銀河転生記   作:Aa_おにぎり

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#1-2

第二王子が来るからと大慌てで行われた戦闘シミュレーション。自分の相手は大貴族と言われるノンバラード・フォン・リッペだった。

 

「おやおや、相手は田舎男爵と平民の混成か」

「これは余裕ですな」

「リッペ殿に勝てる者がいようものか」

 

取り巻き達がそのような事を言いながら試合を見ていた。自分達の主君に名も知らぬ男爵が勝てるわけがないと高を括っていた。そんな中、自分は今回組んだチームに作戦を伝える。

 

「ーーーーで、作戦を遂行する。出来るか?」

「「「「はいっ!」」」」

 

作戦を伝えると自分のチームは素直に従ってくれた。ここで、嫌ですなんて言われたらどうしようかと思っていたが、そのことにとりあえずはホッとしていた。そして、帝国艦の艦橋を模したシミュレーション台に足を踏み入れる。

 

『シミュレーション機体No.5、模擬戦闘を開始する』

 

アナウンスと共に試合が始まった。反対側のシミュレーション台には少し小太りで茶髪の士官学校の制服に袖を通す生徒が椅子に太々しく座り、見下す様に自分を見ていた。彼がそのリッペの様だ。体型からして上級貴族なのが見て取れる。

 

「艦隊を紡錘陣形にして全速で突撃させろ」

「はっ!」

 

リッペの指示通りに艦隊は速度を上げて艦隊に突撃を敢行する。

 

「敵艦隊増速、我が艦隊に突撃を始めた模様」

「了解。艦隊を三日月陣形に変更して後退。シールドを展開しつつ一定の距離を保て。主砲、副砲は艦隊先端に火力を集中。戦闘機隊は発進せよ」

 

指示を的確に聞き、実行してくれるメンバーは実にありがたい。そう思っていた。

 

「戦闘機隊が発進しました」

「無視しろ、あんな小蝿で何ができる。それより、敵はまだ壊滅しないのか?」

 

相手側はそんな事を言い、突撃を続行させた。

 

 

 

 

 

戦闘シミュレーションを見ている取り巻き達は試合を見て嘲笑っていた。

 

「見ろ、リッペ様が優っているではないか。やたら怖気付いて逃げに徹しておる」

「やはり、田舎男爵が勝てるわけがない」

「リッペ様と相手したのが悪かったな」

 

そう言いながら試合を眺めていた。それは他の生徒達も概ね同じ様な反応を示していた。しかし、ある一部の面々は違う反応を見せていた。

 

「ーーー勝ったな」

 

ある部屋で試合を見ていた赤目黒髪の青年が呟く。それを聞いた茶目赤毛の青年が聞く。

 

「どうしてだい?」

 

そう問うと黒髪の青年が言った。

 

「お前も知っていて聞くのか?」

「なに、確認をとっただけだよ」

 

片手にグラスを持ちながら赤毛の青年はそう答えていた。二人は白髪の青年だけを視界にとらえていた。

 

 

 

 

 

同時刻、シミュレーションルームではリッペが段々と苛立ち始めていた。試合が始まって五〇分ほどが経っており、徐々に苛立ちと焦りが生まれていた。

 

「ええい!いつになったら試合が決着するのだ!」

「申し訳ありません。敵の後退速度が速く、数を減らすことができません」

 

足をトントンとして貧乏ゆすりをするリッペに報告が入った。

 

「敵艦隊減速!距離が縮まり始めました!」

 

それを聞いたリッペは意気揚々と椅子から体が浮き上がる。

 

「よし!このまま前進!攻撃を集中しろ!!」

 

リッペはようやく艦隊に攻撃ができると言う感情から周りが完全に見えなくなってしまっていた。

 

 

 

 

 

「敵艦隊接近!」

 

報告を聞いたテオバルトは指示を出す。

 

「プランBを実行せよ」

「はっ!」

「艦隊損耗率は?」

「現在8%ほどです」

「では、戦艦級を前面に展開。弾受けをせよ」

「はっ!」

 

テオバルトがそう指示を出すと報告が入った。

 

「敵艦隊の損耗率が急激に上がっています!」

 

その報告に会場が大いにざわつき始めた。

 

 

 

 

 

「何が起こった!?」

 

リッペは度肝を抜かれた。相手を追いかけていたらいきなり自分の艦隊が大損害を喰らい始めたのだ。すると報告が上がった。

 

