再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
どうやら風邪気味で頭が回っていないみたいです。
また改めて、あけましておめでとうございます。
「………真夜さん、本気でそんな事をするつもりだったのですか?」
既に破綻していたとは言え、以前まで真夜がやろうとしていた計画はとても正気ではなかった。狂っていた計画、と言うのが正しい表現だろう。
達也が真夜の息子になる予定だった。そこはまだ許容範囲内なので、然して問題無い。恐らく真夜が四葉の後継ぎとして達也を、養子として引き取ろうと考えていたに違いない。子供がいない彼女であれば充分理解出来る。
しかし、深雪を達也の婚約者にするなど普通に考えてあり得ない。あの異母弟妹は隆誠と違って、同じ母親から生まれた実の兄妹だから、言うまでもなく近親婚になってしまう。
「達也をご自分の養子にするのはまだしも」
「養子ではありません。達也さんは私の実の息子にするつもりでした」
隆誠が言ってる最中に真夜は即座に違うと否定した。
「実の息子って……達也は貴女の姉である司波深夜さんの息子の筈では?」
「確かにそうですね」
今度は否定せずに頷く真夜だったが、実の息子にする理由を話そうとする。
昔の『事件』が起きる前に採取した真夜の卵子を用いて、姉の深夜を代理母とした真夜の息子に仕立て上げようとしていたらしい。
「……既に故人とは言え、ご自身の姉を代理母にしてまで達也を実の息子にするのは、いくら何でも無理があり過ぎます」
達也は間違いなく司波深夜と父の龍郎との間に出来た子供なのだから、そこで真夜が急に割り込んで実は自分の息子だったと言ってるようなものだ。もしこれが隆誠以外の人間が聞けば、先ず間違いなく彼と同じ事を考えるだろう。
「どんなに誤魔化しても遺伝子上で言えば、達也は甥、貴女は叔母。それは決して変わらない事実です」
「言いたい事は分かります。でもね隆誠さん、精神的な面で言えば、達也は私の息子なのよ」
「精神的に……?」
肉体面でなく精神面で言い返してくる真夜に、隆誠は取り敢えず続きを聞く事にした。
「達也さんに宿った魔法を知って、叔父様達も貢さん達も最初に失望し、そして恐怖した。でも私は嬉しかった。歓喜の余り踊り出しそうになった。歓声を抑えるのに苦労したわ。だって達也さんの魔法は、私の望みを叶えるものだったから」
当時の事を思い出したのか、真夜は恍惚とした表情を浮かべていた。
「達也の魔法とは、もしかして『分解』の事ですか?」
「ええ、そうです。達也の『分解』は、あらゆる物質を元素レベルに、あらゆる質量をエネルギーに分解する事が出来る。つまり、地球を死の星に変える事が出来る」
真夜がこの後に何を言うのか隆誠はもう既に察しが付くも、敢えて何も言わずに聞きに徹していた。
「私の望みは、この世界に報復すること。私から過去と未来と、女としてのささやかな幸せを奪った、この残酷で理不尽な世界に」
「真夜さん……」
彼女がこのような事を言う理由は勿論ある。
今から三十年以上前、
しかし、突如出席者である一人の少女が誘拐されてしまう。その少女の名は四葉真夜。一緒に参加した恋人かつ婚約者の
三日後、真夜は救出されるも更なる悲劇が起きた。誘拐した大漢の崑崙方院によって非道な人体実験と言う名の強姦を繰り返され、子供を産む為の生殖能力を失う事になった。
その事実を知った当時の四葉家は当然怒り狂い、報復を行おうと一年後に大漢の崑崙方院に攻め入った。四葉家は死者を出しながらも、大漢側の死者は数千人以上に及んだ結果、中国大陸における現代魔法師一派は一掃され、そして壊滅する事になった。
余りにも苛烈とも言える報復によって、大漢崩壊の真実を知る者達の間で、四葉は『
「……因みに貴女の報復はもう断念したのですか?」
「いいえ、それはないわ」
分かっていながらも隆誠は訊いてみるも、予想通り真夜は未だに報復を諦めていなかった。
隆誠がいれば達也を今後も縛り付ける事が出来る。その為に真夜は彼を補佐役に命じたのだ。
真夜の馬鹿げた報復を隆誠がその気になれば簡単に阻止出来るのだが、それをやる気など微塵も無い。寧ろ、彼女に対して憐れみを感じている程だった。
此処で報復は止めろと口で言ったところで、真夜からすれば戯言にしか聞こえないだろう。大事な物を奪われた苦しみは当の本人にしか分からないのだから。
「計画が破綻しても、まだ充分に修正可能な段階よ。その為に隆誠さん、貴方には是非とも頑張って頂きたいわ」
