再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
横浜事変での出来事に遭遇して以降、隆誠の周囲では特に大きな事件は起きていない。その間、時折真夜との密かな連絡のやり取りはやっていたが。
それとは別に、一部の第一高校生徒達、並びに軍や十師族の間で大きな話題になっていた。『大亜連合の呂剛虎が魔法師じゃない一般人らしき少年によって倒された』と言う話題が。当然表沙汰にしては色々不味い事もあって情報規制されており、彼等は密かに隆誠の存在を必死に捜索するが、今も発見出来ず仕舞いとなって断念していた。
目撃情報はあるも、設置されてる筈の街路カメラに一切映っていないと言う不可思議なことが起きていた為に特定困難となっている。そうなった原因は当然隆誠で、横浜ベイヒルズタワー周囲に設置されてる街路カメラ全てに特殊な電磁波を流した事で、呂剛虎は透明人間と戦っているようなシーンが映っているのであった。
十師族の方では、一条将輝が自分を含めた第三高校の生徒が大亜連合に拉致されそうになったところ、嘗ての佐渡侵攻事件で新ソ連兵を撃退した無名の少年が助けてくれたと報告した。それに大きく反応したのは一条家当主の一条剛毅だけでなく、周囲に気付かれる事なく四葉真夜も若干目を細めていた。結局その少年の正体が分からず仕舞いとなるも、真夜は周囲に合わせて知らないように振舞いながらも『後で隆誠さんに確認しないと』と内心ほくそ笑んでいる。
後日、真夜が予想した通り、第三高校生徒の拉致を阻止しただけでなく、呂剛虎を倒したのが隆誠本人である事が判明するも、特に弱味を握る事無く不問に付していた。
西暦2096年12月24日
「ん~~。今日は楽しかったなぁ~」
横浜事変から一年と数ヵ月後。隆誠は平穏の時間を過ごしながら、密かに鍛錬を行い続けていた。その間に新たな神造精霊獣を誕生させており、フェンが姉として同行させ野に放っている。因みに今年の1~2月にフェンが、精霊とは思えない嫌な存在を感じ取っていたみたいだが、既に消えているとの事で問題無い。
隆誠が通っている高校は冬休みに入ったばかりで、今日は友人や後輩とのクリスマスパーティで楽しく過ごし、夕日が落ちた夜の時間帯に帰宅した。来年の4月から一般大学に入る予定の隆誠は受験勉強をしなければならない身だが、それをせずとも推薦入学が既に決まっていた。親が有名なCADメーカーの重役とか一切関係無く、自力で推薦を勝ち取ったと補足しておく。
両親の龍郎と小百合は後腐れがない年末を過ごそうとFLT本社で業務に勤しんでいる為、隆誠は二人が残業を終えて夜中に帰ってくる際、夜食を用意しているのがお決まりだった。あと少し経てば、夜食を作る為の準備に取り掛かる予定になっている。
最後に異母弟妹の達也と深雪だが、去年と違って殆ど会っていない。回数で言えば片手で数えれるほどだ。
今年に行われた九校戦で真夜からの監視を命じられなかったが、隆誠としては去年みたいな愚かな行為をしないよう、確認の意味も兼ねて一度異母弟妹の家に訪れた。その時に達也と深雪は当然警戒するも、去年と違って反抗的な態度を一切取っていなかった。逆らえばどうなるかを理解してるみたいで、完全に低姿勢な態度で応対していたのだ。達也と深雪の自業自得とは言え、血の繋がった兄妹とは思えない遣り取りに隆誠は内心寂しく思いながらも、前回みたいに無断で情報流出をしないように釘を刺した。万が一に発覚した場合、達也の『
おまけではないが、達也と深雪を慕っている黒羽家の双子は、今年になってから一度も隆誠に会っていない。以前は疑惑が会って訪れたのだが、もしかしたら証拠が見付からなくて如何でも良くなったかもしれないと、隆誠はそのように考えている。
「さて、夜食でも作るか」
両親は未だに残業中であるが、今日帰宅するのは深夜頃になると言っていたので、今日は弁当形式にしようと作業に取り掛かろうとする隆誠。
