世の中には何かしらとこじつけをしたがる人や組織が存在する。
こじつけをするのには幾つかの理由があるが、その多くは自分に利益をもたらしたいからだ。
前世で竹島に上陸し、島に守備隊や施設を作った韓国は何世紀も前の資料を持ち出し、ここは韓国の領土であると国際社会に訴えた。
これに対し日本は国際司法裁判所に訴える方向に出た。しかし、韓国は領土問題は終わったとして裁判所に出ようとはしなかった。
その話を知った時。まだ中学生だった自分は『何で問題が解決したなら、それを国際社会に認知させる為に裁判所に行かないのか』と考えていた。
それから暫く経ち、高校生程になった時。自分はある程度その行動の意味が理解できた。
負けると分かっていて行く
その時の呆れ度合いと言えば。当時、頻発していた政治家の不祥事やガバガバなインターネットに関連する法律と同じくらいだった。それに韓国は領土問題を主張した時に、軍を派遣して海上保安庁の巡視船や民間の漁船に一方的に発砲、多数の日本人を殺していた。
当時はまだ戦後混乱期という事もあり、全国規模で話題になって居なかったが。後々に政府はこの話題を持ってきて国民に大々的に宣伝していた。
当時、日本国内では不祥事が相次いで起こっており、国民を内部の問題から外部に目を逸らす為に竹島問題を持ち出したのだ。ついでに言うとその時の韓国の大統領は反日を掲げ。日本製品撤廃やら慰安婦問題やらで騒ぎ立てており、政府もこれを好機と見て竹島問題や東海問題を持ち出して国民を反韓思想に染め上げていた。
この時、日本と韓国にはもはや修復が不可能な程の大きすぎる溝が出来上がってしまった……
そんな過去の記憶を思い出しつつ、自分は書類を作っていた。
「はぁ……あの時の政治家も同じ事を思っていたんだろうな……」
そんな風に呟きながら自分は文書を書いていた。
今回の摘発は憲兵隊を総動員して大々的に行う。その為の下準備をしていた。上層部は上級貴族に対する摘発には非常に消極的だ。だったら積極的にならざるを得ない証拠を提出して仕舞えば良い。例えそれが……
偶々時期が被っていただけだったとしても…
西暦三〇四六年 帝国暦三三一年 一一月三〇日
帝都 第五地区一番街 ナーデリア侯爵本邸
その日、ナーデリア家当主カシルアンは慌てて荷物を纏めていた。理由は簡単、数日前に叔父であるコーデルハイト侯爵から伝えられた内容だった。
「理由は分からないが、憲兵が動いた」
憲兵と聞いて自分も叔父も同じ事が浮かんだ。だからこそ、自分は叔父に用意してもらった家に飛び、ほとぼりが覚めるまでそこに住まう事になった。何でも数日前から憲兵隊の動きが慌ただしくなったそうで情報秘匿は徹底されていたが、どうやら家を摘発するらしい。何の罪状かを聞いた時戦慄したのを覚えている。
現在の帝国では麻薬の製造は禁止され、厳罰化している。下手すれば死刑にもなりうる罪だったが、先帝の時代から薬業を生業としてきた我が家は手放す事ができなかった。それ故に薬の生産は秘匿しており、関係者にもバレないように工作をしていたはずなのだが…どこからか漏れてしまったようだ。
「クソッ!軍警風情がなんで民間人の自分に……!!」
その時、ドンッ!という音と共に複数人が家に飛び込む音がした。使用人の悲鳴が聞こえる。
咄嗟に自分は荷物も投げ打って窓から飛び出す。幸いにもここは二階、飛び降りても問題はない。窓を開け、飛び降りて庭をほぼ素足で走り出す。しかし……
「ウアッ!!」
次の瞬間眩い光が視界を奪い。その瞬間に後ろから飛び掛かられ、取り押さえられ、頭に多数の銃口が突きつけられる。視界が戻り始めると自分を見下すように白髪の青年が此方をみる。
「お前か……」
するとその青年は片手に手錠を取り出しながら言った。
「コーネルハイム・フォン・ナーデリアさん。貴方を麻薬取締法違反の疑いで逮捕します」
そう言い、後ろ手で拘束された。するとナーデリア侯爵は叫んだ。
「何故だ!?私が軍に何をしたと言う?!」
すると青年がこう返した。
「貴方が軍に医官として勤務していた時期に、貴方がフォルトゥーナの車輪を軍内に流通させた疑いが浮上したので…」
「それはでっち上げだ!」
「詳しくは本部で聞きますので…」
「ふざけるな!私はナーデリア侯爵だぞ!何の権限で……!!」
そう喚くナーデリア侯爵は手錠をされ、車に乗せられて行く。その様子をテオバルトは眺めているとインカム越しに通信が入った。
『大隊長殿、証拠を押さえました』
「よし、次の場所だ。情報が伝達される前に近くの憲兵隊に連絡しろ」
『はっ!』
通信を切るとテオバルトは連行されたナーデリア侯爵の家を見るとそのまま部下を率いて家の中を徹底的に調べ上げさせていた。
結果として、ナーデリア侯爵当主は逮捕された。
