再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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事後報告

 数時間後、隆誠は問題無く帰宅した。

 

 いつもなら遠出から返ってきた息子に両親の龍郎と小百合が出迎えるのだが、生憎二人はいなかった。仕事納めとなった去年の12月29日~1月3日まで旅行に行っているのだから。

 

 本当は息子も一緒に行く予定だったのだが、そこは隆誠が気を遣って辞退している。『やっと正式に結婚出来たから、新婚旅行だと思って行くと良いよ』と言われた事で、両親揃って柄にも無く顔を真っ赤にしていた。その後に龍郎と小百合が満更でもないように『隆誠がそう言うなら』と、二人は息子の気遣いに感謝し、予定していた家族旅行から新婚旅行へ急遽変更する事になった。出掛ける直前には何か遭ったら迷わず電話するようにと念を押され、隆誠は相変わらずだなと見送っている。

 

 二人が新婚旅行気分で行ってくれたのは、隆誠にとって非常に好都合だった。真夜から指定された呼び出しで四葉本家に向かうのに、何の弊害も無く運ぶ事が出来たのだから。尤も、両親が旅行から帰ってきた後、少しばかり大変な事態に遭遇してしまうが。

 

 後々の事を考えながらも、家に入った隆誠は手洗いやうがい、そして着替えを一通り終えて一旦リビングにあるソファに座って落ち着こうとする。両親がいないとは言え、いつもなら自身の部屋で過ごすのだが、これには理由があった。

 

 すると、まるで狙ってきたかのように、リビングにある電話が鳴り響いた。電話してきた相手が既に分かっているのか、隆誠は少しばかり嘆息した後に立ち上がり、通話をオンにする。直後、設置されてるテレビの画面もオンになり、そこには予想通りの人物が映し出されていた。

 

『隆誠さん、無事な姿を見れて安心しましたわ』

 

「……一応電話で問題無いと言った筈なのですが」

 

 身を案じていたと言う真夜の発言に、隆誠は少しばかり呆れるように言い返した。

 

 自宅に戻る数時間前、黒羽家を引き取って欲しい事を報告した際、無傷で撃退した事も当然話している。それを知っている筈の真夜が心配そうに言ってくるのだから、隆誠が呆れるのは当然と言えよう。

 

「私の身体を治して頂き、女としての喜びを(・・・・・・・・)教えてくれた(・・・・・・)隆誠さんの身を案じるのは当然ではありませんか」

 

 途端に恋する乙女のような表情になる真夜は、何だか深雪のように思えてきた。恋慕の情を抱いている達也を見ているみたいな感じがするのは気のせいだと、隆誠は敢えてそう言うことにしている。

 

「それはそうと、黒羽家は今どうしているんですか?」

 

 隆誠は話を逸らすかのように、黒羽家について訊いてきた。

 

 貢達は一旦此方で引き取ると真夜が言ったので、隆誠は場所を教えてから帰宅したのだ。そこは四葉家の担当地域となっている東海方面である為、真夜達が密かに動いても何の問題も無い。

 

 本題に入る隆誠に、彼女はまるで少女のように少々頬を膨らませるも、嘆息しながらも問いに答えようとした。

 

『貢さんたち親子は相当深い傷を負ったのでしょうか、未だに目が覚めておりません。貢さんの部下達は既に目を覚ましているのですが、訊いても全員が「分かりません」の返答ばかりで』

 

「そうでしょうね。ソイツ等は黒羽親子がどうなったかなんて一切知りませんから」

 

『やはりそうでしたか……』

 

 全員一撃で気絶させましたから、隆誠はそう付け加えた。真夜もそれは大体予想していたのか、特に驚いた様子を見せていない。

 

『もし宜しければ、どうやって貢さん達を倒したのか教えてくれませんか?』

 

「では簡単に――」

 

 真夜からの要望に隆誠は数時間前の状況を簡潔に説明し始めた。

 

 黒羽家は次期当主補佐になる隆誠を快く思わず、遭難死を装って暗殺を実行。

 

 貢は『芯の一方』で肺機能を麻痺させて心肺停止状態で気絶後に蘇生。

 

 亜夜子は土の神霊『オルム』によって拘束されながら、深雪と同じく顔を殴った後、腹部に強烈な一撃で止めを刺した後に気絶。

 

 文弥は亜夜子と同様に拘束されながら、芝居でオルムの生餌として食われかける寸前に気絶。

 

「――とまあ、こんなところです」

 

『……そ、そうですか』

 

 貢と亜夜子の話までは真夜は何ともなかったのだが、文弥の件になってから少しばかり顔を青褪めていた。無言のまま控えている葉山でさえも同様に。

 

 二人は話を聞きながら何とも愚かな真似をしたものだと少々憤るも、途中から一気に心底気の毒に思い始めた。特に生きたまま大蛇に食われそうになった文弥に対して。

 

『あの、隆誠さん。芝居なのは勿論分かっているのですが、土の神霊は決して人間を食べたりしませんよね?』

 

「当たり前じゃないですか」

 

 会話中、主の影の中に潜んでいるオルムから不快の念が伝わるも、隆誠は『本当にゴメン』と内心謝りながらも話を続けていた。

 

 真夜も無粋な質問をしたと思ったのか、一度軽く咳払いをしてから再度表情を戻す。

 

『一先ず理解しました。どうやら貢さん達は暗殺を強行するほど、相当追い詰められていたみたいですね』

 

