再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
慶春会自体は、それ以上のアクシデントが起こる事なく終わった。司波隆誠が次期当主補佐と言う立場に身分を書き換えられるも、世間に公表されはしない。
だが、それとは別に彼は四葉家の関係者だと知れ渡る。
四葉家が司波深雪を四葉家次期当主に指名した事を周知させれば、彼女の実兄である達也は勿論のこと、異母兄の隆誠も含まれている。
出来れば大学を卒業するまで秘密にして欲しかったが、次期当主補佐になる以上は仕方ないと割り切る事にした。学校で出来た友人達から距離を置かれてしまうのを覚悟しながら。
慶春会は無事に終了し、隆誠は四葉本家を後にしようとする。真夜が何故か隆誠を引き留めるような目をしていたが、そこは敢えて何も気付かないフリをした。これ以上彼女と一緒にいたら色々な意味で不味いと本能的に察した為に。
愛車として利用してるバイクに乗ってから約二時間経ち、東京に戻るのにはまだ数時間掛かる予定だった。高校に入ってからの夏休みや冬休みで修行の旅をする際にバイクを利用していたので、既に慣れてる隆誠には何の苦にもならない。
しかし、隆誠は途中から帰り道を変更していた。移動している最中、自身の跡をつけているのを気付いたから。それと同時に予想も付いている。恐らく犯人は四葉の分家連中で、自分が当主補佐となる前に始末する為に決断したと言ったところだろうと。
(オーラからして黒羽
隆誠が走行中に追跡している者達のオーラを探知したところ、慶春会に参加していた者の反応があった。
自分を追跡しているのは、間違いなく黒羽家だと隆誠は断定する。真夜が知っているにも拘わらず、自分たち黒羽が全く知らなかったとなれば諜報部門の恥も同然どころか、公衆の面前で暴露された黒羽家当主はさぞかし腸が煮えくり返っていただろう。
取り敢えず帰宅前に片付けておこうと決めた隆誠は、人目が付かない場所を見付け、休憩を装って停車する事にした。
数分経つと、数台の車が隆誠を取り囲んだ。車から出てきたのは思ったとおり黒羽貢だった。慶春会の時と違って和服姿ではなく、黒いコートを纏っている他にソフト帽を被っていた。アレが黒羽貢の仕事着なのだろう。
「これはこれは、黒羽殿ではありませんか。こんな所で偶然会うとは珍しいですね」
親しげな感じで話す隆誠だが、貢は興に乗る気が無いのか、即座に用件を言おうとした。
「司波隆誠、今すぐ次期当主補佐の地位を降りろ」
「いきなりですね」
ぶっきらぼうに用件を告げる貢に、隆誠は呆れるように嘆息した。
「俺が分家以上の地位に就くのが不愉快ですか? それとも
「貴様……!」
否定せず、殺気立つ貢は力強く睨んでいた。どちらも図星だったのだろう。
黒羽貢は途轍もない殺意を抱いている。同時に大恥も掻かされてプライドもズタズタだった。
今まで四葉家の汚点と蔑んでいた隆誠が、諜報を得意とする黒羽家を何度も出し抜いて大きな功績を挙げていたなど完全に予想外だった。当主の真夜が掌握していたのに自分達が全く皆無だったなど、諜報を統括する黒羽家からしたら大恥同然と言えよう。
更にそれだけでは飽き足らず、隆誠は魔法の素質が一切無いと断定していた筈なのに、慶春会ではとんでもない魔法を披露した。神霊を召喚させると言う規格外で恐ろしいSB魔法を使えるなど、一体誰が予想出来るだろうか。
だが、あの神霊魔法は相応の代償を伴うと分かった。会話の中で真夜が隆誠に訊いた際、『暫くの間は出せない』と隆誠は自ら口にした。即ち、自分から魔法の欠点を公表してしまった訳である。
曖昧な言い方であっても、今の彼はすぐに神霊を再度喚び出すのは不可能だと貢は判断した。魔法と言うのは強力であればあるほど、自身の身体に相応の負担が掛かる仕組みになっている。隆誠が素人であっても、それくらいの事を理解してるから、暫く出せないと言ったのが何よりの証拠なのだから。
