再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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明けましておめでとうございます。


佐渡事変

 佐渡が戦場と化していながらも、とある一つの地域は一人の少年によって守られていた。

 

(全く。世界は違えど、人間のやる事は変わらないようだ)

 

 目の前にいる多くの敵を倒しながらも、隆誠は内心非常に呆れていた。

 

 当初は駆け付けた日本国防軍が迎撃していたのだが、守り切るのは難しいと言われるほどの戦力が不足していた。昨日に沖縄へ侵攻してきた大亜細亜連合(通称:大亜連合)によって、主力となる部隊の殆どが集結している事で手薄になっていたのだ。その隙を突くように、正体不明の部隊が手薄状態となっている佐渡へ侵攻される結果となった。

 

 未だに侵攻部隊の正体は判明せずとも、国防軍は既に目星がついていた。敵の装備からして、新ソビエト社会主義共和国連邦(通称:新ソ連)の軍隊である事に。

 

 大亜連合と同様、何の宣戦布告も無しに侵攻してくる新ソ連の行動に指揮を取っている最高指揮官の酒井大佐は憤るも、一方的な苦戦を強いられている事に歯噛みするしかなかった。それ故に北陸を守護する十師族『一条家』から、義勇軍として参加する要請を受け入れるのは当然と言えよう。

 

 剛毅が将輝や配下の魔法師達を連れて大急ぎで佐渡へ向かっている中、隆誠はたった一人で侵攻軍の部隊と今も戦っている。背後にいる多くの民間人達や、戦闘によって負傷してる軍人達を守りながら。

 

(やはりこの世界の人間も聖書の神(わたし)の敵じゃない、か)

 

 隆誠は一人で多くの敵兵と戦いながらも、二度目の転生をした事で実力が前世(むかし)より更に低下した事に最初は不安を抱いていたが、それは杞憂だったと改めて認識した。自分がいた時の世界の敵とは比べ物にならないほど弱いと。

 

 嘗て聖書の神であり、人間の兵藤隆誠として転生した時間は、超常的存在と戦う日々を送っていた。普通の人間とは比べ物にならない存在と戦い続けた隆誠にとって、今いるこの世界の人間は殆ど雑兵(ザコ)に過ぎない。

 

 因みに隆誠を嘲笑していた魔法師達も、魔法と言う力があっても身体能力は殆ど常人と同様で大して強くない。魔法と言う手段を持つだけの有象無象と見なしており、全くと言っていいほど歯牙にもかけていないのが実情であった。

 

「おい! 何なんだよ、あのガキは!?」

 

「こっちの部隊の殆どがやられたぞ!」

 

 侵攻部隊は隆誠一人によって、不利な状況にされている事で混乱していた。凄まじい身体能力で手にしている護身用と思わしき特殊警棒を振るっては銃器を持つ多くの兵達を薙ぎ倒し、見た事のない魔法で戦闘兵器が次々と破壊されているから。

 

 彼等が佐渡へ侵攻した本来の目的とは全く関係無い地域だが、それを日本軍に察知されないように分散して動いている。その一つの地域を簡単に制圧出来るかと思いきや、隆誠と言うイレギュラーな存在によって大きく狂わされていた。

 

「お、俺達は、何を見せられてるんだ……?」

 

「一体、あの少年は何者なんだ……?」

 

 先程から侵攻軍からの援軍の部隊を次々と倒す光景に、見守っている民間人や負傷中の国防軍兵士達は只管呆然とするだけだった。別方向から敵兵が襲撃しても、隆誠が展開した巨大な魔法障壁によって突破されていない。今も戦場となっている佐渡の中で、隆誠が守っている地域が一番安全な場所だと言っても過言ではないだろう。

 

 隆誠としては、戦いに参加する予定はなかった。十師族直系の『一条』であっても魔法が使えない一般人の扱いとなっている為、本来であれば民間人達と一緒に避難するつもりだった。しかし国防軍が余りにも防戦一方で多くの負傷者が出ている為、これ以上の犠牲を出しては不味いと判断し、咎め覚悟で戦いに参加せざるを得なかった訳である。

