銀河転生記   作:Aa_おにぎり

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#1-3

人類が宇宙の開拓を始めたのが今から凡そ五〇〇年前の事。西暦二五〇〇年と言う二五世紀最後と言う節目の年に月面を主要基地とした火星開拓のための第一次移民船団が月面に建造された世界初の月面都市ボストークから発進した。

 

そしてそこからしばらくした頃、太陽系で最も外縁に属する惑星の冥王星にてとある研究グループが光を超えた速度での移動を可能とした装置。俗にいうワープ航法を可能とした装置を開発した。

 

そしてワープ航法の登場は、人類の宇宙における開拓を飛躍的に拡大させる事となった。俗に言う、宇宙開拓時代と言われる時代の本格化だ。

各惑星に存在している鉱物や、水素などの燃料。かつて、行って帰ってくるだけでも一苦労だった小惑星帯への資源採取は僅か半日で帰還することが可能となった。

 

ただ、初期のワープを行う為の装置はとてつもなく巨大で、開発された当時はかつてのSF映画に準えて『デ○・スター』と言われていたと言う。

その後、幾度となく改良が行われ。その装置はチューブと呼ばれる永続的なワープ専用航路を生み出していた。

 

基本的に軍艦にはそれぞれ一隻ごとにワープ装置が備わっているのが常識だ。

理由として、この時代の艦隊は常に百隻を超えるのが当たり前だ。そんな数を一気にチューブを通って移動すると、チューブに負荷が掛かって破壊される可能性がある。事実、チューブに関連した事故で『ウィルパーク事故』と呼ぶチューブに負荷をかけた影響で約五〇〇万人が被害にあった事故がある。

 

故に軍に属する艦艇は独自のワープ装置を用いての移動が基本となっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

西暦三〇四七年 帝国暦三三二年

四月二二日

 

その日、カルーティア大公国に集結した帝国宇宙軍艦隊の今回の旗艦『ヘルムート・フォン・モルトケ』、その真紅の戦艦はその姿を見た誰もを驚かせ。同時にフランミダ共和国や銀河連邦に内通した協力者もその新型戦艦の情報を急いで仕入れていた。

イタリアンレッド一色の真っ赤な戦艦はやはり人々の目をよく引いており。この色はレオンナードがわざわざ指示して塗らせていた。

 

その船内において、多くの将兵が配置に付き。CICはある一席を除いた全員がその場で立って準備を完了させていた。

 

カン…カン…カン…

 

そして帝族の為に司令官私室からCICに直接繋がる通路を一人の若き青年が軍靴を鳴らしながら現れる。

その様子を静かに参謀達や艦長のテオバルトは静観し、彼が設けられた玉座に座るまで一歩も動く事は無い。

 

そしてこの日、カルーティア大公国に派遣された第三八次遠征派遣艦隊は首都星ウォン=ヴォーシュデンの軍港地区より離陸を開始する。

 

「離陸開始」

 

玉座に座ったレオンナードが一言告げると、艦長のテオバルトが復唱する。

 

「離陸開始!」

「宜候、離陸開始!」

「機関出力一杯!」

「反重力装置作動」

「重力アンカー解除、離陸開始」

 

各要員が自分の仕事をこなし、全天モニターが艦が動くのに合わせて景色が動く。

 

基本的に帝国軍軍艦にはその殆どに反重力装置が取り付けられている。

元々銀河に飛び出した星間国家である我が帝国は重力制御の技術は銀河連邦のそれを超えていた。

 

 

 

今回の作戦目標は奪われたカフス星域に駐留する共和国艦隊の撃破及び、旧国境線までの進行だ。

 

そう、()()では無く、()()。奪われた場所を取り戻す為の戦いである。それ故に兵士の聞き覚えはよく、周辺の国家も批判する事は難しいだろう。

 

「さて、作戦の概要は説明したわけだが……」

 

司令官私室においてレオンナードとテオバルトは話す。離陸し、宇宙空間に出た艦隊は陣形を整えながら真っ直ぐカフス星域に向かう。

 

「閣下、今後の作戦計画ですが……」

「ああ、おそらく首都星にいる情報屋が慌てて共和国に通信をしている頃だろうな」

「しかし……よろしいのですか?」

 

テオバルトの懸念は艦隊の出航を軍港地区が真昼間の時に行ったことに関する敵側の動きに関する諸問題だ。

そんな彼の懸念をレオンナードは軽く笑って飛ばす。

 

「構わん、我々が出航したとて。向こうが動けば、こちらに伝わる。

そもそもカフス星域は元は大公国の領土だ。そこに住まう市民の中には我々に協力的な人物が多いじゃないか」

「ですが……」

 

それでも堂々と出航の様子を見せてしまっては共和国が連邦に救援を呼ぶ可能性も無きにしも非ずだった。

 

