再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
一条家の異端児
二十八家の内から四年に一度開催される『十師族選定会議』に選ばれた10の家系が『十師族』を名乗る事を許されている。
その内にある『
当主の
魔法師からすれば致命的な欠陥に等しい事実に、剛毅は「何かの間違いだ!」と声高に否定した程だった。第一研究所が徹底的に解析しても結果は変わらず、その返答を聞いた一条家は悲嘆してしまう。妙に納得顔をしていた隆誠だけを除いて。
十師族直系である一条家の長男が魔法を使えない事実が判明し、その情報に食い付いた多くの魔法師達が動き出そうとする。十師族の地位を虎視眈々と狙いながら、一条家を蹴落とそうと躍起になる魔法師の家系が。
その内容の殆どが隆誠を侮辱するモノばかりであり、挙句の果てには『一条家の恥』や『無能魔法師』と言う蔑称を付けられる始末。剛毅は当然抗議するも、『あくまでそう言う噂を聞いただけ』と身に覚えがないと否定されるばかり。
言いたい放題に侮辱する連中に剛毅は憤慨していたが、それ以上に許せない事があった。息子の隆誠に魔法の才能を受け継がせる事が出来なかった父としての不甲斐無さを。しかし、そんな事をしたところで結果は何一つ変わらない。故に彼は苦渋の決断を下すのであった。
2090年春
平均的な一戸建て住宅のおよそ十倍の規模を持つ大邸宅の座敷に、一条家当主の剛毅と長男の隆誠が隙の無い姿勢で座して向かい合っている。
見ただけで「男臭い」の一言に尽きる容貌をしている父親の剛毅に対して、息子の隆誠は母親似と言っていい程に端整な顔立ちだ。因みに次男の
「今日は大事な話があって此処へ呼んだ。心して聞いてくれ」
「分かりました」
一条家の長として話をすると察した隆誠は、当主の息子として恥ずかしくない振舞いをした。
十師族直系であれば当然なのだが、それでも中学生になったばかりと思えないほど洗練された礼節を見せる事に剛毅は内心疑問を抱いてしまう。
だが、今はそのような事を気にしている場合ではない為、剛毅は早速本題に入ろうとする。
「隆誠は今も我が家の秘術『爆裂』が使えないどころか、他の魔法すらまともに扱えない状態だ」
「はい」
「魔法師の家系でありながら魔法が使えないなど、本来あってはならないこと」
剛毅は苦々しい表情でこう告げた。
「隆誠、すまないがお前に一条家を継がせられないと判断した。私は当主として、次男の将輝に継いでもらおうと決めた」
「!」
将輝は『爆裂』を扱えるだけでなく多くの魔法を扱える。長男とは全く正反対な才能溢れる魔法師の卵と称賛されており、剛毅が次男を次期当主にするのは当然と言えよう。
次期当主の座から降ろされた隆誠は今後魔法師として扱われないが、魔法が使えなくとも大事な家族である事に変わりない。それは当然、妻や他の子供達も同様に思っている。何処かの四が付く十師族と違って蔑んだりはしない。
「……………………」
余りにも突然過ぎる話だったのか、隆誠は目を見開いた後から無言になっている。
それを見た剛毅は内心無理もないように受け止めていた。こんな宣告をされた後には――
「畏まりました。反対する理由はありませんので、弟の将輝が次期当主になる事を快く受け入れます」
「お前が何を言おうが決定は変わら……………は?」
何かしらの反発を抱くと思いきや、余りにもあっさりと事実を受け入れる隆誠の姿勢に、剛毅は予想外の肩透かしを食らってしまう。
いくら中学生と言えど、そう簡単に事実を受け入れられないモノだ。特にプライドが高い十師族直系の長男であれば、弟に次期当主の座を簡単に譲ったりしない。
