銀河転生記   作:Aa_おにぎり

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#2-2

元は零細の田舎男爵の一人子息だったテオバルト。

彼は軍人における類稀な才能をこれまで二度も見せた。

 

どちらもカフス星域に於いて一度目は駆逐艦の航海長として、二度目は艦隊旗艦の艦長として。

 

同じ星域に於いて二度の勝利を収めた彼にはカルーティア大公国より、彼の国の最高位の勲章である大鷲星章を授与された。

そしてレオンナードの推薦により、帝国でも最高勲章であるキマイラ星章並びのその他諸々の軍事功労勲章を授与された。

おかげで全部つけようとすると胸部分が勲章の略綬で埋まりそうだった。

 

「やれやれ、星章が二つとは……」

「素晴らしい限りでございます。テオバルト様」

 

蛇宮に再び訪れたテオバルトはそこでコリスと共に総監府の人員策定の為の書類確認を行なっていた。

レオンナードの私兵となってくれて、尚且つ有能な軍人…正確には前線指揮官と参謀足り得る存在を見つけるのは中々に苦労する。

 

既に数名の将校には声を掛けており、良い返事を貰った事もある。

総監府の創設に当たって有力貴族達の反発もあったが、カフス星域の戦いで帝国の名声を払拭させ、自分たちの権益を守ったレオンナードに対し、それほど大きな行動を取る事はできるなかった。

 

「よぉ、テオ」

 

するとテオバルトの執務室にレオンナードが直接訪れた。

 

「「閣下」」

 

蛇宮に設けられたテオバルト用の執務室は今度の総監府創設に伴い、移動する事になる。

総監府の場所は皮肉にもお家潰しとなったブランデン公爵家の主邸だった場所だ。連邦に逃げた理由はいまだに不明だが、残された証拠から。かの公爵家は多大なる借金があったそうで、それが理由だろうと推測していた。

 

ちなみに借金をしたのは所有していた惑星の開発投資の為な様で、宙ぶらりん状態の借金は国の財産ともなってしまっており。扱いに非常に困っていた。

そんな借金付きの惑星を欲しがる物好きはほぼ居ないし、その惑星から取れる資源も中々に渋い物ばかり。主な産物と言えばクロムやニッケルであり、軍需産業では必要な物資ではあるが。採算が取れないほどの量だという。

 

「今日はどの様なご用事で?」

 

蛇宮で暮らしているレオンナードは公務以外ではあまり家を出ない。そして彼は、部屋で自作の模型を作る事を趣味としていた。

 

「いやなに、仕事疲れの友人に一本どうかと思ってね」

 

そして彼は懐から一本のワインの瓶を取り出す。いつもの彼のお気に入りの銘柄『ダイヤモンドリリー』だ。甘めのデザートワインだが、銘柄の元となった花の花言葉からもカップルの贈り物として人気な一本だった。

ちなみにこれを聞いて変なことを思い浮かべた奴らは宇宙空間につまみ出すゾ。

 

「またそのワインですか……」

「良いだろう?俺の好みの味だ」

 

そう言うと、彼の駄々に慣れてしまっているテオバルトは仕事の手を止めると、コリスが執務室に置いているワイングラスを取り出すとコルクの栓を抜いて早速グラスに注いでいた。

その間にレオンナードは執務室のソファに座り、優雅に軽く足を組んだ。

 

「全く、昼間から飲酒ですか……」

「良いだろう。俺もお前も酒は強いんだ」

 

そう言いながらレオンナードはグラスに注がれたワイングラスを一気に飲む。

ちなみにレオンナード、酒豪並みに酒が飲める。少なくともウイスキー一瓶飲めるほどで、屈指の酒好きだ。テオバルトの好みはグリューワインであり、彼もまた体質的に酒に強かった。

 

「人員策定の方も大詰めだな」

「ええ、閣下のお眼鏡に適う人員が揃いそうで何よりです」

「そりゃそうだ、帝国臣民は約二〇〇〇億。それだけ人数がいれば俺と気が合う人間も揃うだろうよ」

 

大量の人員策定をテオバルトの知り合いに頼み込んだりしながら、召喚状の代筆やそれのレオンナードの承認などを全て紙でやっていた事もあって腱鞘炎になっていた。

 

「総監府の創設式が終わり次第、私は休暇を取らせて頂きます」

「ああ、分かっているとも」

 

テオバルトはこの後、長期休暇を申請していた。理由は簡単で、カフス星域の戦闘を終え。帝都に凱旋帰国してからと言うもの、総監府の創設の為にほぼ休みなして働いていたからだ。

この申請にレオンナードも二つ返事で頷いており、総監府の創設後に彼には実家に帰る旨を伝えていた。

 

「てか、お前が軍人になってから帰った事あるか?」

「……無い、ですね」

「Oh…」

 

だってカフス星域でのあの戦闘以降。色々とこっちは仕事に駆り出されているんだぞ。……主にレオンナード関係で。

少なくとも憲兵してた頃の仕事はレオンナードから言われた事ばかりで色々と忙しかったんだワ。

 

「よし、すぐに総監府の仕事を終わらせよう。そうしよう」

 

まさかの実家に帰っていない事にレオンナードは驚きながらテオパルトを見た。…大体君のせいやろがい。

 

「閣下、あまりテオバルト様を振り回されぬ様…」

 

そこでコリスが釘を刺す様にレオンナードに言うと、彼は少し前の家族との食事会の最中に呼び出した時を思い出す。

あれ以降、テオバルトの予定もしっかりと鑑みながら呼び出すようになったレオンナード。余程の緊急性もない限り、あの様なことを起こさないとレオンナード自身から確約されていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

