ホロライブ・オルタナティブ〜holox of the eden〜 作:天翼project
警備ロボットの守りを突破し、地下施設の主である科学者を探して奔走するラプラスは、その道中ついでとばかりに幾つもの施設内の設備も観察していた。
(自給自足用か大きな菜園や植林場、それらを加工するロボットによる全自動工場…水はどっかの湖か川から引いてきてるのか?動力は…これだけの施設の規模となると核融合炉ってやつか?)
「…凄いな、なんならここを拠点にしたいくらいだが…流石に騎士団に捕捉されてるのなら無理か。なら目的のものだけさっさと回収してくか…な!」
圧倒的なハイテク施設。
生活に必要なものが全て地産地消されるまさに究極の秘密基地とも言えるこの施設に羨望を抱いたラプラスだったが、少なくとも黄金国の中に拠点を構えるつもりが無いのもあって遠慮なく破壊の限りを尽くし目的の科学者を探す。
散々探し回り遂に当たりをつけた頑丈そうな分厚い扉を槍からの魔力放出でぶち破ると、そこには縦穴を降りた時と同じような一際広い空間があった。
空間の奥の大きな穴の上に吊り下げられるように巨大な装置が鎮座しており、見るからに装置から高熱が吹き出し、装置の周囲にある青白く光る棒のような機械…恐らく冷却用と思われるそれで制御されているようだった。
これがこの施設の動力なのだろう。
そして、部屋を見回すラプラスは、部屋の片隅にある無数のモニターとコンピューターがある場所にようやく目的の人物を見つけた。
「やっと見つけた。探したぞ〜」
「ふふふっ…こっちは入れるつもりも無かったけど、まあいいよ」
モニターの前の椅子に座っていたその人物はくるりと椅子ごと回転してラプラスに向き直ると、フラフラとした足取りでゆっくりと立ち上がる。
長い時間手入れしていないのか長く伸びたボサボサの桃色の髪、顔を覆う前髪からは朧気に光る眼光が覗き、纏う白衣は薄汚れていた。
そして何より目立つピンと立った獣の耳。
イヌ科の獣人の少女。
よく見ると彼女の傍にある机の上には栄養価だけは高そうな見るからに味気ない健康食品と思わしきものの残骸が転がっていて、余程ストイックそうな性格なのが伺える。
「こよのラボの入口も吹き飛ばして、『guardian』達も壊してくれちゃって…許せないなぁ〜…」
「道端にちょっと大きめの石ころが落ちてたら蹴るだろ?そういうことさ」
「…言ってくれるね〜…じゃあ道の前から大きな岩が転がってきたらどうするのか…教えてもらおうかな!」
ラプラスの煽りに敵意を瞬かせた少女は、手元に浮かび上がるように出現したモニターを操作すると、直後この空間の天井が勢い良くが開き、巨大なロボットが降ってくる。
押しつぶされまいと後方に飛び退いたラプラスだったが、次の瞬間に襲いかかってきた無数の弾丸の嵐に慌てて近くの遮蔽物の裏に隠れた。
「『guardian
「ふっ…はっはっはっ!笑わせんな。道の前から大岩?そんなもん…真正面からぶっ壊して終いだろうが!」
威勢よく、新たに現れたロボットにも臆することなく吠えたラプラスは近くに転がっていたガラス片を持ち、その反射で遮蔽物越しにロボットの威容を確認する。
分厚い装甲に全身を覆われたそのロボットの全長は15m程はあるだろう。
手足が備わる人型に近い体躯だが、そのどれもが巨木のように太く、そして腕の指に当たる部分は全て大砲のような構造になっていた。
さらに肩や背中には幾つものカタパルトやオートエイムの機関銃が搭載されているようで、あれら全てが展開されればその弾幕の量は推して知るべし、今ラプラスが身を隠している遮蔽物など簡単に消し飛ぶに違いない。
そして、少女はいつの間にかロボットの頭部にある座席に搭乗していて、無数のモニターを操作してロボットを操っていた。
「例えが悪かったかな〜?道を転がる大岩、対して君はただのアリ…ボクの『guardian 試作機』は壊せないし、止められない。せいぜい良い戦闘データだけ回収させてもらうよ」
「おう良いぞ。ところで壊しちまっても構わないんだよな?」
「その虚勢がいつまで続くか…見ものだねっ!」
ロボットが大きな腕を振り上げ、そして振り下ろす。
