再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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今回はフライング投稿です。


一条家当主の問い質し

 隆誠のお陰で新ソ連の侵攻を阻止して勝利を手にするも、標的となった佐渡に甚大な被害を受けていた事に変わりはないのが実状だった。多くの施設が破壊されただけでなく、民間人も多くの死傷者が出ている。

 

 新ソ連の目的は捕獲した艦の通信履歴を調査した事で判明する。佐渡にある廃坑跡を利用した想子(サイオン)の性質を解明する為の魔法の実験施設を狙う為だったと。そこには当然多くの魔法研究者達もいたが、今回の侵攻で奇襲された事によって、民間人達と同様に命を落としている。

 

 因みに亡くなった研究員の中に吉祥寺夫婦もいたが、息子である『(しん)()(ろう)』がシェルターに避難していた事を知った一条剛毅は、救う事が出来なかった償いとして援助をしようと決意する。彼の計らいによって真紅郎は金沢魔法理学研究所で勤務する事となり、後に将輝の掛け替えのない相棒になる他、『カーディナル・ジョージ』と言う異名で呼ばれる天才少年となる。

 

 周囲の事とは別に、隆誠の方も色々大変な目に遭っていた。佐渡事変と言うイレギュラーによって、隆誠が予定していた修行の旅は強制終了となったのは言うまでもない。

 

 家に帰って早々に待ち受けていたのは、母の美登里、妹の茜と瑠璃から涙を流しながらの抱擁だった。三人は剛毅からの連絡が来るまでの間、隆誠の生死が全く分からず途轍もない不安を抱きながら待ち続けた。携帯端末の電源を切っていた隆誠は、物凄く心配させてしまったと後悔してしまう程に。

 

 だが、この後から大変な目に遭ってしまう。息子が生きていると改めて認識した事で、その直後に大きな雷が落とされた。隆誠は当然のように甘んじていた受けるのだが、その中で一番恐かったのは美登里で、一緒に怒っていた剛毅達もたじろぐ程だったとか。

 

 

 

「では隆誠、魔法が使えた理由を話してもらおうか」

 

「……分かりました」

 

 場所は変わって座敷。そこには剛毅と将輝、そして隆誠がいる。女性陣の美登里達は大事な話があると言って同席させていない。

 

 剛毅は、一条家当主として改めて隆誠に問う。新ソ連の兵達と交戦していた際、途轍もない実力だけでなく、更には今まで魔法を使えなかった筈が何故急に使えるようになったのかと。

 

 本当であれば墓まで持って行くつもりだったが、新ソ連の侵攻で見られてしまった以上は無理だと隆誠は既に諦めている。流石に自分が転生した聖書の神とか、神としての能力(ちから)を使えるなど話す訳にはいかないので、万が一に発覚した場合の設定を話す事にした。

 

「ですがその前に、此方をお見せします」

 

「む?」

 

 隆誠が見せたのは『水晶製の勾玉』で、空いている穴に紐を通してアクセサリーのようになっている。

 

 ダイヤのように透き通って綺麗な輝きをしている所為か、宝石に大して興味のない将輝ですら目を奪われている様子だ。

 

「この勾玉は……っ! 隆誠、まさか!」

 

「はい。お察しの通り『聖遺物(レリック)』です」

 

 勾玉を見て気付いた剛毅に、隆誠は正解と言わんばかりに改めて勾玉の名称を口にした。

 

 『聖遺物(レリック)』とは、魔法研究に従事する者の間で魔法的な性質を持つオーパーツを意味する。現代科学技術でも再現が困難であり、人工物と断定出来なくても、自然に組織されるとは考え難い物質もレリックと呼ばれている。

 

「こんな物を一体何処で手に入れたのだ……!?」

 

 剛毅が少々焦るように問うのは理由があった。

 

 魔法師や研究者にとってレリックは現在も解析中の重要な物質。国防軍や国立魔法大学の方でも厳しく管理している為、もしも隆誠ではない他の一般人が持っている事を知れば、有無を言わさず没収されてしまう。

 

 因みに一条家を輩出した魔法技能師開発第一研究所もレリックについて多少携わっていたが、現在は閉鎖され、その跡地に作られた『金沢魔法理学研究所』の方で引き継いでいる。

 

 それ故に軍や研究者が知れば欲しがる物を隆誠が持っているから、剛毅が焦るのは無理もない事なのだ。

 

「遠出をした時に偶然拾ったんです。その時は何も知らず、単に綺麗な勾玉だから貰おうと懐に入れたんです」

 

 隆誠が誰の目に入らないように秘境で修行している最中、勾玉を見付けたのは本当に偶然だった。

 

