再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
「先ずは達也さんの出生からお話ししましょうか」
真夜が話そうとする内容が明らかに違うのだが、そこから聞かなければ話が進まないのだろうと思った隆誠は黙って傾聴する事にした。
今から十八年前、司波深夜が龍郎との間に子供が出来た事を知った四葉一族は歓喜した。その生まれる子供が、世界最高の精神干渉系魔法を持つ素晴らしい魔法師になると淡い希望を懐きながら。
話を聞いてる途中、父の龍郎がその時点で用済みになったと隆誠は察した。有無を言わさず容赦無く本家から閉め出されたのだと、連中の身勝手な行為に少しばかり怒りが湧くも、もうそれは古い話なので今更抗議する気も無い。その心情とは別に、真夜の話はまだ続く。
しかし、四葉一族に大きな誤算が生じてしまう事態になった。その生まれた子供は四葉一族が望んでいた魔法とは別に、『世界を破滅させ得る魔法』が与えられていると判明。全ての物質と情報体を壊す『分解』、全ての物質と情報体を二十四時間以内に限り復元する『再成』、死なない限り何度でも蘇る『自己修復』の三つがあると。
それらの魔法は四葉一族が望んだ魔法では無い為、各分家は一ヵ月以上続いた結果、『いますぐ殺すべきだ』と言う結論に至る。
余りにも身勝手過ぎる当時の分家達に、隆誠は本当に救いようのない連中だと心底思った。母の小百合と結婚する予定だった父の龍郎を強引に別れさせた挙句、結婚させた司波深夜が身籠ったと判明した直後に容赦無く閉め出しておきながら、生まれた子供が危険と言う理由で殺そうとしたのだ。それが人間としての本能なのは充分理解していても、人間に転生した元神としては反吐が出そうになる。
分家達の結論に、当時四葉家の先代当主で真夜の叔父『
そこから先の話は、隆誠が達也の頭の中から得た記憶と殆ど同じだった。徹底的な戦闘訓練を施し、感情を抑え込む措置として精神改造を施した結果、今の達也が完成し、晴れて深雪のガーディアンになったのだと。
「成程。倫理観の欠片が何一つ無い
「そこは否定の仕様がありませんね」
隆誠の発言は明らかに四葉家に対する侮辱なのだが、真夜は眉一つ動かさなかった。あくまで苦笑だけに留まっているだけだ。
「尤も、達也さんを簡単に圧倒する隆誠さんも充分非常識なのですが」
「…………………」
真夜からお返しの発言をされた事で、隆誠は途端に無言となっていた。
隆誠の侮辱が真夜の皮肉でお相子になった為、二人は何事も無かったかのように話を進める。
「取り敢えず達也を手放したくないのは理解しました。貴方が俺を補佐役にしたいと言う理由も含めて、ね」
しかし、と言って隆誠は話を続ける。
「達也を深雪のガーディアンにさせたのは何故ですか? あくまで自分の見解ですが、深雪は今も兄の達也の為に何でも尽くそうとする悪い傾向が強く見受けられます」
制裁を下した後で深雪本人から聞いた話によると、去年の九校戦で飛行魔法を無断使用したのは、達也の功績を世間に認めさせたい為に思わずやってしまったとの事だ。尤も、そんな理由を隆誠が知ったところで簡単に許してはいない。会社に一切相談もせず勝手な振る舞いを行った事に変わりない為、『お前に次は無い』と警告したのだから。
「そうでしょうね。何しろ深雪さんは、達也さんの為に作られた『調整体』なのですから」
「な……」
あっけらかんと答える真夜に、隆誠は思わず言葉を失った。
調整体とは、遺伝子調整技術により製造された魔法師を指す。それによって強力な魔法師が生まれる事を隆誠は勿論知っているが、元神の視点から見れば唾棄すべき行為だと思っている。大人の勝手な都合で子供の遺伝子を弄るなど、決してやってはいけない事だと。
だけど同時に、今までの違和感も漸く氷解した。深雪がまるで人形みたいに感じたのは、調整体による違和感だったのだと納得した為に。
「……俺の知識が正しければ、確か調整体は遺伝子操作された事で不安定が生じる筈では?」
遺伝子操作で強力な魔法師が生まれると言っても、それを行うリスクも当然ある。少しでも遺伝子の内容を誤ってしまえば、生まれた際には何らかの異常が発生してしまう。例えるなら、肉体の一部や五感に障害が起きるどころか、場合によっては奇形児が生まれる恐れもある。他にも多くの事例があるが、それだけ遺伝子操作を行うのには危険だと言う事なのだ。
