再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
先ずは黒羽家について簡単に報告する。
結論から言って、黒羽家は悲惨とも言うべき状況になっていた。貢達に魔法を使えないよう封印されている事を真夜から通達された際、それはもう大変ショックを受けていたとの事だ。
そこから先は人が変わったかのように、彼等は裏仕事に手を付ける余裕が一切無く、暫くは休業状態になっていたとの事だ。それを周知された黒羽家に与する者達は当然理由を求めるも、主の貢は一切公表せず一方的に話を終わらせている。
黒羽家の運営とは別に、貢達はその間に封じられた魔法を何とか解除してもらうよう四葉家当主に必死に懇願していた。しかし真夜は全く取り合わず、『次期当主補佐から受けた罰を甘んじて受けなさい』と一蹴される始末。更には最低でも一ヵ月はそのままだと言われた事で、黒羽親子は揃って顔が真っ青になる程だった。
一ヵ月も魔法が使えないのは魔法師としては致命的な期間である為、貢は今まで培ってきたプライドを断腸の思いで全て放り投げる覚悟を決め、魔法を封印した張本人である隆誠に会う事にした。勿論ただ解除して欲しいと懇願するのではなく、今まで蔑んでいた事も含めての必死な土下座をした。自分は一生封じられたままで構わないから、せめて文弥と亜夜子だけでも解除して欲しいと。
貢としても、たかが土下座しただけで隆誠が今までの事を簡単に許してくれるなど微塵も思っていない。しかしそれでも、これからの黒羽家を背負う予定である文弥と亜夜子の魔法師生命は何としてでも守りたかった。多感な時期である高校生の子供達が魔法を封じられた期間が長ければ長いほど、例え解除されても魔法不信に陥って魔法感受性を損なうどころか、下手をすれば魔法その物が完全に使えなくなる可能性が非常に高い。そんな事態になってしまえば黒羽家は本当の意味で終わってしまう為、何とか大事な子供達の将来だけを守ろうと、貢は自身の命を投げ捨てる覚悟で懇願するのであった。
そんな子供思いな父親の懇願を、隆誠は即座に却下する。『父親として大変ご立派かもしれませんが、子供達は貴方の頑張りを無下にしましたよ』と言いながら、録画したと思われる映像を見せた。文弥と亜夜子が密かに達也と深雪と接触し、自分や父親の魔法解除の他、是非とも隆誠を倒して欲しいと懇願している映像が。
隆誠が予想していた通り、文弥と亜夜子は達也に助けを求めていた。二人は魔法を封じられても懲りていないのか、あたかも司波隆誠を悪者扱いする挙句、尊敬する
達也と深雪は隆誠によって絶対的な力の差を教えられ、既に刃向かう意思は持ち合わせていない。それどころか、このように宣告されていた。『双子の為に手助けしても構わないが、承諾した時点で俺に対する反逆と見なし、お前達の魔法を永久に封印するからな』と言われた瞬間、異母弟妹は一気に顔を青褪めながら、隆誠に再度従う姿勢を見せることになった。文弥達が救援目的で家に来た場合、即座に断ると固く誓った程だ。
父親に内緒で反旗を翻す行為をしていた映像を見せられた事で、貢は完全に意気消沈する事になってしまった。自分のやった事が、愚かな事を仕出かした子供達の所為で何もかも無駄な行為だと悟った為に。それを見た隆誠が余りにも不憫だと思いながらも、2月以降には必ず解除する事を彼に約束し、無理矢理帰らせる事にした。後になって分かったが、普段から甘い筈の貢が珍しくも、文弥と亜夜子に巨大な雷を落としたらしい。
そして隆誠は約束通り、2月以降に貢達に施した封印を解除している。今度愚かな真似をした場合、一ヵ月どころか永久に封印すると脅しもしている。因みに文弥と亜夜子は父親に怒られた事もあってか、隆誠に対して二度と逆らわないどころか恭順の姿勢を見せていた。余りの変わりように隆誠が内心少しばかり引いていたが。
