フィークス・G・リコイル   作:桃玉

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外伝4

<Chisato side>

 

鈴仙と出会ってから数ヶ月の月日がたった。

DAの演習場には最初の演習からもちょくちょく練習に足を運んでいる……と言っても練習するのは鈴仙だけで私は付き添いみたいなもんで、三回に一回くらい鈴仙と戦ったり味方として付き合った。

そのおかげで鈴仙はゴム弾の扱いに慣れ、実践に通用するほどに。

そして私もただ付き添っていただけではなく、私たち二人の長所を活かしつつ短所を補い合えるかを考え、結局フキと鈴仙がやってた戦法に行き着いた。

フキもなかなか強いかもだけど、弾を避けるのは私の方が上手だし囮役としてもうってつけだった。

てなわけで基本的に私は明るいところから敵をおびき寄せたり攻撃したりして、鈴仙は暗いところに隠れて敵を倒したり索敵や隠密をする戦闘スタイルになった。

先生から鈴仙のゴム弾の使用許可も出たしリコリコ本格的に始動だ!

 

……と意気込んでいたはいいものの、毎回毎回そういう物騒な任務は来ないので今日も今日とて喫茶店でお客さんに元気になってもらえるようにお仕事お仕事!

土日だから忙しくなるぞぉ~!

そう思いながら店の扉を押した。

 

「おはよ~ございま~す!」

「あ、お、おはようございます!」

「うんうん、元気でよろしい! ……ってせんせーは?」

 

挨拶に答えてくれたのは鈴仙一人だけで先生が見当たらない。

買い出しにでも行ったのかなと首をかしげているとすでに喫茶店の制服に着替えてテーブルを拭いている鈴仙が教えてくれる。

 

「ミカさんならお店の奥の方で電話してるよ。DAの人からだって」

「そうなんだ、鈴仙センキュ!」

 

私のウインクとサムズアップに鈴仙はわずかに遅れてぎこちなく親指を立てる。

最初の頃に比べたらかなり良くなったけどまだまだ堅さが残っているその言動を見ていると何だか成長を感じてほっこりする。

 

「そんじゃちょちょっとちょっくら着替えてきま~す」

「は~い」

 

私は更衣室に入り、リコリス制服をポイッと脱ぎ捨て、お店の制服に着替えようとその裾に手を通し、下をはいて、後はたすき掛けすれば終わりだったところで無情な先生の声が聞こえた。

 

「二人とも、すまない。急用が入った。今から臨時休業だ」

「……はい? なんですと?」

「今日は休みだ」

「ええ~~っ!?!?」

 

聞き間違えかと思い更衣室の扉を開け、聞き返しても全く同じ答えが帰ってくる。

驚きのあまりキキーッとブレーキ音が鳴るくらい勢いよく飛び出し、先生に詰め寄る。

 

「ちょ、マジィ!? ここまで着替えたのに休み!?」

「すまない…………マジだ」

「そんなぁ~……」ガックシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Reisen side>

 

というわけで臨時休業になってしまったのでこれからどうしようかな……

二人でお店の制服を脱ぎながら今日は何をしようかなってお話をしたけど、私の「また演習場か訓練施設借りにいきませんか?」というのには「え~、ダメよダメ。ここ最近ずっとだったじゃん! それに今の鈴仙ならそこまで鈴仙の必要ないでしょ?」と言われて却下されし私から打つ手はもうない。

千束お姉ちゃんも「今日はお仕事お仕事って意気込んでたのに急に何もなくなるとなぁ……」と唸りっぱなし。

着替えが終わり、先生を見送った後も何も案は舞い降りてこなかった。

 

「やっぱり練習に……」

「い・や・で・すぅ~! せっかくの休日なんだからそんな詰まんないことより楽しくて面白いことしたいじゃん! リフレッシュは大事よ~?」

「リフレッシュって……例えば?」

 

私の素朴な疑問に千束はみょんな表情をしていた。

何かおかしなこと言ったかなと不安がっていると千束の口が開く。

 

「鈴仙、まさかだけど、遊んだことない?」

「いやいや、流石にあるよ!?」

「そう、だよね! よかったよかった安心した~! まさかフキみたいに訓練がリフレッシュだとか言って遊びも知らないお子様かと……「え?」…………質問を変えるね。DAの外の娯楽は?」

「……ないです」

「……そっか。そうだよね。DAのときのペア、フキだもんね。相部屋だもんね」

 

今まで気分転換もかねて行ってった訓練がまさかリフレッシュとして正しくないなんて思いもしなかった。

それじゃあ今まで千束を遊びに誘う感覚で訓練に誘っていたのに、間違ってたのか……と肩を落とす。

 

「ま、いっか! これから私が教えてあげればいいしね! …………とりあえず家に戻って私服に着替えて駅前に集合ね。こうなったら今日一日まるまるっと鈴仙にリコリスの遊び方を伝授したるわい!!」

「あの……外行き用の私服、私もらってないです……」

「ぜんとたなん? って言うんだっけ、こう言うの」

 

引きつった笑みが消え去り、う~んと頭を抱えてる千束がそこにはいた。

よくわからないけどスゴく申し訳ない気分だ。

 

 

****

 

 

