再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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久しぶりに見た顔

 達也と話を終えた隆誠は部屋に戻り、軽い昼食を摂った後に影から出したフェンのご機嫌取りをしながら、テレビで他校の試合を観ていた。

 

 現在行われているのは三高VS八高であり、試合内容としては三高の勝利が既に目前となっている。陣地から悠然と歩いて進む一人の選手――(いち)(じょう)(まさ)()が、八高の選手全員を相手にして圧倒的な実力で見せているから。

 

(あの時偶然会った少年、か)

 

 テレビに映っている将輝は一条家の秘術と呼ばれる『爆裂』を使わずとも、八高の選手三人を他の魔法を使って倒していた。

 

 隆誠は以前に彼と会った事がある。三年前の夏、佐渡島で起きた新ソビエト連邦(通称:新ソ連)の侵攻――『佐渡侵攻事件』で偶然に。

 

 夏休みを利用して一人旅と称した修行をしに行く為、当時中学生だった隆誠は佐渡島へ向かっていた。絶好の場所を見付けて誰にも見付からないよう修行に没頭してる最中、突如周辺で爆撃が起きた事に気付き、そこで他国が侵攻してきたと気付いたのだ。

 

 余りにも不測の事態だった為、このまま見付からないように隠れるか、もしくは転移術を使って戻ろうかと必死に考えるも、どちらも却下する事にした。人間(こども)同士の争いとは言え、侵攻によって殺されようとしてる無辜な人間(こども)達を見捨てたら、嘗ての兵藤隆誠(おれ)聖書の神(わたし)は自分を許せなくなってしまうと。

 

 自分が出来る範囲内で侵攻してきた新ソ連の兵士達を殺さず無力化しながら倒してる中、一条家を中心に組織した義勇軍が援軍として来た事で戦況が変化し、隆誠はもう充分だと判断して退散した。その時に一条剛毅と一緒に参戦していた将輝は偶然にも隆誠を目撃するも、それはほんの一瞬だった。

 

 その時に名も知らぬ少年によって自分達は助かったと多くの佐渡市民から称賛された事で、話を聞いた一条剛毅は是非とも探して感謝の言葉を告げたかったのだが、結局は見付からず断念している。他にも佐渡を防衛していた国防軍の一部は、隆誠の所為で(多少の)面子を潰されて歯軋りしていたみたいだが、それは当人が知る由もない。

 

(次の試合で一高が勝てば、三高と当たるか。達也の事だから後で色々策を練るかもしれないが)

 

「クゥン?」

 

 三高が勝利したと表示されるが、隆誠はもう興味が無くなったかのようにテレビの電源を切った。

 

 撫でるのが突然止まった事でフェンが視線を送るも、隆誠は気にせず部屋を出る準備に移ろうとする。

 

「フェン。悪いがまた俺の影に待機してくれ」

 

「……………………」

 

 隆誠の指示にフェンは何か言いたげな表情だったが、主の命令に逆らえないのか、渋々と影の中に入っていく。

 

 忠実な精霊獣とは言え不満(ストレス)を溜め込むのは良くないから、九校戦が終わった後に絶対時間を作ろうと隆誠は内心決意していた。

 

 

 

 

(達也と話している女性は何者だ?)

 

 一高VS九高の試合は、隆誠が予想した通りの結果だった。一高が勝利して、決勝戦には三高と当たる予定になっている。今は三位決定戦が行われているが、他校同士の試合に興味無い為、決勝戦が行われる午後三時半まで適当に時間を潰す事にした。

 

 ホテルの部屋に戻ってフェンの相手をしても、また中途半端にフェンの機嫌を悪くしてしまうかもしれないから、今回は真夜からの指令を忠実に行う事にした。監視対象である達也が何をしているのかを。

 

 これで達也が深雪と(呆れるほど)仲睦まじく部屋で過ごしているなら、『相変わらずだな』と思いながら監視を止めようと思っていた。しかし、全く異なる展開が起きている。達也が深雪と別れてすぐ、一人で会場のゲートへ向かっていたのだ。今は見知らぬ女性と会って電動バッグを受け取っている。

 

 隆誠がいる位置は二人から約十数メートル先にいた。しかし、女性は見られている事に全く気付いていない。隆誠が気配を消しているだけでなく、神の能力(ちから)を使って自身の存在に気付かれないようにしている。

 

 常に周囲を警戒している達也なら察知する筈だが、今回は彼ですら気付いてる様子が見受けられない。理由は簡単。精霊の眼(エレメンタル・サイト)は神の能力(ちから)を使っている隆誠を捉える事が出来ないからだ。

 

