ホロライブ・オルタナティブ〜holox of the eden〜   作:天翼project

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小休止のfree time

 

大陸の何処かにある草木生い茂る森の奥地。

神秘的な木漏れ日と水のせせらぐ音、明らかに一本一本が巨大な大木、それを利用して作られた幾つものツリーハウス。

そこに暮らすのは、長い耳が特徴的な種族。

 

神秘と幻想に溢れる長命な種族、エルフの隠れ里。

 

 

そんな里の広場の一角で、切り株のテーブルを挟んで2人の少女が向かい合い茶を啜りながら語らっていた。

 

 

「でさー、任務失敗したのをここぞとばかりに貴族とか王族さん達にいびられて、今騎士団も大分空気悪いんだー」

 

「はぁ、上も馬鹿だね〜。ノエル程の戦力を無下に扱うなんて」

 

「まあでも私達が悪いのも事実だよ?どれだけ強くたって仕事もろくにこなせないんじゃ意味ないだろうし…私もあの時は思いっきり油断してたからさ。正直かな〜り舐めてた」

 

「ふぅん?その…ほろっくす?って名乗ってたんだっけ。強かったの?」

 

「ウチの騎士が複数がかりでも一人に翻弄されてたらしいし、あのリーダーっぽい魔族の子は凄い魔力だったけど…ぶっちゃけそんなにかな。でも例の私達が追ってた科学者の絡繰の大軍にまんまと足止めされちゃって。言い訳だけど、上方向ならともかく横に逃げる相手にぶっぱしちゃうと被害が広がりすぎるし…」

 

「なんにせよ、物騒だねぇ。そっちも獣王国の侵略活動とか酷いって聞いたよ?」

 

「んー…あの人達凄い連射してくる鉄砲とかかなり遠くまで飛んでくる大砲とか使ってきて普通の兵士さん達じゃ全然相手にならないんだよね〜。騎士団の皆がなんとか踏ん張ってくれてるけど…正直な所私も暇を出されてるとはいえこんな所にいる場合じゃないんだけどね」

 

「良いよ別に、あんな国滅んでも。騎士団が決起したら簡単に堕ちるだろうに、よくずっと従ってられるね?」

 

「民に罪はないからね。国は横暴でも賊とか妖から民を守ってることに違いは無いし、幾ら騎士団でも国全部に手を回せないから」

 

「それは難儀な…ノエルを飼い殺しにしてる癖に好き勝手して、腹立つ〜。ラミィでも王都の真ん中に放り込んで滅ぼしてやろうか…」

 

「フレアが励ましてくれるだけで私は十分だから、やめてね?さっきも言った通り民に罪は無いから…」

 

「分かってるよ」

 

 

黄金国の事情に愚痴をこぼすのは、つい最近の仕事のミスで暫く任務を解かれ、普段の鎧姿ではなく私服に身を包む白銀騎士団団長、白銀ノエル。

そしてもう1人は、縁あってノエルの幼なじみであり親友として度々会っている不知火フレアというダークエルフ。

親友の近況を聞いて物騒な事を言い始めるフレアだったが、ノエルは苦笑してそれを宥めた。

 

 

「大変だね騎士団長様も。最近凄い立て込んでるって聞いてるよ」

 

「今回は件の科学者を取り逃しちゃったけど、夜叉と殺人鬼も追わなくちゃ行けないからね。今晩にはもう帰るけど許してね」

 

「それは別に良いんだけど、夜道に気を付けて…って言う必要も無いか。なんかあったらまた相談してよ」

 

「うん、ありがとう!…ところでなんか寒くない?」

 

「どうせラミィの奴が昼間っから酒飲んで酔って冷気ダダ漏れにしてるんでしょ。そのうちアキが締めるだろうから気にしなくて良いよ」

 

「…ラミィちゃん頑張れ〜…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、なんとか有り合わせの資材で取り敢えず1個…武装とかもない探索用だけど…」

 

「十分十分、流石博士!カッコイイなぁ、凄いなぁ!」

 

「もう、そんなに言われたらもっとやる気出しちゃうよ!」

 

「資材も機材ももうないでしょう?あれ集めるだけで大変なんだから」

 

 

ラプラスにおだてられ腕を振ってやる気を見せているのは、ラプラスとルイが乗り込んだ地下の巨大ラボの主、獣王国を追われ現在絶賛指名手配中の科学者、コヨーテの獣人博衣こより。

ざんばらに伸びていた髪はルイによって散髪し整えられ、ボロボロだった装いも変装して街で買ってきた旅人セット一式に着替えている。

資金に関しては置き忘れてきた荷物をあの後何とか騎士団や兵士の目を掻い潜って何とか回収に成功していたので問題なし。

思いの外直ぐにラプラスとルイと打ち解けたこよりは、僅かに持ち出せた工具や資材を使って小型のドローンを制作していた。

 