単純な質量による絶大な破壊力を持った一撃は遮蔽物を容易く押し潰し、床に大きな亀裂を生み出す。
なんとかそれを避けたラプラスだったが、姿を顕にしたのと同時にロボットに搭載されている無数の機銃が火を吹いた。
逃げ場なく撒き散らされる弾丸の雨。
それは見を隠せるような遮蔽物さえ物量で根こそぎ破壊していく。
「っ!自分の部屋こんなぶっ壊して良いのかよ!」
「どうせ直せるし?そんな事よりデータデータ!もっと君の”魔法”を見せてよ!そしてボクの技術を試させてよ!」
「チッ、分かっちゃあいたがロクな奴じゃないな!そう来なくっちゃ吾輩の部下には相応しくないよな!」
なんとか弾幕を魔法によるバリアで防いでいたラプラスだったが、バリアの耐久力の限界を察して反撃に移ることを決めた。
バリアに亀裂が生じた瞬間、それを後方からぶち破りながら槍の切っ先をロボットに向け、そこから特大の魔力の奔流が放出される。
津波のような破壊の魔力に対して、ロボットは先ほど遭遇した機体のと同じようなバリアを全方位に展開しそれを耐え凌ぐ。
それでも耐久力がそれなりに削られたのか、ロボットを覆うバリアは弱々しく点滅を始めた。
あれがバリアの耐久力の限界を表しているのなら次の一撃で破れるだろう。
「っ…!今のは効いたよ!なら、次はこっちの番だね!武器システム起動、全武装展開、炉負荷起動、排斥プログラムON、外殻補強、セルシールド補強、耐久システム起動、耐性起動、衝撃吸収システム起動、センサー出力最大、マルチシステム起動、戦闘プログラム管理システムフル稼働───さあ、本気で行くよ!」
ガシャン、ガシャンと、ロボットが次々と変形を繰り返し、その内部からウィーーンとけたたましい音が鳴り響く。
薄れていたバリアも光を強め、背中や腕からさらに多くの武器が出現し、ロボットその物が持つ威圧感が増す。
これは確かに強敵だ。
こちらも全力で仕留めにかからねば返り討ちにされかねない障害。
本当はあの科学者を何とか仲間に加えたいところだが、手加減は出来なさそうだ。
(まあ…それで死んだのならそれまでか。運命感じたんだが、ダメならダメで次を当たるだけ───)
「───だが、念の為もう一度聞いておこうか。お前、吾輩の部下になる気は無いか?」
「君の部下になるより君で実験した方がボクにとっては何十倍も利益があるんだよ。だから大人しく身柄を引き渡してくれたらちょっとは優しい実験をしてあげるかもよ?」
「そうか…なら力づくで分からせてやるしかないな!」
「はんっ!君なんかこのguardian試作機の敵じゃ───へ?」
「…なんだ?」
お互い戦意を剥き出しにし、ぶつかり会おうとしたその瞬間。
突如として、何の前触れもなく施設の天蓋が消し飛んだ。
深い地下にあったはずのこの施設から、僅かに雲がかかる青空が見える程に見晴らしの良くなった空間。
天蓋だけでなく特定方向にかけて土壌が放射状に根こそぎ抉られているようで、何がその原因になったのかは想像がつかない。
拍子抜けしたようにラプラスと科学者が硬直していると、そこに突っ込んでくる人影が一つ。
「っ!ラプ!直ぐに逃げるよ!」
「ルイか!?何があった?」
「化け物が来てる───うわぁ!?」
「うぐっ!?ぐぅ…!」
ラプに近づこうと飛んできていたルイの背後で真っ白な閃光と共に爆発が置き、衝撃で吹っ飛ばされてきたルイにラプラスも巻き込まれ床を転がる。
暫く呆気に取られていた科学者もそれでようやくハッとして、爆発の方に機体を向けた。
「はぁ〜…ちょっと力みすぎたかな?誰か巻き込まれてたりしないよね…?一応方向とか調整した筈だけど…」
立ち上る土煙、その奥から姿を現したのは、全身を重厚な白銀の鎧で覆われた騎士然とした振る舞いの人物。
聞こえる声は、何処か気の抜けた女性のものだ。
「…君が、ボクの…こよのラボをこんなふうにしたの?」
「んー?え〜と…あぁ、話に聞いてた手配犯。ここにいたんだね。次いでに捕まえようとしてたから丁度いいや」
「よくも、ボクが手塩にかけて改築したラボをっ!」
「っ!おい!お前よせ!」
