再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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明けましておめでとうございます。


番外③

「んで、深雪。言い訳があるなら言ってくれ」

 

 フェンからの報告を聞いてから転移術を使って当主の寝室に姿を現わした隆誠は、自分の予想が正しかったと言わんばかりの光景を目にしていた。下着姿となった深雪が実の兄である筈の達也に抱き着きながら、全てを捧げるようなキスをしようとしていたのだ。

 

 一先ず阻止した事に成功した後、隆誠は寝室に設置されてる椅子に座っており、目の前のベッドに腰掛けてる(服を着た)深雪を問い質している。彼女の傍に達也がいるのは言うまでもない。

 

「義兄さん、深雪を止めなかったガーディアンの自分に責任が――」

 

「少し黙ってろ、達也。深雪がやろうとしていたのは、最早ガーディアン一人の責任だけで済む問題ではない」

 

 深雪の責を被ろうとする達也だったが、隆誠は少々低い声を出しながら容赦無く切り捨てた。

 

 もしも深雪の裏切り行為を止めなければ、四葉家が窮地に立たされることになっていた。そうなれば四葉家の関係者である両親――龍郎と小百合にも多大な迷惑を被ってしまう事になる。司波家は他の四葉分家と違って世間に公表されている為、隆誠達に矛先を向けられるのは言うまでもない。

 

 当主補佐になったところで四葉家の面子など非常に如何でも良いが、自分を育ててくれた両親は全く別だ。分家の誰かが二人を身代わり(スケープゴート)にしようものなら、隆誠は何の未練もなく役職(ポスト)を放棄した後に(真夜と息子+葉山を除いた)四葉家を潰すつもりでいる。

 

 そんな最悪な未来になったら、達也自身も(ただ)では済まなくなってしまう。数々の偉業を成し遂げた実績を盾にしても、汚点が発覚すれば彼を敵視している者は鬼の首を取ったように非難するだけでなく、世間からも白い目で見られて一気に転落してしまうのだから。

 

「もう一度聞くぞ、深雪。四葉家当主ともあろう者が、何故あんな血迷った行動をしたんだ?」

 

「…………わ、わたしは……」

 

 隆誠が再度問うと、これまで無言だった深雪が小さく口を開いた。

 

「達也と一夜限りの関係になりたいからと言って、お前のやろうとした事は一条家に対する裏切り行為だ。四葉家当主としての自覚を――」

 

「―――ってない……のに……そんな……」

 

「ん?」

 

「四葉を嫌ってる貴方が、よくそんな心にもない事が言えるものですね!!」

 

 小声だった筈の深雪が突如爆発するように声を荒げた。

 

 余りにも予想外の反撃に隆誠だけでなく、傍にいる達也も驚愕する程だ。

 

「愛人の息子と蔑まれていた筈の貴方が、四葉の為に尽くす気など無いのは初めから知っています!」

 

「ほう」

 

「深雪、止すんだ!」

 

 四葉の忠誠心が皆無だと見抜かれていたことに隆誠が興味深そうな表情になる中、達也が宥めようとするも深雪は聞く耳持たない状態だった。

 

「わたしだって四葉家当主になるのは嫌だった! お兄さまと二人だけの生活を送るだけで満足だったのに、貴方が、貴方の所為で何もかもおかしくなってしまった!」

 

 もしも隆誠がいなければ、自分と達也は彼に怯える事無く心穏やかな生活を送れていただろう。父親が余計な真似をしたせいで、自分達はこんなに苦しむことはなかった筈だと。

 

 兄と一緒に暮らすだけで充分だと思っていた中、異母兄などと言う汚らわしい存在の所為で、彼女の歯車が大きく狂ってしまう。

 

 一番の原因は高校一年の頃、自分が軽率な行動をした所為で眠れる獅子を起こしてしまい、それ以降から異母兄に逆らえず怯える生活を送ることになった。自分達の生活に全く干渉しなくても、彼が時々家に来る度に深雪は怯えて部屋に籠る程に。

 

 それが今は当主補佐になった隆誠と毎日顔を合わせるから、深雪は仕事を終えるまで緊張する日々が続く。心の支えである筈の兄がいても、僅かに安らぐだけで焼け石に水も同然だった。

 

 更には一条将輝との結婚が近づき、彼女の心は既に限界寸前だった。もうこれ以上は耐えられなく、何もかも放棄してしまいたいと。

 

 しかし、それを隆誠が許す訳がない。当主補佐でありながらも、自分や他の分家だけでなく、最強と信じて疑わなかった筈の兄ですら太刀打ち出来ない圧倒的な実力を持っている。

 

 現在の四葉家最強は司波隆誠であり、唯一抑える事が出来るのは前当主の四葉真夜のみ。尤も、肝心の叔母は別邸に住んで息子の育児に専念してるから、今も四葉の仕事に全く関わっていない。協力を仰いでも『四葉家当主になった以上、補佐の隆誠さんと一緒に問題を解決しなさい』と窘められてしまったが。

 

 故に深雪の心が限界を超えて崩壊していくのは時間の問題となった。このまま何もせず一条将輝と結婚すれば、自分は完全に壊れてしまうだろうと。

 

 だから心が崩壊する前に、自分が一番に敬愛している兄と一夜限りの夫婦になろうと決断した。この先どんな辛い目に遭っても、自分の処女(はじめて)を愛する兄に捧げれば満足なのだから。

 

「実の妹が実の兄と結ばれるのはアブノーマルだと思ってるでしょう! ですがそれでもわたしは、僅かな時間でもお兄さまに一人の女として愛して頂きたかったんです! 貴方には理解出来なくても、わたしにはお兄さまだけが全てなんです! だから一条さんと結婚する前に、お兄さまに身も心を捧げたかった! それなのに貴方は、わたしの一時の幸せまでも束縛するのですか!? それがもう叶わないのであれば……今此処でわたしを殺しなさい!」

