腕を力強く振り切った。その代償として、彼の腕は使い物にならないかのように曲がってはならない方向へ曲がっている。

 

「捌かれた!」

 

「やばいぞ!」

 

 エリカとレオも、隆誠が放った神速の抜刀術『(あま)(かける)(りゅうの)(きば)』を捌かれた事に焦りの声を出していた。

 

 隆誠もそうなるのは予想外だったみたいで、特殊警棒を捌かれた事で少しばかり目を見開いている。

 

「ウォォォォォォォ!!」

 

 完全に隙だらけだと認識したのか、呂は次の行動に移ろうとしている。使えなくなった右腕とは別に、左腕を力強く握りしめながら想子(サイオン)を集束させていた。今まで全身に纏わせていた(ガン)()(ゴン)を一部分に収束させている事で、左腕から暴風の塊とも言えるほどの想子(サイオン)が吹き荒れている。

 

(何だよアレ!)

 

(あんなのまともに受けたら……!)

 

(確実に彼が死ぬ!)

 

 レオ、エリカ、摩利は『人食い虎』が最大の切り札を出したと理解したと同時に、彼の左腕から発する想子(サイオン)の塊を見ただけで恐怖した。如何に防御力に優れた魔法師でも、あれを喰らえば確実に死ぬと。

 

 そして一撃で死ぬ凶器の塊を呂が隆誠目掛けて当てようとするが……状況は急に一変した。突如周囲全体に風が吹き荒れ、大地を縫うように這っていた彼の足が何かに吸い寄せられていた。

 

(な、何だコレは!?)

 

 予想外な事態が起きた事で呂は混乱する。思わず隆誠を見ると、抜刀術が捌かれたにも拘わらず回転していた。それだけでなく、今の自分は何故か彼に吸い寄せられている一方となっている。

 

(いや、違う。吸い寄せているのは小僧ではない!)

 

 呂は漸く理解した。自身を吸い寄せる真の原因は、彼の前方にある空間だと。先ほど捌いた一撃目の衝撃と威力によって弾かれた空気が、時間差を生じて、急速に辺りの物体ごと元に戻ろうとしていく事に。

 

「はぁぁ!」

 

 直後、隆誠は再び二撃目の抜刀術を放とうと、再度左足を前に出して地面を強く踏み込む。

 

 隆誠が『(あま)(かける)(りゅうの)(きば)』について知る際、こんな説明分が記されていた。一度目の『牙』を躱したところで、吹き荒れる風によって身体の自由を奪われ、『爪』によって引き裂かれると。

 

 再び振るわれる第二撃の超神速抜刀術は『(あま)(かける)(りゅうの)(つめ)』へと昇華し、そのまま呂の上半身に隆誠の特殊警棒が直撃する。左腕に想子(サイオン)を集束させた事で、今の呂は完全に無防備となっており、以前に受けた時以上の衝撃が襲い掛かる。

 

「がはぁっ!!!!」

 

 身体の骨が砕けるような衝撃を受けた呂は吐血し、一気に上空へと吹っ飛ばされていく。同時に身に纏っていた上半身の白虎甲(バイフウジア)も罅が入って崩壊しながら。

 

「「「…………………」」」

 

 余りの光景に、摩利達は完全に言葉を失っていた。と言うより、もう何を言えば良いのか分からない状態になっている。

 

 そして吹っ飛ばされた呂は、そのまま地面へと落下して激突する。完全に意識が無くなってるのか、ピクリとも動く気配すら見せていない。

 

「残念だったな、呂剛虎」

 

 抜刀術を放った隆誠は構えを解き、武器である特殊警棒を仕舞いながら、気絶してる彼に向かってこう言った。

 

「俺が会得した抜刀術は、隙を生じぬ二段構えなんだ。それに魔法なんか使わなくても、純粋に剣を極めれば魔法以上の威力にもなる」

 

 まるでアドバイスのように指摘した後、隆誠は突然エリカ達の前から姿を消す。

 

 そして三人は意識を取り戻したかのように隆誠を捜したのだが、結局見付からず仕舞いになるのであった。




本編と違って、此方ではオマージュ技で倒しました。

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