銀河転生記   作:Aa_おにぎり

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Ⅰ章
#1-1


暗い宇宙の中、天の川と呼ばれる景色を金髪の青年は眺めていた。鼻腔を漂うは誰かが焚いただろう薔薇の香。足元には薄暗い灯りが照らされ、床や壁は金属的な雰囲気を出していた。自分が勝手に展望室と呼んでいる場所は天井が透けており、視線の先に幻想的な雰囲気を作り出していた。

星を眺めているととても小さな靴音と共に一人の背の高い白髪の青年が展望室に入って来た。すると青年は自分を見つけると言った。

 

「ーーー閣下。哨戒艦からの通信であります。『我、共和国軍を発見せり』です」

 

そう言うと青年は持っていたホログラムを映し出す。それを観て青年が聞く。

 

「如何なさいますか?」

 

その問いかけに俺は聞き返す様に答える。

 

「分かっているだろう?ーー親友」

 

そう言い、俺は旧来の友人に問いかけていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

帝都ウォンデウシェン

ゲシュラッド帝国の首都星であり、権力が集まる場所である。宮殿や上級貴族の邸宅や私有地があり、その他にも政府運営に欠かせない官庁が多く存在している。

そんな中、帝都には貴族が通う学園がいくつも存在し、ある少年はその学園の一つに来ていた。

 

 

 

 

 

西暦三〇四六年 帝国暦三二五年 四月十五日

 

学園の図書館で白髪の少年が本を読んでいた。窓の外では風が吹き、地面のグラウンドでは制服を身に纏った同級生や先輩たちがレーザー・ライフル片手に走っていた。

 

「・・・」パタッ

 

一通り本を読み終えた少年、テオバルト・フォン・ヴェーグマンは本を元の場所に戻すと学園の廊下を歩いていた。

 

帝立士官学校

 

今自分が通っている学園の名前だ。士官学校の名の通りここは軍人になる者が通う学校だ。母上から提案された帝都の学校と言うのはここの士官学校に通う事だった。テオバルトは士官学校に入学し、一年半程が経っていた。

 

ここでの生活ははっきり言って仕舞えば『堕落』その一言に過ぎた。上級貴族や有力貴族が多くの従者を抱えて武人の職責を横目に娯楽に徹する。

授業も一定の事はするも、真面目にやっている方が馬鹿になりそうだと言える生徒の態度だ。帝国上級貴族の殆どは後方勤務勤めになるので、一向にこの風習も変わらないのだろう。

特権階級故に叱責をすると自分の首が飛びかねないので教師陣も侯爵程の地位ある教師ばかりであった。数代前の皇帝より前は平民ですら通うことを許されなかった帝都の学園。今では一定以上の教養があれば誰でも入学はできるが、貴族と平民では見えない壁が構築されていた。

そして今日も有力貴族が大股で歩き、平民や下級貴族が肩身の狭い思いをする日々を送っていた。

 

「やれやれ、これでは改革前と何も変わっていないな・・・」

 

テオバルトはそう呟くと自分が借りている寮の部屋に入った。父上が個人部屋を準備してくれたので、ここでは自由な時間が取れた。今日の講義はもう終わっているのでボッチ上等な自分は寮に篭って独学で戦術などの歴史本を読んでいた。

 

 

 

 

 

そんな生活を続ける事、数年。厄介事に巻き込まれないために、面倒ごとを避ける為に常に教室の壁と同化して訓練や戦術、帝国の歴史を学んでいたある日の事だった。

 

「今日は戦闘シミュレーションを行う」

 

教官である侯爵からそのような話があった。今日は帝室の関係者が視察に来ていると言う事で粗相の無いようにと言う話だった。

 

「(成る程、朝から騒がしかったのはこれのせいだったのか・・・・)」

 

先生方がバタバタしていたとは思っていたがまさか帝室の関係者とは・・・・こりゃ上の貴族たちが挙って自分の顔を売るために奔走するだろう。下の者や平民がすることといえば精々上の者を煽てる事だけだ。

 

