再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
大きな事故が起きたにも拘わらず、大会委員会より新人戦モノリス・コードは中止する事無く『続行』の判断が下された。選手達が負傷した一高、(断定されてないが)ルール違反を犯した四高を除くと言う形で。観客の中に混じっていた隆誠はそれを聞いた事で若干呆れるも、向こうにも色々事情があると言う事にして聞き流している。
それとは別に新人戦ミラージ・バットは問題無く開始しており、既に決勝戦が行われていた。
達也が担当してからか、一高選手の光井ほのかと里美スバルは他校と違ってポイントを得ている。術式が起動する展開速度の処理が早く完了後に跳躍してるのが、第一高校の二人であったから。
競い合ってる選手以上に、フィールドの外で見ている技術スタッフの方が一番悔しそうだった。歯を食いしばり、あるいは唇を嚙みしめているところを、観客席側にいる隆誠は気の毒そうに見ている。
ハード面の性能は同じでも、ソフト面の性能が全く違っていた。エンジニアの腕の違い、と言う面がよく出ている。
「クソっ、何であんなに小さな起動式で、あそこまで複雑な運動が出来るんだ!」
「まるでトーラス・シルバーじゃないか!」
(やはりな……)
技術スタッフのぼやきを耳にした隆誠は嘆息していた。あれほど派手にやり過ぎていれば、そう言う疑問を抱くのは仕方のないことだと。
最新の汎用型CADを使って開発した魔法『
そもそも九校戦で高難易度魔法を見る機会など殆ど無いに等しい。それどころかA級魔法師にしか公開されてない高等魔法の
やらかしてる本人は一高を優勝させる為に頑張っているかもしれないが、それでもやり過ぎだと隆誠は頭を悩ませている。自らトーラス・シルバーだと公表してる達也の軽挙妄動に。
(何かもう如何でも良くなってきた……)
監視してから四日目となるも、隆誠は徐々にやる気が無くなろうとしていく。余りにも達也が考えなしの行動を仕出かしてる事に、正体隠す気無いんじゃないかと思い始めている。
同時に先程までの彼は、達也に九校戦が終わった後に小言の一つも直接言わなければ気が済まないと少々憤慨していた。けれど、それはもう通り越して完全に呆れている。もうあの愚弟に何を言っても無駄だと悟りながら。
加えて冷静に考えてみれば、今回の件で万が一トーラス・シルバーの正体がバレたとしても、その責任を達也本人に取らせれば良い。FLT本社にいる龍郎や小百合を含めた社員達は少々大変な目にあってしまうかもしれないが、それはあくまで一時的なモノに過ぎないのだから。仮に何らかの文句を言ってきたところで、九校戦で派手にやっていたのが原因だと言えば、深雪ですら文句が言えなくなってしまうと隆誠は考えている。
腹違いの弟と妹とは言え、前世で家族を大事にしていた『兵藤隆誠』並びに『聖書の神』らしからぬ行動と思われるかもしれないが、今の『司波隆誠』は二人に対して(半分以上)見切りを付けていた。肝心の
(一応最後までやらないとな)
もう監視を止めて帰りたい衝動に駆られそうになる隆誠だったが、真夜から指令が下された以上遂行しなければならないと自身に喝を入れていた。
今回の結果で真夜が達也をどうするか不明であっても、それは自分が知る事じゃないと思っている。例え後ほど咎められたところで、指令を遂行した後の隆誠には全く関係のない事だから。
(今のところ
一番と言える心配の種は、達也が『
新人戦ミラージ・バットは一高選手の二人がワンツーフィニッシュを飾ったのを見た後、隆誠はもう用が済んだと言わんばかりに会場を後にする。
「ん?」
一高生徒達が集まる観客席の最前列で観戦している女子生徒――渡辺摩利は、颯爽と会場から出ようとする一般の男性客が偶然にも視界に入った。
周囲が優勝した一年二人に拍手を送っている中、彼女だけはその中に混ざろうとしてない。去っていく男性客――隆誠の姿をジッと見たまま。
(アイツ、何処かで……)
遠目であっても見覚えのある顔だったのか、摩利は必死に誰かを思い出そうとしていた。
自分の記憶が確かであれば、去年に千葉道場で自分の恋人である修次と――
「摩利、どうしたの?」
「っ!」
忘れていた記憶を思い出している中、隣に座っている親友の七草真由美が声を掛けてきた。それによってハッとした摩利は、すぐに彼女の方へと視線を向ける。
「急に表情が変わったけど、もしかして怪我が……」
「いやいや、そんなんじゃない」
表情が変わったのは怪我による痛みが走ったのかと真由美は心配そうに言うも、全く問題無いと言い返す摩利。
今回の九校戦とは全く関係の無い彼女の個人的なモノであった為、一先ず周囲の空気に合わせようとする。
