ホロライブ・オルタナティブ〜holox of the eden〜   作:天翼project

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怪物だらけのdhisutopia

 

「ラ〜プ〜!!!!」

 

「許さないよラプちゃん!絶対わざとでしょお!?」

 

「あっはっはっはっ!こそこそ通り抜けようなんか手間のかかることするよかこっちのが早いだろ」

 

「だからって態々トレインすることないじゃん!?」

 

 

黄金国の一角にある大森林。

人の手の入らないそこで大声を上げながら全力疾走、或いは飛行しながら背後から迫る無数の異形、”妖”から逃げ惑うラプラスとルイ、そしてこより。

休憩の為訪れた廃墟の周辺にいた妖の目を盗み森を抜けようとしたところ、ラプラスが適当な妖に石を投げた事で完成した現在の状況。

こよりは恨み言を吐き、ルイは飛びながら走るラプラスの頭をポカポカと叩いている。

 

 

「どうすんのよこの数!何百いると思ってんの!?」

 

「いや〜、思ったより群生してたなぁ。殆ど幼位みたいだが、成位も混じってるか?」

 

「老位がいないっぽいだけマシだけど…あんな数は流石に無理だって!」

 

「あ〜もう!ボクのguardianが全部健在ならあんなの簡単に制圧出来るのに〜!」

 

「全部ぶっ壊しちまったからな〜、ドンマイ!」

 

「ラプちゃんがやったんでしょ〜!!」

 

 

迫る妖は数の多さに応じてその造形も様々で、犬や猿、鳥や蜘蛛のような自然界の生き物に似た姿をとるものから、虫のような羽が生えた妖精のような形をしていたり、異常に長い手足で這ってくる人型等の異形と様々。

ただそのどれもに共通しているのは、見る人の不安感を煽るような不気味さを持っているということだろうか。

 

そんな中、妖の中でも特に移動速度の早い鳥型や羽持ちの飛行する複数の個体が3人に対して一気に距離を詰めてきた。

 

 

「!ルイ後ろ」

 

「分かってる、よ!」

 

 

ラプラスの指示を受けたルイは鞭を操り、付近にあった太く大きな枯れ枝を絡め取ると、それを後方に向かって放った。

後方に飛んで行った枝は複数の妖を巻き込んで転倒させ、そうして転んだ妖達は後続の妖に踏み潰されている。

集団で活動する原理こそ持ち合わせていても、同族に対して関心がある訳では無いのか妖はその辺が非常なようだ。

 

とはいえ多少の妨害を行ったところでその数は圧倒的。

真正面からぶつかっても圧殺されるのは目に見えている。

 

 

「ていうかラプ、いつもやってる魔力放出ならいっぺんに片付けられない!?」

 

「いや〜、この前のこより回収しに行ったやつで調子乗ってバンバン魔力撃ちすぎたからな〜。ちょっと厳しいかな〜」

 

「結構時間経ってるでしょう!?悪ノリも大概にしてよ〜!」

 

「る、ルイ姉!また来てるぅ!」

 

「あぁもう!」

 

 

妖達の勢いは留まることを知らず、木々を薙ぎ倒しながら迫る群れの中から再度移動速度の早い飛行型が詰めてきた。

苛立つルイはその個体を鞭で捕まえると、そのまま鞭を振るって適当な木に叩きつけ血溜まりにも似たシミに変える。

既にこの追いかけっこが始まってから10分程が経過し、ラプラスやルイはまだ余裕を持って逃げれているが、この辺りでこよりが息を乱し始めた。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「お前獣人だろ。体力と身体能力はどうした」

 

「ラプちゃん達に連れてかれるまでずっと引き篭ってたんだから仕方ないじゃん!こんなに走るもの久しぶりなんだし…はぁ…はぁ…」

 

「しゃーねーな。ルイ担いでやれ」

 

「私の負担!」

 

「さっき確認した感じこの先にでかい川がある。底も深くて流れも急流。そこを飛び越えりゃ飛行型以外は追って来れないだろ。飛行型もそんなに多くないし他のを撒ければ後は片付けられる」

 

「うぅ…こより、捕まって!」

 

「う、うん…ごめん、ありがとうね。その分ボクが迎撃頑張るから!」

 

 

ラプラスからの意見に眉間に皺を寄せて考え込んだルイだったが、渋々ながらも聞き入れてこよりの腰に腕を回し、抱える形で持ち上げた。

腰から洗濯物のようにぶらり状態となったこよりも、迷惑をかけたことを挽回するために懐からハンドガンのような形状の、しかしやたらと厳つい装置を取り出してそれを後方の妖の群れに向ける。

 

 

「それは?」

 

「数少ないボクが持ち出せた武装の一つ!『こよブラスター』!」

 

「ネーミングざっつ!」

 

「良いでしょ別に!」

 

 

ラプラスからの辛辣なツッコミにもめげず装置の引き金が引かれる。

それに反応して装置の射出口のような部分が光り────妖の群れの方で爆発が置き、数十体の妖が巻き込まれて沈黙した。

 

 

「…何その威力」

 

「ラプちゃんはボクのguardianと戦った時に見てるよね」

 

