銀河転生記   作:Aa_おにぎり

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#2-1

正暦三〇四六年 帝国暦三三一年 八月十五日

 

夏も真っ只中のこの日。自分は蛇宮にて仕事をしていた。

士官学校を卒業してから俺は両親が帝都に持っている別邸で暮らし、船に乗って軍人として働いている。

しかし、こうして蛇宮で仕事をすることもままある。理由は簡単。

 

「ここの部分にミスがあります。額の大きさからして怪しいものかと」

 

そう、会計だ。俺は貴族間で行われている金銭の差額を見て、怪しい部分を洗い出していた。前世で培った経験を元に自分はデータから計算し、ざっと四〇件ほど報告していた。

取り敢えず今日の分の計算を終わらせると俺は明日の分の仕事に取り掛かる。一ヶ月帰れないのが当たり前だった仕事量に比べたらこのくらい一瞬で終わらせられる。

ちゃっちゃかと仕事を終わらせると俺はそのまま蛇宮を後にする。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ほぅ…これ全部テオが?」

「はっ、左様にございます」

 

その日の夜。蛇宮の執務室でレオンナードは興味深く結果を見る。その横でコリスは仕事中のテオバルトを思い出しながら呟く。

 

「いやはや、何とも恐ろしい青年です。なにせ、()()()()の仕事を終わらせてしまうのですから」

「はっはっはっ、それはそうだな。俺も、ここまで仕事のできるやつは見たことがない…貴族共も惜しい事をしたものだ」

 

愉快そうに言うレオンナードにコリスはテオバルトを評価する。

 

「実に素晴らしい青年です。これだけの情報を一日で終わらせられる処理能力はまさに天才的と言えるでしょう」

「天才か…本当にそうかねぇ……」

 

コリスのテオバルトに対する評価に、レオンナードは顎に手を当てながら呟く。

 

「彼奴は憲兵隊がよく似合いそうだよ…」

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

蛇宮での仕事を終え、別邸で一息つく自分。あぁ、この時間が最高に良い。周りに読書を阻害するものが何もない。静かにブランデーを飲みながら本棚の目の前で椅子に座りながら本を開く。

 

「マリーダは今頃就寝の時間か……」

 

現在マリーダは帝都郊外の山間にある《帝立女学院》に入学している。母の母校でもあり、完全寮生活のあそこにマリーダは入学した。

貴族としての話術や、マナーを学ばせる為に父がお金を出してくれたのだ。マリーダは帝都にいるのに自分となかなか会えないことにやや不満げではあったが、安息日などで時間が合えば自分が寮まで迎えに行っていた。

自分はマリーダが何をしているかを想像しつつ、明日からの予定を確認する。

 

「明日は特に用事は無く、明後日は出港か……」

 

そう呟くと思わず表情は固くなってしまった。

 

 

 

 

 

現在帝国はある国家と代理戦争を繰り広げている。

 

その国家の名は銀河連邦。

かつての自分の生まれ故郷であり、人類誕生の場所でもある地球を首都とした巨大民主主義国家であり、国交はあるものの、言って仕舞えば冷戦状態である。毎日諜報員が行き交い、互いの腹を探り合う諜報戦を繰り広げていた。それに、帝国と連邦の間にある国家群では度々戦闘が起こり、安全保障の名の下連邦軍は自分の陣営の国家に軍隊を派遣し、帝国軍は()()()と言う形で自分達の小国家群に艦隊を派遣していた。

戦闘は散発的に発生し、勝敗も確定的なものはなかなか起こらず。終わりの見えない戦争が起こっていた。

そして、帝国軍の派遣する義勇軍に今回。自分の乗艦している駆逐艦が回ってきた。

現在、駆逐艦の航海士を務めている自分だが。運が良ければ戦闘を一切せずにここに戻って来ることができる。

自分も含めた兵士たちはその様に願いながら明後日を迎えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌々日、自分は乗艦であるZ230駆逐艦を見る。

前世では駆逐艦といえば一五〇メートルくらいだが、目の前の駆逐艦はそれを上回る二〇〇メートルという巨大だ。一部の巡洋艦クラスの大きさに目が回りそうになるが、俺は駆逐艦に乗り込む。何せ、この時代の巡洋艦は三〇〇メートル程。戦艦や空母に至っては五〇〇メートルを超えるものまで存在し、それでいて必要人員は前世よりも格段に少ないと言う、自動化が未来を感じさせていた。