 

 あくまで今いる地域だけに過ぎないが、隆誠の参戦によって不利な状況が大きく一変していた。佐渡の各地域を侵攻してる部隊が徐々に減り続けている事で、防衛している日本軍、そして急いで参戦した一条の義勇軍が押し返し始めているから。

 

(残りの部隊を片付ければ、此処は安全になるかもしれないが……)

 

 隆誠は戦いながらも考えていた。侵攻してきた大元である軍艦をどうにかしない限り、この侵攻を終わらせる事が出来ないと。もし軍艦が不利と見なして撤退すれば、連中の正体を明かす事が出来なくなってしまう。

 

 尤も、戦っている最中に既に判明している。負傷してる国防軍の兵が『侵攻してるのは新ソ連軍』と口にしていただけでなく、敵兵の言葉がロシア語だったのだ。

 

 隆誠によって(殺していないが)倒された敵兵達を新ソ連に突き付けたところで、向こうは必ず否定するだろう。それどころか侵攻した関与すら一切無いと素知らぬ顔をするのが目に見えている。

 

 国家と言うのは都合の悪いことがあっても、必ず素知らぬ顔で否定するのがお決まりだ。周囲が認める程の決定的な証拠を出さない限り、のらりくらりと躱しながら有耶無耶にしてしまう恐れがある。

 

 この周辺の敵を片付けた後、単身で敵艦へ向かおうかと考えるも――

 

「隆誠!」

 

「兄貴!」

 

 丁度敵兵を倒し終えたところ、自身を呼ぶ声が聞こえた隆誠が振り向くと、返り血で赤く染まっている剛毅と将輝が駆け付けていた。

 

「父さんに将輝、凄い格好だけど大丈夫?」

 

「「それはコッチの台詞だ!」」

 

 漸く見付けた隆誠の台詞に、剛毅と将輝は揃って同じ事を口にした。

 

「何故今まで連絡しなかった!?」

 

「その所為で母さん達がどれだけ心配したと思ってるんだ!?」

 

「あ、はい。誠に申し訳ありませんでした」

 

 二人の怒号に、隆誠は気圧されながらも謝っていた。

 

 同時に完全に忘れていた。修行中の間は雑念が入らないように端末の電源を切っていた事を。その所為で母の美登里が必死に連絡しても繋がらず、戦場に向かう剛毅や将輝は死んでしまったのではないかと不安を募らせる破目になってしまったのである。

 

「まだ言い足りないが、それは帰ってからにしよう。だが隆誠、これは一体どう言う事だ。お前は魔法が使えなかった筈ではないか?」

 

 安否を確認した剛毅は、すぐに父親から一条家当主の顔になって隆誠を問い詰めた。

 

 義勇軍が到着した事で民間人達や負傷した兵士達は安堵の表情となっているとは別に、侵攻部隊の敵兵達が全て倒され、戦闘兵器も無残な姿となって破壊されている。

 

 斥候からの報告で隆誠が敵と交戦中だと一通り聞いていたが、最初は全く信じられなかった。いざ現場に到着すると、報告通りの状況になっているから、剛毅としては疑問だらけだった。一般人の生活を送っている筈の長男が、一体どうしてこんな事が出来るのかと。

 

 だが彼としては一番に気になるのは、何故魔法を使えているのかだった。将輝と違って魔法が一切使えない筈なのに、先程まで民間人達を守る際に魔法障壁を展開させていたのは決して見間違いではない。将輝や配下の魔法師達も目撃しているから、隆誠が間違いなく魔法を使っていたと証言出来る。

 

「あー、まぁ、話せばチョッと長くなるんだけど……」

 

 隆誠が展開させていた障壁は、実のところ魔法ではない。自身のオーラや神の能力(ちから)を利用した結界術なのだが、流石にそれを明かす訳にはいかない為、どうやって誤魔化そうかと必死に考えている。

 

 すると、通信機から斥候の報告は入った。

 

『大変です、一条殿! 国防軍の酒井大佐より、敵が艦隊を集結させて、佐渡に向かっているとの情報が入りました!』

 