剛毅は今になって思い出したが、隆誠は物心付いた時から、とても子供とは思えないほど落ち着いた性格をしている。加えて大人顔負けの対応が上手く出来て、将輝達にも時折父親みたいな接し方をする為、妻の美登里から不思議そうな目で見る事もしばしばあった。
「そ、そうか。受け入れてくれて何よりだ。私はてっきり反発すると思っていたのだが」
「とんでもありません。魔法が一切使えない無能な私が一条家を継ぐなど以ての外であり、弟の将輝が継ぐのは至極当然の流れです」
落ち着いた性格だからとは言え、こうまで卑下しながら現実を受け入れる息子に剛毅の胸が痛んでしまう。だが、それを顔に出してしまえば隆誠に対する無礼なので、決して顔に出さないよう彼は必死に押し殺す。
「分かった。ではこの事を後ほど将輝に告げる他、魔法協会にも改めて通知する予定だが、構わないな?」
「ええ、是非ともそうして下さい」
本当に良いのかと確認の意味も込めて問う剛毅だが、隆誠は一切反対せず了承の姿勢を貫いていた。
☆
(父さんは申し訳ない気持ちで一杯かもしれないが、俺には好都合だ)
座敷で剛毅と一通り話し終えた隆誠は、部屋に戻っていた。
(やはりこの世界の魔法は、
剛毅が隆誠が子供とは思えない性格をしているのは理由がある。
彼は前世の知識を持つ転生者であり、嘗て異なる世界で『聖書の神』として君臨していた天界の長。前回は人間の兵藤隆誠として転生するも、度重なる壮絶な人生を過ごしながら生涯を終えた。人間としての死を迎える際、次に生まれ変わる時は神としての
しかし、予想外の事態が起きてしまう。死んだ筈の自分が目覚めたと思いきや、『一条隆誠』として二度目の転生をする事になった。しかも
疑問を抱いたところで今の自分には解決出来ない為、二度目の転生生活をしようと、新たな家族である一条家で過ごそうと隆誠は決意する。家族仲は良好で全然問題無いのだが、今いる世界は、聖書の神が知る嘗ての世界とは全く異なると判明した。『魔法』の存在が世間一般に知れ渡っていると知った時は驚いた程だ。
隆誠が
魔法と言う存在によって、この世界は大きく振り回されていると、隆誠こと聖書の神は果てしなく呆れていた。同時に魔法を扱う
これも人間の
自分が知る魔法の法則が大きく異なっていると分かった隆誠は、何度も勉強しながら試してみたが、結局のところ使う事が出来なかった。それどころか現代魔法の初歩すらもまともに発動出来ない始末で、流石に彼もチョッとばかりショックを受けている。
こんな体たらくでは一条家当主としてやっていけないと潔く断念した際、それを知った多くの魔法師達にも変化があった。今まで『一条家の跡取り』とおべっかを使っていた連中が、魔法が使えないと分かった途端に見下し始めたのだ。普通なら感情的になってもおかしくないが、隆誠には愚かな
どうやって次期当主の座を辞退しようかと悩んでいる中、先ほど父親の剛毅から弟の将輝に一条家を継がせると決断が下され、隆誠にとっては渡りに船だった。弟は才能溢れる魔法師である為、次期当主になるのは当然だと思っているから。
(それはそうと、今度の夏休みを利用して修行の旅に出るか)
問題が解決した事で、隆誠は今後の事を考え始める。
前回の転生で神の
中学生になってから遠出して良いとの許可は貰えているから、隆誠としてはこの世界で初めてやる修行の旅を楽しみにしている。
先ずは修行に最適な場所を探そうと思いながら計画を練っていると、突如部屋のドアが勢いよく開いた。
「兄貴、親父から聞いたぞ! 俺に次期当主を任せるって何でだよ!?」
(やれやれ。計画を立てる前に、将輝を落ち着かせる必要がありそうだ)
納得行かない表情をしてる将輝が突然来た事によって、隆誠は一旦宥める事にした。
暫くオリジナル話として更新されます。
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