銀河転生記   作:Aa_おにぎり

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#2-3

「期待を裏切らない程度に邁進します」

 

そう言い切った彼に、私は指揮権を預けた。普通なら異常だと思われるだろう。しかし、この直前に彼は巡洋艦を撃沈している。それも駆逐艦の主砲で…!!

 

普通ならあり得ない事だ。何故なら古今東西、全ての艦艇にはシールドが取り付けられているのだから…

通常、大型の艦艇を沈めるには実体弾を使用し、シールドを無効化するか、シールドが飽和するほどの中性子砲を浴びせる必要がある。しかし、ほぼ無傷の巡洋艦相手に一発の中性子砲が撃沈された。それも口径も巡洋艦よりも小さいというのに…

一体どんなトリックなのかを彼に聞くと、彼は…

 

「古今東西どんな艦艇にも全ての方向にシールドが取り付けられている?それは民間船だけですよ」

「何故だね?」

 

そう問うと彼はやや面倒そうにしつつも答える。

 

「軍艦は攻撃をする兵器を搭載しています。中性子砲を発射する際に自分の船の張ったシールドで撃てないなんていう間抜けを起こしますか?」

「!!??」

 

そこで自分…いや、あの場にいた全員が戦慄した。確かに中性子砲は船体に固定される形で発射されており、射角が半円型になっているだけ。無砲身だから砲台をクルクル回転させて発射するからその際にシールドは邪魔になる。そして、そこの部分だけシールドはあっても極端に薄くなる。

彼の説明を聞いて全員がさっきのトリックを理解した。すると彼は「操艦に集中したいのでいいですか?」と問い、レーダーの情報を凝視しながら艦を動かす。

 

「次、方位三三。距離三万。仰角五度に設定……発射」

 

そして発射された中性子砲がまたもや砲塔上部を貫通。船体に過貫通を起こし、反対側の砲塔まで撃ち抜く。それはもう淡々と、まるで射撃演習をしているかの様に射撃指示を飛ばし、巡洋艦や駆逐艦を沈める。相手もその異常に気づいたのか砲火をこちらに徐々に向けてくる。

 

「やっとこちらを見ましたか……艦長」

「何だ?」

「残った艦隊に連絡して下さい。『艦隊はワープを開始して離脱をして下さい』と」

「わ、分かった……」

 

階級もクソもないが、艦長は補給艦に通信をする。すると帰ってきたのは『貴艦の奮戦に感謝する』だった。

 

「これで良いのかい?ヴェーグマン少尉?」

「有難うございます。艦長」

 

そう言うとヴェーグマン少尉は再び舵をとり、指示を飛ばしていた。彼の考えている事は大方予想できた。おそらく自分達が囮となって補給艦や、その他の艦艇がワープで脱出させる。分かってはいた。分かってはいたのだが……

 

「(ここで死ぬ気かね、少尉?)」

 

そう思わざるを得ない内容だった……

 

 

 

 

 

「(あと一〇分と言ったところか……)」

 

自分は画面の端に映る時間を見ながら思う。補給艦隊や、巡洋艦が戦闘区域から撤退するまでの間。この駆逐艦の運動性を生かして足止めをする必要がある。接近してくるミサイルや中性子砲をじっくりと凝視しながら艦を左右上下に動かす。激しい三次元運動に慣性制御装置も追いつかず、船体に激しいGが掛かる。

こんな時だが、自分は寺内正道中佐*1*2もこんな感じで操艦の指示をしていたのか?なんて思ってしまった。

その間も艦橋員の悲鳴を聞きつつも、接近してくるミサイルや中性子砲を避け、叫んだ。

 

「次、結構揺れます。何かにつかまってください。それと水雷長、ミサイル発射準備を。機関長、もしもの際にワープ準備を」

「は、はいっ!!」

「了解」

 

ーーガコンッ!