すでにいくつかの上級貴族のグループが出来、その中に収まっている貴族が多く、自分のような何処のグループにも入っていない者はこの学校では珍しかった。

先生の話によればその関係者は生徒同士のガチンコ勝負をお望みらしい。その為に滅多に使わない戦闘シミュレーションを自分達にやらせようとしているそうだ。

その帝室関係者が来るまでの一週間。自分達はグループを組まされ、ひたすらにシミュレーションに慣れる作業をさせられる事になった。

グループは円滑に行えるよう自由に組めと言っていたが、ボッチでグループに入っていない自分はいわば余り組となって適当に組むことになっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一週間後、学園に来る人物を聞き生徒達は大いに盛り上がった。

 

 

帝国第二皇子

 

 

その肩書きだけで貴族達の反応は大きく二つに分かれていた。興味深そうに視線を向ける者、呪物を見るように毛嫌いする者だった。

現在、帝国では次の皇帝になるものとして二つの派閥があった。

 

一人は第一皇子リヒャルト・バーデン・フリードリヒ・フォン・ゲシュタッド。

背後に多くの大貴族がおり、第一皇子という事もあって次の皇帝として有力者されているが、実を言えば大貴族の傀儡と言っていいだろう。大体、八歳の子供に政事の何が出来るか。と言うことになるが・・・

 

そしてもう一人は今回、学校の視察に来る第二皇子レオンナード・ヴィットリア・メクレンブルグ・フォン・ゲシュタッド。

抱える大貴族は少ない代わりに平民や弱小貴族達から人気が高く、こちらも次期皇帝として有力視されていた。しかし、第二皇子は母親が現皇帝の愛人、それも平民出である事から大貴族達からは何かと忌み嫌われている事で有名だ。しかし、その意欲的で先進的な考え方から一部の貴族達から信奉を集め、平民から人気を得た。

 

「(やれやれ、帝室。それも皇子が来るとは・・・)」

 

少なくとも第二皇子は飛び級で士官学校を卒業し、優秀であると度々聞いている。ぼっちの自分だが、これでも学校内の情報収集には気を遣っている。

"情報を制する者は世界を制する"という故事があるように、古来から情報は何をするにしても重要である。これは、前世に勤めていた会社から学んだ事だった。流行に乗れない会社は社会から弾き出され、そのまま揉み消されてしまう。だから常に何が流行しているのかを知り、乗り遅れないように波に乗る。それが会社を生き残らせる為には必要な事だった。

 

ともあれ、これから来る第二皇子に顔を売るために中小貴族や一部の大貴族は自分を煽てるよう配下となった者達に宣伝していた。その様子はさながら前世での選挙活動のそれだった。自分はそんなものに一切興味は無かったし、教官からは『手を抜くな』と言うお達しだったので真面目にやるか言った気持ちだった。

 

少なくとも『皇帝は偉大!神聖不可侵なのだ!そして、それに次ぐ公爵はその次に偉い!』と言う念仏授業を聞くよりはずっとマシだったので、気持ちは昂っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、戦闘シミュレーションのある建物では大勢の生徒が集まっていた。

今日は第二皇子が学校の視察に来る日だ。全員に一定の緊張感があった。そして、その視線はスモークガラスの装飾の施された部屋に向けられていた。

 

『これより、戦闘シミュレーションを開始する』

 

審査官のアナウンスと共にシミュレーションが始まる。待機室ではグループごとに生徒が椅子を囲んでおり、各々自分の番が来るのを待っていた。

待機室にはビリヤードやチェスなどが置いてあり、勝ちを確信している大貴族のドラ息子達はそれらで遊んで時間を潰していた。

試合を見ていても教本通りの試合しか行わず、派閥同士の戦いの時でもそれは変わらなかったので欠伸が出てしまいそうだった。

ただ、一部の先輩方や後輩の試合に面白い戦法を取ったものがおり、その試合を見るのは面白かった。

 

そして、待機室で待っている事数十分。ついに自分の番が回ってきた。

 

 

 

『シミュレーション機体No.5、模擬戦闘を開始する』

 

 

 




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