再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

62 / 64
隆誠の決意

 2093年1月

 

 

 あれから五ヵ月が経ち、一条家は再び平穏な日常を過ごしていた。

 

 現在冬休み期間となっており、中学三年生の隆誠は高校受験を控えている為に今回は遠出をしていない。尤も、以前の佐渡事変が起きた事で今も注目されている為、剛毅から暫く控えるよう言われているので結局は無理だが。

 

 だが、日常の中で変わった事がある。前々から兄が凄まじい実力者だと薄々勘付いていた弟の将輝が、佐渡事変以降から戦闘指導して欲しいと自ら願い出た。こうなる事を予想していた隆誠は敢えて隠していたのだが、露呈してしまった以上は仕方ないと諦め、一条家を支える次期当主に基礎を教える事にした。一緒にいる吉祥寺真紅郎も含めて。

 

 その光景を偶然見れた剛毅は、長男の実力を見て改めて驚かされた。学業だけでなく、戦闘面に関しても卓越した技量を持ち合わせており、将輝以上に魔法のコントロールが上手く出来ていると。おまけに指導面の方も的確で、魔法力や実力も向上しているから非常に惜しいと思ってしまう。

 

 魔法が使えない所為で隆誠を次期当主の座から降ろさざるを得なかった剛毅だが、当時の判断は決して間違っていないと己を戒めている。変更すると決めてしまった以上、今更撤回する事は出来ないのだ。これで再び次期当主に戻すとなれば、掌返しをした名家の魔法師達と同類になってしまうから。もしも万が一に将輝が何かしらの理由で一条家から離れざるを得ない事態が起きれば話は別になるが、そんな展開は流石に無いだろうと即座に切り捨てている。

 

 それとは別に隆誠が受験する高校は、石川県金沢市の外れに設立された国立魔法大学付属第三高校(通称:第三高校、三高)となっていた。佐渡事変の件が起きなければ一般の高校を受験する予定だったのだが、(レリックのお陰で)魔法が使える事になった為、急遽三高に変更せざるを得なかった。

 

 剛毅としても母校を受けさせる事には問題無いのだが、一抹の不安を抱えていた。嘗て彼が世話になった先輩――(まえ)()()(づる)が2093年4月から三高の校長に就任予定との情報を耳にしてから。

 

 前田は国防海軍の元軍人だからか、佐渡事変で隆誠が大活躍した事を勿論知っている。同時に隆誠が三高を受験すると聞いたのか、後輩の剛毅に会って早々『お前の息子はあたしが立派な兵士として育てるから、安心して任せるがいい!』と言う決意を述べていた。酒井大佐が勧誘してきた時には強く反対していたのだが、彼女に嘗て三高で鼻っ柱を圧し折られた経験が今も鮮明に記憶してる事もあって、余りの凄まじい勢いに押されて何も言い返せなかったとか。

 

 隆誠が受ける三高の受験が二ヵ月後となるも、思わぬ事態が起きる事となった。

 

 

 

 

「第一高校を受験するだと? 一体どう言う事だ、隆誠。何故急にそんな変更をしようとする」

 

「チョッと事情が変わったんだ」

 

 休日をリビングでのんびりと過ごしていた剛毅だったが、隆誠から相談したい事があると言われた為、場所を座敷へ移した。

 

 息子からの相談と言う事もあってか、十師族当主としてでなく父親の顔で会話するも、受験先の高校を変更すると言う内容を聞いた所為で思わず目が点になってしまう。

 

 尋ねる剛毅は、顔に出さずとも不安が急に増していく。勿論それは隆誠に対してではなく、三ヵ月後に三高の校長として就任される前田千鶴の事だった。もし隆誠の受験先が一高になったと分かった瞬間、真っ先に我が家へ押し掛けて抗議する姿が容易に想像出来てしまうから。

 

 安易な理由で一高を受験するのであれば即座に却下するつもりだが、目の前の息子が相談したいと持ち掛けた時点で、恐らく相応の理由がある筈だと既に察していた。同時に前田千鶴の対処を自分がしなければならないと半ば諦めている事も含めて。

 

「次期当主になった将輝の今後に不都合が生じると考えて、ね」

 

「……それとお前が第一高校を受験する事に一体何の関係があるんだ?」

 

 理由がいまいち掴めない為、剛毅は首を傾げながら再度問う。

 

 隆誠も確かにこれだけでは納得しないだろうと思ってか、次にこう言った。

 

「佐渡事変以降からだけど、将輝はこの数ヵ月の間、何かあったらすぐ俺に頼ろうとしている。その光景は父さんも見ていた筈」

 

「むっ……」

 

 今まで戦闘指導して欲しいと何度も願っていた将輝だが、このところ目立ち始めていた。

 

 これに気付いた隆誠は少しばかり考える。いずれ一条家当主になろうとしている弟が、いくら実力を伸ばす事が出来ても、ずっと兄に頼るような事になれば当主としての成長を妨げるのではないかと。

 

 前世(むかし)の弟、兵藤一誠は赤龍帝として最強クラスの格闘家(ファイター)だったが、そうなる前は戦闘の才能が全く無い極普通の一般人だった。兄の兵藤隆誠こと聖書の神が師匠役として付きっ切りで指導しなければ、あっと言う間に殺されていただろう。

