再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
西暦2096年12月31日
「やらせて下さい!」
「駄目だ、危険すぎる! 達也君は――」
達也と深雪(+桜井水波)は、四葉家当主の真夜より『慶春会』に参加するよう命令された為、四葉本家へ向かおうとしていたが、またしても妨害があって足止めされていた。目の前にいる『
本来であれば一昨日の29日に到着する予定だったが、これには理由があった。彼等が本家へ向かおうとしてる途中、29~30日の二日連続に国防陸軍の人造サイキックの軍人達によって阻まれていたのだ。達也が問題無く撃退する中、四葉分家である『津久葉家』の一人娘『
何としても四葉本家に向かいたい達也は、勝成にガーディアン同士の決闘をしようと提案する。ガーディアン姉弟――姉の
「勝成さん、人のプライバシーをペラペラと喋らないで下さい」
水波や深雪が顔を強張らせているとは別に、達也はすぐに余計な事を言うなと指摘した。
堤姉弟は戦意を失ってないように戦う意思を見せようとする中、突如バイクと思わしき走行音を誰もが耳にする。勝成達も話を終えて達也達と同じく視線を向けると、特注品らしき
「!」
怪訝そうに見ている深雪達とは別に、達也だけ見覚えがあった。一度だけだが、あのバイクは去年の秋頃に自身が知る人物が乗っている為に。
彼等が立ち止まってる約10メートル前でバイクが止まり、ソレから降りてライダースーツを身に纏ってる運転手はヘルメットを脱いだ。その正体は達也と深雪の異母兄である司波隆誠だった。
「っ!」
「深雪様?」
隆誠の顔を視認した深雪は途端に怯え始め、彼女の様子に使用人の水波は心配そうに声を掛けていた。達也もすぐに駆け寄りたかったが、今は障害と見なしてる勝成達の前で背中を見せる行為はしたくない為、水波に任せるしかなかった。
因みに水波は司波隆誠が達也と深雪の異母兄だと言う事を勿論知っており、九校戦が始まる前に顔を合わせた事がある。しかし達也が部屋で待機するように言われた為、その時に釘を差す為の脅しについての会話内容は一切知らない。
「誰かと思えば、隆誠さんだったのね」
近付いてくる運転手の正体が隆誠だと分かった夕歌は、先程までと違って物凄く如何でも良さそうな感じで話しかけた。彼の恐ろしさを知る達也と深雪からすれば、命知らずな行為である事を知らずに。
「私達は今、大事な話をしているの。何のつもりで来たのかは知らないけれど、貴方如きが余計な邪魔をしないでくれる?」
わざとらしい言葉遣いで嫌みたらしく告げる夕歌に、足を止めた隆誠はこう言った。
「邪魔も何も、俺は四葉真夜様からのご命令で、四葉本家へ向かおうとしてる最中だったんですが」
『!?』
隆誠の発言に夕歌だけでなく、聞いている勝成や堤姉弟も驚愕の表情を浮かべた。
聞いていた達也も何となくだが予想していた。自身を圧倒する実力を持つだけでなく、『
「俺から言わせれば、何故こんな状況になっているのかを訊きたいんですがね」
確かにそうかもしれないと達也は内心そう思った。
彼が本当に真夜からの命令で四葉本家に向かおうとしてるなら、この状況を不可解に思うだろう。目の前にいる新発田勝成とそのガーディアンが自分達を阻む為に雪崩を起こしたなど、事情を知らない隆誠には全く不可解なのだ。
「出鱈目を言うな!」
すると、夕歌でない別の者が否定の声を上げた。勝成のガーディアンである堤奏太が信じられないと言わんばかりに続ける。
「お前みたいな魔法を使えない無能が呼ばれる訳ないだろう!」
つい先程まで彼は勝成と夕歌が話してる最中に口を挟んで指摘されたのだが、その彼女は今回再びやる気配を見せなかった。奏太が言った通り、隆誠は達也や深雪と違って魔法が一切使えないだけでなく、愛人から生まれた忌み子なのだ。そんな相手を気遣う必要など無いから、夕歌は何も言わないでいる。
罵倒された当の本人は、全く如何でもいいように聞き流しているのか、すぐに達也の方へ視線を向ける。
「達也、悪いけど今の状況を教えてくれないか?」
「なっ!」
激昂しそうになる奏太だが、隆誠は完全に無視して達也に訊きだそうとする。
「分かりました。実は――」
隆誠からの問いに達也は一切反論する事無く、今の状況を説明した。
それを見た夕歌や勝成達はどう言う事だと疑念を抱く。異母兄とは言え、何故達也があんな素直に従っており、何故深雪は何も言わずに黙っているのかと。
「――と言う訳でして」
「成程。俺は運悪くガーディアン同士の決闘を行う前に来てしまったのか」