施設を吹き飛ばしたと思われる下手人に科学者は激昂し、ロボットの巨腕を振り抜いた。
同時に背中から、腕から、そして胴体からも出現した無数の機銃やニードルガン、ミサイル等の攻撃がただ一人の人間を葬るために殺到する。
そして、それらは騎士が剣を一度横薙ぎに払った事で生じた閃光によって消し飛んだ。
放射状の光、真っ白な極光。
それが弾幕を全て飲み込み、迫るロボットの腕も、ロボットを守るシールドも、様々な防御機構が働いていたらしい機体の外殻をも背中まで貫き、それだけでは飽き足らず背後の壁まで抉って、斜め上に駆け抜けた閃光がまたもや地上に届く風穴を開ける。
「危ないなぁ…人に硬くて重いもの投げたりぶつけたりしちゃいけません!…って、子供の頃に習わなかったの?」
「な…そん…な…ありえない…そんなわけ…うそ…だ…」
閃光は辛うじて登場スペースの下を通り抜けたので科学者は巻き込まれることなく五体満足で済んでいたが、愛着が湧いて魔改造したという機体。
戦闘において絶大な信頼を誇っていたロボットがたった一撃で粉砕され、うわ言のようにその事実から逃避するような言葉を呟いていた。
ロボットは崩れ落ち、その衝撃で科学者が登場スペースから投げ出された。
ゴロゴロと転がり、何処かぶつけたのか呻きながら身体を抱えるように悶える科学者に、騎士はカツン、カツンとわざとらしく靴音を鳴らして近づいていく。
「訓練用のカカシか何かだったのかな?だったらもっと頑丈に作らないと。ねえ?」
「…ルイ、ありゃ何だ?」
「…あれが例の現白銀騎士団団長、白銀ノエル。最強の騎士、天賦の子。突然地下に降りてきたかと思ったら、剣を振っただけで天井を地面ごと吹き飛ばしてて…」
「天賦の子…なるほど、そりゃやばい訳だ。っと、ひとまずどうするか」
「…君達も、私の部下の邪魔をして怪我させたんだってね?落とされた人なんか辛うじて生きてたけど、もう騎士として仕事することは出来ないだろうね。公務執行妨害、及び傷害罪…お縄についてくれるよね?」
「っ!」
「…勿論お断りだ、ね!」
科学者を見下ろしていたノエルの兜の中の瞳が、ラプラス達を捉える。
同時に向けられた穏やかなようで重くのしかかるような気迫にルイは本能的に体が強ばってしまっていたが、対してラプラスはそれでもなお気押される事無く、槍をぐるんと回すとノエルに向かって突進した。
「ふんっ…およ?」
「───が、流石に無策で勝てるとは思わないけどな!」
迎撃の為に振るわれたノエルの剣。
先程の閃光は放たれず、あくまで常識の範囲での破壊力を持った剣。
それでも神速の如く横薙ぎに振るわれたそれをラプラスはスライディングで剣閃の真下を潜り抜けるように回避すると、そこで蹲っていた科学者を回収しながら床を転がる。
その意図が掴めずとも、捕まえるべき標的を奪われた事を察したノエルは諸共押さえ込もうと踏み出そうとするが、その足に鞭が絡みついた。
「ん?何?」
「ラプの邪魔は…きゃっ!?」
足を絡めとった鞭を引きノエルを引き倒そうと試みたルイだったが、逆に鞭が絡まったことを意にも介せず踏み込まれた足に引っ張られ前のめりに転倒してしまう。
絡まる鞭を足を振って払い退けラプラス達の元に歩み寄ろうとするノエルだったが、物陰から襲いかかってきたコヨーテ型の警備ロボットを両断して迎撃するのに僅かに足を止めた。
その隙を突き、ラプラスが槍の切っ先をノエルに向ける。
それに気付いて振り向いたノエルだったが、それとほぼ同時に槍から放たれた極大の紫色の光線が重厚な鎧に包まれた身体を軽々と吹き飛ばし、施設の壁まで押しやり、叩きつけた。
「おいルイ!今のうちにコイツ連れて離脱するぞ!」
「う、うん!二人分持つのはちょっとキツイかもだけど…」
「…逃げるの?」
「あぁ?あの化け物相手にまだまともに戦えるわけないだろ。全力で立ち向かった所で本気出されたら歯が立たない」
「そう…せっかく頑張って作ったラボだったのになぁ…」
科学者のざんばらに伸びた前髪から覗く瞳に涙が浮かんでいるのをラプラスとルイは見た。
しかしノエルが突っ込んだ壁の方から瓦礫が崩れる音を聞いて、直ぐにルイはラプラスと科学者の首根っこを掴んで空に向かって羽ばたく。
