フィークス・G・リコイル   作:桃玉

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外伝3

<Kusunoki side>

 

先ほどミカから連絡が届いた。

内容は至って普通、任務の結果報告だ。

しかし、その任務はDAが行う通常のものとは違う。

 

DAのリコリスでは達成困難な任務を最強のリコリスに任せていと言えば、その難易度や特殊性は言わずとも理解できるだろう。

そんな任務を支部、つまりはリコリコでやってくれと依頼をするのだが、今回は少々異なり比較的難易度の低い任務を依頼した。

 

それはあの怖がりなリコリスをリコリコに左遷したためだ。

 

無論、人を殺すのに躊躇するようなリコリスは使い物にならないためDAには不要だとして追い出したのだが、如何せん無駄に実力があり、如何様な場面でも生き残ってしまう。

しかし隠れる才能でもあるのか、監視カメラに参考となるような戦闘はほとんど写っておらず、演習もあるときを境に不参加で現状彼女の正確な戦闘力は把握できていない。

だが仮にも上辺が優秀な戦闘兵器を上層部が見す見す非戦闘要員にするわけもなく、情報担当としての道は閉ざされていた。

だからやむを得ずリコリコに左遷したのだ。

 

……何なら千束も同じような理由でDA本部から抜けたな。

似たもの同士仲睦まじくしてればいい。

 

 

その様などうでもいい思考を浮かべながら報告書に目を通す。

ふと一文に目が引かれる。

 

『……DAの演習場を借りたい……』

 

珍しいこともあるものだ。

あの千束が月に二回以上演習場を使うとは……鈴仙のためか?

まあいずれにせよ断る理由もなく、都合の良い日を提示し、送信した。

もしあの二人の戦闘が見られるのなら見てみたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Chisato side>

 

「てなわけでやってきましたぁ! DA~!」

「うるせぇ! どんなわけだよっ!?」

「やだなぁフッキー、鈴仙とバディを組むんだから実力の把握は必須でしょ!」

「てめぇ! 私の……じゃなくて私たちの先生独り占めしただけで飽き足らずっ、ペアも抜き取ったのかッ!!」

「ああ、メンゴメンゴ」

「クッソむかつく……!」

 

というわけで今日は鈴仙の実力把握とゴム弾に慣れてもらうためにやってきました~!

そしてどこから先生が来るのを聞きつけたのか、フキに入り口で待ち伏せされてて、めっちゃ絡まれた。

でも、だいじょーぶ! なぜならフキは先生の前だといいところ見てほしくっていつもよりお淑やかなレディになるから!

まるでお淑やかな私のようなレディに……あ、握りこぶしが力はいって、青筋もスゲェ!

 

「フキ、大丈夫? あんまり我慢すると血管切れ……」

「全部テメェのせいだろぉ!!」

「いや、ホントごめんって」

「まあまあ、二人とも落ち着け」

「せ、先生!」

「フキ、もしよければ鈴仙と組んで千束の相手を頼めるか?」

「……!! も、もちろんですっ!!」

「ありがとう、フキ」

 

で、でたー! 先生必殺「お礼&ナデポ」ぉォッ!!

あんなに激しかったフキが、顔から蒸気が出るほど赤くなって静かになってる!

……きっと心の中では狂喜乱舞してるんだろうな。

あ、キュウっていって倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Fuki side>

 

「じゃあ……その、よろしくな」

「は、はい!」

 

さっき喜びのあまり倒れてしまったのを可愛い後輩に見られなんだか気まずいことになったが、その後先生がお姫様抱っこ(片腕)で支えてくれた恥ずかしさに比べれば何も恐れることはない。

たとえ千束が相手だろうが、だ。

それに模擬戦だから死ぬなんて悲惨なこと起こることもない。

気を緩めてやるくらいが丁度いいんだが……隣の後輩はガッチガチに緊張している。

 

「おまえ、少し痩せたか?」

「き、緊張でちょっと食欲が……」

「そか……だがバランスいい食事は大事だ。じゃないとちゃんと食べてる私みたいに大きくなれないぞ」

 