「何だと!?」

 

 突然の情報に剛毅だけでなく、周囲にいる者達が驚愕を露わにしていた。

 

(新ソ連の奴等、そこまでして佐渡を占領したいのか)

 

 敵部隊が小規模とは言え、艦隊を集結させてまで進行しているのには相応の理由がある筈だと隆誠は推察した。

 

 同時にこんな大それた侵攻をしたのだから、これで撤退などすれば新ソ連の面目が丸潰れてしまう。もしくは艦体の指揮官が、勝利と言う結果に拘って意固地になっている。どちらにしても日本国民からすれば、自分勝手な理由で侵攻されて辟易する事に変わりはない。

 

「どうする、親父!?」

 

「むぅ……!」

 

 急な情報であった為、焦っている将輝は義勇軍指揮官に問う。必死にどう迎撃しようかと考えている為、剛毅は息子の問いを気にする余裕などなかった。

 

 義勇軍は隆誠と合流するまで敵部隊を殲滅していた為、魔法力や体力が消耗気味している。

 

 特に一条親子は敵兵を葬る為に『爆裂』を数え切れないほど使用し、配下の魔法師達以上に疲弊するも、隆誠を必ず見つけると言う一心で気力を奮い立たせていた。無事に生きている事が判明した事で、戦場にいるのは分かってても、二人は途轍もない疲労感に襲われている。

 

(どうやら父さん達は相当無理をしたようだな)

 

 義勇軍が相当消耗しているのは隆誠も当然気付いており、今の状況で彼等が艦隊を迎撃するには難しいだろうと判断する。

 

 自分の所為で無理をさせてしまった事に負い目を感じているのか、彼は決心せざるを得なかった。

 

(俺もそろそろ、腹を決めるか)

 

 一般人の立場である隆誠が出しゃばってはいけない事は重々承知しているが、それはもう今更だ。先程まで派手に戦っていた上に、剛毅達にも見られてしまったのだ。この状況で義勇軍に任せて逃げ出すなど、無責任な事をしたくないと思っている。

 

 次期当主の座から降ろされたとは言え、彼も十師族『一条』の血族である事に変わりはない。何より弟の将輝が同じ人間を殺す覚悟を決めてまで戦場に立っているのだから、兄である自分も相応の覚悟を決めなければならないと隆誠は決断する。

 

「父さん、俺が行って艦隊を無力化させてくるよ」

 

「は? 何を言っている隆誠。お前は早く避難を……なぁっ!?」

 

『!?』

 

 剛毅が訝りながら振り向くと、隆誠はCADを持ってないにも拘わらず、地面を付いてる両足が離れるように身体を浮かせていた。

 

 彼以外にも、将輝や他の義勇軍も目が飛び出るほど驚愕している。何故現代魔法を使えない筈の隆誠がCAD無しで、加重系魔法の技術的三大難問の一つとして扱われ、重力制御により継続して任意に空中移動が出来る飛行魔法を使っているのかと。

 

「あ、兄貴、それって……飛行魔法、なのか?」

 

「まぁ、そんなところだな」

 

 前世(むかし)の世界で利用していた『飛翔術』が、魔法と似て非なる物であっても、この世界では魔法と呼べるものである。故に、隆誠は否定せずに誤魔化した。

 

 多くの研究者達が必死に解明しようと躍起になっている飛行魔法を、『一条家の恥』や『無能魔法師』と蔑称されてる筈の一条家長男が使っている。今まで隆誠を蔑んでいた魔法師達が知れば絶叫する事は間違いないだろう。他にも転移術を使う手段もあったが、それを軍や他の魔法師達が知れば非常に厄介なことになると考え、隆誠は敢えて『飛翔術』を披露することにした。

 

「それじゃあ、チョッと行ってくる」

 

「ま、待て隆誠、私はまだ……ば、バカな!」

 

『!!??』

 

 剛毅が引き留めようとするも、隆誠が途端に全身からオーラを放出した直後、凄まじいスピードで新ソ連の艦隊がいる場所へ向かった。

 