流石に二人分の重量は厳しいのかフラフラと揺れていて安定感は無いが、それでも十分高度を上げて、尚且つかなりの速度で飛べるのは流石と言うべきか。
その間、科学者は独りでに浮遊する端末で何か操作を行い始めた。
「排除システム起動…警備ロボット全起動…生体認証、敵対設定…護衛設定…ラボ自爆システム、可決…Enter、と。取り敢えずラボの防衛システム全部起動して足止めさせた…君…ボクの事部下に欲しいって言ってたよね?」
「あ?ああ…改めて聞くが、なる気はあるか?」
「…あのラボはね、元々昔の戦争の時に身を隠すための地下シェルターだったんだよ?国を追われてあそこを見つけて、それから何年もかけて広げて自分好みにカスタマイズして…自動農園とか生産工場とか核融合炉まで作って、積み上げた実験データも研究成果も全部あそこに置いてきたのに…もう、帰れなくなっちゃったよ」
「…」
「1番強い警備ロボットもあんな呆気なく壊されて、作ってきたものも全部無くなって…そんなボクを、君は欲しいの?」
「ああ、頭が良いってだけで利用価値はある。資材も機材もまた揃えてやる。必要な環境だってきっと与えてやる。吾輩達の、世界征服したいって野望を叶える為には…吾輩達には、お前の力が必要だ。手を貸してほしい。対価はお前の望む研究環境と好き勝手できる暮らし。ついでに世界だ。どうだ、来るか?」
「…うん、分かった。まだ色々安定して無さそうだし、報酬は後払いで良いからさ…研究の手伝いとか、してもらえると有難いな。えっと…ボクはこより、”博衣こより”。よろしくね」
「おう、よろしく。ちな、吾輩が偉大なる魔族、ラプラス・ダークネスで、こっちの鷹の獣人が部下第一号のルイだ」
「うん、鷹嶺ルイだよ。よろしく───後ろ!」
「むっ!?クソッ!」
自己紹介をし合ってる最中、後方のラボがあった場所で特大の爆発が起こった。
そして直後に、向けられたルイ達の背を追うように飛来してきたのは、白銀の鎧を僅かに煤けさせた程度の損傷しか負っていないノエル。
既に上空600m余り、地上の騎士達でもボウガンを向けては来るが狙いにくい距離と速度があるというのに、それに一度の跳躍で追いついたのはまさにラプラスの化け物という評を表していた。
「逃がさないよ!」
「ぶつかるとしたらまた今度だ!今は帰れ団長様よぉ!」
「くっ、落ちないようにね!」
このままではマズイと思ったのかルイは迫るノエルに取りつかれる前に急降下し、その頭上をノエルが飛び越える形になった。
しかし、それを見たノエルは剣を思いっきり振り抜くと、その反動で降下するルイ達に向かって進路を変える。
「そんなのあり!?」
「もう!せっかく気持ち切り替えようとしたのに!ボクのラボをめちゃくちゃにしたことも許さないんだから!君達地上に降りて!」
「えぇ!?」
「早く!」
「ルイ!信じてやれ!」
「う、うん!」
「ごちゃごちゃ言ってないで…捕まれぇ!」
どう逃げ回っても強引に進路を変えて追ってくるノエルに痺れを切らし、こよりの指示に従ってルイ達は地上に降りた。
当然ノエルも追ってきて、勢いよく地上に着地している。
降下の際に自前の翼で減速できるルイはともかく、あの高さからあの勢いで思いっきり地面に衝突してもピンピンしてるのはおかしいだろうとラプラスは苦笑した。
「普通くたばれよな、人間なら」
「ちょっと高い所から落ちてやられちゃうような脆弱な人間は騎士団にはいないからね…あの地下施設の入口から落とされた騎士も生きてたでしょ?そういうこと」
「いや骨にヒビすら入らないのはおかしいって…」
人間離れしたその肉体の頑強さにルイもついツッコミを入れるが、そんな話はどうでもいいとノエルは剣を構え、いつでも叩き切れるぞと威嚇するように刃を光らせていた。
ラボを吹き飛ばしたあの閃光と同じ白い光だ。
「最後通告、大人しく捕まるのなら無闇には傷付けないよ」
「今の黄金国のきな臭さ的に、人間以外の種族が捕まったのなら問答無用で極刑確定だろうが。何が傷付けないだ」
「…そう、それについては私もどうかと思うけど、お国の考えることに騎士団は口出し出来ないしね。取り敢えず…私は私の仕事を全うさせてもらうよ!」