雑談で緊張をほぐそうとしたが、あんまり効果がなかった。

まあ、いつも通りっちゃいつも通りか。

 

「そんな緊張することないんだぞ。どうせ誰も死なんし、最悪でも捻挫くらいだ。緩くやればいい」

「はい……そ、そうですよね! このゴム弾の扱いも習得しなきゃですし!」

「そうだな」

 

鈴仙が先生からの贈り物を見せつけ笑みを作る。

元々私と鈴仙はペアだったんだ、今の戦いたくないなっつう心理状況だって少しくらいはわかってるつもりだが、やはりトラウマは簡単なものじゃないんだろう……

銃を持つこと自体に抵抗を見せる鈴仙の作り笑いが私の胸に突き刺さる。

 

『……まもなく、演習を、開始します。両者、準備を……』

 

そうこうしてるうちにアナウンスが聞こえてきた。

連携といえるほど大したものでもないが、戦いにおいては付き合いの長い私の方が千束より一日の長がある。

先生たってのお願いだし、いいところも見せたい。

私だって成長してるんだ。

 

「うし、行くか、鈴仙」

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Reisen side>

 

あの時までは殺すこと、戦うこと、銃を撃つこと、全部が日常の一部で、何でもなかった。

でも今は違う。

銃を持つのが怖い……だって銃弾が当たれば血が出るし、死んじゃう。

戦い、争いが怖い……私が何もしてなくても勝手に血だまりができて物言わなくなる。

殺すことが怖い……死んだ人の悲痛な叫び、恨み辛みが耳から離れない。

私が人を殺すたびその声が大きくなる。

 

でも今日はちょっと違う。

誰も死なない、だから少しだけ怖くても大丈夫。

だけど千束お姉ちゃんと戦うのが怖い……お姉ちゃんと勝敗で私たちが勝ったら、人はやっぱり簡単に死んじゃうんだって、そう思うのが怖かった。

 

確かに、お姉ちゃんの回避はスゴい。

でも本当にどんな状況でも躱せるのか、それが不安で不安でたまらないんだ。

そのせいで今、視界がグニャリと歪み、夢と現実の境界があやふやに感じる。

でもやるからには本気で行かないと……でないと嘘か本当かまでわからなくなる!

 

『それでは、演習を開始します』

「……鈴仙、いつも通りに動け。それなら勝てる可能性がある。わかったな」

「了解です……」

 

開幕宣言と同時にフキさんの声がかかり了解するが、私の体は思ったように動かない。

それでもぎこちない動きで身を隠しつつ攻撃のチャンスを待つ。

 

いつも通りってことはフキさんが陽動して、私は隠れて敵の隙を突くってこと。

私たちは言っていて悲しくなるが、低身長。

その強みを生かすため超低空姿勢で敵に接近する、通称:G戦法で挑む。

フキさんに教えてもらったこれは球も当たりにくいし、死角から攻撃できるし、フキさん並みに上手くなくても形になればそこそこ強みがある。

 

しばらくすると一人の足音がこちらの方へ近づいてくるのがわかる。

きっと千束お姉ちゃんのだ。

そして少し遅れてフキさんも走り出し、邂逅した。

出会い頭に互いのペイント弾で牽制し合い、それぞれの被弾なしで物陰に隠れる。

 

「あっれ~? フキさーん、鈴仙はどこかなぁ?」

「んなこと知るか!」

「ってことはやっぱり鈴仙は私の方が好きってこと? 待っててね~! 今お姉ちゃんが迎えに行くからぁ!」

「落ち着け、これは罠これは罠これは罠…………」

 

煽り耐性のないフキさんが今にも飛び出していきそうな様子だが流石はファーストリコリス、口から血が流れそうなほど食いしばって耐えてる。

冷静になったフキさんが陽動のため動き出す。

私も攻撃をいつでもできるように準備は整っている。

 

フキさんが千束お姉ちゃんを私の方へ誘導していく。

私が隠れた暗闇から標的を見ないで乱射しながら走り去るのフキさんとその後ろを追いかけるお姉ちゃんが見えた。

私はその背後に回り込む。

背後からの射撃、できる限り気配を消してもう避けきれないだろう間合いだ。

 