 

 対して今世(いま)の弟、一条将輝は才能が溢れて将来有望な優秀な魔法師だ。一誠と違って軽く指導しただけで、中学一年生でありながらも、既に並みの魔法師以上の実力を持っている。だけど今は兄に頼り切っている所為もあってか、最近それがネックとなっていた。

 

 以前まで独自に腕を磨いて強くなっていた筈の優秀な弟が、自分の所為で足を引っ張ってしまう恐れがあると隆誠は危惧する。それ故に隆誠は今の状況を踏まえた結果、(そろそろ自由に動きたいのも含めて)一条家の管轄外である東京へ行く事を決意する。

 

「――と言う事で一高に変更しようと考えたんだけど、父さんとしてはどう思う?」

 

「……言われてみれば、確かにそうかもしれないな」

 

 次期当主を思っての理由を一通り聞いた剛毅は段々難しい表情になっていく。

 

 確かに最近の将輝は周囲に頼り過ぎている節があった為、剛毅も何とかしなければ不味いと考慮している。

 

 何か良い方法はないかと思案してる中、隆誠が三高から一高へ変更する理由を述べたから、父親の彼からすれば渡りに船と言わんばかりの提案だった。

 

 しかし、それは少々リスクがある。確かに将輝の事を考えれば良いかもしれないが、剛毅としては隆誠が高校卒業するまで我が家に留めておきたい。今は自分の方で睨みを利かせているが、国防軍の酒井大佐が知れば間違いなく隆誠に接触を図ろうとするだろう。喧嘩別れしたとは言っても、あの男は未だに勧誘を諦めていないと言う情報がある為に。

 

 因みに三高の校長に就任する前田千鶴は元軍人で、隆誠を立派な兵士にすると豪語していたが、そこは大して問題ないと踏んでいる。決して強制的に軍に入隊させたりしないどころか、基本的に相手の意思を尊重する。高校時代の付き合いだけでなく、彼女の性格を理解しているから問題無いのだ。

 

 このまま一高の受験を認めるか、もしくは反対して予定通り三高を受験すべきか。非常に悩ましい選択となっている。

 

(ここは、隆誠の意見を尊重すべきだな)

 

 本来であれば時間が欲しいところだが、剛毅は既に決めていた。隆誠の提案を受け入れようと。

 

 彼としても、将輝が次の一条家当主となるのであれば、初めから誰かに頼るような情けない当主になって欲しくない。頼るのは別に悪いことではないのだが、当主として一人で決断しなければならない時が起きた場合、最初から誰かに頼ってしまってはダメなのだ。

 

 まだ遊び盛りな学生の筈なのに、既に先を見据える理由を述べた長男に剛毅は感心してしまう。流石は私の息子だと少々親馬鹿な事を考えながら。

 

「隆誠の言い分は充分に理解した。自分が弟の成長を妨げる要因と考えているのに、もしここで父親の私が否定すれば、いずれ最大の過ちとも言える後悔の日々を送るだろう」

 

「っ! と言う事は……」

 

 剛毅が重い決断を下すように言うも、真剣な表情で見守っていた隆誠は途端に明るくなる。

 

「ここからは一条家当主として、第一高校の受験を許可する。但し!」

 

 条件を付けようとする剛毅に、改めて聞く姿勢となる隆誠。

 

「東京に住む条件として、以前に私がそこで建てた別邸に住んでもらう。第一高校を受験すると決めた以上、今まで以上に勉学を励んで必ず合格を勝ち取るように。何か異論はあるか?」

 

「いいえ、ありません。自分の提案を受け入れてくれただけでなく、更には家を提供してくれた恩に報いる為、必ず一高に合格すると誓います」

 

 随分軽い条件だと思いながらも、隆誠は感謝の意を示すように頭を下げながら承諾する。

 

 そして話を終えた後、一高を受験する事を将輝達に話すと――

 

「何でだよ!? 兄貴は三高を受験するって言ってたじゃないか!」

 

「そうよ! 一高を受験するってどういう事なの!?」

 

「いかないでお兄ちゃん!」

 

 予想通りと言うべきか、将輝と茜は納得行かないと反対し、更には瑠璃が涙を浮かべながら引っ付いていた。

 

 美登里の方は剛毅に任せている為、隆誠は弟妹達の説得に相当な時間を要するのであった。

 

 

 

 

 そして二ヵ月後、隆誠は一高の受験を受ける為に東京へ向かった。

 

 4月に校長として就任する前田は、前以て顔を合わせておこうと三高に行くも会えず仕舞いとなり――

 

「おいこら剛毅ぃ!? 何故お前の息子が三高ではなく一高へ受験しに行ったのか説明しろぉぉぉ!!」 

 

「ど、ど、どうか落ち着いて下さい、千鶴先輩! これには、相応の理由がありまして……!」

 

 鬼のように憤慨しながら問い詰める先輩の前田に、後輩の剛毅は余りの恐さに怯みながらも何とか宥めようとするのであった。




前と同じく、此方の隆誠も一高を受験する事にしました。

感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。