「まぁ、心配な理由もよくわかっているさ。だがな、今の帝国……いや、帝室が必要としているのは分かるだろう」

「……」

 

分かっている。分かっているのだが、頭が痛かった。

なまじ、前世はこういう政治は選挙くらいしか関わってこなかった人間故にこういう裏事情に足を突っ込みたく無いというのが本心だった。

 

「勇ましく、立ち向かう敵を薙ぎ払う獅子の如き活躍ですか?」

「そうだ。お前が一番嫌う面子と言う奴だ」

 

レオンナードはワイングラスを傾けながら答える。作戦中なので中に入っているのはノンアルコールドリンクだ。

 

「そもそも、俺がわざわざ赴いたのはこれ以上、戦端を開きたく無いからと言うのもあるが。一番の理由としては……」

「何でしょう?」

 

テオバルトが聞くと、レオンナードはキッパリと切れ味のある声色で答えた。

 

「俺も戦闘処女を卒業せねばならんから」

「……」

 

それを知り、テオバルトは納得と同時に今の自分の感性に呆れてしまった。

 

「閣下は戦争をした事がないのですか……」

「ああ、士官学校も通ったが。戦闘に直接出たのは今回が初めてだ。だから今回はよろしく頼んだぞ、カフスの英雄さん?」

「……はぁ」

 

また嵌められたと彼は思った。いつもの事ではあるが、目の前の御仁はちょっと自分を振り回すのが好きなんじゃないのかと思う程に自分はこき使われている。

それだけ信用されていると思えば聞こえはいいが、正直もう少しレオンナードには味方を増やして欲しいと思うこの頃だ。

 

「閣下、今後はもう少し交友を広くすべきかと……」

「ああ、それも十分分かっているとも」

 

うんうんと頷きながら彼は皿に乗ったチーズを一口。

 

「まぁ、地球の諺で『百聞は一見に如かず』と言う言葉があるだろう?」

「ええ」

「つまりはそう言うことだ。今後のことも見据えれば、俺も慣れる必要があるのさ」

 

彼の言っている事はつまり、今の公爵家などの大貴族を相手に戦う準備を意味していた。

すでにこの二人は大貴族と戦う決意をしている、と言うよりこれから二人が進もうとしている道では途中で確実に大貴族との戦いが待っているのは事実だ。

 

「カフス星域がフランミダに堕ちて半年。諜報員の報告によれば奪取した星域に大量の食料が運ばれているそうだ」

「建設資材ではなく?」

 

通常、最前線となる場所にはまず初めに要塞や防衛用の設備を建造するために建築資材が送られると言うのがこの事態では当たり前な事であったが。今回は事情が違うらしい。

するとレオンナードが追加でその訳を話した。

 

「元々カフス星域は前年に発生したタイフーンの影響で食料にやや不安があった。それの影響で()()に来た共和国にまず食料を求めたそうだ。

初めは艦隊が持参した食料で賄っていたが、次第にそれでは足りないからと本国からの補給艦隊には食糧ばかり詰め込まれているそうだ」

「なるほど、そう言う理由ですか……」

 

訳を知り、納得したテオバルトであったが。同時に疑問が浮かんだ。

 

「しかし、カフス星域は共和国領からそう遠くないはずですが……」

 

共和国寮に隣接しているカフス星域では補給線の構築は容易であると彼は想定していたが、その事実には少し驚いていた。

 

「ああ、その辺に関してもある程度の事情があるそうだ」

「?」

 

思わずテオバルトは首を傾げると、レオンナードが手首を手前に曲げたので少し彼に近寄るとレオンナードはやや小声で言った。

 

「まだ確実なものではないが、連邦の方で大量に補給艦が移動していると言う話だ」

「はぁ……なぜでしょう?」

「一説によると、巨大な施設を建造していると言う噂だ。補給艦は官民問わず、同盟国も巻き込んで徴用されている」

「共和国領の補給艦を動員してまでの巨大な施設ですか……星でも作る気ですか?」

「はっ、はるか昔のSF作品でもあるまい」

 

レオンナードはそんなテオバルトの言葉を適当に流していた。

 

「まぁ、そんな訳で建設資材を運ぶ余裕もなく。あの星域は軍艦が直接警護している状態だ」

「つまり……今回は攻略戦ではないと?」

「そう言う事だ」

 

通常、国境を越える時の戦闘は宙域に設置されている自動防衛衛星を破壊してから侵攻する。そしてそれら防衛衛星の破壊は掃宙艦と呼ばれる小型の艦艇や艦載機によって行われる。

 

「そこで、今からお前の意見を聞きたい」

「はっ」

 

レオンナードに言われ、テオバルトは一回姿勢を整え直すと彼は問う。

 

 

 

「この戦いにおいて最も人的損害を少なくし、共和国や連邦に衝撃を与えるにはどうしたら良いと思う?」

 

 

 




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