とりあえず私服姿の千束(何故か更衣室に制服以外も入れているらしい)に引き連れられ最初にやってきたところはお洋服屋さん。

リコリス制服はフォーマルすぎず、カジュアルすぎず、高級な飲食店でも、ファストフード店でもどこだろうと違和感なく溶け込めるので外での任務で支障がなかった。

でもお洋服を替えてオシャレすると気分が上がってもっと楽しくなるらしい。

また一つ賢くなれた気がする私はお洋服を選ぼうとして……

 

「この服に合うじゃん!」「ああっ! コレいい!」「こっちとこっち、どっちがいい? 迷ったら両方着せちゃえ~!」

 

という感じで着せ替え人形になっていた。

もちろん自分でもほしい物があったら選ぼうとするんだけどそれより先に千束が「コレにあいそ~!!」って言って掻っ攫ってしまうから結局何も選んでないのと同じ。

そしてお小遣いの関係上、最終的に外用とパジャマなど、併せて6着のお買い上げ。

そのまま千束コーディネーターにより新しい私服に身を包んだ。

……それにしてもあんなに着た意味とは何だったのだろうか。

 

「よーしよし! やっぱり鈴仙はかわいいねぇ! んでもって、このまま映画館へゴー!!」

「あの……お金、もうなくないです?」

「あっ」

 

前準備万全でウキウキのところ申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、もう、財布はスッカラカンだ。

しょうがないことだよ、小学生くらいの私たちにとって五千円なんて大金も大金。

なのに洋服を買っただけですぐに野口さんも樋口さんも飛んでなくなっちゃうんだから。

私たちの手のひらに集められたコインの合計金額は千円もなかった。

 

「ああー……せっかく鈴仙と初めてのデートだったのにぃ……!」

「あ、あはは……」

 

千束のジョークに乾いた笑いしか出ない。

あえなくして、順風満帆に思われた千束の遊びのプランは変更を余儀なくされた。

本当に、申し訳ない……私が服を持ってないばっかりに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Chisato side>

 

「しょうがない。お菓子でも買って家で映画見るかぁ」

「じゃあ最初から家で見れば……」

「鈴仙のアホ! ……「アホ!?」……いい? 映画はね、映画館でしか得られない良さがあるんだよっ! 私的にはぜっっったーいっ、映画館の方がおすすめだったのに……」

「そう言うものなのかなぁ……お金かかるのに?」

「そう言うもんなの」

 

私は泣く泣く映画館を諦め駄菓子屋さんに行って「こうなったらやけ食いじゃ」といっぱいお菓子を買った。

ただし無闇矢鱈に買うわけじゃない、映画を見る上でパリパリと音の鳴るヤツはできるだけ控えて、しっとり系のヤツだったり飴とかガムみたいなやつを買うのが千束流だ。

私と鈴仙で400円くらいずつ買って、家に着いた。

鈴仙に「どういう映画見たい?」と聞いても「うーん、そもそも映画初めてだから……」と唸るばかりだったので私のおすすめ作品3連発!

本当は全部見てほしいんだけど流石に疲れるし、残りは自分の家に帰ってから見てもらおうかな。

 

「え、部屋暗くするの?」「その方が雰囲気でるでしょ!」

「あ、そこ! そこだよ! やっちゃえジョンさん!」「ちょ、上映中はお静かに!?」

「やっぱりいいわ、このシーン神だわ。何が神って脳筋による筋肉プレーが……」「集中できないから黙っててください!」「あ、次のシーン、これはねこの人……」「ネタバレやめてぇ!」『余計なことを言うと口を縫い合わすぞ』「ええっ!?」「ププッ、ごめんごめん、これやりたかっただけ~!」「むぅ、静かにっていったのは千束なのに……」

 

 

****

 

 

映画を見ていると時間の流れというのは早いもので、夕日が眩しく私たちの眼を焼く。

まだまだ一緒にいたいけど今日はもう終わらないと暗くなっちゃうし、ご飯を食べる準備もしないといけない。

だから残念な気持ちを抑え込みさよならの準備をする。

 

「いや~今日は楽しかったぁ!! 服も買えたし、映画館は無理だったけど無事映画も見終わったし、楽しかった! あ、そうだ! コレとコレと……はいコレ! 帰ったら見てみて! めっちゃいいから! 次は映画ファンになってることを期待するよ!」ビシッ

「あ、ありがとう?」

「どうしたの、なんで疑問形?」

 

私の映画コレクションを勢いよく広げて作品を厳選、そこら辺の紙袋におすすめを詰め込み鈴仙に掴ませる。

私は親指をぐっとあげ、ポーズを決めるが鈴仙は何だかソファに座ったまま動こうとしない。

 

「アレ? 今日、パジャマも買ったからてっきりお泊まりさせられるのかと思ってたんだけど。ってあれ、もしかして私、勝手に恥ずかしいこと言ってる!?」

 

私の口角が自然と上がる。

本当にうれしいやら面白いやら、鈴仙は……

 

「イヒヒっ! まっさっか~、鈴仙、お泊まりして一緒にいたいんでしょ~!」

「ああああ! ごめんなさいぃ! 私ったら勝手に勘違いして……!」

「いいの、いいの! ……もうまったくしょうがない妹だなぁ、今日は寝るまで寝かせないぞぉ~? もちろん私は全力で楽しもうと思います! 鈴仙はついてこれるかなぁ?」

「も、もちろん!! オールナイト、かかってこいや~!」

「いいねぇ! レッツ、ルナティックパーリータイッム!」

 

騒がしく夜が更けていく。

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