 拾った瞬間に魔法と思わしきモノを感じ取れたから、少々気になって神の能力(ちから)で解析して予想外の事実を知る。魔法が扱えない者でも強制的に発動可能な物質である事を。

 

 物の試しに今まで扱えなかった現代魔法を試したところ、見事に発動する事が出来た。自身のオーラを送り込んでも拒否反応を示さないどころか、違和感も一切無く発動したのは驚きだった。

 

 この事実を知った隆誠はある事を考えた。もしも自分の能力(ちから)が知れ渡った時の非常手段として使えるかもしれないと。当分先の話になるかと思いきや、まさかこんなに早く使わざるを得なかったのは完全に予想外だったと内心愚痴っているが。

 

 目の前にあるレリックが魔法を発動させるCADみたいなモノだと説明を聞いた剛毅は、大変難しい表情をしながらこう言った。

 

「何故今まで黙っていた? レリックは軍事物質の一つとして扱われている事を、お前も知っている筈だが」

 

 現在レリックは色々な種類が存在しており、剛毅が一番に知っているのは『アンティナイト』である。

 

 アンティナイトは真鍮色の金属で、真鍮色の非魔法師でも想子(サイオン)を保有していれば、魔法師を妨害するサイオンノイズを作り出す事が出来る。様々な危険性がある為に軍事物資と指定され、民間人が手に入れられるものでは無い。

 

 隆誠が持つレリックの性能が事実であれば、国防軍は間違いなくアンティナイトと同様の扱いをするだろう。それどころか何処で手に入れたのかを強引に問い質す可能性だってある。剛毅が一条家当主として拒否すれば、国防軍との間に亀裂が生じる可能性がある。先日の佐渡事変では国防軍の要請を通した事で義勇軍を編成できたから、下手に関係を悪化させる訳にはいかないと考えているのだ。

 

「当主殿に話すべきだったのは勿論理解してました。ですがコレのお陰で俺が魔法を使えるようになったと知れば、色々迷惑を掛けてしまうと思いまして……」

 

「迷惑だと?」

 

「はい」

 

 レリックのお陰で魔法を使える事が明るみになれば、軍は勿論のこと、多くの魔法師達も必ず接触するのが目に見えている。それどころか犯罪組織も動き出し、家族に手を出すかもしれないと危惧したから、今まで誰にも話す事が出来なかった。

 

 早い話、家族に要らぬ迷惑を掛けたくなかったと言う、家族愛を大事にする聖書の神こと隆誠の個人的な理由だった。

 

 一通りの理由を聞いた剛毅は確かにそうかもしれないと思いながらも――

 

「馬鹿者! まだ高校生ですらないお前が、そんな先の心配をする必要などない。親が子を守るのは当然の事だろうが!」

 

「………申し訳ありませんでした」

 

 親として黙っていられなかったのか、息子に思わず一喝してしまう。

 

 怒られたのは勿論理解している隆誠は頭を下げるが、不謹慎ながらも嬉しい気持ちになっている。剛毅の言葉は家族愛に溢れているモノだったから。

 

「とは言え、お前の考えは決して間違っていない」

 

 剛毅としてもレリックの存在は一切公表せず胸の奥にしまっていただろう。こんな物の所為で大事な家族に牙を向けられるなど考えたくない程に。

 

 現時点で知っているのは剛毅と隆誠、そして一緒に聞いている将輝のみ。一条家当主として箝口令を敷かなければ非常に不味い案件であるのは明白だった。

 

「確認するが隆誠、このレリックは持っていなければ魔法が発動出来ないのか?」

 

「はい。先程も話したように、俺にとって一種のCADみたいなモノですから」

 

「そうか……」

 

 魔法を使えない隆誠には必要なモノだと分かった剛毅は、猶更知られる訳にはいかないと改めて認識した。

 

 既に新ソ連の侵攻では将輝だけでなく、多くの者達も隆誠の魔法を目にしている。これでまた魔法を使えない日々を送らせれば、何故使えるようになったのかと周囲から疑問を抱かれるだけでなく、最悪の場合にはレリックの存在に気付かれる可能性がある為、今後も隆誠に持たせておいた方が良いかもしれないと剛毅はそう考えた。

 

 偶然とは言え、今回発見したレリックを隆誠が見つけて良かったと内心安堵した。もし隆誠ではない子供が拾ってしまえば、後先など全く考えず周囲に魔法を見せびらかし、レリックの存在が大きく知れ渡る事になっていただろう。

 

 話を終えた剛毅は、息子二人に箝口令を敷いて退室させた後、今後の事について考えるのであった。




今回の話に出たレリックや、その性能についてはオリジナルです。

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