あぁ、前世でもこんな便利な道具があればなぁ……

 

なんて、思いつつ俺は駆逐艦に乗り込む。帝国軍の駆逐艦の必要人数はおよそ三〇名。一クラス分の人数で一五〇メートルの巨艦を動かせるのだからもう驚きである。

自分は艦に乗り込むとそこで艦長と対面する。

 

「おぉ、中尉は来たようだな」

「来た…と言いますと?」

「何、駆逐艦の義勇軍なんて乗組員が来ないなんて言う事態もあるからな」

「あぁ、そう言うことですか……」

 

まぁ、確かにそうだろう。軍人としてはどうかと思うがこの日さえ何とかなれば自分は義勇軍に行かなくて良いのだ。おまけに駆逐艦と言うのは撃たれ弱い艦種。いくらシールドを張るとはいえ戦艦級の砲撃をまともに喰らえば一撃で轟沈だろう。

そんな恐怖があるから駆逐艦の乗組員は出航日に来ないことがあると言う。

 

「一人が逃げ出すと恐怖が伝染し、周りの兵の指揮にも影響してくる。ーーやれやれ、駆逐艦の艦長というのも難儀なものだ」

「艦長、しかしそれでは艦の運航にも支障をきたすのでは?」

「問題ないさ。この艦の配属は補給部隊。そもそも戦闘に直接参加するのは巡洋艦以上の主力艦だ。我々が直接戦闘する時は撤退する時だけだ」

 

そう言うと艦長は集まってきた人員を集め、艦に乗せると機関を始動させ、離陸を開始する。自分は艦の操舵をする為に艦橋の舵を握る。

 

「離陸開始」

「離陸開始します」

 

艦長の指示通り、舵を握ると駆逐艦は管制制御装置のお陰で順調に離陸を始める。

来なかったのは二人。これでもまだマシな方だと言う。ひどい時は半分以上が来ずに、艦の運航すらできなかったこともあったそうだ。だからそうした予定は直前まで秘匿される様になったと言う。

俺は艦の運航をしながらどんどん暗くなっていく空を見る。集合場所には大勢の艦隊が並び、戦艦や巡洋艦、補給艦などが整列をしていた。

 

「すげぇ…」

 

誰かがそう呟く、確かに壮観だ。これ程の数の艦隊が集まっていると男として興奮するものがあった。

この時代の艦隊は数が多い。戦艦だけでおよそ三〇隻ほどで構成され、巡洋艦は五〇隻以上。駆逐艦や補給艦にいたっては一〇〇隻以上いた。

今回、俺たちが組み込まれる艦隊は《第三七次遠征派遣艦隊》と言う名前で帝国と連邦の狭間にあるカルーティア大公国という場所に遠征することになっている。言い知れぬ緊張感の中、俺は指定された場所に駆逐艦を滑り込ませる。ここに赴任してから数ヶ月。艦の操縦に離れたもので、簡単に補給艦の横に接舷する。

 

「艦隊が集結するまで休憩しておいてくれ」

 

そう言い、艦長は艦長席でぐったりとした様子で帽子を深く被り、眠りだす。俺達はそんな艦長を見てどうしようかと思うも、特にすることもないのでそのまま艦橋で自分は持って来ていたインスタントコーヒーを淹れるとそれを皆に配った。

 

「コーヒーいるか?」

「あー、俺にくれ」

「俺の分も」

 

そう言い、コーヒーを配り終え。皆で談笑に浸っていると突如通信が入る。

 

『全艦に次ぐ』

 

その音声と共に艦長が飛び起き、自分達艦橋要員も思わずコーヒーを溢しそうになる。画面に映った上級大将の階級章を持った貴族らしい見た目のブラウンヘアの軍人が通信する。

 

『これより、我が艦隊は出兵する。ワープ準備入られたし』

 

そう言い、通信が切れると艦長が苦言をこぼす。

 

「おいおい、まだ予定時間より早いじゃないか……艦隊が集まったのか?」

 

そんな不穏な呟きをしつつ、艦長は自分と機関長にワープの準備をさせていた。




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