 もし当主補佐が達也になっていたら、貢は多少の不満はあれど手を出さなかっただろう。文弥と亜夜子が快く受け入れるからと言う理由で。

 

 しかし、その子供達までもが父親と同じく、隆誠の当主補佐に反対する事に同調した為、暗殺を強行する事態になってしまった。

 

 黒羽家は諜報部門を統括し、四葉家にとって重要な役割を担う為に必要な分家の一つ。特に裏仕事が多い四葉家の中でも、更にその暗闇奥深くを担当している家でもあるから、四葉に対する貢献も分家の中でもかなり高い。如何に当主の真夜でも、今回ばかりは流石に見過ごすなど到底出来ない案件だった。

 

『とは言え、彼等が当主の私に弓を引いたのは確かです。如何に身内であろうとも、相応の処罰を下す必要があります』

 

「因みに、どのような内容になりますか?」

 

『そうですね。隆誠さんがお望みでしたら……もういっそのこと、黒羽家を取潰しても構いませんよ』

 

 処罰を下す内容に隆誠だけでなく、聞いている葉山も目を見開いていた。

 

 今の真夜は隆誠を恩人どころか、近い将来(・・・・)に大事な役割を担ってもらう大事な人と見ている。彼女が何故そのような事を考えているのかは、そこは敢えて省略させてもらう。

 

「いやいや真夜さん、それは流石に不味いかと」

 

『奥様、不躾なのは承知の上で申しますが、私も隆誠様の意見に賛成です』

 

 余りにも過激な処罰内容だから、止めさせようとする隆誠に葉山も口を挟んだ。

 

 黒羽家を処罰するにしても、家その物を取潰すのは色々な意味で危うい事になってしまう。もし実行すれば、四葉家を担っている筈の裏仕事を他に引き継がせる事になるが、各分家は諜報活動を得意としていない。ただでさえ四葉は人材が少ない状態だから、ここで黒羽家を失えば大きな損失になるのは確実だった。

 

『ならば如何なさいますか? 正直に言いますと、今の私はそれだけの事をしなければ気が収まらないのですが』

 

 笑みを浮かべながらも怖い事を言う真夜に、隆誠は彼女が相当本気で怒っているのが感じ取れた。

 

 葉山もこれ以上口出しをしなくなったが、真夜が見えない位置から隆誠に助けを求めるような視線を向けている。どうか奥様を宥めて頂くようお願いします、と言う感じで。

 

 それが伝わっている隆誠は勿論だと内心頷きながら、ある事を話そうとする。

 

「もう俺の方で手は打ちましたから、別に真夜さんから直接罰する必要はありませんよ」

 

『あら? 此方が引き取る前に、隆誠さんの方で何かしたのですか?』

 

 気になる内容だったのか、真夜は隆誠が貢達に何を施したのかを問う。

 

「俺の方で魔法を封じておきました。以前に達也の『眼』を封じたのと違って、今の黒羽家は一切魔法が使えない状態です。彼等には普段から蔑んでいた非魔法師の気持ちを理解してもらうのが一番効果的かと」

 

『『…………………』』

 

 黒羽家の魔法を封じたと聞いた瞬間、真夜は勿論のこと、葉山も完全に言葉を失っていた。

 

 魔法を使う事が出来ない。これは魔法師にとって一番致命的であり、ある意味『魔法師としての死を迎えている』も同然であったから。

 

「勿論解除する事も可能ですけど、取り敢えず向こうがどんなに泣きついてこようが、最低でも一ヵ月は過ごして頂きます。真夜さんも、それで構いませんよね?」

 

『……そ、そうですね。私もそれが妥当かと』

 

 先程まで貢達に激しい怒りを抱いていた真夜だったが、今はもう完全に消失していた。彼等がこの後に魔法師として非常に耐え難い時間を過ごす事を考るだけで、一気に憐れみをかけてしまう程だったから。

 

『しかし隆誠様。万が一に黒羽家の皆様が魔法を使わざるを得ない事態になれば、流石に不味いのではないかと思いますが』

 

「魔法なんて所詮は手段の一つに過ぎません。彼等は戦闘のプロなんですから、それを補う為の手段も当然持っている筈です」

 

 遠回しにやり過ぎだと葉山が若干苦言を呈するも、隆誠は全く問題無いように言い返した。これには反論の仕様が無いのか、彼は『大変失礼しました』と頭を下げて何も言わなくなる。

 

 すると、隆誠はもう黒羽家の事が如何でも良いのか、話題を変えようとする。

 

「そうだ真夜さん、明日には達也と深雪に会いに行きます」

 

『達也さん達に? あの二人は今回の件について、全く無関係の筈ではなかったかしら?』

 

 隆誠がいきなり達也と深雪に会うと言った事で、何故そんな事をする必要があるのかと真夜は不思議そうに問う。

 

「恐らくあの双子辺りが達也に『何とかして欲しい』とでも言って助けを求める筈ですから、俺の方で前以て釘を刺しておく必要があります」

 

 それに、と言って隆誠が――

 

「達也と深雪が魔法を封じられるのを覚悟で、再び俺に刃向かう意思があるかを改めて確認しておきたいので、ね」

 

『成程、そう言う事でしたの。ならば隆誠さんにお任せしますわ』

 

 本当の目的を教えた途端、真夜は特に反論する事無く了承するのであった。




次回で司波隆誠編の最終話になる予定です。

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