 またしてもあり得ない光景を目にした事で、流石の将輝達も再び目が飛び出るほど仰天したのは言うまでもない。

 

 因みに、隆誠が猛スピードで飛行してるのを知った国防軍や酒井大佐も、剛毅達と同様の反応を示していた事を補足しておく。

 

 

 

 

 

 

「アレか」

 

 飛翔術を使って移動している一条隆誠は、新ソ連の艦隊を三隻発見した。

 

 既に敵艦隊は日本の領海内まで侵攻しており、佐渡に辿り着くのもあと僅かとまで迫っている。国防軍は防衛艦隊が損傷してるのか不明だが、一隻も出ている様子が見受けられない。

 

 このまま見過ごせば、新ソ連の艦隊があっと言う間に佐渡に上陸して総攻撃を仕掛けるだろう。ただでさえ国防軍の守備隊が足りない上に、剛毅たち義勇軍も疲弊しているから、佐渡が新ソ連の手に落ちてしまうのを容易に想像出来る。

 

 当然そんな愚かなことを隆誠は決して許さない。どう言う目的で侵攻してきたのかは未だに分からずとも、平穏を脅かす愚か者達には罰を与える気でいる。世界は違えど、聖書の神(わたし)を怒らせたからには徒では済まさないと決意している程だ。

 

(アレを全てを消し飛ばすのは造作も無いが……)

 

 これまでの修行によって実力を取り戻した今の隆誠であれば、艦隊全てを消し飛ばすなど簡単だった。前世(むかし)の頃に使った『(しゅう)(まつ)光弾(こうだん)』であれば、一瞬で存在ごと消滅させる事も可能である。

 

 だが、そんな事をすれば、新ソ連が侵攻してきた証拠を失う事になる。その後に日本が勝利しても、新ソ連は証拠不十分を理由に関与を一切否定するだろう。

 

 加えて隆誠が目にしている艦隊は明らかに最新型と思われる艦隊で、新ソ連に関する情報や通信履歴がある筈だから、出来れば残したいと隆誠は考えている。

 

艦橋(ブリッジ)を抑えれば良いか)

 

 新ソ連には侵攻した落とし前を付けさせる必要がある為、時間は掛かっても確実に掌握しようと、先ず一隻目の艦に侵入する隆誠。

 

 艦内に侵入された事に敵は当然迎撃しようとするも、全て隆誠に(物理的な意味で)眠らされたのは言うまでもない。内部を余り知らなかった所為もあって一隻目のブリッジを見付けるのに少々時間は掛かったが、二隻目以降から情報を得たので数分もしない内に完了する。

 

 一時間後、三隻の敵艦隊は白旗をあげた状態で佐渡に上陸してすぐ国防軍に捕獲され、艦内にいる敵兵も全て捕縛されるのであった。

 

 それと同時に一条隆誠は佐渡の市民達から感謝の意を示され、日本中だけでなく、各国からも注目される事になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 日本政府が直ちに抗議をしようと動き出すも、隆誠が予想していた通り、新ソ連は侵攻の関与を即座に否定した。

 

 だが、国防軍が捕獲した艦隊に搭載されている兵器や通信履歴、そして捕縛した敵兵の所属先を全て明かした事によって、新ソ連は認めざるを得ない状況に陥ってしまう。

 

 新ソ連は確かに責任を取る事になるも、完全に認めた訳ではなかった。佐渡侵攻を計画した首謀者が一番の元凶で、自分達は全く知らなかったと苦しい言い訳をしている。

 

 国としての責任を取らせたい日本政府としては納得していないが、相手側が誠意を見せようと講和条約を締結すると約束した為、これ以上は望めないだろうと引き下がる事にした。

 

 尤も、新ソ連からすれば屈辱に等しいモノだった。一条隆誠が艦隊を捕獲さえしなければ、こんな事にはならなかったと。

 

 これによって新ソ連は一条隆誠に暗い憎悪を抱く事になり、いつか必ず報いを受けさせようと固く誓うのであった。




原作だと『佐渡侵攻事件』ですが、此方では隆誠が活躍した事で『佐渡事変』となりました。

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