再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
深雪と水波が琴鳴を介抱している最中、達也は『再成』を使って勝成と奏太を元の状態に戻していた。
最初に目覚めたのは勝成だった。奏太と同じくかなりダメージを負っていたが、意識までは完全に失っていなかったのだ。
勝成はすぐに堤姉弟の容体を確認しようとするも、すぐに隆誠が遮りながらこう言った。
「勝成さん、大事な二人の安否を確認したいのであれば、このまま俺達を通して頂けますよね?」
「……分かった」
隆誠は単に確認として訊いただけなのだが、勝成からすれば警告と言う名の脅しにしか聞こえなかった。『まだ邪魔をするなら、今度は二人を殺す』と解釈した為に。
彼は堤姉弟を圧倒した上に、割り込んで入ってきた自分を難なく倒した。それだけでなく重傷を負った自身や奏太を、妨害する筈だった達也によって救われ、琴鳴は今も深雪によって介抱されている。意図的に借りを作らされた状況である為、今の勝成は素直に通すしかなかった。仮に反故すれば自身の立場が更に悪くなるだけでなく、達也と深雪も完全に自分を敵として排除するのが目に見えている。最早何をしようとしても詰んでいるので諦めるしかない。
勝成の返事を聞いた隆誠はバイクに乗ってからヘルメットを被り、車に乗り込んで発進した達也達の後を追うように走行するのであった。
☆
「大変でしたわね、隆誠さん。まさか勝成さんがそのような事をしていたなんて」
場所は変わって真夜の書斎。
つい先程まで達也達と一緒に四葉本家へ到着した隆誠だったが、途中で彼等と別れる事になった。
使用人の案内により、隆誠が洋風の客間で寛いでいる中、真夜専属の執事とも呼べる葉山より呼び出しをされた。真夜様が隆誠殿にお会いしたいので、どうか書斎へ来て下さいと。
気遣うように言ってくる真夜の台詞を白々しく感じるも、隆誠は以前のように用意されたコーヒーを飲みながら、道中で起きた勝成の件について報告を終えて今に至る。
「貴女はそれを見越して、俺を今日此処へ来るように命じたのでしょう?」
隆誠が思わず皮肉を言い返すも、真夜は用意されたハーブティーを飲みながら聞き流していた。
「まぁ、
本来であれば勝成のやった事は四葉家当主に対する反逆と見なしてもおかしくない。隆誠が爪弾き扱いされようとも、真夜の命令を誰かが妨害された事を訴えるだけの発言力は持ち合わせている。
しかし当の本人は、まるで勝成の事を全く眼中に無いように言い放った。それを聞いた真夜だけでなく一緒にいる葉山も、勝成に対して内心少しばかり気の毒に思ったが、そこは敢えて顔に出さないでいる。
「俺はこの後どうすれば良いのですか?」
明日に参加する慶春会の前日に来るのは当然だが、偶然を装って達也達に鉢合わせるよう仕向けたのだから、絶対何かをやらせるだろうと気付いていた。
隆誠からの質問に、真夜は笑みを浮かべながらも答えようとする。
「今夜七時に奥の食堂で、達也さんも含めた次期当主候補を集めた食事会を始めます」
食事会で明日の慶春会で行う次期当主の指名を事前に伝える為の通達をするのだと、隆誠はすぐに察した。
確かに大事な行事の真っ最中に突然指名されたら、誰でも冷静ではいられなくなる。そうならないように予め話しておく為の場を設けるのは当然でもあった。
「候補じゃない筈の達也もいると言う事は、俺もそれに参加するのですね」
「ええ、そうです」
隆誠が確認の意味も込めて言うと、真夜は正解だと言わんばかりに頷く。
深雪のガーディアンである筈の達也はともかく、候補でもガーディアンでもない隆誠が参加するのは普通に考えてあり得ない。しかし、真夜が許可を出してしまえばどうとでもなってしまう。
流石に四葉家当主の言葉に反論しないかもしれないが、敢えているとすれば、未だに隆誠の実力を知らない黒羽家の双子である文弥と亜夜子だけ。既に実力差を思い知らされている達也と深雪は勿論のこと、勝成や夕歌も表立って反対しないだろう。特に勝成は数時間前、隆誠に文字通り痛い目に遭わせられたのだから。
隆誠としては参加したくない気持ちであっても、此処へ呼ばれた以上仕方ないと割り切って一先ず了承する。
「因みに隆誠さんは、私が誰を次期当主に指名すると予想していますか?」
「魔法力
「あら、まるで他は論外だと言いたげね」
自身の姪が侮辱されているのに、真夜は隆誠の評価が気になっていた。
もっと具体的に教えて欲しいと言われた為、隆誠は正直に答えようとする。
「深雪は外見や魔法が完璧でも、中身は今も幼稚な子供同然です。特に酷いのは達也関連で、少しでも侮辱すれば感情が昂って魔法も発動させてしまうどころか、その相手を平気で凍らせようとする悪い癖があります。アレは兄離れさせない限り、一生治らないでしょうね。まぁそれは達也も少々似ている点がありますが、ね」
「……………」
隆誠がズバズバと容赦無く手酷い評価を下している事で、真夜は何も言えずに無言となっていた。
彼女は知っている。去年の九校戦で達也のやった事を隆誠が深雪に指摘した際、『ニブルヘイム』を使って凍らせた事を。他人同然のように嫌っていたとは言え、身内を平然と凍らせる深雪の行動は、確かに大問題としか言いようがない。尤も、その深雪は死の恐怖を与えられた事で多少改善されているが、あくまで隆誠に対してだけに過ぎない。
いくら恐怖の対象となっている異母兄の前で取り繕っても、他の人物が達也を侮辱したら同じ事を繰り返す。故に隆誠は深雪が次期当主になって欲しくないと思っている。だがそれは非魔法師である彼の意見に過ぎなく、深雪を推そうとする四葉家の魔法師からすれば知った事ではない。
「あくまで俺の個人的な意見に過ぎませんから、真夜さんは気にせず深雪を次期当主に指名しても結構ですよ」
「……まぁ、私が誰を指名するかは、食事会の時まで楽しみにしてください」
隆誠は今回の食事会で深雪を選ぶのを予想しているから、戯言として聞き流して欲しいように言った。
だが、真夜としては内心聞き流す事が出来なかった。それどころか隆誠には今後深雪だけでなく、達也の手綱を締める為の役割を是非ともやって欲しいと改めて考えていた。
次回は次期当主候補達との食事会です。
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