「お、それあれだろ。研究所の人型ロボットに積んでたやつ。色々面白い武装があって楽しかったな」

 

「あっさり壊された時はちょっと悔しかったけど…これはあれの小型化したやつだね。太陽光で発電できるしお手軽に使えるんだ。まあその分満タンでも2発しか打てないし充電に半日かかるけど…」

 

「要改良だね〜。で、それもう1発撃てるならもうちょっと後続足止めしてくれない?」

 

「合点承知!」

 

 

緊迫感漂う追いかけっこの最中だというのに自慢げに自分の発明品の解説をするこより。

ルイは妹にでも接しているかのような微笑ましい視線を送るが、そんなことをしている暇では無いので直ぐに切り替え、迎撃の指示を飛ばす。

了承したこよりは群れの前方の方にブラスターの狙いを定め…引き金を引く。

 

群れの前方を走っていた妖は、正面で起きた爆発により勢いを弱め、後続と衝突して多くの妖が転倒したり踏み潰されたりと最初の方に比べれば勢いも数もかなり衰えてきていた。

それでもまだ百は優に超える数が追いかけてきているが…

 

 

「む、遠くから川の音。もうすぐだぞルイ」

 

「ならここで一気に引き離す…っ!?ラプラス!」

 

「お、やっと出てきたか」

 

「何あれはっや…!?」

 

 

順調に逃走を続けていた三人だが、群れの中から飛び抜けて跳躍してきた妖が一気に三人の頭上を飛び越えて真正面に立ち塞がった。

それは他の妖よりも一回りも二回りも大きな体躯を持つ6本の腕を持つ人型の妖。

それは手近な岩や木を根元から引っこ抜くと、次々と三人に向けて放り投げる。

対して、ラプラスはようやくやる気を見せて三又槍を空間から引き抜くと、一振して放たれた魔力の弾幕がそれらを撃ち落とす。

 

 

「やっと成位のお出ましか。片手間じゃ仕留められないから面倒だな」

 

「やっぱり魔力あるじゃん!?それで後ろの吹き飛ばしてよ!?」

 

「そんなつまんない事言うのは駄洒落だけにしとけって」

 

「凄い失礼!」

 

「おーしこより〜。もう何とかスプラッター撃てないんだっけ?」

 

「こよブラスターね!さっき言った通りチャージに半日かかるから…」

 

「仕方ねーなぁ。んじゃ吾輩があいつぶっ飛ばしてやるか。ルイはこより抱えてろ」

 

「う、うん…」

 

『────────!!』

 

「っと、向こうもやる気だな」

 

 

成位の異形が奇声を上げると、6本の腕で地面を這うように移動し三人に向かって突撃を行った。

それを迎え撃つべくラプラスがルイよりも速度を上げ、一気に妖の目前まで距離を詰めて槍を構える。

その急接近に一瞬戸惑った様子を見せた妖だが、直ぐに反応して腕の2本を振り上げ、残る4本を体を守るように前に突き出した。

 

 

「所詮お前らは獣にすら劣る程度の生存能力しかないんだよ!」

 

『──────!!』

 

 

振り上げられた妖の腕がラプラスを叩き潰そうと振り下ろされる直前。

 

それよりも早く、ラプラスの槍が腕の防御ごと妖の胴体を貫いて風穴を開けた。

すれ違いざまの一瞬の攻防を制したラプラスは肉体が崩壊していく妖を後方に向かって蹴り飛ばし複数の後続の妖を転倒させると、再び逃亡の為に走り出す。

 

 

「…嫌な予感がしたんだったら、回れ右して逃げ出すべきだったな。そこらの獣にすら出来ることなのに」

 

「命を顧みないからこそ厄介とも言えると思うけど…」

 

「う〜…いつか妖も捕獲して実験してみたいな〜。ラプちゃん老位くらいのやつなら捕まえられない?」

 

「倒したら消えるからなぁアイツら。そこまで行くと加減できん」

 

「って、後続まだ来てるからさっさと抜けるよ!ラプの言った通り川が見えてきた!」

 

「おっし、じゃあさっさとこの追いかけっこも終いにするぞ!飛べぇ!」

 

 

三人の進路の先に見えてきた大きな河。

流れも強く下手に侵入すればあっという間に流されてしまいそうなそれを、ルイはこよりを抱えたまま飛び越え、ラプラスは己の跳躍力のみで跳び超える。

背後から追っていた妖の群れは構わず追跡を続けようとして───

 

 

 

 

 

「はっ、ばーか」

 

 

三人の追跡だけに執着していた妖の群れ、その内飛行能力を持たない個体はまとめて次々と河に侵入し、案の定その強い流れに飲み込まれ沈み押し流されていく。

飛行型は辛うじて追跡を続けているが、それでも残りは十数程度。

 

河の向こう岸までこよりを送ったルイは反転すると、鞭を操り次々と妖を貫き、または絡めとって河に叩き付けていく。

数匹の撃ち漏らしもラプラスが始末し、長い追いかけっこの末、ようやく妖を全滅させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…疲れた…あの悪戯は洒落にならないからもう勘弁してね?」