だがしかし、アレが自分達を欺く為の
もし仮に、隆誠が自分達の知らない新たな魔法を使おうとしたら勿論迎撃するが、万が一の事も考えて文弥と亜夜子もいる。堂々と姿を現わした自分達とは別に、あの二人は隆誠が見えない死角の位置で控えさせているから。
特に文弥は隆誠に魔法の兆候が見受けられると判断すれば、相手の精神に直接痛みを認識させる系統外・精神干渉系魔法『ダイレクト・ペイン』を使う手筈になっている。それは息子の固有魔法であり、威力を一切落とさずに使用すれば強制的にブラックアウトさせる程の威力で、父親の貢ですら例外ではない。
今のところ此方が有利な状況だと、貢は荒ぶる心を抑えながらも紳士的な対応をする事にした。
「確かにその通りだ。いやはや恐れ入ったよ。今回は完全に私達の完敗と認めざるを得ない程にね」
だから、と言って貢は話を続ける。
「取引をしようではないか」
「取引?」
予想外な発言だったのか、隆誠は思わず鸚鵡返しをした。
「そうだ。もし此方の言う通りにしてくれたら、相応の便宜を図ると約束しよう」
(便宜、ねぇ)
胡散臭そうに言う貢に隆誠は内心呆れるも、それでも一応聞いておく事にした。
「君の父親をFLTの社長に昇進させよう。それと管理部門にいる母親は以前から戻りたがっていた研究員どころか、そこを統括する重役にしようじゃないか。どうだ、君にとっては悪い話ではないだろう?」
貢は隆誠が達也や深雪と違って、両親の龍郎と小百合を大切にしている事を以前から知っている。だから二人の昇進を餌にすれば、多少は揺れるかもしれないと提示する事にした。
「何を言い出すかと思えば」
隆誠は揺れるどころか、大変不愉快な目で貢を睨む。
「昇進なんて都合の良い事を言っておきながら、結局のところ、両親は今も飼い殺し状態と何ら変わりないじゃないですか」
「ッ……」
見抜かれていたかと内心舌打ちをする貢。
隆誠は知っている。龍郎と小百合が四葉家で不遇な扱いをされている挙句、飼い殺し状態にされている事を。
それでも両親は隆誠の前では一切おくびに出さず、目の前の仕事に日々奮闘している。その息子に夜食や着替えを頼むなど少々情けない姿を今も見せているが、家族愛を経験してる元神の隆誠としては楽しい平穏の一つだった。
その平穏を、貢は土足で勝手に踏み込んできたのだ。彼からしたら非常に如何でも良い事かもしれないが、隆誠にとっては許せないモノだった。
「そんな取引に俺が応じるわけないでしょう」
「ならば私は此処で君を始末しなければいけない」
貢がそう言った直後、黒服の連中が隆誠に向けてサイレンサー付きの拳銃を突き付ける。
「貴方も相当必死ですね。正式な当主補佐になるのを阻止したいが為に俺を殺すなんて」
「違うな。私達はこんな場所で君と会っていない。何故なら君は帰っている途中、不運にも此処で遭難死する事になるからな」
「ふむ」
絶対的に不利だと言うのにも拘わらず、隆誠は未だに慌てた様子を見せていない事に貢は一種の不気味さを伺わせた。それは彼の周囲にいる部下達だけでなく、後方に控えている文弥や亜夜子も含めて。
「ならば俺からも言わせて下さい。この辺りには危険な大蛇が潜んでいますよ」
隆誠はそう言った後――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
「きゃぁぁああああああああああああ!!!!」
『!?』
少年と少女と思われる大きな悲鳴が響き渡るのであった。
襲撃とはちょっと違いますが、黒羽家が隆誠を密かに暗殺しようと動きました。
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