外伝は千束が12歳頃のお話
外伝の鈴仙はレイセンにより近い容姿です。
(比較的明るい髪色で、ショートヘア)
本編や原作と性格や設定が違うのは生まれ育ちが原作のそれとは違うということを踏まえてご覧ください。
※外伝は構想設定を無理矢理つなげて気ままに書いた物です。
過去編は読まなくても本編への支障はありません。
また本編と時間的に乖離がある分、混乱してしまう要素があります。
本編が1万~1.5万時程度に対して、外伝は3千~5千字程度の内容でお送りします。
外伝1
<Chisato side>
電波塔事件と呼ばれる大事件から早5年余り経過した現在、喫茶リコリコの仕事にも慣れて毎日楽しく充実している。
(今日もお天道様の見える青空! 静かな朝! 気分爽快、絶好調、リコリコでは何が起こるかな♪)
そんなルンルン気分の私はと先生はちょっとした用事(リコリスの仕事)を済ませ、次の楽しい仕事に胸を高鳴らせていた。
リコリコがようやく見えるくらいの距離に私たちが近づくと誰かがお店に入っていくのが見える。
「もー、せんせーったらだらしないよ! 鍵かけてから外出ないとだめじゃんか! これはおやつのおねだり聞いてもらわなきゃねぇ」ニヤリ
「ああ、鍵がかってないのは……」
何か先生が話そうとしてたけどきっと言い訳に違いないっ!
私はそう考えおやつの権利を奪い取ろうする先生の声は聞こえない……もとい、先生は足が悪いから私が先にお店に戻って接客しようとダッシュで店に突入するとビクッと驚いた様子をした私より小さなリコリスがいた。
お腹が痛いのか、それとも驚かせちゃったのか、微動だにしない女の子は何者なのだろう。
そんなことを考えてる間に先生が到着した。
私は目の前にいるリコリスは誰なのだろうと先生の目を見る。
これは千束が12歳、鈴仙が10歳頃、二人の出会いの話
初めて私のかわいい妹で親友となる人との出逢い
<Reisen side>
死ぬのが、殺しが、血が外に漏れ出て冷たくなっていくのが嫌。
こんな些細で、当たり前で、誰しもが想う詰まらない臆病な思考。
いつからかそれに囚われて前に一歩踏み出せないでいた。
日本の平和を秘密裏に守るための暗殺部隊リコリスに所属している者に不必要な感情があったからか、不穏分子処分の任務に参加できなくなって数ヶ月の私は司令室に呼び出された。
働くもの食うべからず。
怯え、恐怖、罪悪感という負の感情に囚われてしまったせいで躊躇い、働けず、動けない私はこの場所では異質で不要な存在だ。
「鈴仙、お前にリコリス本部からの脱退命令が来ている。これ以上無駄に本部にとどまらせておく道理はない、身辺の整理をしておけ」
予想はしていたが、実際に聞いたその言葉は私の心を突き刺し、抉られるような痛みを感じた。
リコリスの足手まといであり、国籍がない自分は処分されてしまうのだろう。
もうこれ以上頑張らなくていいんだという安堵、自分が死ぬことに対する悲しみが私の目を霞ませる。
司令から発せられる残酷で無慈悲な宣告を静かに待っていた。
しかし、そこで聞こえた言葉は疑ってしまうほど私を想ったもので、疑いようもないほど鮮明に私の耳に届いた。
「優秀だった者を手放すことは残念に思うが、転属先は敵を殺さないのに優秀なリコリスもいる。今まで他の同僚に任せきりだった仕事を取り返せるよう、任務に勤しんでくれ。期待している」
「……は、はい?」
予想外すぎるその言葉に驚き、唖然とした。
****
それ以降のことはあまり詳しく覚えていない。
トントン拍子で物事が決まったせいで気を落ち着かせる余裕すらなく、荷物の片付けやお世話になった方に挨拶を済ませ、「そうか……頑張れよ」と激励を貰ったと思ったらいつの間にか転属先のある通りにいた。
楠木司令が言った「殺さないのに優秀なリコリス」がこの先にいるのか……
今まで暗く陰った道に微かに光が差した、そんな気がした。
しかしその蝋燭のように儚げな灯火はいつ潰えてもおかしくない……だから期待しては、希望を持っては、駄目なんだ。
そうして重い足を進ませた先、着いた転属先は、まさかの喫茶店だった。
「こんにちは……」
私は見ず知らずの土地に緊張しながら静かに扉を開け、そのこぢんまりとした店内を見渡した。
窓から光が差し込むが、それでも暗い雰囲気を感じる店内には私一人だけだった。
「誰もいない……」
店内に足を踏み入れたのに人の気配がしない私一人静かな様子に僅かに焦りと戸惑いが生まれた。 外の雑音が余計に店内を静かに感じさせた。