 精霊の眼(エレメンタル・サイト)が異能と言っても、あくまでこの世界に関する情報しか探知できない。元とは言え神の能力(ちから)は異なる世界で使っているモノである為、その存在を知らない達也では理解どころか認識するのは不可能なのだ。隆誠はそれが判明したから、こうして能力(ちから)を使っている。

 

 

「まったく……私はカウンセラーであって、使い走りじゃないのよ」

 

「先生に運搬を依頼したのは師匠であって俺じゃありませんよ。でもそうですね、雑用がご不満なら、税務申告が必要無い臨時収入……欲しくないですか?」

 

「……何をさせる気?」

 

 

(明らかに教師と生徒の会話じゃないな……)

 

 二人の会話を盗み聞いている隆誠は突っ込みたい衝動に駆られるも、何とか耐えながら黙って聞いていた。

 

 達也はFLTで今もトーラス・シルバーとして活躍中により、莫大な利益を得ている事を隆誠は知っている。学生が管理できないほどの額を持っているから、ああして人にビジネスの依頼が出来るのだ。

 

 

「香港系国際犯罪シンジケート『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』のアジトの所在を調べてください」

 

「何故ノー・ヘッド・ドラゴンのことを!?」

 

 

(『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』、ねぇ)

 

 初めて聞く単語に、隆誠は大変興味深そうに耳を傾けていた。

 

 何故達也が知っているのかは不明だが、極秘で仕入れた情報なのは間違いない。

 

 裏事情に色々詳しい真夜に訊けば分かるかもしれないが、今はまだ止めた方がいいと隆誠は判断する。何も知らないまま自分から訊いてしまえば、女狐みたいな性格をしてる彼女に借りを作ってしまう事になるから。

 

 

「自分達に危害を加えようとしている敵の正体を、調べるのは当然だと思いますが」

 

「何を企んでるの?」

 

「今のところは何もするつもりはありません。ただ、反撃すべき時に相手の所在が掴めないのは不安ですので……」

 

 

(何だか『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』と言う組織が、まるで九校戦に関わってるような言い方だな……まさか、これまで起きた事故は……)

 

 まだ確証は得てないにしても、今回の九校戦に『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』が大きく関わっている可能性がある。達也の言い方は広く解釈できる抽象的な回答だったが、明らかに九校戦に関しての内容だと隆誠は理解した。

 

 如何でも良いことだが、女性が達也に迫っていると言う光景になっていた。もしアレを深雪が見た瞬間、この辺りは確実に猛吹雪注意報が発生すると断言出来る。

 

 達也に囁かれた事で気付いたのか、女性は即座に離れるも顔が熟れたトマトみたいく真っ赤になっている。

 

 

「……保険、なのね?」

 

「そう取って頂いて構いませんよ」

 

「……分かった。一日、頂戴」

 

「素晴らしい。一日ですか」

 

 

(『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』のアジトを一日で調べる、か)

 

 あの女性が一体何者なのか知りたい隆誠だが、一先ずそれは置いておくことにした。

 

 普通に考えて犯罪組織のアジトを一日で調べるのは無理だ。けれど自信を持って一日でやると言ったから、達也は裏表無く手放しに称賛している。女性の正体を知ってるだけでなく、それだけのスキルがある事を理解している証拠と見ていい。

 

 隆誠の目的は達也の監視である為――

 

(フェン、お前に仕事を頼みたいがやってくれるか?)

 

 ――ワンッ!

 

 女性から密かに情報を得ようと、影に潜んでいる精霊獣に任せようとした。

 

 大好きな主の勅命だからか、フェンは元気機嫌良く念話で返事している。

 

(姿を消したまま、あの女性の近くに張り付いてくれ。彼女が得た情報を知りたい)

 

 神造精霊獣は隆誠によって造られた存在である為、使い魔としての役割を果たす事も出来る。フェンが情報を目にした時の記憶を視れるだけでなく、視覚や聴覚も共有する事も可能だ。同時に気配遮断と同時に姿を隠す事も可能なので、諜報には打ってつけでもある。

 

 これからやろうとしてるのは完全な違法行為だが、今の隆誠は『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』の情報を知る術が無い為、達也に依頼してる女性から情報を頂く事しか出来ない。元神として情けないのは重々承知してるが、人間らしく利用出来るモノは充分に有効活用するしかないと腹を括る事にした。

 

 フェンの見た目は狼犬だが隆誠の言葉、と言うより人語を正確に理解している。元々は精霊と言う独立情報体であり、隆誠によって神造精霊獣として進化した為、言葉を理解出来る知識も充分に備わっている。フェンはその気になれば人語を発する事も出来るが、動物になった所為かそれらしく振舞っていた。

 

(それじゃあフェン、行け)

 

 ――ワォンッ!

 

 達也と女性が別れた後、隆誠の影から出たフェンは透明化したまま行動を開始する。




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