再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
あれから数年の月日が流れ、次期当主に指名された司波深雪が四葉真夜の後継ぎとして四葉家当主に就任されている。
同時に四葉家は前当主の四葉真夜から、当主補佐と言う新たな
今まで魔法が使えなかった無能者が、前当主が指名したと言っても四葉家の重鎮として迎え入れるなどあり得ない。本来であれば、黒羽家を筆頭にした分家の者達が反対意見を申し入れるどころか、秘密裏に暗殺してもおかしくない。
しかし、隆誠が正式に当主補佐になっても、誰一人たりとも反対しなかった。と言うより、受け入れざるを得なかったのが正しい。下手に手を出せば悲惨な末路を辿ってしまう為に。
当初は反対意見を出すつもりだったが、真夜が彼の真の力を見せるよう指示した事で一気に事情が変わってしまった。『神霊』と呼ばれる精霊の源と契約し、使役出来るほどの強大な力を得てしまったから。
当然、それでも隆誠を秘密裏に暗殺しようと黒羽家が動くも、圧倒的な力の差を教えられるだけでなく、更には彼等が使う魔法も封じられてしまった。その後は隆誠の温情によってどうにか解除してもらえたが、これによって黒羽家は屈辱を味わいながらも膝を屈することになった。
その結果を耳にした他の分家は静観するしかなかった。下手に手を出して彼の機嫌を損ねる真似をすれば、黒羽家と同じく魔法を使えなくなる非常に耐え難い日々を送ってしまう事になると。
そして司波隆誠が当主補佐に就任すると、今まで反対していた筈の分家は(あくまで表面上として)歓迎の姿勢を見せていた。尤も、隆誠はそれに気付いていながらも、彼等が自分に反逆行為をしなければ問題無いと思っている。
分家とは別に、四葉家当主になった深雪は、就任した初日からずっと緊張状態が続いていた。ガーディアンの達也によって精神的な支えもあって何とかなっているが、それでも緊張が完全に解かれる事は無かった。
彼女がこうなっているのには当然理由がある。
それは高校時代の頃だった。九校戦を終えた夜中に観客として来ていた隆誠を完全に敵に回し、更にはこの世に勝てる者は存在しない筈の
あんな愚かな真似をしなければ、今頃自分と兄は二人きりの心穏やかな日々を送る事が出来ていただろう。もし叶うのであれば、愛するお兄様と結婚したかったと。
達也と夫婦になりたかったと夢見る四葉家当主だが、一気に現実へ戻る事となってしまう。深雪の婚約者となっている一条将輝と祝言を挙げる準備が着々と進んでいる為に。
「どうした、深雪。こんな時間に呼び出すなんて何かあったのか?」
「お兄さま……」
時間は誰もが寝静まっている真夜中。
四葉本家にある当主の寝室にて、深雪はガーディアンの達也を呼び出していた。しかも何故か寝室の中は妙に薄暗い。
「わたしは一週間後に一条将輝さんと結婚します」
「ああ、そうだな」
「そして四葉家当主として……子供を産まなければなりません」
「……そうだな」
少々躊躇うように言った深雪に達也は少々間がありながらも、当然のように頷いていた。
四葉家当主となった以上、彼女は婚約者となった将輝との間に子供を宿す義務がある。そして産まれた子には次の四葉家当主として託さなければならない。
その覚悟を持っている筈の深雪だが、結婚の日が近づいてくる度に段々と心が擦り切れていく。
頭ではどうしようもないと理解しても、身体と心は未だに拒否している。自分が結婚したい相手は、目の前にいる達也なのだと。
だがそれでも、将輝と結婚しなければならない。何度も自分に言い聞かせているのだが、それでもやはり駄目だった。
「お兄さま、こんな事をしてはいけないのは重々承知しています。どうか……何も言わずにわたしを一人の女として抱いてくれませんか?」
「…………は?」
深雪が身に纏っているガウンを脱ぐと、下着姿となって達也に抱き着いてくる。
突然の事に兄は言葉を失い、抱き着いてくる妹に思わず固まってしまう。
「深雪、お前、何を言って……!」
「分かってます! 兄にこんな破廉恥は真似をしてはいけないのだと! それでも、わたしはお兄さまに全てを捧げたいと決めていたんです! お兄さまの子供を作りたいと!」
今まで我慢していた深雪は、ここで溜め込んでいた物を全て吐き出した。
妹が実の兄に不埒な行いをするのは言語道断である事を勿論分かっている。だがそれでも、初めての相手は自分が心から慕う者に捧げたいと決めていたのだ。
故に彼女は決断した。将輝と結婚して子供を作る前に、達也に一夜限りの夫になって自分を愛してもらおうと。
「深雪、いくら何でもそれは……」
「お願いです、お兄さま。どうか今夜だけ、今夜だけは深雪と――」
そう言いながら深雪は達也に顔を近づけて口づけを交わそうとする。
しかし――
「いつかやるんじゃないかと予想してたが、まさか結婚前に実行するとは思わなかったぞ」
「「!?」」
実の兄妹の唇が触れる寸前、突如聞き覚えのある第三者の声がした事で動きが止まるのであった。
追い詰められた深雪が達也に迫ろうとしてるところを阻止する隆誠でした。