 

「うわっ!?」

「ぬわぁあああ!!」

 

横にかかるGが激しく、艦長も思わず椅子に掴まり、振動を避け、目の前に共和国の巡洋艦が映る。

 

「ぶ、ぶつかる!!」

 

そして、艦橋にいる人物が見えるくらいドリフトしながら接近した直後。

 

「ミサイル発射!!」

 

直後に放たれた左舷のミサイルが艦橋に直撃し、爆発する。その直後に艦橋の炎が誘爆を起こし、船体が吹き飛ぶ。その直後に船体は急加速し、艦隊を急速に離れる。

 

「後方に敵機!!」

「対空砲火を後方に集中。シールドも同じように後方に集中展開」

「はいっ!」

「時間稼ぎはこれくらいで良いでしょう…脱出した艦艇はどうですか?」

 

そう聞くと艦長はデータを確認し、テオバルトに言った。

 

「バラバラだが、生き残った艦隊は全てが戦域を離れた」

「そうですか…では、我々もこのままワープをしましょう」

 

そう言うとテオバルトは予め用意されていたワープ装置を起動させる。いきなりのワープに体に衝撃が走り、何人かが椅子から転げ落ち、艦橋の壁に体を打ち付けていた。一瞬の判断ミスが艦の運命を左右したためにこの打撲は半分諦めていた。しかし、強襲してきた共和国艦艇を迎撃出来たことには非常に幸運だったと言えよう。ワープが終わるとZ230駆逐艦は戦域を離脱した。そこには損傷しつつもワープで逃げた補給艦や巡洋艦、戦艦や空母が集結していた。

 

「「「「はぁぁぁぁぁ……」」」」

 

艦橋にいた全員がため息を吐いた。ワープの衝撃で吹っ飛ばされた兵員達も同じ様に痛む身体を動かしながら目の映る景色にため息を吐く。

 

「しかしすげぇな……航海長は…」

「あぁ、まさか巡洋艦を沈めるなんて……」

「俺、そんな事考えたこともなかった……」

 

元々平民出身の多いこの駆逐艦。艦長も平民出であり……だからこそ、艦長は男爵である彼の要求に答えたのだろう。中々無茶な運転ばかりだったが、それでも駆逐艦で巡洋艦を三隻も撃沈したのは大きすぎる戦果だった。

指揮もとても的確で、照準を合わせただけで巡洋艦が簡単に沈んだ。その事実に驚愕せざるを得なかった。思わず船員達は航海席で順調に艦を動かしている航海長を見ていた。

 

「「「(この人について行けば……)」」」

 

そんな考えが彼らの中に生まれつつあった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

帰還した後、自分は英雄扱いを受けた。補給艦隊や戦闘艦隊を退却させつつ、共和国の巡洋艦を三隻沈め、それで帰還したのだから……

この話は当然帝都にも行き、自分は少尉から階級の階段を上がる事になった。

 

 

 

数日後、事の真相をレオンナードから聞いた。

 

『ブランデン公爵が連邦に亡命した』

 

そこで事実を知り、納得した。指揮官がいなくなればまともな艦隊運用は不可能だ。それに元々亡命を考えていたのなら事前に情報を与えていても不思議ではない。その証拠に戦闘艦隊には連邦の戦艦が襲い掛かり、その戦力の四割を消耗する結果になった。

当の本人は戦闘が始まる直前に旗艦の小型艇に乗り、混乱する戦場の中で共和国の艦艇に救出されたと推測されている。自分は亡くなった将兵に追悼の意を示しつつ、自分は改て帝国の内部の腐敗を実感する。

 

「亡命の手土産に帝国の戦力を削ぐ。か…」

「亡命後の身分の保証か……随分とやってくれたものだ…」

 

帰還した宇宙港近くの街の酒場で黄金色のウイスキーを片手にテオバルトは呟く。その横で同じ様に軍服を着た彼と同い年ほどの青年と会話をする。

テオバルトはややジト目でその青年を見ながら言う。

 

