性癖とは死ぬことと見つけたり、な第五章、はーじまーるよー。
前回のあらすじ。
無理げー。
無理げー。
ホモ面談。
というわけで、供御飯先生、山刀伐先生、薔薇園先生の三者での話し合い。
テーマは『天才と凡才』……え?
実は今回、雑誌記事の取材として対談形式の集会にしてあるのです。そんな関係(姦計)だったのか。
「お久しぶりです、尽さん」
薔薇園先生は、形式的な自己紹介があった後、深く頭を下げます。
「懐かしいね。尽さん、と言ってくれるのは君だけだ」
フフフ、と爽やかに微笑するのは山刀伐先生。もう、薔薇が三分咲きですね。
「しかし、こうして話すのは数奇なものを感じるよ」
「そうですね。どうしてここに?」
「明石君の伝手で、その“奇妙な”弟子によってかな」
「ああ、もしかして」
「恋愛流さ」
「そうですか、恋愛流」
「君が?」
「はい」
そこまで話して、山刀伐先生は供御飯先生に問います。
「同じ?」――才能がない?
「はい」私には何の才能もありません。
「好き?」――縛りたいその人のことを?
「いいえ」別の人を。
「無駄じゃない?」――報われないかもよ?
「それが、私ですので」うっせぇな!
「気に入ったね」――条件次第では協力するよ。
「ありがとうございます」条件を言え。
「うちの野良猫の世話をお願いしてもいいかい?」――
「いいでしょう」わかりました。
野良猫=鹿路庭珠代先生です。
この時には“ほとんど”意味がありません。
「さて、天才か」
再び山刀伐VS薔薇園の対談に戻ります。
「天才といえば、名人ですね」
分かりやすく薔薇園が話題提供をします。
「本当の将棋指しは、ほとんど天才さ」
自虐的に山刀伐は返します。
「本当?」
「君もそうだったさ」
頬を赤らめる薔薇園。あのさぁ……五分咲き。
「いやいや、尽さんもトッププロじゃないですか」
「死に物狂いでね。そもそもここに来ているのだって、その天才の紹介で来ているわけだしね」
「もしかして」
「明石君」
「明石先輩ですか? え? すみません、生きていたんですか?」
「小児科の先生だってね。将棋の才能もあって、ドロップアウトして、今ではお医者さんだよ」
「いや、まあ。驚きませんけどね」
将棋の才能があって、ドロップアウトして、今では実家の芸事を継いでいる人間が目の前にいるので今更驚くことはありませんけど……。
「将棋の才能って何だろう?」
漠然と、でも真剣な表情で山刀伐先生はふと、呟くように言う。
「天才って、何?」
続くように、同じトーンで語り掛けるように問う。
……凡人の問いだ、と供御飯は思った。何千回でも、同じように思ったから。
「……ある日。僕は家の芸事を習った」
数呼吸ののちに、薔薇園は急に語り始めた。
「小学生に成らないころから始まった。拒否権はなかった。すぐに、僕は天才だと言われた」
少なからざる沈黙。先を促したのは山刀伐だった。
「それで?」
「本当に天才だと、僕は思っていた。でも、実態は違った」
「え?」その疑問符を漏らしたのは、供御飯だった。
「……みんな、僕ほどには真面目じゃなかった。家から言われて習いに来ていただけだった。“天才”は自分の不努力の免罪符だった」
「なるほど」山刀伐が頷くのは、彼も昔は天才だと言われていたからだろう。
「すべて褪めた。そのあとに将棋を始めたのは“0か1か”の世界はわかりやすいように思えたからだ」
勝利か敗北かしかない。確かにシンプルな世界だ。
「そこで、勝った」
「勝ちまくった」
「ライバルもできた」
「友もできた」
懺悔のようだと、思った。
「誰かは負けて」
「負けて」
「負けて。いなくなった」
「だから、勝ったのに“負け犬”になった僕は、ここにいる」
ふざけんな!
「ふざけんなよ! 薔薇園!」
山刀伐はランニングを日課としている。
バッキバキの肉体から体重の乗ったパンチは大人一人を軽く吹っ飛ばした。
将棋の棋士ってスゴイネ。
「ふざけるな! 嘘を吐くな!」
山刀伐先生のオーラは紫色。それを覚醒した超人のように激しく纏っている。
「嘘、とは?」対するは、薔薇園。
めり込んだ壁を剥ぎ取るように復帰している。
オーラは虹色。圧倒するかの幻惑的かつ多彩な色彩の力の奔流が背から渦巻いている。
「やるんだろ! やりたんだろ!」
山刀伐は挑発する。何を?
「尽さん!」薔薇園も、応える。
供御飯ちゃんも会場をセットする。
そして、決闘は始まった……!!
「「よろしくお願いしますッ!!」」
将棋だった。
互いにきれいな正座から一礼してからの開始であった。
それに、相矢倉だった。
「あっ、すみません」
ど派手なオーラをまといながら、互いにお茶とお茶請けを受け取っていた。
将棋指しには、基本、バカしかいない。
続く。
次回、贖罪。