銀河転生記   作:Aa_おにぎり

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#4-2

レオンナードに連れられ、彼の母親である帝国第一皇妃であるタカコと茶会をしているテオバルト。そこでテオバルトはタカコに弄ばれていた。

 

「テオバルト君は嘘を見抜く事は得意でも、嘘を吐くのは苦手なのかしら?」

「そう…ですね……私は士官学校に行くまではずっとデリエンベルクの実家で暮らしていましたので。社交会に出たことが無く……そう言った事は全て妹に任せきりでしたので……」

「妹……と言うとあのマリーダさんの事ね。確かにあの子の方が貴方よりも社交会には向いていそうな性格ね」

 

あぁ、心が痛い……致死量の何かで殴られている気分だ……

前世も今世も軽度のコミュ障を引き起こしている自分は恐らくレオンナードと出会っていなければ引き篭もり男爵を続けていたに違いない。これは断言できる。きっと家の庭で畑を開いていたに違いない。

 

 

 

あれ?もしかしてレオンナードに出会わなければこんな酷使されることはなかったのでは?

 

 

 

タカコ妃と話している内にそう思う様になってきたテオバルトの心を見透かした様にタカコ妃は言う。

 

「昔からレオンは公明正大な性格なんだけども、やる事がとにかく無茶ばかりなのよね。夢物語と言うか、気宇壮大と言うべきか……」

 

そう呟くタカコ妃に心当たりしかないテオバルトは思わず顔が引き攣ってしまう。それを見て、タカコはテオバルトに申し訳なさそうに言う。

 

「ごめんなさいね。いつも息子が無理をさせている様で……この前なんかコルネリウスの馬鹿がマリーダさんを誘拐したらしいじゃないの」

「ええ、ですが結果として妹は無事だったので問題ありません」

「うーん、でも誘拐の元になったのは息子の無茶振りだからね……

 

 

 

で、そこでテオバルト君に相談なのだけれども」

「はい、何でございましょうか?」

 

するとタカコはテオバルトにある提案を持ちかけた。

 

「どうかしら?貴方の妹をここで働かせて花嫁修行と言うのは?」

「っ!!それは……宜しいのですか?」

 

後宮への花嫁修行は貴族にとっては帝国の淑女にとっては大きなステータスとなる。通常の花嫁修行よりも価値があるとされ、より厳しい内容ではあるものの嫁入りをする際にアピールポイントとして人気は一気に上がる。

大貴族から目の敵にされているとはいえ、タカコの提案に思わず聞き返してしまう。するとタカコは当たり前の様に答える。

 

「ええ、迷惑料の様なものよ。どうかしら?」

 

そう言ったタカコに、テオバルトは頷くと同時にタカコにある要望を伝える。

 

「妹の花嫁修行の件は了解しました。…それで、タカコ妃様にその話でもう一人。花嫁修行に入れて欲しい人物がいるのですが……」

「ほぅ、誰かしら?」

「ハルコ・ヘリング嬢です」

 

そう、あの場にいてマリーダの学友であるハルコをマリーダと同じ様に後宮に花嫁修行をさせてくれないかとタカコに提案した。

するとタカコは少し驚きの様子を浮かべると、テオバルトはその訳を話した。

 

「迷惑料として妹を後宮に入れると言うことは、同じく誘拐の被害にあったハルコ嬢にもその権利はあると思われます」

 

そう言うとタカコは興味深くし、小さく頷いていた。

 

「ふむふむ……確かに、そのハルコと言う子にもその必要性はあるわね……」

 

そして、少し間を置いた後にタカコ妃はテオバルトに言う。

 

「では、そのハルコと言う子にこの話を伝えることはできるかしら?」

「はっ、畏まりました」

「時期的に帝立女学院を出た後になるから。……来年の卒業後にここに来てもらう事になるわね」

「了解致しました」

 

後宮の花嫁修行を断るなんて滅多にしないから、恐らく受け入れられると言う前提で話が進み。テオバルトとタカコは二人の今後についてに話を終えると、タカコはテオバルトに少しだけ優しい眼差しで話しかけた。

 

「テオバルト君。いつも息子の無茶振りに振り回されて、時々迷惑に感じる事もあるかも知れないけど。どうか、仲違いはしないで欲しいの」

 

その目は一人の子を持つ母親そのもので有り、テオバルトにはある意味で新鮮なものだった。するとタカコは短冊状の紙を渡した。紙には一列の番号が記されていた。

 

「私の個人番号。個人の物だし傍聴対策も施してある。もし、レオンとの関係で困った事があったら是非使って」

「分かりました。……ありがたく使わせて頂きます」

 

そう言うと、テオバルトは紙を受け取り、来ていた士官服のポケットに入れた。

 

「レオンの手綱を引っ張ってくれるのは貴方しかいない。だから、これから大きな壁に当たってしまう可能性もあるけど。レオンの側にいて頂戴ね」

「はい……」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「今日はありがとう。また、遊びに来て欲しいわ」

 

陽が降り、時刻は夕方を迎えた。赤水晶宮の前でタカコはレオンナード、テオバルトと顔を合わせる。

タカコはテオバルトに話しかけると、テオバルトも答える。

 

「はい、今日はとても楽しませて頂きました。有難うござます」

「じゃあ、妹さん達の一件も宜しく伝えておいて」

「了解しました」

 