 

「どうかな?まあ流石にヤバそうな群れにはやらねーよ。小規模な群れなら…」

 

「もう!ラプちゃんとルイ姉は強いから良いだろうけど、ボクは武装が無いとちょっと頑丈で力が強いだけの女の子なんだから!」

 

「私もラプ程じゃないよ…」

 

「はははっ、博士はまず資材と設備を揃えなきゃな。その内拠点でも構えるか」

 

 

あの後、追いかけっこによる疲労で気力が尽きたルイとこよりを見かねたラプラスが河で釣った魚と適当に狩った動物を使って鍋を振舞っていた。

三人で鍋をつつきながらも気安く愚痴を叩き合い、三人での行動にも慣れてきた一向。

 

そこで話題は次の仲間探しの話へと移った。

 

 

「ん〜…ラプちゃんが仲間に欲しいって言ってるのが例の指名手配犯なんだよね?」

 

「あぁ。頭脳担当は博士に任せて、ルイは器用だから計画が進んだら色々頼む予定があるとして…博士を捕まえに行く時に黄金国の基地に忍び込んだんだが、やっぱりああいうのは吾輩には合わないんだよな。だからそういうのも出来る奴がいたら良いな」

 

「最悪私がやっても良いけど…場所によってはやっぱり翼がネックになるのよね」

 

「だから人間の仲間も欲しいって訳。それで、今目標にしてる二人の指名手配犯について博士はなんか知らないか?」

 

「ボク?えっと…引きこもってる時に街の方に探査機送り込んで情報収集してる時に聞いた噂だと、”夜叉”はなんでも黄金国の兵士を狙って攻撃してるらしいね。なんでも白銀騎士団にすら犠牲者が出たそうだから相当な手練なのは間違いなさそう」

 

「ほう、騎士団を。状況にも寄るが中々強そうだな。今回の件で吾輩以外に戦闘任せられる奴も必要だと思ってたから丁度いいな」

 

「んで、”殺人鬼”の方は黄金国では有名な殺し屋だそうだよ。報酬さえ払えればどんな要人でも警護をくぐりぬけて暗殺できるんだって」

 

「ふむ、それはさっき言った潜入とか調査を任せられそうだな。えーと…最後に目撃情報があった場所と距離が近いのは夜叉とやらの方だったな」

 

「確かその場所が…」

 

 

以前仲間集めの参考となった新聞と忍び込んだ基地で手に入れた資料を取り出したラプラス。

それをこよりとルイが後ろから覗き込んで一緒に場所を確認する。

そして、全員が記載されている情報に揃って気まずそうな声を上げた。

 

 

「「「…王都?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出たな犯罪者め!今日こそひっ捕らえてやる!逃げても無駄だ!」

 

「…ひぃ、ふぅ、みぃ…随分連れてきたでござるなぁ」

 

 

月の照らす黄金国王都。

川のような水路が引かれ、澄んだ空気と水面の美しさから別名水の都とも呼ばれる街のその一角にある噴水のある広場。

噴水を背に、大勢の兵士に囲まれるのは、和装に刀を腰に差した月光を金髪で反射する1人の少女。

街の景観、満月から降り注ぐ月明かり、美形の少女、それらが1つの画に収まる光景はまさに絵画のような美しさだが、その場を包み込む空気はあまりにも重々しかった。

 

少女を取り囲む武装した兵士達の間には張り詰めた空気が流れ、対して少女は軽い足取りで噴水の縁にトンっと上がって片足で回転するように兵士達を見回す。

 

 

「…はぁ、騎士団の団長がまさかの不在、その上騎士団の1人もいないなんて…あの人達歯ごたえあるから修行の相手にはもってこいだったでござるのになぁ。幾ら数がいるとはいえ…これなら妖でも相手する方がマジでござる」

 

「ぐっ、舐めやがって…かかれぇ!」

 

「ふん、まあ武装した大勢相手するのもそれはそれで何かしらの修行にはなるでござるか…なら────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────不肖、風間いろは!推して参る、でござる!」

 

 

 

 

『WANTED 桜の都の夜叉(ナイトメア) 風間いろは』




設定資料:黄金国の主要都市
黄金国には多くの街や集落が存在するが、その中でも主要都市として数えられる街が4つある。
1つが言わずもがな王都であり、王族の暮らす王城や騎士団の総本部、住宅街や商店街、歓楽街などがあり、街の城壁の外では広大な田んぼや農耕地帯が広がっている。
王都から一定範囲内は騎士団や兵士が常に巡回していて、検問としては勿論王都や付近の農業帯に妖を近づけさせない防波堤としての役割も併せ持つ。
その他は金属の加工や武器の製造を行う工業都市、水産業で栄える港街、そして騎士団を育てる士官学校がある学園都市がある。
学園都市は教官としての立場を持つ白銀騎士団の団員が多く駐屯している事、その他軍事関係の建造物が多いことも主要都市たる所以である。
ちなみに騎士団育成の為の学園が王都から離れた位置に置かれているのは、騎士団を分散させ影響力を削ぐ国の政策の1つでもある。
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