以前白銀騎士団の団長を足止めしていたドローン達と比べればサイズも小さく武装等は一切搭載されていないが、その分隠密性とリアルタイムでの閲覧こそできないが小型カメラによって撮影と記録が行える優れものとのこと。

それを手に取り無邪気にはしゃぐラプラスに、ルイは呆れた表情をしながらも暖かく見守っていた。

 

 

「…え、何?2人は親子かなんか?」

 

「勿論違うが?」

 

「やってる事はほとんど同じだけどね。最近ずっと私が料理してるし洗濯も物の整理整頓も全部やってる。働け」

 

「う〜、吾輩は常日頃から追手を警戒したり狩りの獲物を探してたりして忙しいの!」

 

「はいはい、そういう事にしてあげようかな」

 

「む〜…解せん…」

 

「は…あはは…仲良いんだね。2人はどれくらい一緒に旅してきたの?」

 

「一月くらい?」

 

「そんくらい」

 

「ひとっ…!?思ったより短かった…」

 

「出会いも突然だったしなぁ。コイツ初っ端吾輩のこと襲ってきたんだぞ?脚を鞭で絡め取られて木にバンバン叩きつけられたもんだ」

 

「ごめんって」

 

「そ、それでそんなに打ち解けてるんだったら、ボクも結構馴染めそうかな?」

 

「まあな。なんならこっちの命狙ってくるくらい気概ある奴だから誘ってるっていうのもある」

 

 

 

若干引き気味に聞くこよりにラプラスは飄々と答える。

想像以上にバイオレンスな出会いを語られ、自分のした事も案外普通なのかと変な方向で的外れな考えをしているこよりを他所に、ルイは簡易テーブルやこよりが散らかした工具などをさっさと片付け、出立の準備を整えていた。

 

今3人がいるのは工業都市より北に30〜40km程、黄金国の中の寂れた小さな廃墟街。

何十年か前にはもうここの住人は全員別の街に移り住んでいるらしく、多くの物資が既に持ち出された後ではあるが僅かに残った資源などを利用し手持ちのものと組み合わせて作ったのが先程のドローンだ。

しかし何故ここから人が去ったのか。

それはこの世界に蔓延るとある事情が影響しているからである。

 

 

「ふうむ…にしてもやっぱり街を覆うのは小さな柵だけか。それも今は壊れてるが。近くに妖はいたか?」

 

「いるいる、全然いる。こんな場所にろくな守りもない街を建てたところで数日したら食い荒らされて終わりでしょうに、無謀なことするものね」

 

 

(あやかし)”、この世界に突然的に現れる怪物。

その起源も行動原理も目的も何もかもが不明で、分かるのは他の生物…特に知性の高い生き物に対して非常に敵対的なこと、文明的な建造物に対して攻撃的な事、何らかの理由で活動を停止させられると、死体も残らず消滅すること、その肉体の内側に大きな魔力を秘めていること、くらいだろうか。

そんな妖は確認できるだけでも大陸全土で存在を確認されており、一度姿を表せば討伐されるまでの間に多くの犠牲を出し、個体によっては城塞都市ですら壊滅させることすらある危険生物。

そんな生物がこの近辺をウロウロしているとなると、この街が廃墟になった理由を想像することは容易い事だった。

 

 

「う〜ん、でも大きな防護壁を建造しようとしてた跡は見つけたよ?もしかしたら街を作った後に防護壁を建てようとして、その前に妖に攻められて街を放棄したのかもね。なんにせよ騎士団が守ってたならそうそう突破なんてされないはずだけど…黄金国は兵士の数こそ多いけど騎士団以外は素人に毛が生えた程度の練度しかないからなぁ」

 

「流石元獣王国お抱えの科学者。その辺詳しいのか?」

 

「軍部から情報は度々流れてきてはいたね。それこそ白銀騎士団は明確な脅威として何度も対抗策を練っていたけど、普通の兵士に関しては適当に銃撃ってるだけで散ってく有象無象扱いされてたよ」

 

「じゃあ黄金国は今まで実質五千人…実際に戦場に出せる人数で言えばもっと少ない数だけで獣王国の侵攻を防いでたことになるってわけか。それでよく騎士団を無下に扱えるものね」

 

「流石人間、業が深い」

 

「魔族も大概だと思うけどね。あ、悪口じゃないよ?」

 

「逆に悪口以外のなんの意味があるんだよ…別に良いけど」

 

「も〜、悪気はないってば〜」

 

 

口を栗のように尖らせて拗ねたように言うラプラスの角を掴み、抗議するようにガシガシと頭を揺らすこより。

「あうあう」と声を出しながら頭を前後にゆらされているラプラスを見かねてルイが止め、改めて皆の前に地図と新聞を広げた。

 

