再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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慶春会①

 2097年 元旦

 

 

 

 普段から早起きが得意な隆誠だが、今回はいつもと違って若干起きるのが遅かった。同時に少々疲れている様子を見せるが、日常には然して問題無い。

 

 慶春会に参加する為、前以て用意された和服を身に纏った隆誠は、達也達とは違う別の控えの間で待機する。

 

 そこは当然彼一人だけである為、誰かと話す事は一切出来ない。のだが――

 

 

 ――クゥン。

 

 ――クワァー。

 

 ――■■■……。

 

 

(大丈夫だって。心配するな)

 

 隆誠の影に潜んでいる神造精霊獣達がいる事で、話し相手には困っていなかった。

 

 昨夜の事があって心配そうに見るフェンや、新たに造り出した神造精霊獣達も同様に声を掛けていた。

 

 他の神造精霊獣達も誕生する際に愛情を注がれている事もあって、フェンと同じく主の隆誠に従順な性格となっている。こうまで自分を慕ってくれる純真な精霊を見て、異母弟妹も少しくらい自分に寄り添ってくれれば、あんな目に遭わずに済んだものをと一瞬考えたのは内緒だ。

 

 隆誠が精霊(こども)達を念話で安心するようにしている中、控え目な振袖を着た家政婦が控え室に入ろうとする。

 

「失礼いたします」

 

 入って来たのは、達也と深雪の家政婦である筈の桜井水波。予想外の案内役が自分のところへ来た事に隆誠は少々驚くも、それとは別に気になる事があった。

 

「ご当主様より、隆誠様の案内役を仰せつかりました」

 

「そうか。ところで、大丈夫か? 何だか凄く疲れているように見えるが」

 

 隆誠の言う通り、水波は昨日に顔を合わせた時とは全く異なるように消耗していた。

 

「いえ、大丈夫です。申し訳ございませんが、少々お急ぎ下さい」

 

「わ、分かった……」

 

 本人がそう言うなら仕方ないと、隆誠は言われた通り彼女の後に続いた。

 

 案内された一室の前に辿り着き、水波は畏まるように襖を開けると、四葉家が勢揃いしていた。隆誠の登場に各分家は驚くように見ており、上座の中央で正座して座っている真夜は歓迎の笑みを浮かべている。何故か昨日よりも肌がとても艶々して、いつも以上に若々しく感じるように見受けられるが。因みに真夜の隣に座っている深雪は、隆誠を見た途端に再び顔を青褪めようとするも、何とか堪えているのが丸分かりだった。

 

「司波隆誠様、おなーりー」

 

 水波の口上に、隆誠はこめかみが引きつっていた。昨夜に聞いていたとは言え、本当にこんな事をするとは思わなかったから。

 

 使用人が一斉に平伏するに至り、隆誠は言われた通り端整な所作で膝を折り、威風堂々と一礼した。

 

 お辞儀を終えた隆誠はすぐに顔を上げて、水波の案内によって席に着く。

 

 再びざわめきが起こった。

 

 隆誠が、深雪と同じく真夜の隣の席に案内されたからだ。

 

「皆様、改めて、新年おめでとうございます」

 

 華麗な黒留袖(くろとめそで)を身に纏っている真夜の発声により、ざわめきが途端に収まり、出席者全員が「おめでとうございます」と唱和した。

 

「本日はおめでたい新年に加えて、あと三つ、皆様に良い知らせを伝える事が出来ます」

 

 そう前置きした真夜は先ず、勝成に目を向けた。

 

 隆誠も同様に向けると、羽織袴を纏った勝成の隣に座っている振袖姿の琴鳴がビクッと身体を震わせていた。恐らく昨日の件で未だに恐怖感が残っているかもしれないが、当の本人は素知らぬ振りをしている。

 

「この度、新発田家ご長男の勝成さんが、堤琴鳴さんと婚約されました」

 

 真夜の宣言に周囲からどよめきが起こった。驚きを示しつつも、反対を示す者は誰一人いない。寧ろ待ち遠しかったかのような雰囲気だった。

 