(私が勝っちゃうのか……)

 

心が沈み、悲しい気持ちで満たされ、そのまま銃弾を放った。

 

「うおあっ! あっぶな!」

「はえ……? あっ」

 

一瞬何が起こったかわからなくて間抜けな声を漏らしてしまう。

そして自分の腕を見ると青いインクが染みついていた。

そしてその奥の方を見るとフキさんの背中にも青いインクが付いていた。

 

ああ、よかった。

二人がかりなのに、ちゃんと勝ってくれた……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Chisato side>

 

とりあえず一回目の演習は終わった。

もちろん私の圧勝……とまでは言わないけどちゃんと勝った!

 

「イケると思ったんだけどな……クソ」

「残念、まだ年下に負ける気はさらさらないもんね~!」

「私より一日誕生日早いだけで先輩面すんじゃねぇ!!」

 

またフキがうるさく言ってくるがしょうがないじゃん、事実なんだから。

そんなやりとりをしているとき、鈴仙の方を見ると何やらホッとしていた。

 

「どうしたの? 負けちゃったのにそんなよかったみたいな顔して?」

「……実は戦うの怖かったんです。千束お姉ちゃんに当たったらどうしようって。ここで当てたら本当の戦闘でも当たって死んじゃうかもって……」

「大げさな……でも、大丈夫だったでしょ?」

 

鈴仙は大げさなんだから……不安げな顔しちゃってさ。

気持ちはわからなくはないけど私が銃弾で死ぬことなんて多分ない。

 

「でも……」

「でもって誰に言ってるの? これでも私、最強のリコリスらしいよ? ね、フキ!」

「……チッ。否定はしねぇよ」

「ね? それにほら、心配だったら鈴仙がしっかりサポートしてよ。人間、誰だって完璧じゃないんだ。だから支え合って生きてるんだよ」

 

鈴仙の少しだけ暗く見えた表情が明るくなっていく。

 

「それだけじゃねえだろ。……千束がこういう状況もあるって気づけたってことは対処法もできて余計強くなっちまったってことだ……クソッ、いよいよ勝算がないぞコリャ」

「フフッ。確かに、そうだね!」

「何だ? おかしいことでもいったか、私?」ニヤリ

「なにも。私、お姉ちゃん、いや千束のこと支えられるようになるように頑張る!」

 

フキが半分本音、半分わざとらしくそんなことを言うもんだから鈴仙の顔から心配が消えて笑い声まで漏れている。

まさかフキに最後を持って行かれるとは……

元気になってくれて嬉しい反面お姉ちゃんとしては複雑な気分だよ……!

もうこうなれば追い打ちじゃ!

 

「ねえねえ! 私がもっと鈴仙に安心してもらえるには、どうすればいいかな?」

「えっと……?」

「……つまりオマエの攻略情報言えってことだ」

「……私の攻略方法!? えっと……その……わ、私まだ、そう言うのは、わかんないっていうか……」

 

顔が真っ赤になって指をツンツンしながら尻すぼみしていく鈴仙。

あ、ダメだ、笑い堪えられない。

 

「ププッ、フキ~! 戦闘でのことなのに、ププッ、恋愛と勘違いさせるんじゃねえよ! ナイスか!!」

「いや、勝手に鈴仙が勘違いしただk……」

「ああっ、戦闘でのね! わかってたよ、もちろん! ……例えばだけど、耳元で大きな音やられるとキンキンして耳聞こえなくなるかも……とか? あと近接戦闘技術とか私あんまりないから密着すれば……。一番は千束の実力を最も生かせる状況に私を引っ張り出すこと……かな。さっきみたいにね」

「オマエめっちゃくちゃ早口だな……」

「ウウッ……」

 

早口を指摘され恥ずかしいのか手で顔を覆い隠す鈴仙。

これ以上いじったらさっきのフキみたいにショートしそうだから静かにニヤニヤしておく。

さて、次はゴム弾の練習かな?

 

楽しい時間が過ぎていく。

 

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