 

「それで、次はどうするの?確保の記事は上がってないから目標の二人はまだ捕まってはいないと思うけど…」

 

「んー…どっちかを追うなら距離的にも夜叉とやらの方だな。が、最後の目撃情報があった場所がかなり遠いから時間はかかるだろうが…吾輩達が見つけに行く前に捕まってるんだったらその時はその程度の奴だったって諦めるしかないな。方針は変わんないぞ」

 

「ボクは初めて聞いたけど…もしかしてボクが騎士団に先に捕まってたら諦められてた?」

 

「そのとーり」

 

「運が良かったね」

 

「…あっぶな〜」

 

 

自分のあったかもしれない運命に顔を少し青くさせて震えているこよりだったが、そこまで気にしている訳でもないのか「まあ今無事だからいっか」と直ぐに気を持ち直す。

そのポジティブさに感心した様子のラプラスは、機嫌良さそうにリュックからペンと幾つかの資料を取り出すと、地図に何かを書き込み始めた。

 

 

「それは?」

 

「夜叉についての新しい情報は新聞上がってないけど、この前工業都市に忍び込んだ時に拾ってきた資料に少しその後の捜索状況を記録したのがあってな。それから移動距離とか場所を割出せないかと思ったんだが…やっぱりちょっと難しいか?」

 

「なるほど、予測と計算ならボクに任せてよ!あの時持ち出せた自動追従端末型モジュールには高度な演算機能もあるんだ!」

 

 

話を聞いてこよりが嬉々として得意げに語りだす。

そして浮かべたのは、例の一件の時にも使用していたこよりを追従する空中に投影されたかのように浮遊する端末だった。

それをこよりが高速の指捌きで操作すると、端末に表示されたラプラスが使っているのと同じ地図、そこに幾つかのマークが付けられた。

 

 

「それは?」

 

「地図と資料の情報を入力して予想される夜叉の居場所を何個か割り出して貰ったんだ。合ってるとは言い切れないけど、参考にはなると思うよ!」

 

「マジか、科学の力ってすげ〜」

 

「根拠の分からない予測はあんまり好きじゃないけど…闇雲に探すよりかはマシかな。じゃあ今度はそっちに方面行ってみる?」

 

「おう、んじゃ準備終わったら出発するか」

 

「「了解!」」

 

 

元気よく返事をしたルイとこよりは直ぐに支度に取り掛かりる。

そんな二人を横目に、ラプラスは水筒から水を一口飲むと長く息を吐いて進路の予定となる方向に目をやった。

 

 

「この辺は国の手も入ってない分、妖の駆除もされてない…ここ進むと群れとぶち当たるかもしれない…ははっ、上等上等」

 

 

道の先から漂う妖しい気配に、ラプラスは悪戯っ子のような笑みを浮かべてチラリと支度を整えているルイとこよりの方に視線を向けたのだった。

 

 




設定資料:(あやかし)
世界の各地に降って湧く謎の生命体。
一定の知性を持っているが他の妖を除く知的生命体に対して非常に敵対的で、人工物に対して極めて攻撃的。
個々の力は個体差に寄るところが大きいが、一応妖の強大さによって一定の規格事に区分分けされており、主に黄金国や獣王国ではこの規格によって討伐に当たり差し向ける戦力を変えている。
規格毎の名称と脅威度は以下の通りである。
『胎位』…最も弱い個体の分類。単体なら人間の一般兵士でも複数で十分な対処が可能。
『成位』…妖の中では最も多く分類される規格。強さはそれなり。白銀騎士クラスの精鋭が対処に当たる必要がある。
『老位』…妖が長く生きた個体で、この規格から特殊な能力を持つ個体が現れることもある。ネームドキャラクラスでようやく互角以上に戦える。
『爵位』…特殊な規格。殆どが戦闘能力を持たないが、存在するだけで周囲の環境へ変化を及ぼす。また、胎位〜成位の妖の群れを率いている事が多い。
『冠位』…老位クラスの妖も率い、爵位とは違い本体も高い戦闘能力を併せ持つ妖の王のような存在。ネームドキャラクラスが複数で対処に当たりようやく打倒が可能。群れも合わせれば脅威度は更に跳ね上がる。
『界位』…群れを率いることは無いが、その戦闘能力は桁外れ。確認されている限りでは現在はこの世界に一体のみ存在し、世界そのものに匹敵する強大さを持つと言われる。天賦の子クラスが集団で挑んでも勝てるかどうかは分からない。
ちなみにこれらの規格の名称は魔族が魔界に押しやられた大戦よりも前に制定されており、故に殆どの種族が仲違いしている現在でも共通の呼び方として広まっている。
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