六月三十日

帝都第四区 旧ブランデン公爵本邸

 

その日、帝国宇宙軍に新たな場所が設立された。その名を総監府と呼ぶ。

 

先のカフス星域における戦いで新たな人材と、対外的な軍事行動を主に担当する為に創設された場所であり。その初代総監として帝国第二皇子レオンナード・ヴィットリア・メクレンブルグ・フォン・ゲシュタッドが任命された。

本来、軍務省の施設がある第二区に創設されなかったのは。ここがかつて、お家潰しとなった公爵家の所有物であり。接収した帝室にとっても遊び駒となっていた場所だったからだ。

 

一時は美術館にするなどの提案もあったが、レオンナードがカフス星域での戦いの勝利と引き換えに総監府創設の本拠地とする事の許可を貰ったのだ。

 

「レオンナード皇子の御成!」

 

既に召喚状にて呼び出された帝国軍人が並び、大広間の扉が開く。

 

「「「「「っ!」」」」」

 

そして規則正しい軍靴の音を優雅に奏でながら用意された偵察の紋章の玉座にレオンナードが進む。

 

ここに招集された将官の多くは若く、最も高齢で三三歳であった。

そんな将官等の最前列に並ぶのはもちろんテオバルトである。

 

そして厳かな空気のまま、レオンナードは玉座に座ると集まった将官等に話しかけた。

 

「諸君、此度は私の呼びかけに応えてくれて感謝する」

 

すると部屋に数名の従者がシャンパンの入るグラスを持って中に入り。一人ずつに配る。

 

「今日、ここに集った事は帝国に新たな歴史を刻む事となるだろう」

 

そして一人ずつグラスを持った事を確認するとレオンナードは玉座から立ち上がりながらグラスを掲げる。

 

「これからの我等の繁栄を祝って」

 

『願う』ではなく『祝う』と言っている時点で彼の強い決意を簡単に表し、それに将官達もグラスを掲げると、一気にシャンパンを飲み干した。

そして空になったグラスを手放すと全員の足元にグラスが落ちて粉々に砕けていた。

戦国時代で猪口を割っていたように、後戻りはしないという証だった。

 

 

 

 

 

総監府に集った将官は新進気鋭で、尚且つレオンナードの願う新生帝国に夢を見た者達だ。召喚状を出した全員がここに馳せ参じた。

構成員の約半数が平民出身の下級将校であり、これからはレオンナードの手足となり、耳や目となる。

 

総監府の創設に他の有力貴族などは大半がレオンナードの若気の至りであると思っていた。

理由としてはやはり平民出身の将校が多く、自分たちのような専門的な教育を受けていない平民の軍隊で何が出来るのか?という疑問だった。

 

「お初にお目にかかります。カフスの英雄殿」

「いやはや、お恥ずかしい限りです」

 

総監府の交友会で最も上座に近かったテオバルトは早速ある一人の女性将校に話しかけられた。彼女の名はカーラ・コーレフ、現在は帝国宇宙軍所属の少佐である。名前から分かる通り、彼女は平民出身であり。総監府に来る前は散々冷飯を食わされていた人物だった。

この時代ともなると女性軍人は大して珍しいものでは無いが、やはり男との体格差や体力の差から最前線で活躍する女性軍人はまだまだ少なかった。

 

「あなたと交流できた事は、私としても嬉しい限りです」

 

その目に宿る強い視線を受けながらテオバルトとしては胃痛案件だが、今回ばかりは必要経費という事で我慢していた。

 

「では私はこれで」

 

そして軽く交流をした後にカーラはその場を後にすると、次に声をかけてきたのは自分よりも圧倒的に偉丈夫な男と、横に並ぶもう一人の細身の男だった。

 

「やぁ、初めましてテオバルト准将」

 

細身の金髪の長髪で糸目が特徴的な男が挨拶を交わすと、顔を覚えていたテオバルトは二人に頭を軽く下げる。

 

「初めまして、シャルル・ド・ドメス少将。カイル・フォン・クルッフ准将」

 

最初に挨拶をしたカイルに軽く会釈し、次に偉丈夫な男のドメスにも目を合わせると彼もテオバルトに会釈した。

二人ともテオバルトが召喚した人物であり、特に後者はかの有名な軍需産業企業グループであるクルッフ社一門のご子息だ。

 

「君の活躍は士官学校の頃から知っているよ」

「そうなのですか?」

 

なぜ知っているのだろうと首を傾げると、カイルは問いかけるように言った。

 

「リッペの息子を容易く撃破していただろう?」

「…あぁ、あの演習ですか」

 

そう言えばそんな奴いたな、士官学校の模擬演習で簡単に倒した奴。あの後のことが衝撃的すぎて忘れてたわ。

 

「あの時、僕達も演習を見ていてね。君はきっと活躍すると思っていたのだよ」

「勿体無いお言葉です」

 

一応、先輩にあたる上に向こうのほうが階級が高いので敬意を持って接しているとカイルはそんなテオバルトを見ながら言った。

 

「引きこもりなんて揶揄されていたから、いったいどんな人物かと思っていたけど。噂通り、あまり人付き合いは得意じゃ無いようだね」

「ははは…仰る通りです…」

 

考えてもみろ、自分の真横にやんごとなき陽キャがいるんだぞ。そりゃ、胃痛で倒れたくもなるわ。

 

「まぁ、これからは同志として。色々とよろしく頼むよ」

 

そしてヒラヒラと手を動かしながらシャルルと共に去って行く将官を見ながら『あー、早く終わってくんねぇかなぁ』と心の底からテオバルトは願っていた。




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