さて、次はその隆誠に関する話になる。
1月2日より、四葉家から魔法協会を通じて十師族、師補十八家、百家数字付きなどの有力魔法師に対し通知が出された。
司波深雪を四葉家次期当主に指名したこと。
通知内容だけを見ても隆誠は全く関係無いかもしれないが、実は思いっきり関わっている。深雪の家族構成の中に達也以外の兄、司波隆誠のプロフィールについて語られているから。
深雪の次期当主指名とは別に、隆誠の素性を見た事で大きく反応を示す者達がいた。
十師族では一条家当主の
師補十八家では一色家。その令嬢である愛梨は、件の横浜事変で敵兵に人質にされていたところ、隆誠に救われた恩がある。『囚われの
百家では千葉家。この中で次男の修次、そして次女のエリカが一番驚いていた。今まで『イッセー』と言う偽名で通していたが、ここで漸く司波隆誠の正体が判明したのだ。彼が見せた途轍もない剣技は、四葉家によって鍛えられたモノだと物凄い勘違いをしながら。修次がもう一度隆誠にあって手合わせをしたいと願っている中、エリカはある事を考えていた。彼は深雪、並びに達也の兄であるなら、一度あの二人に問い詰めようと。
周囲が大きく騒いでいる中、隆誠の方でも慌ただしい結果になっている。
旅行から帰ってきた両親の龍郎と小百合が、真夜の通知で自分達が四葉関係者だと公表されて、寝耳に水だと言わんばかりに驚いていた。思いっきり関わっている隆誠は敢えて無知を演じていたが。
隆誠の通っている学校でも、予想した通り大きな反応を示していた。隆誠が四葉関係者だと分かった事で、今まで普通に接していた筈の生徒達から距離を置かれる事になったから。それでも長い付き合いのある友人達、そして祐斗に似てる後輩は今まで通り接してくれたのが救いだった。
とまあ、隆誠やその周囲が大きく騒いだと言っても、あくまで一時的なモノに過ぎなかった。
その後に師族会議で起きるテロや様々な事件に隆誠も多少関わる事になるが、世間の目には大して触れていないとだけ記しておく。
☆
2098年2月上旬
隆誠が四葉家関係者だと公表してから一年が過ぎ、ある通知によって世界中が震撼する事になった。とある事件で生殖能力が失っている筈の四葉真夜が妊娠し、男児を無事出産したから。
日本魔法界は驚きながらも通知した事で、四葉家を知っている多くの魔法師達が大絶叫するのは必然であり、誰もがこう口にしていた。『子供が出来ない筈の四葉真夜が何故!?』と。
真夜の出産通知にいち早く動いたのは七草家だった。その当主である
こうなる事を事前に予想していたのか、真夜は一切余裕を崩す事なく冷静に、理知的に理由を説明した。失った生殖能力を取り戻そうと魔法による治療を何十年も続けた結果、漸く結果が実って子供を産む事が出来たと。弘一と一緒に聞いていた十師族当主達、特に女性当主の
それでも弘一は一歩も引かず、父親は一体誰なのかを開示するように求めた。生まれた子供が何れ四葉家当主になるのであれば、父親の詳細は明らかにしなければならないと言う理由で。これには二木と六塚も、他の当主達と一緒に何も言えないでいた。
誰もが真夜の返答を聞こうとするも――
「次の四葉家当主は、去年に魔法協会へ通知した通り深雪が務める予定です。深雪や生まれてくる子供に余程の事態が起きない限り、我が息子『
「うむ、仰る通りかと」
暗に答える気は無いと言って、そこから先は一切口を開く事は無かった。
真夜が剛毅に同意を求めたのは、深雪が彼の息子である将輝と婚約しているからだ。因みに深雪本人は将輝との婚約を断りたかったが、四葉家当主としての務めを果たそうと必死に自分を押し殺している。逆に将輝は夢が叶って非常に喜んでいるが。