「これから先、楽しいことばかりでなく色々と苦労もあるでしょうが、今は若い二人の前途に盛大な祝福をお願いします」

 

 直後に拍手が湧き上がる。真夜が「色々と苦労も」と言う台詞を聞いて頷いていた者が多かったが、隆誠としては如何でも良い事だった。謝罪の意味も込めて、結婚式のご祝儀は必ず良い物を送ろうと考えながら。

 

「次に、皆様が最も関心を寄せていらっしゃることを、ここで発表させて頂きます」

 

 急に水を打ったように、周囲はしんと静まった。

 

「ふふっ。皆様、お分かりのようですね」

 

 じらすように笑う真夜に、隆誠は早くしてくれと内心突っ込む。

 

 それが通じた訳ではないが、真夜は次期当主の名を告げた。

 

「私の次の当主は、ここにいる司波深雪さんにお任せしたいと思います」

 

 瞬間、熱烈な拍手が起こった。その拍手は主に、本家の使用人だったが。

 

「ご挨拶とかは、また別の機会に。この慶春会は、そういう固いお話をする場ではありませんので」

 

 場を和ますように言ってる真夜に、この後には絶対一波乱が起きる事を隆誠は既に予想していた。もしかしたら油断させる為に言ってるかもしれないと思いながら。

 

「そして最後のお知らせです。この度、異例ではありますが、次期当主の深雪さんを今後支える為の当主補佐として、深雪さんと達也さんの兄、司波隆誠さんにお任せしたいと思います」

 

 先程まで祝福の拍手とは打って変わるように、大きなどよめきが起こった。

 

 

「なっ……」

 

「今、なんと……」

 

「当主補佐!?」

 

 

 真夜の言った通り、当主補佐と言う異例な役割を聞いた途端、一同は信じられないと言わんばかりにヒソヒソと会話をしていた。

 

「失礼ですが、ご当主様。質問をお許し頂けますか」

 

 どよめきが起こっている中、夕歌の隣にいる女性がそう言いながら控え目に手を挙げた。その女性は夕歌の母、津久葉家当主の津久葉(とう)()

 

「何でしょうか?」

 

 余裕をうかがわせる笑顔で訊ねる真夜に、冬歌は余裕の無い強張った顔で問い掛けた。

 

「異例とは言え、本気で補佐を任せるおつもりなのですか? 彼が深雪さんや達也さんの兄君とは言え、魔法の素質は一切持ち合わせていないと記憶しているのですけど」

 

 冬歌は言うまでもなく隆誠を爪弾き扱いしている他、魔法が使えない出来損ないと蔑んでいた。そんな者が当主補佐に就かせるなど、正気では無いと思っている程だ。

 

「津久葉殿、娘の夕歌さんから聞いていませんか? 隆誠さんが並みの魔法師では到底不可能な功績を残したと言う話を」

 

「それは……」

 

 隆誠の功績について触れた途端、冬歌は段々と何も言えなくなっていた。

 

 彼女だけでなく、各分家も既に耳に入っていた。四葉家の汚点と言うべき爪弾き者が、自分達が知らない間にここ四年間の間に信じられない功績を残していた事に。特に文弥と亜夜子から聞いた黒羽貢は、「あの男が何故!?」と信じられないほどに驚愕していた程だった。

 

「ご当主様」

 

「あら、(おさむ)さん。何かしら?」

 

 いくら固い話をする場ではないとは言え、真夜としては本来『新発田殿』と話し掛けるべきだが、敢えて親しげに呼んだ。妖艶でありながらも恐ろしい笑みを浮かべる彼女に、理に凄まじいプレッシャーが襲い掛かるも何とか堪えようとしていた。

 

「私も息子の勝成から聞いております。確かに彼の功績は素晴らしいの一言に尽きますが、津久葉殿の言う通り、魔法の素質を一切持ち合わせてない彼に四葉の当主補佐に就かせるのは如何なものかと」