「き、機雷原です!」

「機雷だと!?」

「敵の放った機雷の影響で我が艦隊の損耗率が急激に増加しています!」

「艦隊損耗率が40%を変えました!!」

 

何が起こったのか、そう思う間もなく悲鳴に近い声が上がる。

 

「敵戦闘機隊が後方から接近!!」

「戦闘機だと!?」

 

その瞬間、突如シミュレーション台が赤いランプで染まる。それはつまり旗艦が攻撃されていると言う事だった。

 

「リッペ様!」

「ご指示を・・・!!」

「う・・・あ・・・」

 

リッペはここで自覚した、敵の罠に見事にハマったのだと・・・

敵は後退している最中に機雷をばら撒き、自分達が機雷原に突っ込むように誘導したのだ。距離が近づいたのは機雷原に気づいて避けられるのを不可能にする為。戦闘機を発進させたのは足止めを喰らった自分達を後ろから攻撃する為。

前方に機雷、後方に戦闘機。挟撃され、勝ち目はなかった。するとトドメを刺すが如く相手から攻撃が来る。

 

「ーーーファイエル」

 

生き残った戦艦や巡洋艦、駆逐艦から無数の荷電粒子砲の攻撃がリッペの艦隊に降り注ぐ。

 

「ちぃぃ、こちらも応戦しろ!少しでも相手を損耗させるんだ!」

「は、はいっ!」

 

苦し紛れにリッペ艦隊の砲撃がテオバルトの方に飛んでくる。

 

「敵艦隊も応戦してきました」

「旗艦の識別はできるか?」

「はい」

「では、集中して狙え」

「はっ!」

 

そして、再び艦隊の斉射が行われる。集中砲火を浴び、旗艦は大ダメージを負った。それと同時、アナウンスが流れた。

 

『旗艦撃沈。勝者テオバルト・フォン・ヴェーグマン!!』

 

 

 

 

 

試合後、リッペに勝利したテオバルト達の班は勝利に沸いていた。それと同時に待機室では混乱が生じていた。何せ自分たちが祭り上げるはずの相手が初戦敗退したからだ。そんな彼らを横目にテオバルト達は次の試合に向けて準備を進めていた。

一方、テオバルトに惨敗したリッペは恨む様に涼しい顔をしながら困惑する自分たちを見ていた白髪の青年を見ていた。

 

「田舎育ちの分際で舐めた真似しやがって・・・ただで済むと思うなよ・・・」

 

 

 

 

 

「まさか本当に勝たれるとは・・・」

「だから言っただろう。彼奴は強いと」

 

豪華な装飾が施された部屋で青年が燕尾服を着た老紳士に言った。すると青年は老紳士に言った。

 

「コリス、これで納得できたか?」

「はい、十分に」

「では、準備をしてくれ」

「畏まりました」

 

そう言うと老紳士は部屋を後にした。残った青年はテオバルトを見ながらつぶやいた。

 

 

 

「約束を果たそうじゃないか・・・なぁ、親友?」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

初戦でリッペをボコボコにした影響でリッペの取り巻き達は一気に総崩れを起こし、完全にテンポが崩れていた。

残った大貴族のグループは崩れたリッペ陣営を見て嘲笑っていた。名も通らぬ男爵相手にフルボッコにされ、挙げ句の果てに取り巻き含めての総崩れだ。それは清々しいほどの体験だっただろう。

 

だが、それは別の方でも別の意味で大盛り上がりだった。それは今までリッペに散々バカにされて来た者達だった。元々リッペは典型的な貴族体質で常に誰かを下に見ないと気が済まない体質だったと言う。初めのうちは混乱していたが数時間もすればリッペがコテンパンにやられた事に胸が空き、大半の者がそれを実行したテオバルトに賞賛の意を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方リッペを制したテオバルトはそそくさとシミュレーション会場を後にしていた。

 

「しまった・・・やらかした・・・」

 

テオバルトは頭を抱えていた。正直ムカついていたから忖度なしに試合をしたがこれはやり過ぎたと思った。

 

「これからどうしよう・・・・・・」

 

これでは貴族達からやっかみを喰らうことは確定した。明日から面倒な事に巻き込まれるのは確実だった。どうしたものかと思いつつその日、テオバルトは寮に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後に今日以上の問題を抱えるとは思わずに・・・




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