もうついでとして、深雪が一番に結婚したかった筈の達也は、
結局のところ、真夜が産んだ子供の父親は一切謎に包まれ、それが判明するのは十年以上も先の話となった。
真夜が師族会議で顔を出している頃――
「あ~う~!」
「ワンワンッ!」
「クワァッ!」
「シャ~!」
四葉本家にある広い庭で、一人の赤子が戯れていた。三匹の神霊達と一緒に。
巨大な狼犬は風の神霊『フェン』、水色の身体をした怪鳥は氷の神霊『グラース』、大蛇は土の神霊『オルム』。
四葉の分家や使用人達から尤も恐れられている筈の神霊達はとても楽しそうに、真夜の息子である『四葉一誠』と仲良く遊んでいる。
「おいお前達、余り困らせる事はしないでくれよ~」
「流石は奥様のご子息です。隆誠様にしか従わない筈の神霊達を、ああも簡単に手懐けるとは」
「いや、ただ単にじゃれ合っているだけかと」
調子に乗らないように注意する隆誠とは別に、バトラーの葉山は一誠を大変頼もしそうに見ていた。
隆誠が四葉本家へ来たのは、真夜からの命令によるものだった。自分が師族会議で家を空けている間、息子の世話をして欲しいと。端から聞けば単にベビーシッターの役割を押し付けられているだけで、次期当主補佐の隆誠にやらせる仕事ではないのだが、命じられた本人は一切反対する事無く了承している。
「そう言えば、確か隆誠様は一色愛梨様とお食事の約束をされていた筈では?」
「当主の真夜さんから直々に命令された以上、断るしかないでしょう」
葉山からの問いに隆誠は疲れたかのように嘆息していた。
隆誠は愛梨と一定の関係を築いているも、真夜が何かしら横槍を入れる為に発展する事が出来ないでいる。尤も、肝心の隆誠は愛梨に恋愛感情が無い為、俗に言う友達以上恋人未満で満足しているが。
葉山もそれを知っているのか、野暮な質問をしてしまったと少々後悔しながら、ゴホンと咳払いをして話題を変える事にした。それも凄く真剣な表情で。
「隆誠様。つかぬ事を伺いますが、我ら四葉家のスポンサーについてはご存知でしょうか?」
「『
突然とも言える葉山からの質問に隆誠は何となく察した。あの男が神霊の存在に気付いたのだと。
「確か魔を嫌う一団とも呼ばれていましたね。葉山さんが俺にその話をしてきたのは、向こうは俺の扱う神霊がお気に召さないのですか?」
「……奥様の方で問題無いと何度も進言したのですが、どうも納得されないご様子でして」
自身の考えが見抜かれていた事に、葉山は恐れ入るかのように頭を下げながら現状を教えた。
「向こうが俺や神霊を見て、危険な存在だと判断した瞬間に排除しますか? 別にそうしたって構いませんよ。その時は――」
「隆誠様、お言葉が過ぎます」
まるでそこから先は言わせまいと、無礼を覚悟で隆誠を窘める葉山。
葉山は不安視している。隆誠や神霊達でなく、東道を含めた
万が一に隆誠が死んで、解放された三体の神霊が一体どうなるか。フェン達は隆誠を大変慕っているのは分かっているから、もし主が死んだ元凶が
「確かに葉山さんの仰る通り失言でしたね、すいません」
「いえ、ご理解して頂けたのであれば」
隆誠からの謝罪に彼は素直に受け取った。
因みに隆誠が不穏な発言をしている最中、フェン達が一誠と戯れている最中に一瞬こちらを目線を送っていたが、葉山は敢えて何も気にしない事にした。
それから暫くして、東道青葉は隆誠と対面する事になった。真夜と葉山の懸念が的中したかどうかについて……此処から先は誰も知らない。
『司波隆誠』編はこれにて終了です。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
次は『一条隆誠』編をやる予定です。
司波隆誠と違って、此方は一条家との家族仲は大変良好になります。
感想お待ちしています。