それは悪いことをしたなと謝る感じで言う隆誠だが、すぐに勝成達の方へ視線を向ける。
「新発田勝成さん。大変申し訳ありませんが、決闘は今すぐ止めて、大人しく引いてくれませんか?」
「何?」
いきなり一方的な提案を出してくる隆誠に、怪訝な表情になる勝成。
「貴方が今やってる事は、四葉本家に対する反逆も同然だと言う事を理解してる筈です。これが露呈したら、貴方の立場が悪くなってしまうのでは?」
「っ……」
隆誠は暗に『邪魔するなら真夜に報告するぞ』と言っていた。勝成も当然分かってるみたいで、答えに詰まっていた。彼が本当に本家へ来るように呼ばれたのかは未だ定かでないにしろ、達也と深雪、もしくは夕歌が真夜に報告すれば、どの道窮地に立たされることに変わりはない。
「今ならまだ穏便に済みますから、どうか此処は――」
「いい加減にしやがれ!」
隆誠に指摘された事で板挟み状態になっていた勝成に、奏太が再び口を挟んだ。
「さっきからマスターに対して上から目線な物言いをしやがって! 無能の分際で、一体何様のつもりだ!?」
「奏太、止めなさい」
憤慨する奏太に、姉の琴鳴が制止しようとした。
だけど彼女も少しばかり癇に障ったのか、途端に隆誠を睨みつける。
「隆誠さん、勝成さんに対して余りにも無礼ではありませんか?」
「俺は単に事実を述べただけですよ。それくらいはガーディアンの貴女も理解してる筈では?」
「テメエ、姉さんに向かって……!」
勝成だけでなく姉の琴鳴も侮辱する隆誠に、奏太は再び爆発する寸前だった。
(一体どう言うことなの?)
見ていた夕歌は全く不可解だった。
隆誠のやってる事は新発田家に喧嘩を売ってる行為も同然で、これが当主の耳に入れば絶対に黙っていない。
これは達也と深雪も流石に止めるべきだろうと内心思いながらチラッと見るも、二人は口出しをする気配が一切無かった。未だに怯えたままになってる深雪を、達也がいつの間にか傍にいて安心させようとしている事に水波は困惑している。
「勝成さん、大人しく引かないのであれば、俺が達也の代わりに相手をしましょう」
「君が、だと?」
隆誠の発言に勝成は目が点になる。それは琴鳴と奏太も同様で、正気なのかと疑うほどだ。
「貴方ご自慢のガーディアン二人が達也と戦わせる事に反対していたなら、俺とやる方が良いと思いませんか?」
一体何を考えているのかと勝成は内心困惑していた。彼の言う通り恐ろしい経歴を持つ達也より、魔法を使えない一般人同然の隆誠と戦わせるほうが非常に好都合だった。
だと言うのに、肝心の隆誠は琴鳴と奏太を前に一切臆した様子を見せていない。まるで初めから勝てると言いたげな目をしている。
疑問が膨らむ勝成に、
「もし俺が負ければ、達也と深雪は俺の方で責任持って帰らせますから」
「我が主、新発田勝成に代わって、この堤琴鳴が司波隆誠殿の挑戦をお受けします!」
「琴鳴!」
琴鳴が勝手に承諾するのであった。
勝成は制止しようと怒鳴りつけようとするが、琴鳴は引き下がろうとしない。
「勝成さん、ここは受けましょう。彼が何を考えて私達に勝負を挑もうとするのかは未だに分かりませんが、少なくとも達也殿と戦うよりは断然良い筈です」
「それは、そうかもしれないが……!」
「あたしは、むざむざやられたりしません。この勝負、必ず勝って見せます」
「琴鳴……しかし」
「マスター、大丈夫ですよ」
本当に大丈夫なのかと心配する勝成に、今度は奏太がフォローするように言ってきた。
「俺がいる以上、姉さんに指一本触れさせたりしません」
「奏太……」
「それにあの身の程知らずは、マスターを散々侮辱したんです。正直言って、俺はもう我慢の限界なんです」
二人が自分の為に戦おうとしてる事が充分に伝わったのか、勝成は根負けしたかのように嘆息する。
「……分かった。お前たちを信じる」
勝成は決断する。自分もその気持ちに応えなければならないと。
「勝ってこい。琴鳴。奏太」
「任せてくれ!」
「お任せください!」
勝成からの指示に堤姉弟はそう叫んで、隆誠の正面に進み出た。
肝心の隆誠はやっと終わったかと少しばかり呆れた感じで、二人と同じく前に出る。
「このまま始めますか? それとも場所を変えた方が良いですか?」
隆誠の問いかけに、琴鳴がチラリと背後を窺う。既に離れている勝成は彼女の視線に頷いたのを確認しながら、再度隆誠の方を見る。
「このままで結構よ」
「じゃあ」
「!?」
隆誠が一言を告げて強く睨んだ直後、琴鳴は突如苦しみ始めるのであった。
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