再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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今回はフライング投稿です。


真夜の計画

 食事会が中断となった後、食堂には隆誠と真夜が残っている。

 

「ふぅっ。まさか深雪さんがあのような表情になるなんて、本当に驚きましたわ」

 

 ストレートの紅茶を飲んでいる真夜は、思ったままの感想を口にしていた。

 

「一年以上も経てば綺麗さっぱり忘れると俺は予想してましたが」

 

 対して隆誠もブラックコーヒーを飲みながら、深雪が未だに以前の恐怖を忘れていない事に少々驚いていた。

 

 二人は飲み終えたのか、カップをテーブルの上に置く。

 

「まぁそれとは別に、俺を補佐役にするなんて、真夜さんも随分思い切りましたね。尤も、周囲は達也がなると予想していたみたいですが」

 

 達也は深雪のガーディアンとして活動しているだけでなく、魔工師トーラス・シルバーの名前で魔法界全体の進歩させる目覚ましい功績を次々と上げ、国防軍では大黒竜也と言う偽名で非公式の戦略級魔法師として扱われている。その事情を知っているからこそ、深雪だけでなく、文弥達も達也こそが補佐役に就くべきだと考えていた。

 

「ならば隆誠さんは、達也さんが補佐役に相応しいと思いますか?」

 

「相応しくないどころか、論外ですよ」

 

 素晴らしい功績を持っている筈の達也に、隆誠は一瞬で切り捨てた。

 

 余りにも容赦の無い返答に、流石の真夜も苦笑するばかりだ。

 

「達也は例えどのような状況であろうと、深雪にだけ必ずベストな選択を取ろうとします。そんな妹至上主義な奴に補佐役を任せたら、四葉家の行く末がどうなるかは真夜さんも容易に想像が付くと思います」

 

「………それは、確かに」

 

 真夜が改めて想像した結果、段々苦々しい表情になっていく。補佐役となった達也が、深雪の為に何かを成し遂げようとする際、毎回周囲からの猛反対を押し切って必ず実行する姿を思い浮かべたから。

 

 本当なら叔母として自身の甥を擁護すべきなのだが、隆誠の言ってる事は決して間違っていない為に否定出来なかった。

 

 すると、隆誠はある事を口にした。

 

「ところで真夜さん、そろそろ本題に入りませんか?」

 

 真夜が食事会についての話をする為に残るよう命じた訳ではないと、隆誠は既に気付いている。

 

「もう、隆誠さんは相変わらずせっかちね。もう少しくらい興じてくれても良いのに」

 

「俺がいつまでも此処で貴女と長話をしていたら、周囲から要らぬ誤解を招きます」

 

 隆誠の言う周囲とは、各分家の事を指している。

 

 食堂で隆誠と真夜が仲良さげに話していると彼等の耳に入れば、少しばかり不味い状況になってしまう。

 

 彼の危惧を聞いた真夜は、仕方ないと言わんばかりに嘆息していた。

 

「では、場所を変えましょうか」

 

 真夜が立ち上がると、葉山がドアを開け、隆誠も彼女の後に続く。

 

 

 

 

 

 

 連れて行かれた先は、食事会が始まる前に来た真夜の書斎だった。

 

 もうこれで三回目だなと思いながらも、隆誠は数時間前に利用していたソファに再び腰を下ろす。向かい側にいる真夜も同様に。

 

隆誠様(・・・)、先程と同じくコーヒーはブラックでよろしかったでしょうか」

 

 葉山から突然「様」付けで呼ばれた為、隆誠には違和感しか覚えない。恐らく真夜の口から補佐役に任命した事もあって、呼び方を改める事にしたのだろう。

 

「いえ、今度はミルク入りでお願いします」

 

「かしこまりました」

 

 だが隆誠は敢えて気にせず、自然な口調でミルク入りコーヒーを頼んだ。

 

 オーダーを聞いた葉山は隆誠の前にコーヒーを置いた後、真夜の前にハーブティーを置く。

 

 真夜がカップに口を付けたのを見てから、隆誠もコーヒーを一口含む。

 

 相も変わらず美味いコーヒーだと、隆誠は内心称賛している。ミルクと言う異物が入っても、味が全く損なわないようにしているのは、恐らく魔法を使ったのだろうと察している。

 

 隆誠と真夜は軽く飲んでから、カップをソーサーに戻して互いに目を合わせようとする。

 

「さてと……。何からお話ししようかしら」

 

「その前に、訊きたい事があります」

 

「あら、何かしら?」

 

 自分から本題に入ろうとしていた隆誠が、突然話の腰を折った。

 

 真夜は少々意外そうに見ながらも、慌てる様子を見せていない。

 

「何故貴女は俺を利用してまで、達也と深雪を縛り付けたいのですか?」

 

 今もあの異母弟妹を縛り付けようとする本当の理由を、隆誠は知りたかった。

 