 

「ッ! 深雪、お前何を……!?」

 

 心が決壊したように叫ぶ深雪に呆然としていた達也だが、最後の台詞を聞いた事でハッとして再度宥めようとする。

 

「義兄さん、深雪は完全に錯乱してます! 処罰は全て俺が受けますので、先程の発言はどうか聞かなかったことに!」

 

「……………はぁっ」

 

 達也は深雪が本当に殺されてしまうと危惧したのか、普段冷静である筈の彼は完全に狼狽していた。それでも兄の自分が責を請け負うところは相変わらずだが。

 

 慈悲を乞う異母弟に隆誠は両目を閉じながら嘆息した後、深雪にこう言った。

 

「まさかお前がそこまで(自分から勝手に)追い詰められていたとは、な。それに気付けなかったとは、兄としてつくづく情けなく思うよ」

 

 今でも俺を兄とは思ってないだろうが、と内心付け加える隆誠。

 

「良いだろう。深雪の望み通り、今この場で殺すとしよう」

 

「ッ!!」

 

 隆誠が椅子から立ち上がった瞬間、開いた両目は先ほどと違って鋭くなっている。

 

 それを見た達也は瞬時に悟った。義兄は本気で深雪を殺す気だと。

 

「待って下さい義兄さん! それだけは――」

 

「五月蠅いぞ、達也」

 

 命を賭して深雪を守る盾となる達也だったが、隆誠が即座に黙らせた。パチンッと指が鳴らした直後、意識を失って倒れてしまったのだから。

 

「お兄さま!?」 

 

「安心しろ、単に眠らせただけだ。神霊と契約した際、邪眼(イビル・アイ)に似た魔法も使えるようになってな」

 

 あたかも神霊のお陰だと言う隆誠だが、それは全くの嘘。

 

 実際は神の能力(ちから)を使って強制的に眠らせただけだが、自力で目覚める事は一切出来ない。彼を能力(ちから)を上回る抵抗力があれば目覚めるかもしれないが、この世界の人間では絶対無理だと補足しておく。

 

「信じて、良いのですね?」

 

「信用出来ないだろうが、それはお前が決めてくれ」

 

「………なら、約束して下さい。私を殺した後――」

 

 深雪がある条件を突きつけた事に隆誠は驚くも、良いだろうと了承した。

 

 そして―――。

 

 

 

 

 

 

 一週間後。

 

 四葉家当主の司波深雪、一条家次期当主だった一条将輝の結婚式は行われた。その後に二人の性は改まって四葉深雪、四葉将輝として人生を育むことになる。

 

 婿入りした将輝は、今まで片思いしていた女性が自分の妻になった事が今でも信じられない様子を見せるも、深雪の美しい笑みを見た事で、漸く現実だと受け入れた。

 

 結婚式に同席していた四葉家と一条家の関係者は、二人を祝福するように盛大な拍手を送り、十師族も含めた多くの魔法師達からも多くの注目を集めたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 場所は変わって四葉の別邸。

 

 結婚式を終えて一段落した隆誠は、真夜に会おうと足を運んだ。

 

 彼が来た事に一誠が大喜びしており、現れた神造精霊獣達と一緒に遊んだ後、疲れてしまったのか今は部屋で眠っている。

 

 そして今は、テラスにある椅子に腰かけており、葉山が用意したコーヒーを飲みながら真夜と談笑していた。

 

「事前に聞いたとはいえ、私が知る深雪さんとは完全に別人ね。婿になった将輝さんを受け入れるのを見て、最初は自分の眼を疑いましたわ」

 

「俺も驚きましたよ。まさか達也への想いを封印した(・・・・・・・・・・)だけで、ああも人が変わるとは思いませんでした」

 

「そして、達也さんにも似たような処置を施したとか」

 

「アイツが一番大変でしたよ。当時の四葉家(あなたたち)が精神改造していた所為で、達也の深雪に対する異常性癖を治すのに苦労しました」

 

「……それは大丈夫なのかしら? 万が一に『マテリアル・バースト』で世界が滅ぼしてしまう恐れがあるのでは」

 

「そこは大丈夫です。達也があの魔法を使うには精霊の眼(エレメンタル・サイト)が必須ですから、俺や神霊達がその力を軽く抑えるだけで暴発する事はありません」

 

「……貴方が敵に回らなくて良かったと改めて認識しましたわ。私たち四葉家が抱えていた問題を、こうもあっさりと解決するなんて」

 

「誉め言葉として受け取っておきますよ」

 

「ところで、その達也さんも近々結婚する予定ですね。確か相手は光井ほのかさん、だったかしら」

 

「ええ。何でも彼女は高校時代の頃から達也に好意を抱いているそうですが、真夜さんはどう思っていますか?」

 

「私は人の恋路に口出しをする気などありませんから、其方にお任せしますわ」

 

「そうですか。ならお次は達也の結婚式の準備をするとしますか」

 

「隆誠様、少々宜しいでしょうか」

 

「ん? どうしました、葉山さん」

 

「本家へお戻りになる前に、一誠様のお部屋へ足を運んで頂けませんか? 前にお父上(・・・)がお帰りになったと聞いた際、相当ご立腹になりまして……」

 

「そうでしたわね。あの子はお父様(・・・)の事が大好きですから♪」

 

「………………何の事かは知りませんが、俺は一誠の父親代わりをしてるだけの義従兄ですよ」




無理矢理な終わり方でしょうが、司波隆誠編の番外は以上です。

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