「……閣下。何故貴方が此処に?」

「良いだろう?俺は救援艦隊の提督として帝都より派遣されて来たんだ。問題ない。それに、仕事は全て影武者に任せている」

 

少し笑いながらそう言うレオンナードにテオバルトはやや呆れつつ、ウイスキーを飲む。するとレオンナードは酒場の隅でひっそりと静かに飲んでいたテオバルトを思い出しながら呟く。

 

「しかし、せっかくの英雄様がこんな所で一人で飲んでいたとはね……」

「…閣下、私がそこまで明るい性格だと思っているのですか?」

「いやぁ、テオの事をよく知っているから違和感はないんだがな…さすがと言うべきだな。人に気づかれない様にあの場を逃げ出すとは……」

 

そう言われ、思わず自分はため息を吐いてしまう。

 

 

 

そう、テオバルトは宇宙港から逃げ出す形でここに来ていた。

と言うのも殿を務めて艦隊を逃した事はすでに知れ渡っており、兵士達から顔を見たいと言われ、普段そういったことに慣れていないテオバルトは駆逐艦から逃げ出し、匿ってもらう様に街に溶けていた。貴族から貶されるのは気にしないが、平民達から崇められるのは苦手だと知ったテオバルトは艦隊が帰還するまでの間。殆どを図書館かこの酒場で過ごしていた。その事を知った艦長も事情を知った上で許可を出してくれた。

そんな風に逃げ回っていた自分を易々と見つけてしまうレオンナードは流石だと思う。

 

「ま、本気でテオに隠れられたら流石に敵わない気がするがな…」

 

少し笑いながらレオンナードはそう言うとレオンナードはさっきと違って真剣な眼差しで自分に言った。

 

「だが、今回の一件でテオバルトの名声は上がった。特に自分が最もターゲットにしていた下級兵士のな…」

「そうですね」

「ここでテオと俺の関係を公表すれば、お前を慕うこの遠征艦隊の下級兵士や…運が良ければ艦隊の指揮官が俺たちの派閥を支持する事になる」

「特に今回の遠征は散々なものになりましたからね…」

「そうだ。散々な結果で、尚且つ上の貴族が自分の為に自分達を見捨てたとなればそれを下級兵士や一般的な指揮官は呆れや怒りを抱くだろう……

 

 

 

しかし、そんな時にテオは殿を務め多くの艦艇を逃す時間を作った…これで、あの場に居た将兵達はテオを『命をかけて自分達を救ってくれた英雄』と言う風に解釈するはずだ」

「…頭の痛くなる話です」

「自分の戦果だろうに……」

 

そう言い、呆れた様子のレオンナードは気を取り直して話を続けた。

 

「つまる所、この遠征艦隊に参加した将兵は君に一種の忠誠を誓う事になる。そして下級兵士や将官が帰還してこの話は広がるだろう。現状、俺の派閥に有力な貴族は存在しない。そのおかげで軍に大きな派閥を作る事はできなかった…」

「そこで、自分のこの名声を利用し、軍に足掛かりを作ると?」

 

自分がそう呟くとレオンナードはパァっと顔を明るくして頷いた。

 

「そう。俺がバックにいる事を広め、軍を比較的穏健に掌握する」

「……その為には多くの武人が必要ですね。集まるでしょうか?」

「そこら辺は何とでもなるさ」

 

そう言うとレオンナードは自分を見て良い笑みを作った。

 

「(一体何をしたのでしょうか…殿下は……)」

 

あの目をする時は大体碌でもない事をしている時だ。と思いながら自分とレオンナードは酒場で時間を過ごしていた。

*1
旧日本海軍の軍人。駆逐艦雪風の艦長を務め、『爆弾魚雷回避の達人』と呼ばれた人。

*2
鉄兜だけを被って上空を見張って、落ちてくる爆弾避けまくったと言うちょっと何言っているかわからない軍人。




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