 達也と深雪が父の前妻『司波(しば)深夜(みや)』の子供で、他の魔法師達とは比べ物にならない実力や強力な魔法を持っている。深夜の妹である真夜が、甥と姪を自身の手元に置いておきたいのは理解しているのだが、今まで秘匿にしていた筈の隆誠の実力を公表してまで補佐役に就かせたいのには、何か他にも理由があるのではないかと推測していた。

 

「あの二人が四葉家を離反する意思を持っている事ぐらい、真夜さんは見抜いていた筈です。別に俺を補佐役にせずとも、他にも方法はあったと思いますが」

 

「成程、隆誠さんはそのように考えていましたか」

 

 隆誠の推測に、真夜は否定する様子を見せていなかった。

 

「確かに貴方の言う通りです。私はあの二人の考えを既に知っていて、それを未然に防ぐ為の手段も以前から用意していました」

 

 ですが、と言って真夜は更に続ける。

 

「隆誠さんのお陰で、私の計画が破綻してしまったのです」

 

「俺が?」

 

「ええ。去年の九校戦で、貴方があの達也さんを圧倒出来る実力を持っているだけでなく、更には『眼』を強制封印可能な手段もあると聞いた瞬間、全てが水泡に帰すような気分になりましたわ」

 

「……………」

 

 真夜がまるで『全部お前の所為だ』と非難するような感じで言ってくる為、隆誠は少しばかり気まずい気持ちになっていた。

 

 全く知らなかったとは言え、真夜の計画を破綻させてしまったのは完全に予想外だった。

 

 隆誠は申し訳ない事をしたと思っても、微塵も後悔していない。何しろあの二人は九校戦で両親や会社に多大な迷惑を掛ける行為をやらかした挙句、それを指摘した際には問答無用で自分を殺そうとしたのだ。もしあのまま何もせずに放置していれば、あの二人は今後も周囲の事を全く考えずに迷惑行為を行っていただろう。

 

「その破綻した計画を再度練り直した結果、真夜さんは俺を補佐役にしたと言う訳ですか」

 

「ええ。と言うより寧ろ此方が効果覿面だったと、達也さんや深雪さんの顔を見て一目瞭然でしたわ」

 

 食事会の時に隆誠が補佐役に任命された際、達也と深雪は明らかに恐怖していた。丸分かりな反応を示した姪とは別に、普段感情を表さない筈の甥ですら驚きの声を発していたから、それを確認した真夜は想像以上の効果だったと改めて認識した程だ。

 

 本音を言えば、彼女としては隆誠を次期当主に指名したかった。しかし、圧倒的な実力を持つ彼を下手に強制するような暴挙に出たら最後、自分も達也達と同じ末路を辿ることになっていたので、断る彼を前に引き下がるしかなかった。補佐役をさせるのは苦肉の策だったが、これはこれで却って好都合な結果になって喜んでいるのは真夜の胸の内に閉まっている。

 

「と、この返答を聞いて満足しませんよね?」

 

「ええ。まだ肝心な部分を聞いていません」

 

 真夜の返答は、あくまで計画していた内容に過ぎない。達也と深雪を縛り付ける理由を一切答えていないのだから、隆誠はあくまで前置き話を聞いただけだった。

 

 彼女としては余り話したくないのだが、相手が相手なだけに下手な嘘を言う訳にいかない。

 

「一応確認しておきたいのですが、隆誠さんは達也さんと深雪さんの事について、どこまで知っていますか?」

 

「どこまでと言われても、俺は貴女から教えられた情報しか知りません」

 

 神の能力(ちから)を使って二人を調べた際、明らかに異常なのは既に知っている。だがそれは流石に言えなかった為、隆誠は敢えて全く知らないように振舞うしかなかった。

 

 先ず達也に関しては、去年の九校戦で徹底的に叩きのめして気絶させた後、異母弟の頭の中を探って一通りの情報を得ている。魔法や精霊の眼(エレメンタル・サイト)だけでなく、四葉家から与えられた過酷な訓練、更には非道とも言える精神改造など行われた記憶(じょうほう)も読み取っていた。その結果、達也は唯一残された深雪に対する兄妹愛を優先しようと、極端な妹至上主義の行動が目立つ事になっている。それを知った時の隆誠は、精神改造を実行した司波深夜に対して侮蔑の言葉を吐き出したいと思ったほどだ。

 

 次に深雪だが、普通の人間とは大きく異なっている。それが何なのかは隆誠は未だに判明してないが、まるで完成された美しい人形だと錯覚するような強烈な違和感を抱く程度までは。

 

 隆誠の言葉を素直に受け取ったのか、真夜は念を押そうとする。

 

「隆誠さん、これから聞く内容は決して他言無用にして下さい。良いですね?」

 

「? 分かりました」

 

 今まで以上に真剣な表情で言ってくる真夜の念押しに、隆誠は不可解に思いながらも了承した。




原作では達也が真夜と話していますが、此方では隆誠になっています。

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