 

 聞いている隆誠は「おや?」と訝った。息子から聞いたと言うのであれば、自分との決闘で負かされたことは聞かされていないのかと疑問を抱く。

 

 勝成の方へ視線を向けると、隆誠と目が合った途端に逸らしていた。それは即ち、彼は自身の父に教えていないのだ。自分だけでなく、ガーディアンの堤姉弟が隆誠に大敗した事を。

 

 だが、それは却って好都合とも言える。もし理が知っていたら、今頃はあんな理性的な質問をしていないだろうから。

 

「別に魔法が無くても、魔法師を倒せる実力を持つ隆誠さんであれば、充分に深雪さんの補佐を務めれると思いますが?」

 

「そ、それを言うのであれば、まだ達也殿の方が宜しいかと」

 

 理としては擁護したくないのだが、背に腹は代えられないと達也が補佐になるべきだと反論した。

 

 他の分家当主達も苦々しく思いながらも、理と同じ考えのようで頷いている者もいる。

 

 因みにその達也は深雪の近くに控えており、何一つ口を挟もうとする気を一切見せていない。ただ黙って、今の状況を見守っているだけだった。

 

「達也さんは深雪さんを守る為のガーディアンなのですから、補佐に就かせる必要はありません」

 

 真夜は隆誠から、達也が補佐役になれば大変なことになってしまうのを聞いている為、立場は現状維持だと言い切った。

 

「し、しかし、魔法師でない者が四葉家当主の補佐を任せるなど」

 

 だがそれでも、理達は引き下がろうとする姿勢を見せない。

 

 彼等がこうも意地になっているのには勿論理由がある。今まで見下していた者が、急に自分達より上の立場になれば復讐される恐れがあったから。と言うより、隆誠のような小僧に良いように扱われたくないのが一番の本音だった。

 

 それを見抜いていながらも、真夜は少々困ったと言わんばかりな表情になっていた。

 

「隆誠さん、どうやら理さん達に証明しなければ無理なようです。お願い出来ますか?」

 

「仕方ありません。余り無駄遣いしたくないのですが、ここは分家の皆様に認めて頂く為に披露するとしましょう」

 

 真夜からのお願いに、隣に座っている隆誠は嘆息しながらも、覚悟を決めたように意を決した。

 

 そのやり取りを見た理達は、一体何の話をしているのかと不可解な表情になる。

 

 隆誠から確認を取った真夜は、再び彼等の方へ視線を向けてこう言った。

 

「実は、隆誠さんを当主補佐に任せるのには別の理由もあります。皆さんは勘違いしているみたいですが、彼は決して魔法が使えない訳ではありません」

 

 真夜の言い分に理達だけでなく、深雪や達也も訝るように見ている。

 

「私は専門外なのですが、聞いた話によると極めて特殊なSB魔法の使い手なのです」

 

(SB魔法だと?)

 

 聞いていた達也は途端に訝っていた。

 

 SB魔法、正式名称は『Spiritual Being(スピリチュアル・ビーイング)』と呼ばれ、精霊魔法の一種でもある。達也の友人である古式魔法師の吉田幹比古が得意としているが、一体何が違うのかと疑問を抱いているのだ。

 

「何でも、隆誠さんは通常の精霊ではなく――」

 

「――出てこい、氷の神霊よ」

 

 真夜が言ってる最中に、隆誠が何かを呼ぶような動作をした直後、彼の周囲から凄まじい冷気と思わしき想子(サイオン)が集束されていく。

 

 突然の事に、真夜を除く者達は途端に慌てふためいた様子を見せていた。

 

 達也もガーディアンとして深雪を守ろうと前に出て警戒している中、隆誠の頭の上から想子(サイオン)が集束していき――

 

 

「クワァァァァァァァ!」

 

 

『ッ!?』

 

 鷹とは似て非なる水色の身体をした怪鳥が出現するのであった。




新しい神造精霊獣を出しました。

水色の怪鳥は活動報告に書いた通りの内容です。

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