#0-1
西暦二五〇〇年
太陽系の開拓が終わり、人類は新たな新天地を求めて銀河系へと旅立った。
終わり無き宇宙開拓時代の始まりであった。
それから二〇〇年あまりの時が経った頃、銀河系を開拓した者達による革命が起こり、地球統一政府は崩壊。それまで統治していた領土は幾多もの
庭に生えた一本の樫の木の下で一人の少年がハードカバーの本を読んでいた。その少年は病気的と言えるほど肌や髪も白い。しかし、目の色が碧色な事からアルビノではないと周囲に分からせていた。
すると少年は本を閉じると読み当てるように言う。
「そこに居るのは分かっているよ、レオ?」
そう言うとガサガサと言う音を出しながら木の上から枝にぶら下りながらもう一人の少年が飛び出す。その青年は金髪碧眼のまさに帝国を象徴するような見た目であった。すると少年がやれやれと言った様子でため息をついた。
「相変わらずテオは面白みがないな」
つまらなさそうに表情を浮かべる少年。するとテオと呼ばれた白髪の少年は一息吐くと徐に立ち上がった。
「さて、そろそろ僕は先に戻らせてもらうよ」
「お、じゃあ僕も手伝うよ」
そう言い、二人は整備された庭を歩き始めた。
自分、テオバルト・フォン・ヴェーグマンは前世の記憶を持っている。
突拍子もない話かもしれないが事実である。
ラノベみたいな展開だが、前世の自分は趣味を少し齧る程度のただの社会人だった。ただ、勤めていた会社が超がつくほどのブラック企業でなければ、と言う前提がつくが・・・
おそらく死因は過労死だろう。そりゃ、半年家に帰らない生活を送ってたらそうなるのは明白だ。
真っ暗な視界の中、次に見た光景はフカフカのベットで横になった自分がいた。
初めは夢かと思った。だけど、数日も経てばこれが現実なのだと理解せざるを得なかった。それに、今じゃあその記憶も
そんな感じで今の自分が出来上がっていた。
そして二度目の人生を歩いている自分だが、過ごしているうちにこの世界はいわば未来の世界だと理解していた。
ゲシュタッド帝国
それが今の自分が住んでいる国の名前だ。文字通り皇帝がおり、専制政治を行なっている国家だ。銀河系に存在する国家の中でも力を持っている国だ。自分はその帝国の男爵の息子として転生した。テオバルトが記憶を取り戻してからはや三年、現在九歳の自分は家の庭に来ていた。
「・・・うまく育っているな」
片手に上呂を持ちながらそう呟く。視線の先には赤く熟れたトマトが出来上がっていた。テオバルトは趣味で家の庭で野菜を育てていた。両親の許可をもらってたくさんの種類の苗木を買ってきては庭に植えて育てていたのだ。
「(思えばレオと出会ったのもトマトだったか・・・)」
そう思うとテオバルトはフッと笑う。前世では万年ボッチだった自分にやたらと関わってくる同い年の友人の顔を思い出していた。そしてトマトの様子を見ているとレオがもう一個の上呂に水を汲んで持ってきていた。
「はい、持ってきたよ」
「ああ、ありがとう」
そう言い、自分は畑の地面に水を撒く。地面に水が染み込み、土色が濃くなる。それを見たレオが言う。
「テオ、またトマトもらっていいか?あと、胡瓜」
「ああ、良いぞ」
もともと趣味で育てているものだし、土壌がいいのでよく育っている。正直家族じゃあ消費しきれない量だった。腐るのも勿体無いから貰ってくれるのはありがたかった。
レオは自分と同じ貴族の様だが、詳しい話は知らない。半年ほど前にこの庭で草いじりをしていた所を声をかけられたのだ。どうやら避暑目的でここに来たらしい。
ヴェーグマン男爵領 惑星デリエンベルグ
我が家がある本星であり、その安定した気候とゆえに隠れた避暑地として人気の惑星であった。帝都から離れている影響で有力貴族が買いたたきに来る事もなく、一般的なごく静かな辺境領地だ。
男爵という事でそれほど大きな領地も持っていないが、土地は比較的豊かな事から食料に困る事もなく、主に農業と観光業で栄えていた。工業に関しては数少ない工場が衛星トロンにて動いており、税収もそこそこあり、ザ・普通の貴族と言った様子だった。
数代前までは貧乏貴族で、生活ですらままならなかったそうだが、ここを隠れた観光地にして人を集めたと言う。今こうして普通に生活している事にご先祖には感謝しかない。おそらく家庭菜園が許されたのもそんな事があったからだろう。そんな事を思っていると自分は収穫した野菜をレオと一緒に運ぶと庭のベンチでカゴに分けていく。分け終えるとレオが少し驚いた様子で野菜を見た。
「こ、こんなにいいの?」
「ああ、今日はよく取れたからね」
「ありがとう!」
そう言うとレオは野菜の入った籠を持って庭の扉を開けて出て行く。ここ数ヶ月では当たり前のような光景だった。
そして自分もレオが出ていった方とは反対側を歩き、家に戻る。
レンガ風の建物の中に入るとそこではドレスに身を纏い、長い長髪が特徴的なスラリとした女性が僕を待っていた。
「おかえり、テオ。今日もよく取れたみたいね」
「はい、今日は特によく取れました。母上」
エデリナ・フォン・ヴェーグマン、自分の母だ。少し病弱であまり表に出ないが、優しく、明るい自慢の母親だ。そんな自分は籠を使用人に渡すと母上に聞いた。
「今日はどこかに行くのですか?」
「ええ、お父様とね」
「おかえりはいつ頃でしょうか?」
「明日には戻るわ」
「分かりました」
そう言うと自分は部屋に戻る。貴族という事で一定の教養を身につけるのだが、勉学に関して最低限の知識は持っていたのでそこはなんとかなった。だが、作法に関しては地獄を見た。貴族のマナー多すぎて禿げそうになったとだけ言っておこう。
「さて、今日はどんなものを読もうか」
テオバルトはそう呟き、家の本棚から本を選んでいた。
数時間後、家の前に泊まった車にテオバルトとエデリナが乗り込む。父とは宇宙港で合流する予定で、テオは港まで見送りに来ていた。
「今日はイブラハム辺境伯のお茶会に誘われたのよね」
「なるほど、それは行かなければなりませんね」
「はぁ、なるべく早めに帰るわね」
「はい。分かりました」
そう言うと車は門を通り、コンクリートで固められた大きな場所に到着する。そこでは複数の宇宙船が停泊し、多くの人が行き交っていた。
宇宙港に入ると車は止まり、自分と母上が一緒に降りると目の前に一人の紳士が立っていた。
「父上!」
そう言い、自分は燕尾服を着た男性に飛び掛かる。彼は自分の父親、エルンスト・フォン・ヴェーグマン。ヴェーグマン家の当主で、家の経営を立て直した人の一人であった、過保護が過ぎるほどの愛妻家で母上と自分に何かあれば飛んでくるレベルである。そんな父は自分は大好きだった。
そして家族三人が集まり、両親は港の入り口を入っていく。
「帰ったら本を買って帰ってくるからな」
「良い子にしててね」
「はい、分かりました」
そう言うと二人は宇宙船に乗って行った。自分はそのまま家に戻ると家で昼に取った野菜を使った夕食をとり、両親が帰って来るのを楽しみにしながら待っていた。
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