そう言うと、二人は後ろで待っていたコリスの方に向かい階段を降りるとそのまま車に乗り込み。観音開きの自動ドアが開いて、二人が乗り込むとそのまま車はロータリーを抜け、走り去って行った。

その車が見えなくなるまで見送った、タカコはまるで虚空に話しかけるように口を開いた。

 

「ーーーー如何でしたか?()()()()

 

タカコはそう言うと、赤水晶宮の柱の影からフードを被った男が出てくる。

そして、その男はフードを取り、タカコに近寄る。

その男は金髪の長髪で口の周りには整えられた髭を持った緑色の瞳を持つ初老の男だった。

その男の名はフリードリヒ・フョードル・フォン・ゲシュタッド。またの名をフョードル一世と言う。

四代目ゲシュタッド帝国皇帝であり、タカコ妃の夫。レオンナードの父親である。

フョードルは柱の影から出てくると、タカコに歩み寄って口を開いた。

 

「いやはや、随分と物静かな印象だが……」

「話して見れば印象が全然違いますわよ」

「ほう、それは興味深いな」

 

宮殿の廊下を歩きながら二人はレオンナードの友人であり、腹心の部下でもあるテオバルトの評価をしていた。

 

「レオンナードの無茶振りに対応していると言う点から有能だと言うのは分かるが……」

「実に優秀ですわ。テオバルト・フォン・ヴェーグマンと言う青年は……」

「タカコがそこまでの評価をするとは……」

 

そう言い、フョードルはやや驚いた表情を浮かべながらタカコを見ていた。

魑魅魍魎の宮廷内を生き抜くタカコは基本的に手厳しい意見しか言わない。……と言うか、皇帝が尻に敷かれるレベルでテキパキと、メリハリのある人物だった。まぁ、だからこそフョードルが惚れたと言うのもあるのだが……

 

 

 

 

 

フョードルは本来は皇帝にならないはずの人物であった。

帝位継承権第三位だった彼は政治に対する学びを殆どしたことがなく、彼は皇子時代は帝都から離れた遠い地で静かに暮らしていた。しかし、当時帝都で流行った病に上の二人が罹り、そして死亡してしまい自動的に彼が玉座の椅子に座る羽目になってしまった。

いきなり慣れない政事をさせられる事になった彼は政治に慣れた人物に意見を求め、それを元に判断していたが。そこには貴族社会において己の権益のみを考える人物しかおらず、半ば彼は飾り物と化していた。

このままではダメだと思いつつも、貴族に力を与えすぎた為に既に政府はブレーキ制御が効かない暴走列車になってしまっていた。

 

統治者というのは時に運も必要となってくる。

例え統治者が優秀な頭脳を持っていても、その頭脳に付いていけるほどの有能な部下も持たなければ良い統治者となる事は叶わない。

帝国が建国されてから約三三〇年、複雑怪奇な政治は根本が腐り始めていた。

 

建国当初の苦労を知る者は居なくなり、議員に座るのは苦労せずに成り上がった貴族の馬鹿だけだった。不正を行うことに疑問すら持たず、あたり前だと思っている事実に、もはや呆れるしかあるまい。

 

タカコとフョードルの二人は廊下を歩いていると、タカコが聞いて来た。

 

「それで、陛下は次の皇帝をお決めになられましたか?」

「ふむ……」

 

皇帝もかなりの歳だ。あと十年もすればベットで寝込む事になるかも知れない。そうすると重要になって来るのは次期皇帝の指名である。

次期皇帝の座を巡って戦争や国自体が崩壊した事例が歴史上幾つもある。

このままいけば帝位継承権第一位のリヒャルトとなるが、リヒャルトが帝位に付けば本当に皇帝はお飾りとなってしまう。

だからと言ってレオンナードを指名してしまうと、おそらく内乱が起こってしまう。既に連邦という敵を抱えている帝国で内ゲバを起こせば、確実に隙をついて侵攻をして来る。連邦に蹂躙される未来は避けたい。その為、これもお勧めできない。

 

もうすぐ帝位継承権第三位となる子が生まれて来るはずだ。そうなるとまた面倒な事になりそうな気がするが、はてさてどうしたものか……

 

「やれやれ、これだから皇帝にはなりたくないな」

 

フョードルは宮殿の廊下で思わずそう溢してしまった。そして、タカコにある事を伝えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「《第三八次遠征派遣艦隊》を……?」

 

帰りの車内でテオバルトはレオンナードに聞き返す。すると、レオンナードはやや面倒くさげな表情を浮かべながら答える。

 

「ああ、この前の事件があって、帝国の名誉回復の為にカルーティア大公国の奪われた宙域の奪還。及び共和国侵攻をする話だ」

「何故そんな無茶を……」

「貴族のプライドだよ。前回の惨敗で苦情が多く寄せられ、貶されて怒っているのさ」

「しかし、殿下が直接指揮をとられるのですか?」

「仕方あるまい。帝位継承権のある中で一番年上なのは俺だし、何より貴族は『勇猛果敢に戦った帝室』と言う結果が欲しいだけなのさ」

 

そう答えると、レオンナードは少しだけ目を細めてテオバルトに言った。

 

「……可能性としては低いが、大貴族の妨害があるかもしれん。……そこで俺はテオについて来て欲しいと思っている。艦隊参謀、若しくは旗艦艦長としてついて来てくれないか?」

「殿下のお望みとあれば……」

「ありがとう」

 

帰りの車内でテオバルトはレオンナードに二つ返事で近々行われる遠征艦隊について行く事を決めていた。




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