翌日に隆誠と偶然会う事になるのだが、その時には自身の恋人である修次も来る事を今の摩利が知る由もなかった。しかも凄く嫌な再会の仕方で。
西暦2095年8月10日
『緊急速報です。昨日に事故で試合続行不能となった第一高校ですが、大会本部の裁定により代理チームの出場が認められました』
「………嘘だろ」
「クゥン?」
翌日の朝。
部屋に設置されてるテレビを点けた際、九校戦の速報が流れていた。
画面に表示されてる選手の中に『司波達也』が入ってる事に唖然としている隆誠と別に、傍に居るフェンは撫でられるのが急に止まった事で彼の方を見ながら続けて欲しいと強請っている。
今日は新人戦モノリス・コードだけである為、監視する予定は一切無かった。なのでフェンを連れて鍛錬の時間に充てようと思っていたが、テレビから思わぬ情報が入った為に変更せざるを得ない。
一応真夜の方にも確認を取ろうと連絡してみるも――
『達也さんが試合に出る以上は監視をして下さい』
思った通りの返答が来たのであった。
けれど真夜も達也の出場は完全に予想外みたいで、隆誠が電話した際に戸惑いの声を漏らす程だった。監視をしろと言われた以上遂行するしかない為、隆誠は観戦の準備に移るのであった。
「ウゥゥゥゥゥ……!」
「悪い悪い。この埋め合わせは後日するからさ」
予定が潰れてしまった事にフェンが抗議の唸りをするも、隆誠は謝りながら自分の影に入って大人しくするよう命じていた。
(達也だけじゃなく、他の二人も中々やるじゃないか)
復帰した一高が八高、二高と立て続けに勝利した事で観客達は大いに盛り上がっていた。
隆誠の監視対象である達也だけでなく、他の選手である吉田幹比古、西城レオンハルトも相応の活躍をしていた。
吉田は古式魔法で相手を翻弄させ、西城は手にしている片手剣型の武装デバイスで派手なアクションを見せている。観客の目が一番に向いていたのは後者であり、武器を使っての戦闘スタイルに歓声を上げる程だ。
観ていた隆誠も感嘆の声を上げている。尤も、前世で人間の枠から外れた超常的な存在と生死を賭ける戦いを何度も経験した彼からすれば、限りなく低レベルな戦いにしか見えないが。
午前に一通りの試合が終わり、午後からは決勝トーナメントが行われる事になっている。一高が行われるのは第二試合で、相手は第九高校。達也達の実力を考えれば、恐らく勝利するだろうと既に予想している。
(フェンの奴、まだ機嫌悪そうだな)
隆誠は予定してる試合が行われる前に昼食を摂った後、影の中で未だ拗ねているフェンのご機嫌取りをしようかと思いながらホテルに戻っていると――
「あっ、君は……!」
「ん?」
歩いている最中、ロビーの一角の方から明らかに自分を指していると思われる美青年がいた。他にも女性がいて、隆誠を見て大層驚いた表情になっている。
「あれ、確か貴方は千葉道場で……」
自分を指してる美青年に隆誠は見覚えがあった。思い出している中、大急ぎで来ようとしている。
「『イッセー』君じゃないか! こんな所で会えるなんて偶然だね。僕を憶えてるかい?」
「……え、ええ。去年以来ですね、修次さん」
イッセーと呼ばれた事に隆誠は一瞬戸惑いそうになるも、どうにかポーカーフェイスを保っていた。
美青年――千葉修次とは去年に千葉道場へ行った際に手合わせした事がある。どう言う経緯でそうなったのかは割愛するが、隆誠は修次と互角の戦いを繰り広げていた。四葉家に気付かれないよう『イッセー』と
「そうだよ! もう一年以上経ってるのに、どうして(千葉道場に)来て(手合わせして)くれないんだ! あの時(の手合わせ)から、僕がどれほどイッセー君に会いたいと思っていたか……! 夜には君(との手合わせ)の姿を思い起こすほどだったよ……!」
「いやぁ、それにはチョッと事情がありまして……」
隆誠は修次が言葉を省いても自分と手合わせしたがってる事を察してるから、特に気にせず話を合わせていた。
だがそれを知らない者が聞けば、修次が同性である隆誠に熱烈な愛の告白をしてるようにしか聴こえない。
「シ、シュウ……そ、それは、どういう、ことだ……?」
「つ、
その証拠に修次の恋人である摩利と、いつの間にかいた彼の妹であるエリカも。揃って顔を青褪めているどころか、まるでこの世の終わりみたいな表情をしている。
摩利とエリカは本来険悪な関係なのだが、この時ばかりは協力しあう事となった。自分達が知らぬ間に衆道に走っている修次を何としても元に戻そうと。尤も、それは完全な誤解なのだが。
本編ではリューセーが達也とのBL疑惑を抱かれましたが、こちらでは修次とのBL疑惑を持たれる事になりました。
感想お待ちしています。