再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
(漸くあの奥義が完成出来たな……)
倒した隆誠は超スピードを使って摩利達の前から姿を消した後、適当なビルの屋上に潜んでいた。視覚阻害用の結界を張りながら、大亜連合の侵攻状況を確認する為に。
それとは別に、先程の戦闘で披露した超神速抜刀術『
だが完成したとは言っても、『
隆誠の知る人物で候補を挙げるとすれば『千葉修次』が妥当だろう。覚醒した呂剛虎より多少劣るが、真っ向から挑んでくれると隆誠は確信する。尤も、今の彼では第一撃目で終わってしまう可能性は高いが。
(そう言えば前に千葉修次と会う約束を……ん?)
考え事に耽っている中、大亜連合側で大きな動きがあった。港に停泊している偽装揚陸艦が突如離岸したのだ。
既に劣勢になっているとは言え、未だ各地でゲリラ兵が交戦中にも拘わらずに離岸した大亜連合の行動に隆誠は疑念を抱く。
(ああ、もう勝てないと悟って撤退したのか)
戦っている兵を見捨ててまで離脱する偽装揚陸艦にいる司令官の行動は見事かもしれないが、日本側からすれば唾棄すべき行為だった。向こうから一方的に侵略しておいて、何の落とし前も付けずに逃走する無責任な行動を国民が知れば絶対に黙っていない。
(いっそ俺が……いや、止めておこう)
転移術を使って偽装揚陸艦に潜入し、そこにいる司令官を含めた大亜連合のゲリラ兵達を気絶させた後にUターンさせようと考えていた隆誠だが、考えを改めてすぐに止めた。『兵藤隆誠』であればやっていたが、『司波隆誠』は魔法科高校の学生でもない一般人の身である。真夜が密かに自身の後ろ盾になってくれているとは言え、彼女に借りを作るような事をすれば、色々面倒な事になるのが目に見えている事も含めて。
隆誠がやらずとも、国防軍がちゃんとやってくれるだろうと思って見守る事にしたのだが……少しばかり様子がおかしい。国防軍と思われる部隊や艦隊が既に取り囲んでいる筈なのに、ニ十分以上経っても一向に攻撃する気配を見せないのだ。
何故さっさと沈めないのかと不可解に思う隆誠だったが、途端にある事を思い出した。
(確かあの艦にはヒドラジン燃料電池を使用してるんだったな)
ゲリラ兵の頭の中から情報を頂いた際、彼等が移動手段として使っている偽装揚陸艦の燃料はヒドラジンを使っていると知った。
ヒドラジンはエンジンで使うには有用な燃料だが、非常に危険な有害物質でもある。もしもソレを燃料として使ってる艦を撃墜して海に流出してしまえば、日本の水産物に大きな影響どころか、環境にも大きな被害を齎すだろう。国防軍はそうなるのを恐れて、今もああして攻撃しないのだと隆誠は察した。
(大亜連合は国防軍が手を出せないのを分かった上で、ああして逃げてるって訳か)
国防軍は手を出さない事で、大亜連合の偽装揚陸艦は相模灘を南下していた。
このまま逃がせば国防軍は大失態を犯したと無能の烙印を押されるかもしれないが、隆誠からすれば知った事ではない。身勝手な理由で侵略された身である為、あの連中を是が非でも落とし前を付けさせなければ気が済まないのだ。
(国防軍が当てにならない以上、やはり俺が……ッ!)
隆誠が考えを改めた直後に異変が起きた。突如、偽装揚陸艦の上空から凄まじいエネルギーが出現した。まるで核爆発が起きているのかと思うように広大な範囲で、先程まであった筈の艦があっと言う間に包み込んでいる。あの中にいる大亜連合の司令官や兵士達が既に死んだのは言うまでもない。
同時に、あの爆発から感じ取れる
(そうか。アレは達也の戦略級魔法だったか)
自身の異母弟である事に気付いたと同時に思い出した。あの核爆発に似た正体が『
九校戦中に隆誠が達也を叩きのめして気絶させた際、そこで彼の頭の中を覗いて全ての情報を視た。それには達也の最大の切り札と呼べる究極の分解魔法『
(成程。アレは確かに凄まじい威力だな)
達也から情報を得たとは言え、この状況で実物を見るのは完全に予想外だった。
この世界の基準で言えば確かに恐ろしいが、
隆誠は万が一に達也があの魔法を使って自身を殺そうとするのであれば、完膚なきまで叩きのめした後に『
「さて、帰るか」
大亜連合の偽装揚陸艦が達也の戦略級魔法で沈められた以上、もう横浜に留まる必要は無い。隆誠としては思うところがあると言っても、平然と人を殺したり拉致する連中が逃走するのであれば、それはそれで仕方ないと割り切っている。如何に人間に対して寛大な心を持っている元神の隆誠でも、非道な行いを平然とやる者には相応の報いを受けるべきだと。
自宅に戻る前にバイクショップの確認を考えていると、深雪を見守るように命じていた神造精霊獣フェンが現れる。
「ご苦労だったな、フェン」
「……ウゥゥゥ」
主から労いの言葉を掛けられるも、フェンは物凄く不機嫌そうな表情だった。大嫌いな深雪を見守るのが相当苦痛だったのが見て取れる程に。
これは家に帰る前に何か別の事をしないと不味いなと思った隆誠は、ちょっとした頼みをしようとこう言った。
「フェン。これからバイクショップに寄るんだが、お前が良ければ俺を運んでくれないか?」
「ッ! ワンワンッ!」
頼みを聞いた途端、フェンは即座に了承しながら主の隆誠に背を向けてしゃがんでいた。早く乗ってくれと言わんばかりの様子だ。
バイクに乗って運転してる主を見てから、自分も背に乗せて駆け抜けたいと前々から考えていた。それが漸く叶うと分かった瞬間、フェンは先程までの不機嫌から一変して上機嫌になっている。
その願望を既に見抜いてる隆誠は、深雪に対する負の感情が無くなって良かったと思いながら、乗馬の要領でフェンの背中に騎乗する。
「バイクショップの場所は憶えてるか?」
「ワンッ!」
隆誠からの問いをフェンは当然と言わんばかりに力強く返事する。
「よし、じゃあ行け!」
「ワォォォンッッ!!」
指示を出された事で、隆誠を乗せたフェンは勢いよく走り出した。ビルの屋上を一気に駆け抜け、そのまま飛翔しながらバイクショップへ向かおうとする。因みにフェンが移動してる最中、隆誠が人の目や街路カメラに映らないよう、今も自身の周囲に遮音と視覚阻害の結界を張っている事を補足しておく。
バイクショップへ辿り着いた後、そこには店長だけ残っていた事が分かった。バイクのメンテ依頼をした隆誠が万が一に戻ってくる事を考慮して自ら残り、店員達はシェルターへ避難させていたとの事らしい。
一通り聞いた隆誠は非常に申し訳ない気持ちになりながらもバイクを受け取り、今度はそれに乗って自宅へ戻る事になった。影に潜んでいるフェンが少し不機嫌になり始めたのを敢えて無視して。
「隆誠! 無事で何よりだ!」
「私達が一体どれだけ心配したと思っていたの!?」
「ご、ごめん……」
そして最後の難関と呼べる自宅へ戻ると、大事な息子を非常に心配していた両親の龍郎と小百合からの言葉に、隆誠は只管謝るしかなかった。
取り敢えず横浜騒乱編はここまでになります。
次は司波隆誠編の最後の舞台になる『四葉継承編』の予定です。
感想お待ちしています。