場所間違えたのか、それとも留守にしてるのか、皆目見当もつかないが暗闇広がる店の奥に足を進めようとした、そんな時、自分の背後から小鳥のような声が聞こえた。
「リコリス」
空間が固まった。
背後をとられたことに対する焦燥感、戦闘に発展してしまうのではないかという不安が濁流のように押し寄せ、汗と荒い呼吸となって体外に溢れ出した。
いったいどれくらいの時間がたったのだろうか、やけに長く感じた膠着の時間は後ろからの明るい女の子の声とダンディーな男性の声を聞くと溶けるように進み始めた。そして先の感情は杞憂だったと理解した。
「千束、例のリコリスだ。前に話したことがあっただろう」
「せんせー、この子が!!」
「そうだ。ようこそ鈴仙」
ここの関係者だったようで、ホッと安堵し思わず息を漏らす。
落ち着きを取り戻した私は振り返り声の元を辿る。
その声の持ち主通りの可愛らしい子犬のような、多分より数歳年上の少女と見上げるほど大きい渋い着物の男性がいた。
これが私と千束と先生の出会いだった。
<Chisato side>
「は、はじめまして。今日からここでお世話になります。鈴仙です。よろしくお願いします」
その鈴仙は少し緊張しているのか、若干声が引きつっているように感じるが振り返って自己紹介した。
これはここの先輩であるこの千束、推して参るしかない!
「よろしくぅ鈴仙! わたし、千束で~す! せんせーから聞いてたけどこんなかわいい子だったなんて♪ 年は?」
「ええっとじゅっs」
「10歳! 私が12だからお姉ちゃんだ~、でもさん付けとかはなくてオッケィだからね! ち・さ・とでもおね~ちゃんでも好きに呼んでね♪」
「は、はい! ……ち、ちさと、お姉ちゃん?」
「きゃ~、うれしっ、せんせー聞いた?! 千束お姉ちゃんだって! こんなかわいい子見たことない、とにかくよろしくね、鈴仙!」
「は、はい……よろしく、お願いします」
私は手を差し出し、鈴仙はその手を躊躇いがちに掴もうと伸ばす。
私はその小さな手を引っ張るように掴み取った。
<Reisen side>
とても元気な少女、千束お姉ちゃん? は私の手を掴んで店内の紹介をして回った。
「ここで先生、ミカさんがおいしいの作る場所! 昔はダメダメだったけど今はめちゃくちゃうんまいの! そして……ここは着替えるところ! それから……」
初めて会ったばかりなのに距離感が近い。
でもずっと一緒にいたい程心地よく感じてしまう。
同時にもし死んでしまったらと思うと……
だから私はこの人と仲良くするのが怖くなる。
そんな不思議な人の手は温かいのに何かが違う。
まるで生きていく上で致命的な要素のである何かが足りない、そんな気がした。
でも、こんなにも元気で、気のせいだよね。
「あとは、あとは!」
「千束、そろそろ仕事の準備をしろ」
まだまだ私を連れ回す気満々の千束はミカさん?の注意を聞いて少し残念そうな顔をした。
千束はほっぺをプクッとさせ不満げであるが店内の時計を見て表情を改めた。
「はーい…… 時間も時間だったので錦木千束、これより仕事の準備をしてきます! ってことでちょ~っと待ってて♪ 後でお話の続きしよ~、改めてよろしくぅ」
「は……い、よろしく、です」
しばらくして解放された私は放心状態で、少し経ってからお店のカウンターの方に目をやるとミカさん?がコーヒーを淹れていた。
「お疲れさん。コーヒーができた。それともミルクの方が良かったかな」
「えっと、コーヒーで、お願いします。砂糖とミルク多めで」
どうやら私のために作ってくれたようで、楽しかったが精神的に疲れた私には糖分やいい香りは嬉しかった。
そして出てきたお砂糖たっぷりコーヒー牛乳を口に含み、香りと味を楽しみ、喉を潤した。
「おいしい……」
「それは良かった。そう言えばまだ自己紹介してなかった。ここの管理者のミカだ。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ここに来て、初めて直接的な優しさを、温もりを感じ、ようやく止まった歩みを、新たな一歩を光が差す方へ踏み出せる気がした。
踏み出そうとしたんだ。
今回の作品は本編13話、過去編12話の予定で執筆しており、
「本編第1話と過去編外伝1の内容がリンクしている」と言った感じなので、
本編1→過去1→本編2→過去2→……のような見方もありですし、
本編完結後に過去編の一気読みやその逆に過去編完結後に本編の一気読みもありです。
できるだけ毎日1話ずつ投稿頑張らせていただきます。