準備する矢先、突如リビングに電話から呼び出し音が鳴った。
それを聞いた隆誠は嫌な予感がしたのか、軽く身嗜みを整え、テレビの前に立ってすぐに通話回線を開いた。
「ご無沙汰ですね、真夜さん」
『夜分にすみません、隆誠さん』
「お気になさらず。それで、俺に何か御用ですか?」
軽い挨拶をする隆誠の目の前には、画面の中で、相も変わらず殆ど黒に近い色合いのロングドレスを身に纏った四葉真夜がにこやかに微笑んでいた。
何度も言ってるように、隆誠の態度は普通に無礼なのだが、真夜本人は全く気にした様子を見せていない。もし達也や深雪が見たら、確実に驚愕しているだろう。
『急で申し訳ないのですが、隆誠さんに頼みたい事がありまして』
「それは一体何ですか?」
微笑んだままに言ってくる真夜に、隆誠はまた厄介事を持ち込む気だなと内心思いながらも改めて尋ねた。
『御存知でしょうが、四葉家は毎年元旦に「
彼女が言う慶春会とは、四葉本家で開かれる元旦の集まり。当主である四葉真夜の他に、分家の当主達が勢揃いする恒例行事でもある。司波家も四葉の分家であるが、参加資格を持つのは達也と深雪だけ。それ以外は除外されてる事を隆誠や両親は当然知っている。
参加資格が初めから無い事を真夜も当然理解してる筈なのだが、突然それを言ってくるとなれば、この後に何を言うのかを隆誠は既に予想している。
『その慶春会に達也さんと深雪さんだけでなく、隆誠さんにも参加して頂きたいのです』
「いくら何でもそれは不味いのでは? 分家が絶対黙ってませんよ」
暗に『行きたくない』と断っている隆誠に、真夜はそれでも微笑んだままだった。
去年や一昨年も慶春会に参加してない達也と深雪が参加するのは、遂に次期当主を指名するのだと察していた。真夜が深雪を次期当主に指名するつもりなのだと。
以前に真夜から隆誠に四葉家当主にならないかと提案されたが、『分家が命懸けで反発してくる』と言う理由で丁重に断った。それを聞いた真夜は当初眉を顰めるも、下手に彼と敵対したら不味いと思って一旦諦めることにした。
「それに俺は招待状を持っていませんし」
『当主の私が許可したと言えば問題ありませんよ』
「そんなんで穏便に済む訳が無いでしょうに……」
いくら分家が四葉本家に逆らえないとは言え、肝心の当主がしきたりを平然と破る行為をするのはどうかと思われるが、それはもう今更だった。真夜がこうして隆誠と秘密裏に話していること自体あり得ないのだから。
『まぁ正直に言いますと、分家の反発など私にとっては如何でも良いのです』
「いくら何でも正直過ぎますよ、ご当主様」
ストレートな告白をする真夜に隆誠が思わず突っ込みを入れてしまう。
真夜からすれば、達也を簡単に圧倒するばかりか、最大の武器である『眼』を封じる事が可能な隆誠が一番恐い。もし分家が反旗を翻せば、全員間違いなく返り討ちにされると断言出来る。隆誠の性格を考えれば殺しはしないだろうが、魔法師である彼等に生き地獄を味わわせるのは確定かもしれない。
『確かに当主の私がこのような頼みをするのは筋違いである事を重々理解してます。ですが今回の慶春会は必ず成功させたいのです。達也さんと深雪さんが今後反旗を翻させない為にもね』
「……相変わらずのご慧眼ですね。既に見抜いていたとは」
達也と深雪が四葉家に対して面従腹背なのを真夜が既に知っていたのは、隆誠もある程度予想していた。尤も、それは達也が深雪の為を思っての行動に過ぎないのだが。
「つまり俺は、あの二人が余計な真似をしない為のストッパー役になれと」
『そこまでは言いませんが、まぁそんなところです』
「貴女の事ですから達也達を今後も縛り付けようと、俺にも相応の地位を与えるつもりなのでしょう?」
『……本当に隆誠さんは勘が鋭いですね』
その後に隆誠と真夜はもう暫し話が続くのであった。
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