家の中から見つかったフォルトゥーナの車輪の製造工場の場所を憲兵が摘発し、中で働いていた従業員も同様に逮捕され、証拠が確定的となったナーデリア侯爵も罪を認めた。
「いやぁ…やっぱりテオに頼んで正解だったな」
蛇宮で満足げな表情を浮かべるレオンナードにテオバルトはやや苦笑しつつ答える。
「閣下。今回はナーデリア当主が軍に勤務していた過去から容疑者として連行しましたが、次に似たような事が起こっても繰り返すことは難しいでしょう」
するとレオンナードは報告書を読みながら言う。
「何、次はないさ。今回の一件は上級貴族を揺さぶるだけの揺動にしか過ぎんからな……」
「……」
レオンナードはそう言うと紙を置き、テオバルトを見ながら言った。
「じゃあ、またいつもの口座に特別手当を振り込んでおくとしよう……また、頼むぞ」
「はっ!」
そう言うとテオバルトは部屋を出て、蛇宮を後にした。
現在、テオバルトとレオンナードの関係は徐々にではあるが上級貴族の間で広まっており、勿論テオバルトの評価も聞いていた。
今まで全くと言っていいほど社交界に顔を見せなかったテオバルトはそう言った人付き合いが苦手なのもよく知っている。デリエンベルクで暮らした一年間は今でも昨日のように思い出せる。
とても同年代とは思えないほど卓越した知識を持ち。仕事も良くでき、戦場でも的確な指示を出せる心を持っている。自分も飛び級で士官学校を卒業したが、彼こそ飛び級をすべき人物だと思ってしまう。
何よりテオバルトがリッペをボコした後、彼を目標にする者も居た。どれだけ身分が低くとも怯む事なく戦うその姿に感銘を受けたものが多かったのだ。彼と自分の関係が広まれば今まで圧倒的に足りなかった将官達を集める事ができる様になる。
あわよくば軍部を掌握し、いずれ起こるであろう上級貴族との戦いに備えなければならない。その為に必要なのは若く有能な将官と十分な兵力と活かす為の環境。テオバルトを踏み台にする形だが、必要経費ともう諦めている。彼もそれを分かってくれた上で了解をしていた。
現在、自分の定位継承権は第二位。一位の異母弟は遊んでばかりの様でとても政は出来ない状況だ。それに……
「第三皇子か……」
そう言い、帝都で発行された新聞を眺めた。
『ハーネス公カミラ夫人が妊娠を発表。第三皇子誕生か!?』
そのニュースを見てレオンナードは呟く。
「今頃は貴族がこぞって恩を売っているところかな?」
あの、色親父め。と呟きたくなったところをグッと堪えて自分の父を思い出す。一応自分もあの父親の血の半分が混ざっているのだ。悪い人物ではない、寧ろ人柄は良い。自分も偶に呼び出しを受けて登城するときも自分を気にかけたりする。母の事も大事にしているので嫌いなわけでは無い。
だからこそ判断に困っていた。
これがもし悪行をし続けるトンデモ親父だったら即刻退位させて自分が皇帝代理にでもなって仕切っていたのだろうが……
頭を抱えていると横からコリスがそっとコーヒーを差し入れた。
「お疲れの様ですな」
「あぁ、全くだ……」
そう言い、コーヒーを一口口につけるとレオンナードはポツリと呟く。
「……コリス、近々後宮に行きたい。予定を合わせられるか?」
「畏まりました」
するとレオンナードはそこにさらに一つ言葉を付け加えた。
「あぁ、あとテオバルトにも伝えておいてくれ。前に母上がテオバルトに会いたいと言っていたからな」
「分かりました」
そう呟くとレオンナードは母の顔を思い浮かべながら考えていた。
「(しかし、母上は何を考えて次行く時にテオを呼ぶ様に言ったのか……)」
そう思いつつレオンナードは溜まっている書類を片付け始めていた。あぁ、第一皇子が幼いからって俺に代行の仕事押し付けるなよ……
ほぼ同時刻、帝都第四地区の大きな屋敷の中で一人の男が持っていたクラスを地面に叩きつけていた。
「クソッ!」
気晴らしに飲んでいた高級ウイスキーが派手に地面のカーペットに染み渡る。その上で男は悪態を吐いていた。
「あの忌々しい小僧め……男爵のくせに調子のノリよって……」
男の名はマキシマム・フォン・コーデルハイト。
ゲシュタッド帝国の公爵家の一つであり、数日前に逮捕されたナーデリア侯爵の叔父である。彼は豪華な自室で甥を逮捕した青年を調べ上げさせた。
「白髪の小僧め……我々を舐めた行為をしよって……」
そう言うとマキシマムは机の上に並べられた多数の紙の資料を見ると卑しげに笑った。
「公爵の力を舐めるとこうなると言う事を思い知らせてやる……」
そう呟くと写真のついた一人の少女の顔を見ながら、自室で一人そう語っていた。
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