「……………」
「それとも、今此処で私を止める? 達也さんを簡単に圧倒出来る貴方なら、私を殺すなんて造作も無いどころか、報告にあった化成体と一緒に四葉家を滅ぼす事だって簡単な筈よ」
無言になった隆誠を見た真夜は、自分の本心を聞いた事で阻止するかもしれないと考えたのだろう。
いくら真夜が四葉家当主であっても、隆誠からすれば単なる雑兵に過ぎない。以前に達也が『分解』を使っても全く効かなかったと報告を受けたから、彼女が得意とする魔法『
「……その返答をする前に、もう一つの疑問に答えて下さい」
「ええ、良いですよ」
「深雪を達也の婚約者にしようと考えていたのは何故ですか? あの二人は肉体的には紛れもなく実の兄妹ですから、夫婦にしようだなんて無理があります」
隆誠が気になっていたもう一つの疑問は、真夜が深雪を達也の婚約者にする事だった。
これも既に計画が破綻しているとは言え、隆誠からすれば簡単に流すことなど出来ない重大な案件とも言える。もしも実現していたら、彼は今後達也と深雪を、
「近親婚は将来生まれてくる子供に大きな悪影響が及ぶことくらい、真夜さんもそれ位は理解している筈です」
「それは隆誠さんの杞憂です。四葉の技術の粋を集結し『完全調整体』となった深雪は、仮に達也さんとの間に子供が出来ても遺伝子異常は決して起きない。そこは断言しておきます」
「……随分と自信持って言えるのですね」
「当然です。だって深雪さんは調整体の持つ全ての欠陥を克服し、人間以上に人間として完成された最高傑作だもの」
真夜がここまで断言出来るのであれば、深雪と達也との間に出来た子供は問題無いかもしれない。
「何度も言ってるけど、隆誠さんがいる以上その必要は既に無くなりました。もし深雪さんが知ったら、さぞかし大きなショックを受けるでしょうね。達也さんと結ばれる唯一の機会を、貴方が奪ってしまったのですから」
それは隆誠も容易に想像出来た。
深雪は兄の達也を深く慕っているどころか、結婚願望を抱いているのは隆誠も知っている。だから真夜のやる事が歪だと分かっていながらも、達也との結婚を喜んで受け入れていただろうと。
だが、そのまたとない絶好の機会を隆誠が潰してしまった為、次期当主の深雪は達也ではない誰かと結婚するのが決定となった。それが魔法師、四葉家当主の義務だと必死に己を押し殺しながら。
「深雪の心情など俺の知った事ではありません。と言うより、夢見がちな愚妹の妄想を現実になる前に阻止できて良かったと思っています」
「あらあら」
自身の姪を愚弄する台詞に、真夜は何も言わない。隆誠が異母弟妹に対して、もう殆ど見限っているのを知っている為に。
「さぁ、隆誠さんの疑問には全て答えました。それで、先程の返答を聞かせて頂けるかしら?」
深雪についての話を終えた真夜は、自分を阻止するか、もしくは自分に協力するかの返答を求めた。
それを聞いた隆誠は思考をすぐに切り替えようと、一旦ミルク入りのコーヒーが入ったカップに口を付けて飲んだ。一息で全て呑み干したのか、カップは空になり、それをソーサーの上に置く。
「真夜さんは四葉家の中で唯一俺と普通に接してくれましたし、感謝しなければならない恩もあります。もし此処で貴女を阻止する為に殺したら、俺は恩知らずの烙印を終生背負い続けるでしょうね」
ですが、と言って隆誠は更に続ける。
「達也を使って世界を破壊させる訳にはいきません。いくら真夜さんが嘗て理不尽な目に遭ったからと言って、それは貴女の個人的な願望に過ぎない」
もしも真夜が強硬手段として達也を暴走させる為に深雪を殺しても、隆誠は簡単に阻止出来る。世界を破滅させる魔法、即ち『
「隆誠さんらしくない曖昧な言い方ですね。私に協力するか否か、はっきり言って貰えるかしら」
余りにも中途半端な回答をする隆誠に、真夜はここで不愉快そうな表情になった。
「真夜さん、先程貴方は『女としてのささやかな幸せを奪った』と仰っていましたが、それは生殖能力も含まれますか?」
「……ええ、そうですね。子供を作り、母として我が子を両腕で抱きしめたい。女として生まれたのであれば、当然の願望ではありませんか」
何を当たり前な事を訊いてくるのかと呆れる真夜だったが――
「ならば複数の神霊と契約して新たな力を得た俺が、その失った生殖能力を元に戻し、そして子供を作れたら、世界に対する報復は諦めてくれますか?」
「「!」」
いきなりとんでもない発言をする事に彼女だけでなく、ずっと傾聴している葉山ですらも驚きの声を発するのであった。
感想お待ちしています。