ノエルが踏み込み地面に亀裂が走る。
ラプラスとルイが迎え撃たんと構える。
そして───割り込んできた大きなコヨーテ型ロボットに双方が飛び退いた。
「…何?」
「『guardian五式』…ついでに、『guardian四式』」
頭から尾にかけて全長7mはあろう巨大なコヨーテ型ロボットと、そこに合流する無数のドローン。
それらはラボ周辺の監視や防衛を目的に作られていた警備ロボットで、普段は光学迷彩で身を隠しているが、ノエルという化け物に対抗するためにこよりが一帯から呼び出したものだった。
「皆…行っけぇー!」
「チッ!」
巨大な質量を持った大型コヨーテロボットが、機体ごとに様々な兵装を備えたドローン型ロボットが、ノエルに襲いかかる。
更に、ドローンが放った煙幕に隠れて、そのままラプラス達は逃走した。
ドローンは次々と剣閃で叩き落とされ、大型コヨーテロボットも既に両断され粉砕されているが、全方位からの弾幕と悪臭弾、粘着弾、ネット弾等の豊富な種類の兵装と数えるのも嫌になるドローンの数をもって、確実に足止めを行っていた。
「待てぇ!逃げるなぁ!悪党!」
「悪党上等、覚えてろ団長様!吾輩達は…いつか世界を征服する秘密結社…『holox』だ!」
煙幕と弾幕に紛れて、再びルイに抱えられ飛行するラプラスとこより。
今度は地上からでも見つかりにくいように、木々の合間を縫って超低空飛行で移動する。
景色が瞬く間に移り変わり、暫く。
流石に疲弊したルイが着陸した時には、日は落ちて夕焼けが空を赤く染めていた。
適当な岩に腰掛けて休息するルイ、唯一持ち出していた浮遊する端末を操作して何かを確認しているこより、そしてそんな二人に代わって周囲に気を張っているラプラス。
三者三葉に休む中、先程のラプラスの宣言をを思い出したのかルイが口を開いたを
「はぁ…はぁ…holox…ねぇ。即興で考えたの…?」
「ん?良いネーミングだと思わないか?固有名詞に意味が必要な訳じゃないだろう」
「それはまあ…そうだけど…」
「…警備ロボットは皆壊されちゃってるね。でも、残ってる監視カメラとか見るに追跡は諦めてくれてるみたい」
「そうか、取り敢えず撒けたのなら…はぁ。疲れた」
「お疲れ様ー。大変だったね」
「その…改めて、よろしくお願いします…」
「なんだなんだ、もっと軽く接してきても良いんだぞー?」
「それは…もうちょっと慣れてからで…」
「…ま、良いけどな。これで念願の頭脳担当ゲットだ」
「ずのー…」
目的を達成したことを改めて噛み締めているラプラスをこよりはじっと見つめた。
その様子が面白かったのか、ルイは遠巻きに二人の様子を少しニヤニヤとしながら眺めていたが、やがて日が落ち始め、念の為もう少し移動した三人は適当な川の近くで野宿を始めた。
「ああぁぁーーーー!!!???草むらに隠した荷物置いてきたぁぁーーーー!!」
「色々あったから回収忘れてた…」
「ねえ既にお先真っ暗なんだけど…ボクまた判断間違えた?」
「これは私も経験した事だからこよりも慣れるよ」
「えぇ…?」
「ちっくしょーーー!」
そして案の定グダグダになり、新人にこれでもかと不安感を植え付けるのだった。
設定資料:こよラボ
地下500m程に作られた巨大研究施設。
元々今は忘れ去られたシェルターだったのをたまたま発見したこよりが、そこに住み着きながらも改築を繰り返し広げた。
掘削ロボットを作り、掘り当てた鉱物を使ってさらにロボットを増やし、同時に空間を広げ、それを繰り返す内に現在の広さになっている。
施設内には完全な自給自足を可能にする農園や加工工場があり、これらは全て全自動で制御され生産から加工までを人の力無しで執り行える。
ただしここで製造されている食料などは味気ないサプリや栄養バー等で研究に没頭するあまり無駄な要素を省いてきたこよりのストイックさが現れている。
多くの警備ロボットが施設内を徘徊しており、普段収納されているものを含めると1000を上回る数の警備ロボットが存在している。
これらもまた全自動で製造、改修、メンテナンスされ、自立して稼働している。