再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
「文弥! 亜夜子!」
二人の悲鳴に貢が即座に反応した。
それは当然と言えよう。自分の大事な息子と娘の声を聞き間違える親などいる訳がないのだから。
心配の声を上げる彼を見た部下達も気になるのか、隆誠に武器を構えながらも悲鳴が上がっている方へとチラチラ視線を向けていた。
暗殺者を気取るなら動揺するなよと思いながら、隆誠は動き出そうとする。
「ぐあっ!」
「がはっ!」
「ぎっ!」
突然隆誠が消えたかと思いきや、貢の周囲にいる黒服の部下達が次々と一撃で倒されていく。
彼等の魔法師としての実力は貢は勿論のこと文弥や亜夜子に劣るが、格闘術や武器の扱いに長けている。だと言うのに、徹底的に鍛えられた筈の部下達が隆誠によって強制的に意識を失わされるのであった。
「たった一撃でこのザマとは情けないですね」
数秒も経たない内に全て倒した隆誠は、貢に向かってそう言った。
勝成やガーディアンの堤姉弟と違い、彼等は実戦経験豊富で多少出来るだろうと思いながら少しばかり実力を見せることにしたのだが、思わぬ結果に隆誠は内心失望していた。今のところ自分の
この世界の人間は
「貴様っ!」
貢は魔法を発動させようと精神干渉系の系統外魔法『
かなり洗練された投擲の所為か、針は隆誠の心臓目掛けて当たりそうになるも、寸でのところで防がれた。
「針ですか。確かに暗殺武器としては……ん?」
左手の人差し指と中指の間で受け止めた隆誠は、貢を称賛するように言うも、突如右肩に何かが刺さったような感じがした。
思わず見ると、そこには受け止めた針とは違う別の針が彼の右肩に突き刺さっていた。
それを見た貢は確信する。これで司波隆誠は間違いなく死ぬと。
黒羽貢の『毒蜂』は、認識した痛みを死に至るまで無限に増幅する。故に隆誠が針の痛みを認識した瞬間、正気を保つ事を許さない激痛が全身を駆け巡る事になるのだ。
この後に隆誠は激痛による悲鳴を上げる筈だが――二秒経っても全く無反応だった。
(どう言う事だ! 奴はもう針の痛みを認識している筈なのに!?)
自身が放った毒針は間違いなく発動しているにも拘わらず、隆誠から悲鳴が上がらないことに貢は内心困惑していた。
「残念でしたね。俺にこんな
「ッ!?」
隆誠は悲鳴を上げないどころか、全く効いてないと言いながら右肩に刺さってる針を指で挟みながら抜いて、持っている針をポイッと地面に放り捨てた。
「貴方には特別に教えてあげましょう。俺は神霊と契約して加護を得たのですよ。人間が使うあらゆる魔法を防ぐ事が出来る加護を、ね」
「何、だと……!」
あらゆる魔法を防ぐ加護があるなど、貢は俄かに信じられなかった。
神霊は精霊の源であり集まりで、自然現象そのものと言われているが、契約すれば加護を得ることが出来ると言う話は聞いた事も無い。
貢は嘗て古式魔法師の名門と呼ばれる『吉田家』の事を調べた事があった。その時に神霊と契約した吉田家の古式魔法師が、隆誠のように魔法を防ぐ加護を得たと言う情報は一切無い。
隆誠の言ってる事は戯言だと声高に否定したい貢だが、自身の魔法である『毒蜂』が全く効いていないのが何よりの証拠でもあった。
「そ、そんなもの、ある訳が……!」
(どうやら俺の嘘は相当効果があったみたいだな)
貢の台詞に隆誠は内心してやったりと笑みを浮かべていた。
神霊の加護など最初から存在しない。ただ単に隆誠が、神の
こんな規格外な
自分の
「信じる信じないは貴方の自由です。まぁそんな事より」
今も動揺してる貢を余所に、隆誠は一旦思考を切り替える事にした。
「俺からもお返しをさせて頂きましょう」
「!」
隆誠の発言に貢もすぐに思考を切り替え、今以上に距離を取って構えた。
だが――
(早く文弥と亜夜子の元へ向かわなければ……!)
今の彼は自分の子供達が気掛かりとなっている。
もしも先程の『毒蜂』で隆誠を仕留めた後、すぐに二人の元へ駆け付ける予定だった。しかし対象が未だ生きている為、それが叶わない状況になって踏み止まるしかない。
だが、そんな貢の心情を気付いているように隆誠はこう言った。
「そんなにあの双子の事が気になりますか?」
「………………」
自分に揺さぶりをかける為の挑発だと思ったのか、貢は反応せずに無言を貫く。
「もしかしたら今頃は……ふふっ」
「まさか……!」
まるで知っているように嫌な笑みを浮かべる隆誠に貢は突如嫌な予感が過った。文弥と亜夜子が悲鳴が上がって以降に何の反応を示さないのは、ソレが一切出来ない状況に陥っているのではないかと。
それと同時に、子供達はもう既に――
「貴様ァァァアアア!!」
親として考えたくもない最悪な展開を想像したのか、貢は暗殺者としてでなく、二人の親として激昂するのであった。
先程とは違う魔法を使おうとする貢に、隆誠はさっきと違って力強く睨んだ。
「が……かっ……」
すると、貢が魔法を使う寸前に異変が起きた。
彼はまるで苦しそうに両膝を地面に付け、両手で胸元を押さえようとしている。
(な、何だ!? 突然、呼吸が……!)
貢は突然の苦しみを受けながら混乱していた。辛うじて分かるのは、隆誠に睨まれた瞬間に苦しくなってしまった事だけ。
「ほう、まだ思考が働ける余裕があるんですね」
「き、さま……なに、を……!?」
まともに喋る事が出来ないにも拘わらず、貢は必死に言葉にして訊きだそうとした。
殺そうとした相手から訊き出すのはどうかと思われるが、それでも隆誠は付き合おうとする。
「貴方の肺機能を完全に麻痺させる為の『術』を使ったんですよ。言っておきますが、これは精神干渉系魔法とは全然違いますからね」
「そ、んな……こ、と、が……!」
隆誠が使ったのは、堤琴鳴に使用した『芯の一方』。相手の身体を動けなくする為の術だが、更に強くすると内臓まで停止させる事が出来る。その気になれば心臓を止められるが、今回は敢えて肺だけを停止させている。
「今の貴方の様子だと、精々数分が限界と言ったところですか。せめて死ぬ前に、二人の顔だけでも見せてあげましょう」
そう言った後に隆誠は、誰かに向かって「おい、二人を連れてこい!」と叫んだ。
直後に森林の方から、ノソノソと何かが這うような音がした。
そして――
「シャァァァァァァァ!」
「ん~~!」
「む~~!」
先程から隆誠が言っていた大蛇が本当に現れた。同時に草や蔦でグルグル巻きにされて身動きが取れない文弥と亜夜子を連れながら。
先に言いますと隆誠は貢を殺さず、後で助ける予定です。
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