それなのに、肝心の深雪は違和感があっても、身体は至って健康的で、魔法力に関しても何一つ問題が無い。寧ろあそこまで完璧な調整体が存在するのかと、思わず疑問を抱いてしまう程だった。
「普通ならそう考えるでしょうけど、深雪さんに不安定さが見られないのは、彼女が『完全調整体』とでも言うべき四葉の最高傑作だからよ」
「完全調整体……」
聞き慣れない単語に隆誠は思わず鸚鵡返しをするが、まだ続きがあるように真夜は再度口を開く。
深雪は達也の力の暴発を止める為に作られた調整体魔法師で、隆誠とは違う歯止め役を与えられた存在。故に達也の為だけに産まれた女の子なのだと。
「大体あんなにきれいな女の子が自然に生まれてくる筈が無いでしょう? あんなに完全な容姿、あれほど完全に左右対称な身体の持ち主なんて、自然に――」
「真夜さん、途中から嫉妬が混じってませんか?」
「っ!」
言ってる最中にも拘わらず隆誠に指摘された事で、真夜はハッとしたかのように口を閉ざした。その直後にゴホンと軽く咳払いをすると、気を取り直した表情になる。
「とは言え、例え同じ手順を繰り返して深雪さんみたいな子が造れるとは思えないのだけどね。そう言う意味では、人と自然を超えた、神の奇跡に成る美貌と言っていいかもしれないけど」
神の奇跡と聞いて、隆誠は思わず鼻で笑いたくなりそうだが何とか堪えていた。自分が知ってる世界でないとは言え、嘗て『聖書の神』と呼ばれていた隆誠からすれば、余りにも滑稽な発言だったから。
「因みにその完全調整体とやらは、深雪本人も知っているのですか?」
隆誠の質問に、真夜は憐れみを浮かべながら首を横に振った。
「いいえ。深雪さんには知らせていないし、達也さんですら今の話は全く知らないわ」
加えて他にも、分家の当主も誰一人として知らないとの事だった。知っているのは前当主の四葉英作、故人の司波深夜、四葉真夜、葉山、最後に調製施設を統括していた一部の関係者。そして今この場で知ったばかりの隆誠も含めて。
「では後ほど教えるのですか?」
「当初は達也さんに話そうと計画していましたが、その必要が無くなりましてね」
それはつまり、自分が真夜の計画を破綻した事に大きく関係してるのだと隆誠は即座に察した。
「まぁ、もし隆誠さんが内密で二人に話したいのでしたら構いませんよ」
「そんな気は毛頭ありません。と言うより、俺には全く関係の無い事ですから」
隆誠としては、達也と深雪を縛り付ける理由を知りたいだけだった。
異母弟妹に対して今更仲良くする気は無い上に、出生を聞いた後に同情する気も皆無だと言っていい。どんな事情があるにしても、あの二人は身勝手な振る舞いを行って隆誠を敵に回したのだから、同情の余地が無いのは当然と言えよう。
すると、隆誠はふと急にある疑問が浮かんだ。
「チョッと待って下さい。貴女は先程、深雪は達也の為に作られた『完全調整体』と仰っていましたが、一体何の目的があってそうさせたのですか?」
いくら深雪が達也の暴走を止める為とは言え、態々調整体にする必要性は感じられないと隆誠はそう思った。
質問をされた真夜は、途端に無言となって眉を顰めていた。彼女の気分を害したのであれば、隆誠はすぐに引き下がっていただろう。だが、今の彼は何故か嫌な予感がした為に話を続けようとする。
「真夜さん、この期に及んでダンマリは無しにして下さい。もし嘘を吐いたら、補佐役の話は無かった事にさせて頂きますよ?」
「……はぁっ。まさかこの土壇場で、そのような脅しをしてくるなんて思いもしなかったわ」
折角隆誠が補佐役になるのを引き受けてくれたのに、ここで反故にされたら、折角練り直した真夜の計画が再度台無しになってしまう。
そう考えた真夜はカップに入ってるハーブティーを飲んだ後、意を決して話す事にした。
「実は完全調整体にしたのは、達也さんの暴走を止める以外の目的もありました」
もう隆誠さんの所為で既に破綻していますけど、と真夜は付け加えた後にこう言った。
「深雪には私の息子になる予定だった達也の婚約者にするつもりだったの」
「…………は?」
いきなり真夜がとんでもない事を口走った所為で、今回ばかりは隆誠も流石に目が点になるのであった。
原作で計画していた事を真夜が隆誠に話す展開にしました。
感想お待ちしています。